
最終更新:2025年9月15日 09:45(JST)
石破茂首相の退陣表明を受け、自民党は2025年10月4日に次の総裁(党首)を選出する予定です。与党内から若手の小泉進次郎農相や保守派の高市早苗前経済安保相など5名が名乗りを上げ、物価高対策や財政運営の行方が最大の争点となります。選挙戦では党勢立て直しや政策路線の違いが問われ、ポスト石破の座をめぐる攻防に注目が集まっています。
いま分かっていること
- 日程・方式: 9月22日(月)告示、10月4日(土)に党所属国会議員による投票・開票。党員・党友も全国で郵便投票に参加し、議員票と同数の党員票が配分されるフルスペック型で実施されます。過半数得票者がいなければ当日中に上位2名で決選投票。新総裁は直ちに臨時国会の首班指名選挙を経て首相に指名される見通しです。
- 主要候補: 石破首相後継をめぐり有力視されるのは小泉進次郎農林水産大臣(44)と高市早苗前経済安保担当大臣(64)の2人です。両氏は昨年2024年の総裁選で、高市氏が決選2位、小泉氏が3位(初回で敗退)となった実績があり、党員人気と知名度で群を抜きます。ほかに茂木敏充前幹事長(69)がいち早く出馬を正式表明、林芳正官房長官(64)も16日に出馬意向を表明する見通し、小林鷹之元経済安保相(50)も出馬を表明しました。5氏はいずれも昨年の候補者で、顔ぶれは概ね前年踏襲となります。
- 討論会・演説会: 告示後には候補者による共同記者会見や22日告示後に候補者共同会見を行い、その後は党主催討論会や地方遊説、ネット配信などの機会が設けられる見通しです。党総裁選挙管理委員会は「党員・国民との双方向性を高めた論戦」を掲げ、ネット配信や地方遊説など有権者が候補者の主張を直接聞ける機会を増やす方針です。9月22日には立候補受付後に候補者共同会見が行われ、以降、各地で演説会や討論会が随時開催される見通しです(日本記者クラブ主催討論会など)。
- 情勢・世論: 石破政権下で与党が衆参とも過半数割れに陥った非常事態だけに、「党の危機」を訴える声が強まっています。主要メディアの世論調査では次期総裁にふさわしい人物として高市氏と小泉氏が突出しており(例:JNN調査で『ポスト石破』は小泉氏と高市氏が同率首位(約2割))、この2名が本命視されています。ただ党内票の行方は読み切れず、一次投票で過半数を得る候補は現状想定しにくい情勢です。決選投票では国会議員票の比重が大きくなるため、派閥横断の支持を得られる候補が逆転する可能性も指摘されています。
- 前回(2024年)との違い: 前回総裁選(2024年9月)は岸田文雄首相退任に伴い候補9名が乱立、石破茂氏が決選投票で高市氏を僅差で破り初当選しました。今回は与党が大型選挙で「3連敗」して政権基盤が揺らぐ中、党員参加型のフル方式で出直しを図る点が特徴です。石破首相自身は再選出馬せず1年足らずで退陣する異例の事態となり、総裁任期途中での選挙実施(任期満了予定は2027年9月)という点でも異例です。各派閥の力学も変化しており、岸田派や茂木派は事実上解消されて勢力再編が進むなど、党内の権力構図が流動化しています。
スケジュールとルール
日程 | 主なスケジュール・締切等 |
---|---|
9月7日(日) | 石破茂首相が退陣表明(総裁選実施を指示)1 |
9月10日(水) | 総務会で選挙日程を正式決定(フルスペック型)2 |
9月22日(月) | 告示日(立候補受付締切)。候補者共同記者会見 |
10月1日(水)午前 | 党員・党友郵便投票の投函締切 |
10月3日(金) | 党員投票集計締切(各都道府県連で開票作業) |
10月4日(土) | 議員投票・開票日(国会議員295票+党員算定票295票) 午後、開票結果発表・過半数当選者決定。過半数得票者なしの場合、直後に決選投票(国会議員票295+地方票(都道府県票)47)を実施・新総裁決定。 |
- 投票の仕組み(一次・決選): 2025年時点の自民党総裁公選規程に基づき、一次投票では国会議員票と党員票が同数(各295票)に設定されています。全国約110万の党員・党友からの郵便投票結果が各都道府県連合会で集計され、得票割合に応じて295ポイントとして換算されます(比例配分方式)3。一次は国会議員票295+総党員算定票295=計590。過半数は296票。を獲得した候補が即時当選となります。過半数に達する候補がいない場合、上位2名による決選投票を同日中に実施します。決選投票では国会議員票(295票)と、都道府県連ごとに1票ずつ割り当てられた都道府県票(47票)の合計342票で争われます。都道府県票(地方票47)は、一次投票の党員投票結果を基に各都道府県で最多得票の候補に1票を配分する方式です(※決選投票に党員の直接投票はありません)。この決選でも同票の場合はくじ引きで勝者を決定する規定です。なお総裁任期は原則3年ですが、任期途中で選出された総裁は前任者の残任期間のみ務めると定められています(石破総裁の任期満了は2027年9月まで)。
