
2026年1月下旬、衆議院が解散され、日本は異例の短期決戦に突入しました。高市早苗政権の発足から約3か月、内閣支持率は歴史的な高水準を維持しています。一方で長年与党を支えてきた公明党が立憲民主党と手を組み、新党「中道改革連合」を結成。26年ぶりに自公連立が解消され、政界再編を伴う総選挙となりました。物価高や安全保障、政治とカネの問題など争点が山積する中、与野党の勢力図はどう変わるのか。本記事では1月27日公示・2月8日投開票というスケジュールの下、高市政権の現状と新党のインパクトを踏まえ、衆院選の情勢を多角的に分析します。また、シナリオ別に議席のレンジ予測を提示し、選挙後の政権枠組みを展望します。
この記事のポイント 📌
- 異例の短期決戦と日程:1月23日に衆議院解散、1月27日公示・2月8日投開票の16日間という戦後最短の日程。衆院465議席(小選挙区289+比例176)の行方が問われ、過半数233議席が政権維持のラインに。
- 高市政権の強みと課題:高市内閣の支持率は各社調査で6~7割超と高水準。価格高騰対策や防衛力強化などを掲げる一方、年明け早々の解散で予算審議停滞などリスクも。与党は日本維新の会との協力で政権運営を継続中。
- 公明+立憲の新党「中道改革連合」:正式名称は中道改革連合(略称「中道」)。公明党と立憲民主党の衆院議員が離党して結集し、野田佳彦氏(立民)と斉藤鉄夫氏(公明)が共同代表。綱領は「生命・生活・生存を最大尊重する人間主義」を掲げ、消費税0%や現実的な外交安保など5本柱の政策を発表。
- 選挙協力の具体像:新党は小選挙区で統一候補を擁立し、公明党は従来候補を立てていた選挙区でも候補を出さず、立民系候補を相互支援。比例代表では統一名簿を作成し、公明出身議員も新党名簿に掲載。創価学会の組織票行方がカギとなり、自民党閣僚経験者も「気が気じゃない」と警戒。
- 世論調査の動向:高市内閣「支持」はNHKで62%、JNNで78.1%など高位安定。不支持は2割前後に留まる。政党支持率では自民党が概ね3割前後でトップ、新党「中道」は結成直後ながら電話調査で自民に次ぐ支持を集める結果も。無党派層の動向と投票先が焦点。
- 主要争点と対立軸:①物価高・増税策:新党は食料品の消費税0%の恒久化を主張、政府与党はエネルギー補助や所得支援策で対応。②社会保障改革:現役世代も安心できる新モデル構築(新党)vs 現行制度維持・年金給付調整(与党)。③防衛・安保:高市政権は防衛費増と憲法9条改正に意欲、新党は非核三原則堅持と現実的防衛で合意形成。④政治改革:新党は企業団体献金規制強化、与党内からも政治資金の透明化論議。
- 議席予測シナリオ:ベースケースでは与党(自民+維新系)が単独過半数前後を維持、新党は野党第1勢力に留まる想定。上振れシナリオでは高支持率を背景に与党が議席を伸ばし、自民党単独で安定多数(250議席超)も視野。下振れシナリオでは新党の協力効果で与党が過半数割れ、新党+他野党で政権交代の可能性も(時事通信試算では協力奏功で30超の選挙区が逆転し新党が第1党になるシナリオ)。
- 選挙後の政局:与党過半数維持なら高市首相続投、維新との連立継続。過半数割れなら連立拡大(国民民主党の参加など)や首班指名を巡る駆け引き必至。斉藤公明代表は「選挙後の首相指名は野田佳彦氏に」と明言しており、野党連合政権が実現すれば2012年以来の政権交代となる。
日程と制度の整理:短期決戦の衆院選
今回の衆議院選挙は、異例ずくめの日程と手続きで行われます。1月23日に衆議院が解散され(常会冒頭での解散は実に60年ぶり)、公示日から投票日までわずか12日間という超短期決戦となりました。具体的な日程は以下の通りです。
- 1月27日(火)公示 – 候補者の届け出受付開始、正式な選挙戦スタート。
- 2月8日(日)投開票 – 有権者が投票し、即日開票。解散から投票まで16日間は戦後最短の日程で、憲法上の40日以内という規定ギリギリの早さです。
通常、この時期(1~3月)は新年度予算審議の真っ最中ですが、解散により予算案の成立は持ち越しとなりました。与党筋からは「年度開始に暫定予算が必要になる可能性も」との声が上がっています。1月召集の常会冒頭で解散するケース自体が極めて珍しく、立法日程への影響が懸念されています。
選挙制度について整理すると、衆議院の定数は465議席で、小選挙区289議席+比例代表176議席の並立制です。小選挙区では全国を289選挙区に分け各1名を選出、比例代表は全国を11ブロックに分け政党名で投票し各ブロックの176議席を配分します。単独過半数には233議席が必要であり、政権維持には与党勢力でこのラインを超えることが目標になります。
今回の選挙は昨年2025年10月に発足した高市内閣にとって初めての国政選挙です。本来、前回衆院選(2024年実施)の任期満了は2028年まででしたが、高市首相は政権発足から約3か月での解散を決断しました。背景には「高い支持率を維持しているうちに信を問いたい」という思惑があると見られます。また、従来連立を組んでいた公明党が離反し、政権運営基盤が変化したことも早期解散の一因と指摘されています。
高市政権の現状:支持率の推移と強み・弱み
高市早苗首相は日本初の女性首相として2025年10月に就任し、以来高い支持率を誇っています。主要メディア8社の昨年12月世論調査では、内閣支持率は概ね60~75%台で横ばい推移していました。例えば朝日新聞68%(不支持19%)、読売新聞73%(不支持14%)、日本経済新聞75%(不支持18%)など、高水準で安定しています。最新の2026年1月調査でも、NHKは支持62%・不支持21%、JNN(TBS)は支持78.1%・不支持18.6%とさらに高い値を示しました。時事通信の1月調査でも支持61.0%・不支持15.1%で、発足以来「6割前後の支持率を維持」と分析されています。このように内閣支持率の高さは高市政権最大の強みです。支持の理由として「リーダーシップがある」(28.8%)、「印象が良い」(20.8%)、「首相を信頼できる」(19.9%)などが上位に挙がっており、高市首相の人物評価や発信力が支持につながっているようです。
他方、政党支持率を見ると、自民党自体の支持率は必ずしも同じ高さではありません。NHKや読売の直近の政党支持率では自民党はおおむね30%前後で推移し、無党派層(支持政党なし)が2~4割と多く存在します。高市内閣の高支持には無党派層や他党支持層からの支持も含まれるとみられ、選挙戦でそれを票に繋げられるかが焦点です。また、首相個人への高評価とは裏腹に、「政党支持率が伸び悩む中、高い内閣支持に頼る選挙戦になる」との指摘もあります。
政権の強みとしては、まず挙げられるのが高市首相の発信力とタカ派イメージです。首相は就任以来「思っていた以上に良い総理だ」と党内で評価されるほどで、特に外交・安全保障で強硬かつ明確なメッセージを発信してきました。例えば台湾有事を巡る国会答弁で中国から強い反発を受けた際も撤回を拒否し、「中国の圧力に屈しない対中姿勢」を示したことは国内世論の約44%から「評価する」と支持を得ています。また、就任当初から防衛費増強や憲法改正の必要性を訴え、“日本のサッチャー”とも称される改革姿勢が保守層・無党派層にアピールしているとの見方があります。
