
はじめに(2025年の労働市場トレンド)
2025年の日本の労働市場では、AI(人工知能)やデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展によりIT人材の需要が急増しています。経済産業省の予測では2030年に最大約79万人のIT人材が不足するとも報告されており、企業のDX推進において深刻なボトルネックとなっています。こうした背景から、高度なデジタルスキルを持つ人材は各社が「喉から手が出るほど」欲しがる状態で、高い報酬や好待遇で迎えられる傾向にあります。仕事選びでは年収ランキングが気になるところですが、それだけでなく将来性や社会的需要の高さも重要です。そこで本記事では、2025年に注目される人気職業をランキング形式で紹介し、各職業の年収目安・必要スキル・成長の背景・将来性について解説します。
2025年人気職業ランキングTOP10
1. データサイエンティスト
- 年収目安: 平均年収は約556万円とIT職種の中でも高水準です。スキルと経験次第では年収1,000万円超えも狙えます。
- 必要なスキル・資格: ビッグデータを分析するための統計学や機械学習の知識、Pythonなどによるプログラミングスキルが求められます。専門資格は必須ではありませんが、統計検定やJDLA(日本ディープラーニング協会)の資格(例: G検定)取得がスキルの裏付けになるでしょう。
- 成長の背景と将来性: AIや機械学習の普及に伴い、データ活用スキルを持つ人材の需要が高まっています。企業がデータ駆動型の意思決定を重視するようになり、ビジネスに有益な洞察を提供できるデータサイエンティストは各業界で引く手あまたです。今後もDX推進の中心的人材として将来性は非常に高いでしょう。
2. AIエンジニア
- 年収目安: AIエンジニアは高度専門職であり、他職種よりも高い給与水準が期待できます。具体的な平均年収データは職種定義によりますが、データサイエンティスト(平均556万円)と同程度かそれ以上と考えられ、経験豊富な人材は年収1,000万円規模も十分可能です。
- 必要なスキル・資格: 機械学習や深層学習に関する知識、PythonやTensorFlowなどの開発スキルが不可欠です。数学・統計の素養も求められます。資格ではJDLAの「E資格(エンジニア資格)」や機械学習エンジニア検定などがスキル証明として役立ちます。
- 成長の背景と将来性: AI技術の進化に伴い、専門人材の需要が年々増加しています。製造業、医療、金融など様々な業界でAI活用が進み、AIエンジニアが活躍できる場は広がっています。プロジェクトによっては研究開発から実装まで幅広い役割を担い、技術革新の中心となるため、今後も将来性は非常に高いです。
3. クラウドエンジニア
- 年収目安: 平均年収は約595万円と、一般的なITエンジニアより高めです。クラウド経験3~5年程度で500万円台後半、上流工程まで担えるようになると800万~1000万円も視野に入ります。
- 必要なスキル・資格: AWSやAzure、GCPなど主要クラウドサービスの設計・運用スキルが必須です。インフラからセキュリティまで幅広い知識が求められます。AWS認定ソリューションアーキテクトなどクラウド関連資格を取得すれば転職市場で有利になるでしょう。
- 成長の背景と将来性: 多くの企業が基幹システムをクラウドへ移行しており、そのクラウド導入加速に伴って専門人材の需要が高まっています。クラウドエンジニアは国内だけでなく世界的にも需要があるため、今後も安定したニーズが見込まれます。資格取得によるスキル証明が評価されやすく、キャリアアップのチャンスも豊富です。
4. サイバーセキュリティ専門家
- 年収目安: 平均年収は約597万円(日本平均458万円)と高水準で、経験豊富なセキュリティエンジニアやアナリストは年収800万~1000万円超も珍しくありません。
- 必要なスキル・資格: ネットワークやOSの深い知識、脆弱性診断や侵入テストのスキルが求められます。国家資格の情報処理安全確保支援士や、民間資格のCISSPなどを取得すると信頼性が高まります。常に最新のサイバー攻撃動向にキャッチアップする姿勢も不可欠です。