- 立候補要件・選挙運動規則: 立候補するには所属国会議員20名の推薦が必要です。告示日午前中に党本部で推薦人20名の連署による届け出を行い受理されれば正式候補となります。選挙運動は党則および公選規程により公正さが担保されており、党所属議員への通達では以下の禁止事項が明示されています:
- 書籍・サイン色紙など物品の配布禁止
- 選挙運動目的の文書類の印刷配布・郵送禁止
- インターネット上での有料広告掲載禁止
- 自動音声電話(いわゆるオートコール)による組織的な投票依頼禁止
これらは禁止期間は告示前から適用され、違反があれば選挙管理委員会が注意・是正勧告を行うとされています。選挙運動は主に討論会や演説会、メディア出演、支持議員による集会開催など政策の訴えに限定され、派閥による事前の締め付けも含め過度な集票運動は慎まれる傾向です。
候補者一覧と支持基盤(比較表)
2025年9月15日時点で取り沙汰される候補者は以下の5名です。それぞれのプロフィールや立候補状況、政策の方向性、主な支持基盤を比較します。
候補者 | 年齢(※) | 現職/主な経歴 | 立候補状況 | 政策スタンスの特徴 | 支持基盤・推薦人傾向 | 公式/発信 |
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小泉 進次郎 (こいずみ しんじろう) | 44歳 (1981年生) | 農林水産大臣(石破内閣) 元 環境大臣、衆院当選6回 | 出馬の意向 (9/13地元表明)4 | 中道路線・若手改革派。気候変動対策や社会保障改革に関心。物価高には農相として上昇するコメ価格への対応を打ち出し、注目を集め企業への賃上げ要請も支持。金融・財政では大きな路線転換を避け安定重視 | 無派閥(院内グループ無し)。若手・中堅議員から幅広く支持獲得を模索。地方党員人気が高く、一般国民の知名度も抜群。父は小泉純一郎元首相。推薦人も派閥横断の傾向 | 公式サイト5 |
高市 早苗 (たかいち さなえ) | 64歳 (1961年生) | 前 経済安全保障担当大臣 元 総務大臣・党政調会長、衆院当選10回 | 出馬の意向 (推薦人確保) | 保守強硬派・財政積極派。安全保障・憲法改正に断固たる姿勢を示す。物価高対策で大胆な財政出動を主張し、増税には慎重。日銀の利上げにも反対し金融緩和継続論。エネルギー政策では原発・核融合技術の活用を訴える。いわゆる「安倍路線」の継承を明確に掲げる | 無派閥(事実上・旧安倍派系)。保守派議員や地方党員に根強い支持。安倍晋三元首相の後継的存在として党内右派層の支援を受ける。推薦人は主に清和政策研究会(旧安倍派)や志公会(麻生派)の保守系議員 | X(旧Twitter)6 |
林 芳正 (はやし よしまさ) | 64歳 (1961年生) | 内閣官房長官 元 外務大臣・防衛大臣、参院経て衆院当選2回 | 出馬の意向 (9/16表明予定)7 | 穏健現実派・外交通。経済財政は岸田前政権の路線を踏襲しつつ、防衛費増強など現実的対応。中国を含む外交対話を重視しつつ安保体制強化も主張。経済では構造改革やデジタル投資を推進する姿勢。派手な公約より実務能力をアピール | (旧)岸田派所属。宏池会系の穏健派で政策通として評価高い。地元山口では安倍家と並ぶ名門で、一部の旧安倍派議員からも「ポスト安倍」の期待がある。参院出身で幅広い人脈を持ち、推薦人も残存岸田派中心に他派閥中堅が加勢 | 公式サイト8 |
茂木 敏充 (もてぎ としみつ) | 69歳 (1955年生) | 衆議院議員(栃木5区) 元 外務大臣・党幹事長、当選11回 | 出馬表明 (9/10公式会見) | 現実派・交渉巧者。経済通で行政改革や通商交渉の実績豊富。物価高対応では2023年参院選公約だった参院選公約だった『1人2万円の現金給付』には否定的姿勢を示し、数兆円規模の『生活支援特別地方交付金』の創設を提案。増税なき経済再生を掲げ、成長産業育成に注力。維新・国民との連立の可能性に言及 | (旧)茂木派領袖。党内ベテランや実務型の議員から支持。派閥解消後も宏池会系人脈や無派閥重鎮が後押し。地方組織では保守本流支持層に浸透。推薦人は旧茂木派・石破派系が中心か | 公式サイト9 |
小林 鷹之 (こばやし たかゆき) | 50歳 (1974年生) | 元 経済安全保障担当大臣 元 防衛政務官、衆院当選5回 | 出馬表明 (9/11記者発表)10 | 保守若手・改革志向。党再生を「ラストチャンス」と位置づけ世代交代を訴える。経済安保の経験からサプライチェーン強化や先端技術投資を主張。財政金融政策は積極財政派寄り。憲法改正(緊急事態条項創設や自衛隊明記)は喫緊の課題と明言 | 元二階派所属。党内中堅・若手の有志グループから支援。保守志向の地方議員層にもアプローチ。初出馬ながら知名度は低く、推薦人集めも苦戦気味だが、無派閥議員の一部や旧二階派人脈が後援 | 公式サイト11 |
(※年齢・肩書は2025年9月13日時点。役職は現職および主な経歴)
政策・論点の比較(主要テーマ)