経済政策面でも、高市政権は物価高対策を最優先課題に掲げています。首相は年始1月5日の記者会見で「国民が真に影響を感じる物価高・経済不安への対策を迅速に進める重要性」を強調しました。具体策として、エネルギー価格高騰に対する補助や、所得税減税の検討、一部所得層向けの給付金などを打ち出しています(※予算案に盛り込み)。国民生活に直結する課題へスピード感をもって対応する姿勢は評価されており、世論調査でも「政策に期待できるから」という支持理由が約20%に上りました。
しかし弱み・リスク要因も存在します。まず、大きいのは公明党の離反に伴う与党基盤の不安定化です。公明党は昨年10月、高市自民党総裁の下での政策方針や政治とカネの問題への対応に反発し、1999年以来続いた自公連立からの離脱を決定しました。公明抜きの自民党は衆院で単独過半数を割り込んでおり(解散前の自民党議席は約196議席とされます)、政権維持のため大阪を地盤とする日本維新の会との協力関係(連携合意)に踏み切りました。現在は自民・維新で閣外協力的な関係を築き、高市氏は維新の支持も得て首相指名を受けています。とはいえ、維新はあくまで自主独立の政党であり、今回の選挙でも「選挙区調整の必要はない。思い切り戦えばいい」と吉村代表が発言するなど、自民党候補と遠慮なく戦う構えです。伝統的に選挙協力を綿密に行ってきた公明党とは勝手が異なり、選挙戦で保守票の食い合いが起こる地域もありえます。高市政権にとって、連立相手なき単独政権で臨む初の総選挙は「背水の陣」とも言えるでしょう。
また、短期決戦の弊害も指摘されています。上述のように解散から投票日までわずか16日間と過去最短で、各党の候補者調整や公約浸透に十分な時間がない恐れがあります。特に新党が絡む野党側は準備期間の短さがハンデとなりえますが、与党側も新人候補の名前浸透や組織引き締めに時間が足りず、知名度や地盤の弱い候補は不利との声があります。実際、自民党本部は解散に備え「19日までに公認予定候補を提出するよう都道府県連に通知」するなど慌ただしい対応を強いられました。短期決戦ゆえに投票率低下の懸念もあり、組織票頼みの戦いになる可能性もあります。
さらに、高市政権には「政治とカネ」の問題というアキレス腱も潜んでいます。就任直後から旧政権時代の「官房機密費流用疑惑(いわゆる政権スキャンダル)」が取り沙汰され、野党やメディアの追及対象となってきました。高市首相本人に直接の疑惑はないものの、政権全体への不信感につながるリスクがあります。内閣支持率が高いうちは顕在化していませんが、選挙戦で不支持層がこの問題を攻撃材料にするのは確実でしょう。
まとめると、高市政権は高支持率・強い求心力を武器に戦いますが、連立離脱や短期決戦というハンデを抱えています。勝敗を左右するのは、首相個人の人気を自民党への投票行動に結びつけられるか、そして旧公明票の穴をどこまで埋められるかにかかっています。「長期政権を実現し得るかは今回の選挙次第」との見方もあり、まさに正念場の選挙といえます。
新党「中道改革連合」のインパクト:狙い・綱領・選挙協力
今回の選挙戦最大のサプライズは、野党勢力の再編として誕生した「中道改革連合」でしょう。公明党と立憲民主党という一見異色の組み合わせによる新党結成は、有権者にも大きな衝撃を与えました。ここでは、新党の基本情報(名称・体制・経緯)と掲げる理念・政策、そして肝心の選挙協力の中身について整理します。
- 正式名称・体制:新党名は「中道改革連合」(略称:「中道」)です。党の共同代表には、立憲民主党の野田佳彦代表(元首相)と公明党の斉藤鉄夫代表が就任しました。他に幹事長には立民・安住淳氏、公明・西田実仁氏が就き、政調会長も両党から指名(立民・本庄知史氏、公明・岡本三成氏)されるなど、立民・公明の対等合併的な色彩です。組織上は公明党・立憲民主党という二つの既存政党が存続しつつ、両党の衆議院議員が離党して新党に参加する形が取られました。参議院議員や地方議員は従来通り各党に残留し、衆院でのみ一つの政党として活動する特殊なスタイルです。野田氏は「急に浮上した話ではなく、昨年10月の自公連立解消以降、中道勢力結集の旗印を掲げ各方面と議論してきた」と説明し、中道勢力の“大きな塊”を作る第一歩だと位置付けています。
- 結成の経緯・狙い:斉藤公明代表によれば、公明党は連立離脱後「中道改革の軸になる」という方針を掲げ、自民党穏健派や国民民主党などにも声をかけつつ中道勢力結集を模索してきました。そうした中で今回の解散が決まり、「立憲の野田代表から『中道勢力を一緒に作っていこう』との申し出があり協議を進め合意に至った」とされています。最大の狙いは、高市政権の保守・右傾化路線に対抗しうる「もう一つの受け皿」を有権者に提示することです。斉藤代表は「分断と対立、右傾化が進む政治状況の中で、中道主義の大きな塊を作ることが日本の未来を開く」と強調し、「強い国家や強い経済も大事だが、その先に国民の笑顔と暮らしの満足がなければならない。生活者ファーストの中道政治を目指す」と訴えています。一方、立民側にとっても野党第一党とはいえ近年国政選挙で伸び悩み、「反自民票の受け皿」として信頼を回復する必要がありました。公明党の組織力と全国基盤を取り込むことで「1+1以上の相乗効果」を狙ったのです。
- 新党の理念・基本政策:新党「中道改革連合」はその名の通り「中道改革」を旗印に掲げています。綱領では「対立を煽り分断を深める政治ではなく、合意形成を積み重ね生活者ファーストの政策を着実に進める中道政治の力が求められている」と強調し、「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義」を政治理念として明記しました。「国民の利益と幸福に奉仕する国民政党として、国民が求める改革を主導する基軸となること」を目指すと謳っています。要するに、左右のイデオロギー対立ではなく実用主義(現実主義) と国民目線の政治を推進する姿勢です。 基本政策としては5つの柱を掲げました:
① 持続的な経済成長への政策転換 – 一人ひとりの幸福を実現する経済政策。具体的には「手取りを増やすだけでなく額面収入を増やす経済構造の構築」や「行き過ぎた円安の是正」を提唱しています。物価高に苦しむ生活者の賃上げと円価値の安定を図る方針です。
② 新たな社会保障モデルの構築 – 現役世代も安心できる全世代型社会保障改革。年金・医療制度の持続可能性確保と子育て支援強化などが柱とみられます(詳細項目は今後の公約に盛り込み予定)。
③ 包摂社会の実現で選択肢拡大 – 教育無償化の拡充や地方・都市間格差是正、多様性尊重の社会づくりを掲げます。例えば子どもの貧困対策や高等教育支援などで「誰一人取り残さない」方針です。
④ 現実的な外交・防衛と憲法論議の深化 – 安全保障では「平和安全法制が定める存立危機事態での自衛権行使は合憲」と明記し、現行安保法制(集団的自衛権限定行使容認)を容認しています。同時に「非核三原則の堅持」を打ち出し、専守防衛と核兵器持ち込み禁止を守る立場です。憲法改正についても「責任ある論議の深化」を掲げ、改正そのものに反対とはせず冷静な議論を進める構えです。外交では現実路線を取り、日米同盟基軸の下で対話と抑止力強化を両立させる方針とみられます。