- 成長の背景と将来性: サイバー攻撃の増加により企業のセキュリティ投資は年々拡大しています。その一方で日本のサイバーセキュリティ人材は約48万人に対し、約11万人もの人材不足に陥っていると報告されました。このように深刻な人材ギャップがあるため、セキュリティ専門家はどの業界からも引く手あまたです。高度なスキルを持つ人材ほど高待遇で迎えられる傾向にあり、将来的にもニーズは衰えないでしょう。
5. デジタルマーケター
- 年収目安: 平均年収は約597万円といわれ、業界・ポジションによって幅があります。事業会社のWebマーケ担当で400万~800万円、広告代理店やコンサルでは最大で1000万円近くに達するケースもあります。
- 必要なスキル・資格: SEO対策やWeb広告運用、SNSマーケティングなど幅広いデジタル知見が必要です。データ分析力も重要で、Googleアナリティクスなどの解析ツールを使いこなせると強みになります。資格ではウェブ解析士やGoogle広告認定資格などがスキルの裏付けになるでしょう。
- 成長の背景と将来性: スマートフォン普及と消費者ニーズの多様化により、企業の広告宣伝はテレビからインターネットへと大きくシフトしました。2024年には日本の広告費の約47.6%がインターネット広告となり過去最高を更新するなど、デジタルマーケティング市場は拡大の一途です。今後も企業のオンライン戦略の中核としてデジタルマーケターの役割は重要で、経験を積めば将来のCMO候補としてキャリアアップする道も開かれています。
6. ヘルスケアIT専門家(医療×IT)
- 年収目安: 職種によって異なりますが、例えば医療システム開発SEで約512万円、院内SEで約510万円、医療ITコンサルタントでは約656万円とのデータがあります。医療系IT職種は平均して500万~600万円前後が多く、大規模病院やコンサルファームではさらに高年収も期待できます。
- 必要なスキル・資格: 医療分野の知識とITスキルの両方が求められます。電子カルテなど医療情報システムの知見、データベースやネットワークのスキルが必要です。資格では認定医療情報技師などがあり、医療現場でのIT導入・運用に関する知識を証明できます。
- 成長の背景と将来性: 医療業界でもDXが進み、電子カルテの普及や遠隔医療の拡大など医療分野でのIT活用が加速しています。高齢化社会で医療ニーズが増える中、ITで医療の質と効率を向上させる人材の重要性は増す一方です。専門性が高く社会的意義も大きい仕事のため、安定した需要が見込まれ、将来的には医療DXのプロジェクトマネージャーなどへのキャリアパスも期待できます。
7. フルスタックエンジニア
- 年収目安: 平均年収は約500万~700万円と幅があります。マルチに開発対応できることからベンチャー企業などで重宝され、経験を積んでリーダークラスになれば年収1,000万円程度も十分可能です。
- 必要なスキル・資格: フロントエンドからバックエンド、データベース、インフラまで開発工程全般のスキルが求められます。特定の資格よりも、幅広い技術スタックの実務経験やポートフォリオが評価されます。最新のフレームワークやクラウドサービスへのキャッチアップ力も重要です。
- 成長の背景と将来性: 近年は一人のエンジニアが複数領域を担当するケースが増え、「何でもできるエンジニア」への需要が高まっています。開発チームの小規模化・アジャイル化に伴い、フルスタックエンジニアはスタートアップ企業を中心に引く手あまたです。今後も技術のアップデートが早いIT業界において、広い知識を持つ人材はプロジェクトリーダーやCTO候補として将来性があります。
8. UX/UIデザイナー
- 年収目安: 平均年収は約558万円(UI/UXデザイナー、2025年4月時点)です。20代後半で450万円前後、30代後半で600万円弱と経験に応じて上昇し、デザインマネージャー級になると800万円以上も十分可能です。
- 必要なスキル・資格: Webやモバイルアプリのユーザー体験(UX)設計およびユーザーインターフェース(UI)デザインのスキルが求められます。具体的にはユーザー調査やペルソナ作成、ワイヤーフレーム・プロトタイプ制作、Adobe XDやFigmaなどデザインツールの習熟が必要です。資格は必須ではありませんが、Human Centered Design専門資格などが知見の証明になります。