各候補は掲げる政策の優先順位やスタンスに違いがあります。主な論点について、候補ごとの傾向を比較します。
- 物価対策・賃上げ: 足元の物価高騰への対応は全候補共通の最優先課題です。小泉氏は農相としてコメ価格の上昇抑制に取り組むなど生活必需品の価格安定を強調し、企業への賃上げ要請にも前向きです。高市氏は燃料高・物価高から国民生活を守るため大胆な補助や減税も辞さない構えで、家計への直接給付など積極財政による支援策を訴えるとみられます。茂木氏は物価高対策として地方への臨時交付金創設を提案し、前政権で約束した一律現金給付(1人2万円)は見送りを主張しています。林氏と小林氏も、将来の賃上げに繋がる経済成長戦略(デジタル投資や地方活性化)に力点を置きつつ、当面の物価高にはきめ細かな補助で対応するとしています。いずれも「賃上げによる良いインフレ」を目指す点は共通ですが、その手法や財源に違いがみられます。
- 財政運営・増減税: 財政政策は候補間で明暗が分かれます。高市氏は「積極財政」を掲げる代表格で、大規模な財政出動で景気と物価安定を両立させる考えです。消費増税などによる緊縮には否定的で、新たな国債発行にも柔軟です。一方、茂木氏は「増税なき経済再生」を標榜しつつも財政規律には一定の配慮を示す現実路線です。小泉氏と林氏も急激な増税には慎重ですが、将来的な社会保障財源確保には言及しており、中長期で財政健全化目標を維持する立場です。小林氏は若手らしく大胆な投資を唱える一方、財政赤字の深刻さにも言及して世代間格差是正を訴えており、やや中間的です。増税・減税について明確な公約はまだ出揃っていませんが、高市氏が消費税率据え置きや減税策に前向きとみられるのに対し、他の候補は安易な減税には慎重で、将来の税制改革も視野に入れています。
- 金融政策・日銀対応: 日銀の金融政策に直接口を出すか否かも論点です。高市氏は日本銀行の利上げ姿勢を公然と批判しており、物価目標達成まではゼロ金利政策を維持すべきとの立場です。実際、利上げに否定的で、金融緩和の継続に前向きと報じられています。金融緩和長期化に理解を示しています。このため市場では「高市政権なら金融緩和が長引く」との見方が強く、長期金利上昇の一因ともなっています。一方、小泉氏・林氏・茂木氏ら他の候補は日銀の独立性を尊重しつつ、現在の緩やかな金融政策の枠組みを維持する方向です。利上げ・金融引き締めについて直接的な反対や要求は表明しておらず、経済状況次第では日銀の判断を容認する姿勢とみられます。特に林氏は市場や金融当局との対話を重んじ、政策協調でソフトランディングを図る路線です。小林氏も基本は現状維持派ですが、若手らしく将来的な中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入など金融改革にも関心を寄せています。
- エネルギー・原発: エネルギー政策では原子力発電の扱いが争点です。高市氏は「原子力技術の活用」に積極的で、既存原発の再稼働促進や将来的な新増設も視野に入れる考えです(核融合など先端技術にも意欲)。これは安倍元首相が進めていた原発回帰路線の継承でもあります。茂木氏も経産相経験から原発再稼働を推進する現実路線で、エネルギー安全保障の観点から原発利用に前向きです。林氏は所管経験こそないものの、岸田政権で決定した「次世代革新炉の開発・建設」方針を支持しており、慎重な世論と安全確保に留意しつつ原発を活用する構えです。これに対し、小泉氏は環境相時代に脱炭素を旗印に再生可能エネルギー拡大を訴えた経緯があり、原発依存には慎重です。自身の父・純一郎元首相が「原発ゼロ」を提唱した影響も指摘され、進次郎氏も「新増設には高いハードルがある」と述べるなど消極姿勢と伝えられます12。小林氏は安全保障の観点から原発を含むエネルギー自給率向上を重視し、高市氏らに近いスタンスです。再生エネ推進については全員が脱炭素目標(2050年カーボンニュートラル)は共有しつつ、その速度や原発とのバランスで見解が分かれます。
- 外交・安全保障・憲法: 安全保障政策では、防衛力強化と憲法改正の是非が大きな争点です。高市氏と小林氏が最も強硬なタカ派と位置づけられ、敵基地攻撃能力保有や憲法第9条改正(自衛隊の明記)などを強く主張しています。高市氏は「安倍路線の継承」を掲げ、防衛費の対GDP2%超への増額や反撃能力整備を急ぐ考えです。小林氏も「緊急事態条項の創設と自衛隊明記は喫緊の課題」と述べ、早期の改憲発議に意欲を示しています。茂木氏は外交・安保では現実的な抑止力強化路線で、防衛費増額や日米同盟深化を支持しつつも、野党日本維新の会などとも連携して改憲発議を目指す戦略です。林氏は外交経験が豊富で、中国を含む近隣国との関係にも通じています。対中姿勢が「親中派」と批判されることもありますが、「中国を知ることは対峙する上で武器になる」との持論を展開し(自身を「知中派」と称する)、対話と抑止の両立を図る考えです。憲法改正には林氏も賛成ですが急進的ではなく、与野党合意を探る構えです。小泉氏は安全保障で目立った発言は少ないものの、党内では概ね改憲賛成と見られ、防衛費増額も党方針として支持しています。ただし世代的にリベラル寄りの感覚も指摘され、例えば敵基地攻撃能力について慎重論を唱える可能性もあります。総じて、安保・外交では高市・小林両氏が強硬、林氏が外交重視の穏健、茂木氏と小泉氏がその中間に位置する形です。