⑤ 不断の政治改革・選挙制度改革 – 政治資金の透明化として「企業・団体献金の受け手側制限強化」を主張し、汚職・不祥事の防止に取り組みます。選挙制度では一票の格差是正や衆院の定数是正(定数削減含む)も議論対象でしょう。その他、「ジャパン・ファンド(政府系ファンド)」創設による国の埋蔵資産活用で財源を生み出す構想や、将来的な「原発に依存しない社会」を目指しつつ安全が確保された原発再稼働は容認する現実的エネルギー政策も示しています。 特に目玉政策となったのが「食料品の消費税率を0%(ゼロ)に恒久化」する提案です。岡本政調会長(公明)は「生きるために必要な食料品の税率は恒久的にゼロにしたい」と力説し、その財源についてはジャパン・ファンドによる国有資産の一体運用で創出するとしています。具体的には、年金積立金(GPIF)の運用ノウハウを生かし、国有資産の運用益で財源を賄う「令和の財政改革」を掲げています。赤字国債乱発で円安・インフレを助長することなく、将来的な基金運用益で減税を実現する狙いです。この大胆な政策は物価高に苦しむ有権者の関心を集めており、野党側から「生活重視」の明確な対抗軸が示された形です。 - 選挙協力と候補者調整:新党の選挙戦略は徹底した候補者一本化にあります。公明・立民両党首会談の合意内容によれば、新党では「衆院選小選挙区では中道改革理念に賛同し結集した候補者を両党で支援」し、公明党はこれまで独自候補を擁立してきた選挙区にも候補を立てない方針とされました。つまり、小選挙区では可能な限り新党系の候補者に一本化し、自民党や維新など他党と一騎打ちの構図を作る戦略です。具体的には、立憲民主党系の候補者(現職・新人)が新党公認または推薦を受けて出馬し、公明党の創価学会組織票を全面的に受ける形がとられます。公明党現職議員についても、例えば東京12区など従来公明が議席を持っていた選挙区でも公明公認ではなく新党公認として立候補し、公明党としての立候補はゼロとなる見通しです。実際、公明党は中央幹事会で「党所属の全衆院議員が離党し新党に参加」「次期衆院選は新党を全面支援」と決議しており、組織ぐるみで新党にコミットしています。 比例代表でも統一名簿を作成しました。立民・公明の衆院議員および新人候補は全員「中道改革連合」の比例名簿に登載され、全国11ブロックで新党名で票を集めます。従来、立民と公明で重複していた支持層はほぼ無く、票の食い合いは生じない組み合わせと考えられています。いわば「野党票+公明票」の合算効果が期待できる布陣です。 この選挙協力により約600万票規模の公明党支持層(創価学会票)が野党側に流れる構図となりました。これは自民党にとって大きな痛手です。これまで自民・公明は全国各地で選挙協力を行い、公明支持層は小選挙区で自民候補に投票するのが通例でした。公明票の支援で僅差勝利した選挙区も多く、創価学会票の行方は「最大のXファクター」とされています。自民幹部経験者が「正直、気が気じゃない」と漏らすほど、与党側に衝撃を与えています。
- 相乗効果と懸念:では、この異例の新党によって本当に「1+1以上」の効果は生まれるのでしょうか。期待されるのは、野党第一党の持つ広範な支持層(リベラル・無党派)と公明党の鉄の組織票の結合です。これにより、従来自民党が「野党分裂」に助けられて勝っていた接戦区で勝利をもぎ取る可能性があります。実際、時事通信が試算したモデルでは「公明票と立民票が合わされば小選挙区でLDPが97議席、新党側が139議席を獲得する」とされ、現在野党側が劣勢だった30以上の選挙区が逆転勝利しうる計算です。日本テレビの試算でも「仮に立民・公明が合流すれば、自民党は小選挙区132議席中60議席しか残れない」と衝撃的なシミュレーション結果が報じられました。数字の上では「政権交代も現実味を帯びる」展開と言えます。 地域別に見ると、創価学会員の多い都市部・首都圏で新党効果が特に大きいと考えられます。例えば東京・神奈川・埼玉など首都圏では、公明票が加算されることで野党候補が逆転する選挙区が続出する可能性があります。東京では、かつて公明党が議席を有していた東京12区(東京北部地域)が注目されます。2012年以降は自民候補が当選していましたが、公明の地盤が強固なこの選挙区で新党候補が自民新人と戦う構図となれば奪還の公算大です。また関西圏でも、公明党が強い大阪・兵庫の一部地域で自民 vs 維新 vs 新党の三つ巴となる選挙区があります。創価票が自民から離反することで、維新か新党候補が勝利する可能性もあり得ます。従来大阪では公明党は地域事情から維新と協力関係にありましたが、新党結成で公明支持層が動揺すれば維新にも影響が出るかもしれません。加えて東海地方(愛知など)でも公明党支持母体の票が大きく、トヨタ労組などを擁する立民勢力との相乗効果で都市部の自民王国に風穴を開ける可能性があります。 もっとも、懸念も少なくありません。水と油とも言われた政党同士の合流に対し、「野合ではないか」との批判もあります。実際、立憲民主党内でも一部議員から「民主主義の名が泣くような強引な手続きで合流が決まった」と不満の声が出ました。新党に参加せず立民に残留する意向を表明した議員もおり、党内が完全に一枚岩とは言えません。また、公明党支持者(創価学会員)が立民系候補をどこまで受け入れるかも未知数です。組織指示があっても、「平和の党」公明が長年対峙してきた左派勢力(立民の前身・旧社会党や共産党)への心理的抵抗は残るでしょう。「学会員の中には戸惑いもあるはずで、一部は投票行動を変えない可能性もある」(政治ジャーナリストの分析)との見方もあります。特に創価学会員の高齢層には自民党支持傾向も根強く、組織の指示が票につながる率(歩留まり)が100%とは限まりません。 有権者の中にも「これは党利党略ではないか」「政策の整合性はどうなるのか」と冷ややかな反応があります。公明党は保守色が強く改憲にも一定の理解を示す一方、立民にはリベラル・護憲色が強い議員も多く、掲げる政策全てで一致できるわけではありません。例えば原発政策やジェンダー政策など、新党内で意見の幅が大きい課題も残ります。「新党側も一枚岩ではなさそう」との指摘もある通り、選挙後に政策運営で綻びが出るリスクも孕んでいます。ただ、両党幹部は「違いより共通点にフォーカスし、対立点は合意形成で前へ進める」と強調しており、あくまで大局で団結する姿勢をアピールしています。
総じて、新党「中道改革連合」の登場は、これまでの与野党勢力図を塗り替えるゲームチェンジャーとなりました。長年与党だった公明党が野党側につき、選挙区構図が一変した地域も多いため、従来の常識が通用しない選挙になります。新党がどこまで躍進できるかは、学会票の結集力と無党派層の支持を獲得できるかにかかっています。合流効果で2桁以上の上積みが実現すれば政権交代も視野に入りますが、逆に伸び悩めば野党再編は失敗に終わりかねません。選挙戦終盤まで、この新党の勢いに各方面が注目することになるでしょう。
主要争点別の対立軸:何が論点となるか?
