健康・ウェルネス

スマホは枕元に置かない方がいい?電磁波と睡眠の質への影響を科学的に検証

寝室でスマートフォンを枕元に置いて眠る人は多いでしょう。しかし「スマホの電磁波が脳の電気信号を阻害して睡眠の質を低下させるのではないか」という不安の声もあります。本記事ではこの疑問について、最新の科学的知見や研究データをもとに検証します。スマホと睡眠の関係、そして快適な睡眠を得るための対策についてわかりやすく解説します。

スマホは枕元に置かない方がいい?

結論から言うと、可能であればスマホは枕元に置かず、少し距離を置いて寝ることが推奨されます。スマホ自体から出る電磁波の影響は科学的に明確な悪影響は確認されていませんが、スマホを近くに置いておくことで睡眠中につい触ってしまったり通知音で目が覚めたりすることが大きな問題です。また専門家の中には、起きているときは問題なくても睡眠中は身体がリラックス状態になるため電磁波の影響を受けやすい可能性があるとして、念のため寝るときは枕元から離した方が良いと助言する声もあります。以下でその理由と対策を詳しく説明していきます。

スマホの電磁波は睡眠の質に影響する?

電磁波は脳の電気信号を乱すのか?

スマホの電磁波が脳の電気信号を乱して睡眠を妨げるという説がありますが、結論から言えばそのような直接的な悪影響を裏付ける科学的根拠は見つかっていません。スマートフォンは通話や通信の際に高周波の電磁波(RF-EMF)を発しますが、その出力は非常に低く、国際的な安全基準の範囲内です。日本の電波産業会によれば、スマホの電磁波は頭部や人体のすぐそばで使っても人体に影響が出ないような安全性の基準を満たしているということです。

研究で明らかになった影響

スマホや携帯電話の電波と睡眠については、世界中で様々な研究が行われています。大規模な疫学調査では、日常生活レベルの電磁波曝露が睡眠の質に悪影響を及ぼす明確な証拠は見つかっていません。

一方で、電磁波曝露の睡眠への影響を調べた短期の実験では結果がまちまちです。一部の研究では、睡眠中の脳波(EEG)パターンにごく僅かな変化が見られたとの報告もあります。例えば、ある実験では就寝中に特定の周波数の無線電波にさらすと睡眠中の脳のα波パワーが増加したという結果が出ています。しかし、そうした変化が睡眠構造や睡眠の質全体に及ぼす影響ははっきりせず、他の研究では影響が見られなかったケースも多くあります。

また、子供を対象とした大規模調査では、夜寝るときにスマホなどのデバイスが部屋にあるだけで睡眠障害や日中の眠気が増える傾向が報告されています。これは単にデバイスが近くにあることで夜中につい操作してしまうなど、電磁波以外の要因による可能性もありますが、少なくとも寝室にスマホを置く習慣は睡眠に好ましくないことを示唆しています。

WHOの見解と安全基準

国際的な公衆衛生機関も、現時点でスマホの電波と健康被害との関連について明確な結論は出していません。ただし長期的なリスクに関しては慎重な姿勢を取っています。世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)は、携帯電話から発せられる高周波電磁場を「発がん性の可能性あり」(グループ2B)に分類しています。またWHOは小児の電磁波曝露について「現状ではデータが不十分で更なる研究が必要」と提言しており、各国で長期影響の調査が続けられています。さらに総務省の専門調査会による2020年時点の報告書でも、電磁波が脳や中枢神経への影響、発がん性などについて「明らかな影響は確認されていない」と結論付けられています。

スマホを枕元に置くことで生じるその他の悪影響

ブルーライトが睡眠ホルモンを抑制

スマホの画面から放射されるブルーライト(青色光)は睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制することが知られています。本来、人間の脳は夜間に暗くなるとメラトニンを多く分泌し眠気を促しますが、寝る前にスマホの明るい画面を見続けると脳が「まだ昼間」と錯覚して寝つきが悪くなります。実際、強いブルーライトを常に見続ける生活習慣は、睡眠だけでなく目の疲れやうつ症状など健康面への悪影響とも関連する可能性が指摘されています。

夜間のスマホ操作・通知による睡眠妨害

スマホそのものを枕元に置いておくと、つい手に取って操作してしまうことも睡眠の妨げになります。ベッドの中でSNSやニュースを見始めると脳が興奮してしまい、寝つきがさらに悪くなります。また夜中に一度目が覚めたとき、枕元にスマホがあると時間を確認するつもりで画面を見てしまい、その明るさや情報によって完全に覚醒してしまうという悪循環に陥りがちです。

さらに、スマホをサイレントモードにしていない場合、深夜の通知音やバイブレーションによって睡眠が中断される恐れがあります。通知が来る度に眠りが浅くなったり目が覚めてしまえば、睡眠の質は大きく低下してしまいます。

充電中の発熱・火災リスク

なお、スマホを充電しながら枕元に置くことには別の危険もあります。スマホは充電中に発熱しやすく、布団や枕の下に埋もれると熱がこもってバッテリー劣化や発火のリスクが高まります。実際にスマホの取扱説明書にも、布団の近くで充電したまま放置しないよう注意書きがあるほどです。安全のため、就寝中のスマホの充電は枕元ではなく通気のよい場所で行いましょう。