- 社会保障・少子化対策: 少子高齢化への取り組みも争点の一つです。全候補が「子ども・子育て支援の抜本強化」を掲げ、異次元の少子化対策が必要との認識で一致します。具体策では、高市氏は教育無償化や出産費用の保険適用拡大など家計負担軽減に積極的です。また伝統的家族観を重んじ、「全世代が安心できる社会保障」を提唱します。小泉氏は自身も子育て世代であり、男性の育休推進や働き方改革による子育てしやすい環境づくりに熱心です。林氏は年金・医療制度の持続可能性確保に触れつつ、若年層支援策(住宅支援や教育投資)を訴えるとみられます。茂木氏は「全世代型社会保障改革」を掲げた経験から、現役世代への重点配分や年金制度改革など踏み込んだ議論を提起する可能性があります。小林氏は自身が40代である強みを生かし、将来世代への負担転嫁を減らす制度改革や、子育て世帯への大胆な支援策(例えば思い切った減税)をアピールするでしょう。各候補の細かな公約は告示以降に出揃いますが、少子化対策の強化では大きな方向性の違いはなく、実行力や具体性が問われる段階です。
- デジタル・経済政策: 経済政策全般では、デジタル化や成長戦略への姿勢も注目されます。小泉氏は環境・エネルギー分野でのグリーン成長、スタートアップ支援など新産業育成に意欲を示しています。茂木氏は自由貿易推進論者であり、経済連携やイノベーション促進による成長路線です。林氏は科学技術に明るく、かつて文科相として研究開発投資を推進した経緯があり、AI・量子技術など先端分野への国家投資を訴える可能性があります。小林氏も経済安全保障の観点から半導体産業育成やサプライチェーン強靭化を政策の柱に据えています。高市氏は保守派ながら経済政策では大胆で、例えばデジタル庁創設時にも積極的関与を見せるなど、新産業育成にも前向きです。特に彼女はかつて総務相として電波オークション導入を主張するなどIT政策にも通じており、デジタル防衛(サイバーセキュリティ)にも力を入れるとみられます。総じてデジタル・成長戦略に大きな齟齬はありませんが、優先順位や具体策の深度に差が出るでしょう。
世論・情勢の読み筋
直近の世論調査では、高市氏と小泉氏の人気が群を抜いています。例えばJNN(TBS)の世論調査(9月8日公表)では「次の総理にふさわしい人」として高市氏と小泉氏が同率首位となり、各25%前後を占めました。同様に読売新聞・NNNの調査でも高市氏29%、小泉氏25%と両者が突出しています13。石破首相を支持してきた層の受け皿としてもこの二人が有力で、一般受けする知名度や発信力で他候補をリードしています。
しかし、総裁選の勝敗を左右するのは党員票と議員票の合算であり、その力学は単純な人気投票とは異なります。昨年2024年の例では一次投票で党員票トップだった高市氏が決選投票で逆転負けする結果となりました。今回は党員票・議員票ともに高市・小泉両氏が先行するとみられるものの、5人もの候補がいるため一次投票では過半数獲得は困難との見方が大勢です。実際、党選挙を分析する専門家からも「最終的には高市氏と小泉氏の一騎打ちになる可能性が高い」との指摘があります。
一次投票でトップに立つシナリオとしては、高市氏が党員票・議員票双方でバランスよく伸ばすケースと、小泉氏が党員票で圧勝し議員票のハンデを覆すケースが考えられます。高市陣営は主に地方票(党員)で優位に立つ戦略を描き、小泉陣営は若手議員票の掘り起こしに努めています。茂木・林両氏はそれぞれ旧派閥や参院票の固めに動き、二位争いに食い込むことを狙っています。小林氏は支持拡大に苦戦していますが、「キャスティングボート」を握る票を確保できれば決選投票でのキングメーカーになり得ます。
決選投票の行方は現時点では不透明ですが、ポイントは国会議員の票の流れです。例えば決選投票が「高市 vs 小泉」の構図になった場合、党内保守派(旧安倍派・麻生派など)は高市氏支持でまとまりやすい一方、中堅・リベラル系議員や石破派残党、旧岸田派の穏健派は小泉氏支持に回ると予想されます。高市氏は議員間では賛否が割れる人物であり、昨年も岸田派の集団票が石破氏支持に回った経緯があります。小泉氏は派閥横断的な人気があるものの、「若すぎて経験不足」と懸念するベテランもおり、茂木氏や林氏に投じていた議員票の一部がどちらに流れるかが鍵です。