今回の総選挙では、経済から安全保障、政治改革まで幅広い争点が論じられています。その中でも特に有権者の関心が高いテーマと、各陣営のスタンス・対立軸を整理します。
1. 物価高・消費税・経済政策
歴史的な円安とエネルギー価格高騰に伴う物価高が、最大の生活課題となっています。高市政権は「物価高対策最優先」を掲げ、今年度補正予算でガソリン・電気料金の負担軽減策や低所得世帯への給付金などを講じました。さらに、来年度予算案でも子育て世帯支援の強化や賃上げ促進策を盛り込んでいます。高市首相は「強い経済なくして国民生活の安定なし」として、企業の設備投資減税や規制改革など成長戦略にも意欲を示しています。政権与党の経済路線は基本的にアベノミクス路線を継承しつつ、物価高に対応するため家計支援策を機動的に行う姿勢です。
これに対し、新党「中道改革連合」を含む野党側は「生活優先の経済政策」を前面に出しています。最大の目玉が前述した消費税の軽減・減税です。中道改革連合は「食料品の消費税を恒久的に0%」にすると公約し、必需品の税負担をなくすことで可処分所得を押し上げ、消費喚起と家計支援を両立させようと訴えます。同時に、「ジャパン・ファンド」で財源を確保しつつ“令和版所得倍増”を目指すとも述べています。さらに最低賃金引き上げや中小企業支援策を通じ、賃金の底上げを図る考えです。「まずは消費税減税で物価高から国民を守る」という野党側と、「将来的な減税も否定しないが財源と成長策の両立が必要」と慎重な与党側でスタンスが分かれています。なお、野党でも日本共産党やれいわ新選組は消費税5%への減税や廃止を主張しており、減税の幅については違いがあります。
2. 社会保障と少子高齢化対策
超高齢社会・少子化問題も引き続き大きな論点です。高市政権は前任の石破政権からの流れで「異次元の少子化対策」を推進中です。具体的には児童手当の拡充(所得制限撤廃・高校生まで対象拡大)、不妊治療支援拡大や育休取得促進などを進めています。また年金制度では、将来的な支給水準確保のため「在職老齢年金制度の見直し」や「70歳超雇用の促進」などを検討しています。医療・介護分野では給付と負担の見直し(高所得高齢者の負担増など)も課題です。政府与党は全世代型社会保障改革として世代間の公平と持続可能性を追求する立場です。
中道改革連合も「現役世代も安心できる新たな社会保障モデル」として少子化・高齢化に挑む姿勢です。公明党は元来「子育て支援の公明」と言われるほどこの分野に力を入れており、野党側に回ってもより踏み込んだ少子化対策を提案しています。例えば給付型奨学金の大幅拡充や教育無償化の段階的実施、介護職員の処遇改善強化などが検討されています。また「ベーシックサービスの充実」として、最低限の医療・介護・保育サービスを国が保証する仕組みづくりも議論しています。年金については低年金者への加算強化や、物価高騰に対応した臨時給付金などを提案しています。要は「将来不安を減らし、安心して子育てできる社会」を掲げており、与党の現状維持的改革 vs 野党の積極投資・支援という構図です。ただ、財源論になると野党案にも課題が残り、与党側は「財源なきバラマキ合戦」と批判しています。
3. 防衛・安全保障政策と憲法改正
安全保障は今回も主要争点の一つです。高市首相はかねてより安全保障に強硬姿勢で知られ、防衛費の対GDP比2%以上への増額や、敵基地攻撃能力の保有(「反撃能力」)を支持してきました。岸田前政権が策定した安保関連3文書(国家安保戦略等)を引き継ぎ、中国や北朝鮮を念頭に抑止力強化を進めています。実際、昨年末に防衛費は史上最大の約7兆円規模となり、長射程ミサイルの整備や島嶼防衛力の増強が図られました。高市政権はこれをさらに推し進め、「攻めの防衛」とも言える積極的防衛政策を掲げます。また、悲願の憲法改正についても極めて前向きで、自民党総裁として「次の国会で改正案の発議を目指す」と公言しています。自衛隊の存在を明記する9条改正や緊急事態条項の創設などが論点で、与党(自民・維新・国民民主)は改憲勢力として2/3の発議要件確保を目標にしています。
一方、中道改革連合は安保・防衛で「現実的対応」と「平和主義」のバランスを取ろうとしています。綱領では「平和を守り抜くことが中道の使命」と強調し、非核三原則の堅持や防衛政策での合意形成を掲げました。公明党は元来平和主義を旨としつつも、自民との連立で安保法制に一定の責任を負ってきました。そのため安保法制(集団的自衛権容認)自体は追認し、「存立危機事態での自衛隊の活動は合憲」と明記しています。ただし、防衛費増額には慎重で、「政府系ファンドで財源捻出を」と述べるなど、増税による防衛費確保には否定的です。また敵基地攻撃能力についても、公明・立民ともに「専守防衛の範囲で慎重に議論すべき」との立場で一致します。つまり新党は抑制的現実路線です。憲法改正に関しては、立民の中には護憲派もいますが、党代表の野田氏自身は改憲論議に前向きです。新党合意では「責任ある改憲論議の深化」を盛り込み、改正そのものを否定していません。ただ、具体的な改正項目については党内で温度差があるため、選挙中は「まずは国会で徹底議論」と訴えるに留めています。与党が急ぐ9条改正について野田氏は「まず統制権密約など解明することが先決」と述べるなど慎重姿勢で、改憲の時期や優先度で隔たりがあります。
4. 「政治とカネ」・ガバナンス改革
高市政権発足前後から取り沙汰された政治とカネの問題も争点です。具体的には、前政権下の官房機密費(内閣官房報償費)の不透明支出疑惑や、与党議員による選挙買収事件の余波などがありました。高市首相は就任直後に「政治とカネに厳しい姿勢で臨む」と宣言し、自身の資金管理団体の収支をネット公開するなど透明化に努めています。しかし、野党側は「高市政権も自民党政権の一部」であり、過去の問題の説明責任が果たされていないと批判します。特に立憲民主党は旧統一教会問題や閣僚スキャンダルなどを引き合いに、政権のモラルハザードを追及しています。
中道改革連合は綱領で「不断の政治改革」を掲げ、企業・団体献金の受け手制限など具体策を明示しました。これは「企業献金禁止」に近いニュアンスで、利害関係企業から政治家への献金禁止や上限設定を目指す内容とみられます。また政党支部経由の迂回献金や、政治資金パーティーの在り方についても議論するとしています。加えて、公明党が主張してきた「政権交代時の政権引継ぎルール確立」や「行政文書管理の厳格化」などガバナンス改革も含め、クリーンな政治を前面に押し出しています。与党もこれに対抗し、例えば自民党は最近「政治資金のインターネット公開義務化」に言及するなどクリーンアピールを強めています。ただ、有権者の目には新党は長年与党だった公明党を含むことから「急に野党ぶっても信用できるか」という懸念もあり、どこまで説得力を持てるかがカギです。