睡眠の質を守るためのスマホ利用のポイント

寝る1時間前はスマホを見ない

まず、就寝前のスマホ使用を控えることが肝心です。寝る直前まで明るい画面を見たり情報収集をすると寝つきが悪くなるため、理想的には就寝1時間前にはスマホやPCを使わないようにしましょう。どうしても利用しなければならない場合は、画面の夜間モード(ブルーライトカット機能)をONにしたり、ブルーライトカット眼鏡を活用して光の刺激を和らげる工夫をしてください。ただしブルーライトを減らしても情報の刺激自体は残るため、できれば就寝前はスマホを控えるのが理想です。

枕元から離して保管し、機内モードを活用

睡眠中はスマホをできるだけ体から離れた場所に置くようにします。可能であれば寝室の外で充電・保管するのがベストですが、難しい場合でも少なくとも頭から30cm以上離れた位置(できれば1m以上)に置きましょう。また就寝中はスマホを機内モード(航空機モード)に設定し、通信をオフにしておくと電磁波の発信を遮断できるうえ通知による妨害も防げます。アラームを使用する場合も、機内モードならアラームは動作しつつ着信や通知だけを遮断できるので安心です。

電磁波カットグッズは必要?

市販されているスマホ用の「電磁波カットグッズ」(電磁波防止シートやケースなど)について疑問に思う方もいるでしょう。結論から言えば、通常の使い方であればこうしたグッズは必須ではありません。前述のとおりスマホの電磁波は安全基準を満たしており、距離を置いたり機内モードにするだけで電磁波曝露は大幅に低減できます。科学的に効果が実証された電磁波シールド用品は多くなく、一部のシール等は気休め程度とも言われます。過度に不安を感じる場合は、グッズに頼るよりもスマホをオフにする・離すといった基本対策を徹底する方が確実でしょう。

まとめ

スマートフォンを枕元に置いて寝ることの是非について見てきました。現時点の科学的知見では、スマホの電磁波そのものが睡眠の質を著しく低下させるという確かな証拠はありません。むしろ、寝る直前までスマホを見ていたり睡眠中もそばに置いておくといった習慣が、睡眠不足や睡眠障害の原因となっているケースが多いと言えます。スマホは現代生活に欠かせない便利なツールですが、快適な睡眠を得るためには使い方に工夫が必要です。寝室ではスマホから距離を置き、夜間は通知や通信を遮断する、就寝前は画面を見ない、といった習慣を取り入れてみましょう。そうすることでスマホと上手に付き合いつつ、質の高い睡眠を確保することができます。

よくある質問

Q1. スマホは枕元に置かない方がいいですか?
はい、できれば避けた方が良いでしょう。スマホの電波自体は安全基準を満たしており直ちに健康へ悪影響はないとされていますが、枕元にあると就寝中につい操作してしまったり通知で起こされたりしやすく、結果として睡眠の質が下がるためです。念のため可能な限り離しておくのが望ましいでしょう。

Q2. スマホの電磁波で睡眠障害になりますか?
通常のスマホ使用による電磁波で直接睡眠障害が起きるという証拠は現時点でありません。多くの場合、寝る直前までスマホを見ていたり深夜に通知で起きてしまうといった使い方の問題で睡眠が妨げられています。電磁波よりもまず生活習慣を見直すことが大切です。

Q3. 枕元にスマホを置くと頭痛や体調不良になりますか?
スマホの電磁波が頭痛や倦怠感を引き起こすという科学的根拠はありません。枕元のスマホが原因で体調不良になるとしたら、考えられるのは睡眠不足や画面の見過ぎによる目・脳の疲労です。そうした間接的な影響を電磁波のせいと誤解しているケースもあるかもしれません。

Q4. 電磁波カットシールなどのグッズは使うべきですか?
現状では特に必要ないでしょう。スマホは国の定める安全基準を満たしており、通常使用で人体に有害な電磁波は出さないよう管理されています。気になる場合は機内モードにするといった対策で十分電波を遮断できます。貼るだけの電磁波防止シール等は科学的な有効性が確認されておらず、基本的には使わなくても問題ありません。

Q5. ブルーライトカットを使えば夜にスマホを見ても大丈夫ですか?
何も対策しないよりは良いですが、完全に大丈夫とは言えません。ブルーライトカット機能を使うと画面光によるメラトニン抑制は幾分和らぐため、しないよりはマシでしょう。しかしブルーライトを減らしてもスマホを操作することで脳が刺激を受ける事実は変わらないため、やはり眠る直前の使用は避けた方が無難です。可能であればブルーライトカットに頼るより、就寝前はスマホを見ない習慣をつけることをおすすめします。

Q6. 子どもがスマホを枕元に置いて寝ても平気でしょうか?
大人以上に注意した方が良いでしょう。WHO(世界保健機関)も小児への電磁波影響についてはデータ不足としており、慎重に経過を見る姿勢を示しています。子どもは発達段階にあり、大人より電磁波や画面の光の影響を受けやすい可能性があります。睡眠中はできるだけスマホを遠ざけ、できれば寝室に持ち込まないことをおすすめします。

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