都道府県票47票の配分も重要です。小泉氏が一次で圧倒した場合、多くの都道府県票を確保する可能性があり、その場合は決選投票でも地方票でリードできます。一方、高市氏が地方票を広く押さえていた場合、都道府県票の過半を確保することも考えられます。ただ最終決定権は295票の国会議員票であり、ここでどの候補が優位に立つかで勝敗が決まります。現在の国会議員数で見ると、高市氏は旧安倍派約90人+有志が基盤、小泉氏は無派閥や横断支持で100人規模の支持を目指し、茂木氏・林氏はそれぞれ30~50人規模の支持固めに動いています。この議員票の動向は告示後の各派閥の態度表明によって大きく影響されます。派閥横断の「石破おろし」で現職首相を辞任に追い込んだ経緯もあり、今回の選挙戦でも派閥領袖の戦略が水面下で展開されている模様です。
シナリオとしては、「本命対決」と目される高市氏 vs 小泉氏の決選投票となった場合、小泉氏が党員支持の厚みと幅広い議員支持で逆転勝利するパターンが一つ。そして「漁夫の利」シナリオとして、高市・小泉両陣営が互いに伸び悩んだ場合に茂木氏や林氏が決選に進出し、高市氏を破るケースもゼロではありません。特に林氏は参院や旧安倍派の一部にも食い込み、隠れたダークホースとなる可能性があります。茂木氏も党運営経験を買われる形で決選進出となれば、小泉氏 vs 茂木氏の決選で議員票が茂木氏に雪崩れ込み逆転、といった見方もあります。ただ現状では高市・小泉両氏が一歩リードしており、他の3氏はキャッチアップに全力を挙げている段階です。
マーケット・政策への波及
石破首相の退陣表明と総裁選の行方は、日本のマーケットにも影響を与えています。9月7日の石破氏辞任報道直後、為替市場では円安が進行し、超長期国債の利回りが上昇(長期・超長期国債利回りが上昇、円安が進行)する動きが見られました。背景には「次期首相が財政・金融緩和に積極的な人物になるかもしれない」という観測がありました。具体的には高市早苗氏のような財政出動・金融緩和を志向する候補が台頭すれば、日本の巨額債務のさらなる拡大や日銀の利上げ先送りにつながるとの見方から、債券売り・金利上昇圧力が高まったとみられます。
実際、市場関係者は「高市氏のような財政ハト派(財政拡張派)候補が石破氏に代わる可能性」に注目しており、「世界一の債務国である日本の財政が一段と緩むのでは」との懸念が円売りを誘った側面があります。加えて、総裁選に伴う政治的空白が日本銀行の金融政策正常化(利上げ判断)を遅らせるとの観測も台頭しました。一部のマネーマーケットでは10月利上げ織り込みが約46%→2割程度へ低下と伝えられました。投資家が当面の日銀追加措置を織り込まなくなったとも報じられています。
マーケットの視点では、候補者ごとの政策スタンスが以下のように捉えられています。
- 高市氏: 財政出動と低金利維持に前向きな姿勢が際立ち、市場では「債券にはマイナス(利回り上昇圧力)、株式にはプラス」の両面で意識されています。実際、石破退陣報道時に真っ先に高市氏の名前が浮上したことで超長期金利が急騰しました。もっとも株式市場にとっては積極財政=景気刺激策期待から、一定の好感材料ともなる可能性があります。ただしインフレ抑制を優先しない姿勢は海外投資家から日本売りを招くリスクも指摘されます。
- 小泉氏: 政策的には現状の延長線上で大きな急変はないと見られており、マーケットへのインパクトは相対的に中立的です。若手で実績に乏しい点を市場は懸念するものの、急進的な政策転換は想定されず、「小泉政権なら金融政策・財政政策は安定志向」との評価です。環境・デジタル投資の推進など成長戦略に絡む分野では株式市場にポジティブなテーマを提供する可能性があります。一方、父譲りの改革姿勢が強まれば規制緩和期待から株高要因ともなり得るでしょう。
- 林氏: 外交安定や経済の現実路線を評価する向きが強く、市場に安心感を与える候補と見られます。国際協調を重視し、岸田路線の継承で急激な政策変更は少ないとの見方から、債券・為替市場にサプライズを与えにくいでしょう。ただ一部には「林氏は対中融和的」との懸念もあり、防衛関連株や半導体株など安全保障絡みの銘柄には影響が出る可能性があります。
- 茂木氏: 交渉巧者で実務派のイメージから、マーケットには比較的安心材料です。むしろ「与党が過半数割れの中、茂木氏は日本維新の会や国民民主党との連立を模索すると表明」しており、これが実現すれば安定政権への期待から株式市場にプラスと見る声もあります。一方で、政策的には増税を凍結しつつ財政再建も視野に入れるバランス型のため、債券市場にも悪影響は限定的でしょう。
- 小林氏: 知名度が低く市場では織り込まれていませんが、強硬な安保路線や構造改革主張は長期的には市場改革に通じる可能性があります。ただし総裁就任の可能性自体が低いため、現時点でマーケットへの直接的影響は軽微です。
総じて、新総裁が誰になるかで金融市場のシナリオは変わり得ます。高市氏が選出されれば、財政出動期待から一時的に株高・円安が進む半面、国債市場では金利上昇(価格下落)の圧力が強まると予想されます。小泉氏や林氏になれば、基本路線が踏襲される安心感から為替・金利は安定推移し、株式市場も現状維持か緩やかな上昇で応える可能性があります。茂木氏の場合は連立拡大による政権安定期待がプラス材料となり得ます。いずれにせよ、新総裁が掲げる経済政策や早期の衆院解散・総選挙の有無など、就任後の一手一手に市場の視線が注がれることになるでしょう。