5. その他の争点
この他、外交では対中国政策、エネルギーでは原発再稼働の是非、教育政策では学費負担軽減やLGBT理解増進法なども論点です。
- 対中外交: 高市政権は中国に対し毅然とした態度を貫き、台湾問題でも防衛力強化を主張しています。野党側も中国の人権問題等には一定の批判姿勢ですが、対話や経済関係の維持も重視し「剣だけでなく盾も」がスタンスです。例えば対中制裁と対話の両立、中国依存経済からの脱却などで方向性の違いはなく、大きな対立点とはなっていません。
- 原発・エネルギー: 高市政権は岸田前政権のGX(グリーントランスフォーメーション)方針を継承し、原発の再稼働・新増設も視野に入れています。一方、新党は「将来的に原発依存しない社会を目指す」としつつ、安全確認された原発の再稼働は容認する現実路線です。再エネ推進は双方共通するものの、新増設(次世代革新炉)は新党側は消極的でしょう。
- 教育・ジェンダー: 子育て支援は双方重視ですが、同性婚や選択的夫婦別姓といったジェンダー政策では差があります。高市政権・自民党は保守派の反対もあり慎重で、LGBT理解増進法も限定的内容でした。対して新党側(特に立民)はより積極的に多様性推進を掲げます。ただ、公明党内にも保守的意見があるため、新党として具体的公約にどこまで盛り込むか調整中です。
以上のように、主要争点で与野党の立場の違いが明確になっています。総じて高市政権・与党は「強い経済・強い国家」を前面に出しつつ現実路線を進め、野党新党は「生活者ファースト・中道」を掲げて対抗する構図です。有権者にとっても、経済優先か生活優先か、安定か変革かといった選択肢が提示された選挙と言えるでしょう。
世論調査動向:主要調査の比較と読み解き
選挙戦の情勢を占う上で最新の世論調査は欠かせません。高市内閣の支持率や政党支持率が各社調査でどうなっているか、ここで比較表を使って整理します。
〈内閣支持率:主な世論調査の比較(直近調査)〉
| 調査機関(調査日・方法) | 支持率 | 不支持率 | 備考・特徴 |
|---|---|---|---|
| NHK世論調査(2026年1月中旬、RDD電話) | 62% | 21% | 発足3か月で支持6割台。固定・携帯電話併用調査。 |
| JNN<TBS>(2026/1/10-11、RDD電話) | 78.1% | 18.6% | 前月比+2.3ポイント上昇、歴代2位の高支持。与党支持層中心に高め。 |
| 読売新聞・NNN(2026/1/19-21、電話) | 73% | (不明) | 前月から横ばいの73%。不支持詳細不明だが2割前後か。 |
| 時事通信(2026/1/9-12、個別面接) | 61.0% | 15.1% | 前月比+1.1pt微増。面接方式で回答「どちらでもない」多め。不支持低め。 |
| 共同通信(※参考:2025/12/20-21、電話) | 67.5% | 20.4% | (12月)電話調査。1月調査未公表時点。 |
| 産経・FNN(※参考:2025/12/20-21、電話) | 75.9% | 18.9% | (12月)保守層中心、支持率高め。 |
※RDD電話…固定・携帯への無作為電話、面接…対面聴取。調査手法により数値傾向に違いがあります。
こうして見ると、高市内閣の支持率はいずれの調査でも60~70%以上と極めて高く、不支持率はおおむね15~20%台と低水準です。特にJNN(TBS)の78.1%という値は2001年以降の歴代内閣でも2番目の高さで、「有権者の期待」を反映していると報じられました。一方でNHKや時事のように手法によっては支持6割程度となるケースもあり、調査によって若干差はあるものの「高支持・低不支持」の傾向は共通しています。
高い支持率の背景としては既に触れたように、高市首相のリーダーシップ評価や女性初の首相による新鮮さ、野党に決め手がない状況などが指摘できます。また、与党内に目立った批判勢力がなく政権運営が安定していることもプラスに働いています。無党派層や他党支持層の一部も高市内閣を支持しているとみられますが、その層が実際の投票で与党候補に票を投じるかは別問題です。言い換えれば、高市人気が「投票先支持」にどこまで直結するかが与党の課題となります。
では政党支持率はどうでしょうか。新党が結成されたことで各社調査の選択肢も変化し、比較が難しい面がありますが、分かる範囲で主要政党の支持率を列挙します。
- 自民党:20~30%台半ばで首位。時事1月では22.5%、FNN12月で28.5%、JNN12月で31.4%(参考)など、おおむね3割弱~3割台にあります。NHKは支持政党なし含めて集計する関係でやや高めに出る傾向です(前回NHK12月は自民42.1%でしたが無回答除く方式か)。概ね自民支持層は有権者の1/4~1/3程度と考えられます。公示時点でトップですが、絶対的ではありません。
- 新党「中道改革連合」:結成直後のため各社で扱いが異なりますが、選挙ドットコム/JXの1月電話調査では自民党に次ぐ支持率となりました。具体数は非公開ながら、自民が約30%、新党がそれに次ぐ2位(15~20%前後か)、他党は10%未満に留まった模様です。一方、時事通信の調査(公明・立民別枠のまま実施)では立民4.2%+公明2.5%=合算6.7%程度でした。この差は調査手法や新党周知度の違いによるものとみられます。電話調査では名称周知が進み支持を集めつつあるものの、依然「政党支持なし」が多い中での2番手です。新党支持層は旧立民・公明支持層に加え、無党派の一部も取り込んでいる可能性があります。
- 日本維新の会:直近では5~10%前後で推移。時事1月2.3%(低め)、他方FNN12月では9.7%(自民に次ぐ2位)とのデータもあります。維新支持率は調査により振れ幅が大きく、電話調査では5~8%、ネット調査では二桁に達する場合もあるようです。ただ、総じて新党結成後は維新支持は微減傾向との指摘があります。中道新党に一部支持を奪われているのか、あるいは与党化したことで反体制票が離れた可能性も考えられます。
- 国民民主党:支持率は2~5%程度。時事1月3.6%、選挙ドットコム電話では微増傾向。昨年夏の参院選で議席を増やしたこともあり、一定の保守中道層を固めています。ただ新党に埋没する懸念もあり、代表の玉木雄一郎氏は独自路線を強調しています。