- 成長の背景と将来性: あらゆるサービスがデジタル化する中で、使いやすいUIと優れたUXが競争力の鍵となっています。アプリやWebサービスの乱立によりUX/UIデザイナーの重要性は増しており、IT企業はもちろん金融やメーカーなど異業種でも専門人材の求人が増えています。クリエイティブ職の中でも比較的高収入で、将来的にはプロダクトマネージャーへのキャリア転向など可能性も広がるでしょう。
9. プロジェクトマネージャー(PM)
- 年収目安: 平均年収は約693万円と、SEやプログラマー等他のIT系職種より高い水準にあります。20代後半でも500万円近く、30代で680万円超、40代以降は800万円を超える平均値との調査もありました。大規模プロジェクトを統括するPMともなれば年収1,000万円台も十分狙えます。
- 必要なスキル・資格: 計画策定、進捗・リスク管理、メンバー調整などプロジェクト全体を管理するスキルが求められます。業界知識や技術知見に加え、リーダーシップやコミュニケーション能力が重要です。資格ではPMP(Project Management Professional)や情報処理技術者試験のプロジェクトマネージャ試験などが評価材料になります。
- 成長の背景と将来性: 企業が社内外でプロジェクト型の業務を拡大する中、プロジェクトの成功を託されるPMの需要は高まっています。IT業界に限らず建設や製造など様々な分野でプロジェクトマネジメント人材が求められており、その汎用スキルはDX時代の変革にも欠かせません。経験を積んだPMは更に上位のプロダクトマネージャーや経営層への道も開け、キャリア戦略上も有望なポジションです。
10. サステナビリティ(持続可能性)コンサルタント
- 年収目安: コンサルタント職全般で年収500万~1000万円程度とされますが、環境・ESG分野も例外ではありません。若手で400万円前後、中堅で700~800万円、大手ファームのマネージャークラスで1000万円超というケースが多いようです。
- 必要なスキル・資格: 環境問題やCSRに関する専門知識とビジネスの両面に精通していることが求められます。具体的には気候変動対策(カーボンニュートラル)やSDGsの知見、非財務情報開示の知識、さらにコンサルタントとしての分析力・提案力・プロジェクト推進力が必要です。環境計量士やエネルギー管理士などの資格を持っていれば知識の裏付けになります。
- 成長の背景と将来性: 企業のESG経営への関心が高まる中で、サステナビリティ人材の求人は2020年から2023年にかけて5倍に増加しています。脱炭素やSDGsへの取り組みを深化させる企業が増え、具体策を実行できる専門人材が強く求められている状況です。今後も国内外でサステナビリティ関連の規制強化や市場拡大が見込まれ、この分野のコンサルタントは企業変革のキーパーソンとして将来性が高いでしょう。
まとめ:ランキングから見える今後のキャリア戦略
2025年のこれから伸びる職業ランキングからは、デジタル技術やデータ活用、持続可能性といったキーワードが浮かび上がります。いずれの職業も社会やビジネスの変化に対応した高い専門性を持ち、将来性の高い仕事ばかりです。転職を検討している方やこれからキャリアを選ぶ方は、ぜひ今回のこれから伸びる職業2025ランキングを参考に、自分の興味や強みと照らし合わせてみてください。高年収を狙うだけでなく、自身のスキルが最大限に活かせて成長産業の波に乗れる分野を選ぶことが、これからのキャリア戦略において重要です。スキルを磨きつつ将来性のある仕事に挑戦することで、長期的に充実したキャリアを築けることでしょう。以上のランキングが、皆様のキャリアデザインの一助となれば幸いです。
参考情報: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、経済産業省「IT人材需給に関する調査」、doda「平均年収ランキング」2024年版、各種転職サイト統計データ、ならびに求人動向調査結果などを基に作成しました。
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