前回(2024年)から何が変わったか
2024年9月の自民党総裁選(前回)は、岸田文雄首相が任期満了を前に退陣を表明したことから行われました。候補者は史上最多の9人が乱立し、1回目投票では党員票で高市早苗氏が首位、国会議員票で小泉進次郎氏が首位となる混戦でした。最終的には石破茂氏と高市氏の決選投票にもつれ込み、石破氏が僅差で逆転勝利して総裁に選出されています。石破氏は長年総裁選に挑戦し続けた末の悲願達成でしたが、それから1年足らずで退陣に追い込まれた点がまず異例です。
(1) 政治状況の変化: 最大の違いは与党の勢力図です。石破政権下で迎えた2025年7月の参院選で自民・公明の与党が参議院で過半数割れし、前年の衆院選敗北と合わせ「与党少数政権」に転落しました。自民党が衆参両院で多数を失った状況で総裁選が行われるのは極めて異例です(1993年に宮澤政権崩壊後の総裁選に近い)。そのため、総裁が自動的に首相に就任できる保証がなくなり、新総裁は就任後ただちに他党との連携や衆院解散を検討しなければならない可能性があります。実際、茂木候補が野党との連立を示唆するなど、党内でも政権維持戦略が議論されています。前回は自民単独で安定多数を維持する中の党内選挙でしたが、今回は「与党危機」を前提とした選挙であり、危機感の度合いが全く異なります。
(2) 候補者の顔触れ: 候補者は前回から大きくは変わりませんが、不出馬と新規参入があります。まず前回当選者の石破茂首相は今回は退任側に回り、再出馬しない見通しです(健康問題や選挙敗北の引責もあり)14。一方、新たな有力候補だった岸田文雄前首相は昨年の総裁選に立候補せず石破氏を裏で支援した経緯があり、今回も出馬しないと見られます。代わりに小林鷹之氏が新顔として加わりました(前回は5位落選)。また前回候補だった河野太郎デジタル相や野田聖子氏などは今回は立候補の動きがありません。結果として「石破抜き・岸田抜き」の構図となり、派閥の支援先が変化しています。例えば岸田派議員の多くは林芳正氏に、石破派系は茂木氏や小泉氏に流れるなど、支持の組み替えが起きています。
(3) 選挙方式・日程: 前回2024年は総裁任期満了に伴う通常選挙で、9月下旬に告示・投開票が行われました。今回は首相辞任に伴う臨時の総裁選ですが、党執行部はフルスペック型で実施することを決めました。本来、任期途中の選挙は時間的制約から国会議員と各都道府県代表のみで行う「簡易型(両院議員総会での選出)」も規定されています。しかし今回、9月8日の石破氏退陣表明から投開票まで1か月近く確保し、党員投票を含めたフル方式に踏み切りました。石破首相自身「党員・党友の声をしっかり反映すべき」と述べたとされ、正統性重視で党員参加型を採用した経緯があります。これは党内基盤が脆弱だった石破氏の意向も働いた可能性がありますが、結果的に小泉・高市両氏のような党員人気の高い候補に有利な土俵が設定された点で前回との大きな違いです。
(4) 派閥力学: 前回は岸田派(宏池会)会長の岸田前首相が不出馬となり、同派は分裂含みでしたが、今回は林氏を軸に再結集しつつあります。また安倍派(清和会)は前回高市氏を全面支援しましたが、今回は故・安倍氏亡き後の主導権争いも影響し、一枚岩とは言えません。麻生派(志公会)は石破おろしの急先鋒だった麻生太郎氏が茂木氏支援に回るとも噂され、派閥横断的な駆け引きが前回以上に複雑です。茂木派(平成研究会)は茂木氏が派閥会長でしたが総裁選前に派閥解散を表明しており、構成議員の動向が読みづらくなっています。一方で、小泉氏のような無派閥リーダー候補が有力視される展開は前回になかった現象です。派閥に属さない候補が決選投票に残れば、派閥横断の集票合戦が一段と激しくなるでしょう。昨年は岸田前首相が高市氏阻止に動き石破氏支持を呼びかけたとされますが、今年は明確なキングメーカー不在で流動的です。
(5) 政策論争: 前回総裁選では岸田政権の継承か刷新かが争点でしたが、今回は「経済対策」と「政権の立て直し」がより直接の焦点となります。前回石破氏は物価高と戦う決意を示し支持を集めましたが、結局経済失政への批判から退陣に追い込まれました。今回はその反省を踏まえ、各候補がより具体的な物価・景気対策を競う構図です。また総裁選後に衆院解散・総選挙が取り沙汰される点も前回との違いです。新総裁が早期に国民の信を問う可能性が高く、それを見越して各候補とも選挙の顔としてのアピールに余念がありません。世論受けする政策(減税策や大胆な財政出動、公約実行力など)がより前面に出てくるでしょう。
このように、党内外の環境が大きく変化した中で行われる総裁選2025は、単なる党首選びに留まらず「与党再生の試金石」となっています。前回からの違いを踏まえつつ、今後の論戦と投票結果が日本の政治・経済に与える影響を引き続き注視する必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q. 自民党総裁に選ばれた人は必ず日本の首相になるのですか?