- 共産党・れいわ・社民など:共産党は1~3%(時事1.1%)、れいわも1%前後、社民はほぼ0~0.5%未満と厳しい数字です。これら左派野党は新党に組しないため、支持率的には停滞しています。共産党は昨秋の党大会で立民との共闘路線を柔軟化するとしたものの、今回新党側から明示的な協力要請はなく、独自候補擁立を進めています。野党票分散という従来の構図は完全には解消されていません。
- その他(参政党、日本保守党など):右派系の参政党はここ1年で台頭し時事1月3.4%と侮れない支持があります。ネット世論に強く、新党結成後に支持をやや伸ばしています。また元作家の百田尚樹氏らが率いる日本保守党(新党)は1%前後の支持(時事1.1%)。保守層の一部が流れています。こうした新興右派は自民・維新右側の受け皿となっており、選挙比例で議席獲得を狙います。
以上を踏まえると、政党支持では自民党が一強ですが、「支持政党なし」が依然として有権者最大勢力です(時事調査では無党派55.2%にも達します)。また、新党中道がどこまで浸透するかで野党勢力図が変わります。公示直前の1月中旬のNHK報道によれば、「無党派層の動向が勝敗を左右する」とされ、高市政権の高支持を背景に「無党派層の自民回帰の兆し」が指摘される一方、無党派の中には新党に期待する層も一定存在します。特に女性や都市住民で生活重視の無党派層は新党支持に回る可能性があり、逆に若年層の一部には高市首相への期待から与党支持に傾く動きもあるとされています。
比例代表の投票先についての世論も見てみます。選挙直前の調査(選挙ドットコム・JX電話,1月17-18日)では、比例投票先のトップは自民党でしたが前月よりやや減少し、2位に中道改革連合が浮上しました。維新や参政党など与党系政党は軒並み微減し、逆に国民民主、れいわ、共産、社民といった野党勢力は微増傾向だったとの分析です。これは新党結成報道で野党側支持層が活気づいた可能性があります。電話調査に限れば「自民 vs 新党」の対決軸が比例でも意識され始めていると言えるでしょう。ただ、ネット調査を含めた総合結果では自民優位は揺らいでいないとの見方もあり、情勢は流動的です。
まとめると、内閣支持率の高さは与党に追い風ですが、政党支持の構図は一変しています。選挙序盤の情勢報道では「与党優位」と伝える向きもありますが、公明票流出により一部では与党劣勢の接戦区が増えています。世論調査データを鵜呑みにせず、各小選挙区ごとの情勢に注意が必要でしょう。最後の頼みは無党派層の動向であり、各陣営とも終盤戦で争点を際立たせて浮動票の取り込みを図る構えです。
勝敗を分けるポイント:接戦構造・無党派層・短期決戦の影響
今回の衆院選は、与党・野党それぞれに勝敗のカギとなる要因があります。どのようなポイントが結果を左右するのか、主要な視点を挙げてみます。
① 小選挙区の接戦構造:僅差区の行方
小選挙区289のうち、約3~4割は前回(2024年)選挙で1万票差以内の僅差でした。こうした接戦区ではわずか数ポイントの票の動きで勝敗が入れ替わります。最大の変化要因は前述の創価学会票の動向です。公明党票は一つの選挙区で数千~数万に及ぶため、これが自民候補から新党候補へ移れば逆転勝利が起きやすくなります。例えば首都圏や東海の都市部で、自民候補が1~2ポイント差で勝っていた選挙区は軒並み危険圏となります。また野党候補同士の一本化も大きな要因です。これまで立民・国民・共産など複数候補が乱立し自民を利していた構図が、新党結成でかなり整理されました。結果、従来「自民30%、反自民40%、その他30%」のように反自民票が割れていた選挙区で、新党候補が反自民票の大半をまとめると勝利可能性が高まります。自民党はこうした接戦区に重点的にテコ入れし、閣僚クラスを応援に投入するなど組織戦を強化しています。逆に新党側は「野党共闘」が及ばない地域(共産党との調整がない選挙区など)では依然票割れが起き、自民が漁夫の利を得る展開もありえます。一対一の構図をいかに多く作れるかが、新党側の課題です。
② 無党派層・浮動票の動き
無党派層(支持政党なし層)は有権者の4~5割に上り、選挙ごとに投票行動を変える浮動票層です。彼らの投票先如何で全体の勢力図は大きく変動します。一般に無党派層は政権批判票に回りやすいとされますが、今回に関しては高市首相個人の人気もあり、無党派の一部が与党支持に回る可能性があります。特に若年層の無党派に首相支持が高い傾向が報じられており、「女性首相への期待」や「強いリーダーシップへの憧れ」がプラスに働いているようです。ただ、無党派層全体で見れば生活重視・政権批判の志向が強い層も多く、新党が掲げる消費税0%など具体的な生活支援策は響きやすいと考えられます。世論調査では無党派層の投票先はまだ定まっておらず、比例投票先では「決めていない」が多数です。この層の最後の判断材料となるのは、「どの党・候補が自分たちの暮らしを良くしてくれそうか」という実利的な視点でしょう。与党は「実績と安定」、野党新党は「変化と生活第一」をアピールし、この浮動票争奪戦に挑んでいます。
③ 都市部 vs 地方:構造的な票の傾向
自民党は従来、地方や郡部で強く、野党は都市部に強い傾向があります。今回もその構図は踏襲されそうです。地方の小選挙区では依然として自民党優位の選挙区が多く残っています。地元基盤の強い自民現職に対し、新党側は新人や知名度の低い候補では歯が立たないケースもあり、反自民票をまとめても届かない地域が存在します。一方、大都市圏・政令市では従来から野党(立民)が議席を多く獲得しており、今回そこに公明票ブーストが加わればさらなる議席増も見込めます。例えば東京都では前回立民が小選挙区24区中14勝と健闘しましたが、今回は「+公明票」で20議席近く狙えるとの見方もあります。大阪府では維新が強いものの、自民が弱体化しており、新党がどこまで肉薄できるか注目されます(維新対新党の構図も一部であり)。いわゆる“1人区”(1県1選挙区の地方県など)では、オール与党vsオール野党の対決になりやすく、野党共闘次第では自民王国崩しもあり得ます。例えば東北・北陸の一部では立民と国民民主が候補調整を行っており、そこに公明票が乗れば僅差で自民を破る可能性もあります。ただ、区割り変更(10増10減で都市部増・地方減)が前回実施済みとはいえ、依然一票の格差は残るため地方票の重みは大きく、自民党は地方での議席死守に力を入れています。