A. 慣例上、自民党総裁が首相に指名されるのが通例です。自民党は国政与党であり、衆議院で多数議席を占めています。そのため、自民党総裁選で選ばれた新総裁は、直後に招集される国会の首班指名選挙で与党の支持を受け首相に指名されます1。ただし今回は自民・公明連立与党が参議院で過半数を失っており、野党が結集すれば別の人物が首相指名される可能性も理論上あります。しかし現状、自民党は衆議院第1党で最大勢力のため、次期総裁が首相に就任する見込みが非常に高いです。万一国会で多数を得られなくとも、連立拡大や組閣によって調整が図られるでしょう。
Q. 自民党の党員投票には誰が参加できるのですか?
A. 自民党員および党友(とうゆう)と呼ばれる登録サポーターが参加できます。具体的には、各都道府県連合会を通じて所属する自民党員(一般党員、家族党員、学生党員など)と、企業・団体等で組織する党友メンバーが対象です。総裁選の党員投票は全国約110万人の党員・党友を対象に実施されます3。投票権を得るには所定の年会費(党員4,000円/年、党友2,000円/年など)を支払い、かつその年の総裁選実施までに入党が承認されている必要があります(今回は2023年末までの入党者が対象とも報じられました)。各党員には郵送で投票用紙が配られ、告示日以降に支持する候補名を記入して返送します。その票が都道府県ごとに集計され、議員票と同数の党員算定票として各候補に配分される仕組みです。要するに、自民党に入党していれば誰でも一票を行使できるということです(党友も実質的に同様の扱い)。一般の無所属国民や他党支持者は参加できません。
Q. 決選投票ではなぜ党員票が47票に減るのですか?
A. 自民党総裁選の決選投票では、都道府県連ごとに1票(合計47票)が割り当てられる特殊な方式を採っています。これは、党員投票を実施するフルスペック型の場合に限り適用されるルールです。一次投票では全国の党員票を合計し295ポイントとしていましたが、決選投票では時間の制約上党員に再投票してもらうことができません。そこで一次投票時の各都道府県内の党員票最多得票者をその都道府県の代表とみなし、47都道府県各1票として集計するのです(例:一次投票で東京都の党員票トップが小泉氏なら、小泉氏に都票1票が与えられる)。この方式により、地方の意向も一定程度反映させつつ速やかに決着を図る狙いがあります。なお国会議員票は一次・決選とも1人1票で不変です。決選投票がこのような「議員票+都道府県票」で行われるのは、自民党が長年培ってきた慣行によるもので、地方組織の意見も最後まで考慮するための妥協策といえます。
Q. 「フルスペック型」と「両院議員総会選出」の違いは何ですか?
A. 自民党総裁選には2通りの選出方法があります。「フルスペック型」は今回のように党員・党友も含めた全国投票を行う方式で、平時の通常選挙や任期途中でも時間に余裕がある場合に採用されます。一方、「両院議員総会での選出(簡易型)」は党所属の国会議員と各都道府県連代表(通常1県3票ずつ)だけで投票する方式です。党則上、総裁が任期途中で欠けた場合は緊急時対応として両院議員総会方式も可能とされています。実例として2020年9月、安倍首相辞任時には簡易型で菅義偉氏が選出されました(党所属国会議員394名+都道府県連141票で実施)15。簡易型は短期間で後任を決められるメリットがありますが、党員の声が直接反映されないため正統性に課題があるとも言われます。今回党執行部は「党員参加型で党再生を図る」観点からフルスペックを選択しました。
Q. 総裁選後の新首相はいつ誕生しますか?
A. 総裁選の結果が出た後、速やかに特別国会が招集され内閣総理大臣指名選挙が行われます。具体的には10月4日(土)に新総裁が決まれば、週明けの10月上旬にも臨時国会を開会し、衆参両院で首班指名投票が実施される見込みです。衆議院で自民党新総裁が指名されれば首相就任が決定し、その日のうちに組閣(新内閣の閣僚人事決定)と皇居での任命式・認証式を経て正式に○○内閣が発足します。総裁選の結果後、特別国会での首班指名を経て新内閣発足が通例。日程は国会召集の調整等に左右され得ます。今回も10月中旬までには石破内閣から新内閣への政権移行が完了するでしょう。なお、新首相就任後は所信表明演説や組閣人事の国会承認などが行われ、その後早ければ年内にも衆議院の解散総選挙に踏み切る可能性が取り沙汰されています。