④ 日本維新の会と第三極の影響
維新は与党(信任勢力)でありながら独自候補を多数立てており、与党票の分散を招きます。特に関西地区では、自民vs維新の構図が激しく、新党候補が入り込む余地が限られる選挙区もあります。維新の吉村代表は「自民との選挙協力は不要」と明言し、各地で候補者調整なしに戦っています。このため、本来なら与党票が結集すれば勝てる選挙区でも、自民と維新が競り合って共倒れ的に票を食い合うと、相対的に野党新党に漁夫の利を与えかねません。逆に維新が強い地域(大阪など)では自民と新党が争っている隙に維新が勝ち抜ける可能性もあります。つまり三極の乱戦となる選挙区では三つ巴の勝負勘が必要で、過去の票読み通りにいかないケースが増えます。また維新と手を組まない国民民主党も独自に20~30人規模で候補擁立しており、主に地方で中道保守票の受け皿となっています。玉木代表は「中道改革連合にも与党にも属さない第三の選択肢を示す」としていますが、得票規模的には新党に埋没する可能性もあります。この第三極勢力(維新・国民・参政など)の戦い方が、与野党どちらに有利に働くかは読みづらく、各陣営とも戦略に悩むところです。
⑤ 短期決戦と組織戦の巧拙
16日間という短期決戦では、強固な組織を持つ陣営が有利とされています。従来であれば創価学会組織を有する自公が圧倒的に強かったのですが、今回はその学会組織が真っ二つに割れて戦う構図です。創価学会の組織力は言うまでもなく国内最強クラスで、期日前投票の奨励や当日動員など徹底した選挙活動を展開します。新党側(公明系)にとって、この組織力は頼みの綱であり、短期でも抜群の集票力を発揮するでしょう。一方で自民党も長年公明頼みで手薄だった地域組織を急いで補強する必要に迫られています。特に東京・大阪などでは自民候補が「学会票ゼロ」で戦うのは初めてで、陣営は戸惑いを隠せません。後援会や業界団体をフル動員し、SNSや電話作戦も総駆使して票固めに努めています。短期間で効果を上げるには、候補者本人の発信力と支持者ネットワークも重要です。高市首相や人気閣僚は全国遊説で応援に入り支持を訴えますが、一人当たり回れる選挙区には限りがあります。組織戦ではなく空中戦(メディア・ネット戦)では、高市首相の露出度が与党にプラスに働ちるでしょう。野党側も野田・斉藤両代表や各党論客がメディア露出を増やし、「政権交代の意義」を訴えています。短期決戦では最後の数日で急に世論が動くこともあり、終盤情勢の急変にも注意が必要です。
⑥ 投票率とモチベーション
投票率の高低も勝敗を分けます。一般に投票率が下がると組織票を持つ政党が有利、上がると無党派票が増え野党有利とされます。今回はコロナ禍ではないものの冬場の選挙で天候等の要因もあり、投票率見通しは読みづらいです。ただ、女性首相誕生や公明分裂など話題性があり、有権者の関心は比較的高いとの指摘もあります。もし前回(2024年)の投票率58.8%を上回り60%台に乗せるようだと、野党新党への追い風になっている可能性が高いでしょう。逆に50%台前半に留まれば与党組織票が物を言い、自民が有利と見られます。期日前投票の動向や出口調査の速報などが、当日までに注目すべきポイントです。
これらのポイントに加え、「最後の情勢を左右する出来事」にも留意が必要です。過去の例では、党首討論会での発言ミスや不祥事の発覚、外交・安全保障上の緊急事態(北朝鮮ミサイル発射など)が終盤情勢に影響を与えたケースがあります。今回も選挙終盤で例えば閣僚の不適切発言や与野党候補の失言があれば瞬時に広まり、支持離れを招くかもしれません。また、高市首相の選挙区(奈良2区)や野田代表の選挙区(千葉4区)など要人同士の直接対決区も注目で、そこに全国の運動量が集中することもあります。接戦区の行方、無党派層の最終判断、組織票の死票化——こうした点を注視しながら開票日を迎える必要があるでしょう。
議席予測:シナリオ別レンジとその根拠
いよいよ今回衆院選の議席予測です。ただし選挙は水物であり、確定的な数字を断言することはできません。そこで本稿では、複数のシナリオに分けてレンジ(幅)で議席予測を提示します。与党(自民党+協力勢力)、新党「中道改革連合」、その他主要政党の議席数がどう動くか、それぞれベース・上振れ・下振れの3ケースを想定します。その上で、各シナリオの根拠と、現実にそうなるための条件・不確実性について解説します。
● シナリオA:ベースケース(現状維持シナリオ)
≪概算議席:与党系 240 ±10議席(自民約210前後+維新30前後)、中道改革連合 150 ±10議席、その他野党 70前後≫
ベースケースは、世論調査通りの勢力図に大きな狂いがなく推移した場合です。高市政権の高い支持率が選挙戦でも維持され、与党支持層と一部無党派層が安定的に自民・維新候補に投票すると想定します。一方、新党も一定の躍進は果たすものの、自民党の議席を根こそぎ奪うほどには至らず、両陣営痛み分け的な結果となるシナリオです。
この場合、自民党は単独過半数(233)には届かないまでも230議席前後を確保し、維新の30~35議席と合わせて与党系で245~265議席程度の過半数を占める見込みです。公明党が抜けた影響で自民党の小選挙区議席は減るものの(現有約196→210程度に回復)、比例区では政権支持層の結集で議席を上積みしトータルでは微増~横ばいとします。維新は前回38議席でしたが、野党共闘の前に関西圏で議席をやや失う一方、地方で自民党に次ぐ第二勢力として比例票を集め、現状維持の30台に踏みとどまると見ます。結果、与党系全体では公示前勢力(自民196+維新34+無所属与党系など)と大差ない240台となり、引き続き与党多数・高市政権継続の流れです。
中道改革連合は、小選挙区で旧立民議員の地力や公明票により大幅議席増を達成するものの、単独での政権奪取には至らない想定です。具体的には、立民+公明の合計現有172議席が約150議席前後に減少します。小選挙区では善戦しても比例では自民に次ぐ第2党に留まり、旧立民分の比例議席が減る可能性があります。また、合流に不満の立民残留組や公明離反組の離脱で数議席を失うことも考慮しました。最大野党としては存在感十分ですが、自民党との差はなお数十議席残し、政権交代には一歩届かずというシナリオです。