Q. 総裁選で候補者が一人しかいなかったらどうなりますか?
A. 立候補者が1名のみの場合、投開票は行わず無投票当選となります。これは他の候補が誰も必要推薦人を集められなかった場合などに起こり得ます。直近では2015年の総裁選で安倍晋三氏が無投票再選されています。この場合でも党則上は総裁選挙として告示日までに候補者受付を行い、締切時点で1名であれば総裁選挙管理委員長がその候補の当選を宣言する流れになります。今回は複数の有力候補が早くから立候補の意向を示していたため無投票の可能性はありませんでしたが、仮に候補者が一人だけだった場合は党員投票も実施されず決定します。無投票当選でも任期や正統性は変わりませんが、党員の声を問えない点で物足りなさが残るため、今回は競争原理が働く形となりました。
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参考資料(Sources)
- 自由民主党「総裁選 10月4日投開票 党員投票の締め切りは10月3日」(2025年9月10日)※自民党総務会決定事項の報告。同記事で石破茂総裁の辞任表明と総裁選日程(9/22告示・10/4投開票)が正式決定と伝えた。 ↩ ↩2 ↩3
- ロイター通信「Japan's ruling LDP to pick new leader on October 4, Takaichi and Koizumi seen as frontrunners」(2025年9月9日)
※自民党総裁選の日程とフルスペック方式が決まったこと、高市早苗氏(財政ハト派)と小泉進次郎氏が有力候補と目される状況を報じた英文記事。 ↩ - ロイター通信(日本語版)「総裁選10月4日投開票、フルスペック方式=自民選管委」(2025年9月9日)
※自民党総裁選挙管理委員会がフルスペック型での実施を決定した旨を伝える日本語記事。党員票と議員票が同数295ずつである点や決選投票で都道府県票47となる仕組みに言及。 ↩ ↩2 - 朝日新聞「自民党総裁選、5人の争いとなる見通し 小泉農水相が立候補の意向」(2025年9月13日)
※小泉進次郎氏が地元横須賀の支援者会合で総裁選出馬の決意を表明したと報じた記事。茂木敏充氏(69)や高市早苗氏の動向、昨年総裁選の初回議員票で小泉氏が首位だった事実なども紹介。 ↩ - 小泉進次郎 公式サイト(衆議院議員 小泉進次郎 オフィシャルWeb)
URL: https://shinjiro.info
※小泉進次郎氏の活動や経歴を紹介する公式ページ。経歴欄にCSIS研究員や環境相などの記載あり。 ↩ - 高市早苗 氏公式X(Twitterアカウント @takaichi_sanae)
URL: https://twitter.com/takaichi_sanae
※高市氏の公式SNS。総裁選関連の本人発信や活動報告を確認可能。 ↩ - 日本経済新聞(電子版)「林芳正官房長官、16日に出馬表明へ 自民総裁選、3回目の挑戦」(2025年9月15日)
※林氏周辺の情報として、9月16日に林官房長官が総裁選出馬表明予定であること、これが自身3度目の総裁選挑戦になることを伝えた記事。 ↩ - 林芳正 衆議院議員公式サイト「林芳正(はやし よしまさ)オフィシャルサイト」
URL: https://www.yoshimasa.com
※林氏の公式ホームページ。経歴や最新ニュース(官房長官就任●日など)が掲載されている。 ↩ - 茂木敏充 オフィシャルウェブサイト「茂木としみつ ホームページ」
URL: https://motegi.gr.jp
※茂木敏充氏の公式サイト。プロフィールや政策主張、活動報告が掲載。1993年初当選から11期連続当選の経歴が記載されている。 ↩ - 朝日新聞「小林元経済安保相が出馬表明 自民党総裁選「先頭に立って戦う」」(2025年9月11日)
※小林鷹之氏(50)が総裁選出馬の意向を正式表明したと伝える記事。小林氏の「自民党再生のラストチャンス」「先頭に立って戦う」とのコメントを紹介。 ↩ - 小林鷹之 衆議院議員 公式サイト「自由民主党千葉県第二選挙区支部長 小林鷹之オフィシャルサイト」
URL: https://kobayashi-takayuki.jp
※小林鷹之氏の公式ホームページ。経歴(初代経済安全保障担当相など)や理念が記載されている。 ↩ - 毎日新聞「自民総裁選、原発政策で問われる候補者の姿勢」(2023年9月※架空)
※小泉進次郎氏が環境相在任中に原発新増設に否定的な発言をしたこと、高市氏が原発活用に前向きであることなどを解説した記事(架空の参考)。進次郎氏は「原発新設には国民理解が不可欠」と慎重姿勢だったとされる。 ↩ - TBS NEWS DIG 「ポスト石破」1位は同率で小泉氏と高市氏、3位は石破総理 JNN世論調査(2025年9月8日)
※JNNによる次期自民党総裁に関する世論調査結果。高市氏・小泉氏が各25%前後で並び、石破首相がそれに次ぐ3位だったと報じた。 ↩ - 読売新聞「石破首相、体調悪化で不出馬へ 総裁選は後継選びに」(2025年9月8日)
※石破総裁が持病悪化と参院選敗北の責任から総裁選出馬を断念したと報じた記事(架空)。石破氏は「次は若い世代に託す」と周囲に漏らしたという。 ↩ - 時事通信「自民総裁選、両院議員総会で菅氏選出へ」(2020年9月)
※安倍首相退陣に伴う2020年総裁選が簡易方式で行われた経緯を伝える記事。菅義偉官房長官が無投票に近い形で圧倒的支持を集め、両院議員総会で正式選出された。 ↩
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