その他野党では、国民民主党が20~30議席(現有27から微増か横ばい)、日本共産党は10議席前後(現有8から微増)と予想。国民は保守中間層の一部を取り込み、一部選挙区で新党候補にも競り勝つ展開を想定しています。共産党は立民と距離を置いた独自路線で、比例票を一定維持し小選挙区でも1~2議席を獲得と読みました。れいわ新選組・社民党などは合計で数議席(5~8議席)程度でしょう。参政党・日本保守党など新興右派も比例ブロック次第では1~3議席得る可能性がありますが、全体に与える影響は小さい範囲です。
このベースシナリオの前提は、世論調査の趨勢が選挙結果にも素直に反映されることです。高市内閣支持率の高さがそのまま与党候補への支持につながり、また新党効果も限定的で公明票の移動が思ったほど起きないケースです。例えば創価学会員の相当数が自主的に自民候補支持に留まったり棄権したりした場合、野党は期待ほど票を伸ばせません。また、無党派層が直前で「安定志向」に傾き与党に流れた場合もこのシナリオに近づきます。
シナリオAでは、高市政権は引き続き政権を維持します。ただし自民党単独では過半数にわずかに届かないため、維新との連立 or 協力が引き続き必要になります。高市首相は選挙後、維新との連立政権合意を改めて締結し、国会運営を安定させると予想されます(維新は入閣せず閣外協力維持の可能性も)。野党側は新党が野党第一党となり、立憲民主党と公明党という別々の歴史を持つ勢力同士での政権挑戦は一旦失敗する形です。しかし中道改革連合が150議席規模を確保したことは、日本の野党勢力地図を書き換えたことになり、「保守対中道」の二大勢力構図が出来上がることになります。野田共同代表は「健全な保守二大政党制の確立」を掲げており、この結果はその第一歩といえるでしょう。
● シナリオB:与党上振れケース(与党圧勝シナリオ)
≪概算議席:与党系 280 ±10議席(自民約240+維新40前後)、中道改革連合 120 ±10議席、その他野党 60弱≫
こちらは、選挙戦が与党に有利に働き与党系が議席を大幅に伸ばすシナリオです。高市政権の人気が最後まで高止まりし、無党派層や公明支持層の一部まで巻き込んで自民党が想定以上の勝利を収める展開です。自民党内でささやかれていた極秘情勢予測では「自民199→260議席に増」といった噂もありましたが、まさにそれに近い圧勝パターンとなります。
この場合、自民党は単独で260議席前後を獲得し、絶対安定多数(261)に迫る勢いとなります。小選挙区では野党共闘を跳ね返し、多くの接戦区で競り勝つと想定します。例えば公明票流出にも関わらず、無党派票を幅広く取り込み都市部でも善戦する形です。比例区でも内閣支持効果で自民票が伸び、結果として前回選挙の議席(191→)を大きく上回る躍進を見せます。維新も関西以外で議席を伸ばし、40議席規模に増えると見ます。維新は関西では自民に押されても、代わりに全国で保守票を集め比例議席を増やす可能性があります。合計で与党系は280議席台、全体の3分の2に迫る勢力となり、高市政権に極めて安定した基盤がもたらされます。
対照的に、中道改革連合の躍進は限定的に終わります。想定としては120議席前後、下手をすると合流前(立民148+公明24=172議席)の合計から大幅減もあり得ます。小選挙区で期待した公明票上積みが奏功せず、多くの選挙区で競り負けるシナリオです。例えば創価学会員の相当数が新党候補ではなく自民候補に投票したり、野党支持層が思ったほど結集しなかった場合が該当します。比例でも「反自民票」が分散し、中道改革連合としての得票が伸び悩むことが考えられます。無党派層が与党に靡いたり、「野合」批判で支持層がしらけて棄権するなどの要因です。この結果、新党は旧立民の議席すら維持できず、公明党も議席減となり、「合流の失敗」との評価が下されるでしょう。
その他野党では、国民民主が与党寄り層から支持を得て健闘(30議席規模)、共産党は逆風で微減(5~6議席)というイメージです。参政党など右派ミニ政党も比例で票を伸ばし、いくつか議席を獲得するかもしれません。これらの議席増は主に新党の想定支持層を奪う形で起こるため、新党に対する野党票の拡散が起きたシナリオとも言えます。
この与党圧勝シナリオの要因として考えられるのは、「やはり政権は任せられない」との世論判断です。新党に期待する声もあったものの、「立民と公明の組み合わせに違和感を覚える有権者が多かった」「争点が与党有利な安全保障や外交にシフトした」「選挙期間中に新党側の失言・不祥事が出て失速した」等がきっかけになりえます。特に終盤にかけて外交危機が起きたりすれば、有権者は安定志向で与党支持に回るでしょう。実際、日経の調査では有権者の約55%が高市政権継続を望む結果もあり、政権交代への慎重論は根強い可能性があります。
シナリオBが現実化した場合、高市政権はまさに盤石となります。自民党単独でも過半数、大勝なら絶対安定多数(委員長ポスト独占)を得て、立法も思いのままです。維新は引き続き協力関係を維持しつつも、もはや連立にこだわらず是々非々で臨むかもしれません。一方、新党「中道改革連合」は大きく議席を減らした責任を問い、野田代表や斉藤代表の進退問題に発展するでしょう。野党勢力は再び離合集散に陥る恐れもあります。もしかすると公明党と立憲民主党がそれぞれ党を再建する動きや、一部議員の与党合流(公明系議員が自民に接近 etc.)の可能性もゼロではありません。つまり圧勝シナリオでは野党側は大混乱・分裂に見舞われるでしょう。高市首相は悲願の憲法改正に向け、強い発議勢力を背景に一気に動き出すとみられます。仮に衆参両院で改憲発議に必要な2/3を与党勢力が占めれば、一気に国民投票への道筋がつくでしょう。これは戦後政治の大転換点となります。
● シナリオC:与党下振れ・波乱ケース(政権交代シナリオ)
≪概算議席:与党系 200 ±10議席(自民約170+維新30前後)、中道改革連合 180 ±10議席、その他野党 80前後≫
最後は、与党が大幅に議席を減らし過半数割れ、野党勢力が逆転勝利に迫るシナリオです。いわゆる「政権交代」に現実味が帯びるケースで、高市政権に対する批判票が終盤で一気に野党側へ流れ、新党効果が最大限発揮された場合と想定されます。
この場合、自民党は歴史的敗北を喫し、170議席程度に留まります。小選挙区では野党統一候補に次々敗北し、比例復活もままならない展開です。公明票を失った都市部選挙区で軒並み敗れ、地方でも国民民主や無所属保守勢力の挑戦で議席を落とすなど、全方位で苦戦します。前回2024年選で石破首相の下過半数割れとなった悪夢が再び起こり、議席数では結党以来最低に迫る数字となる可能性もあります(自民単独で過半数233に大きく届かず)。日本維新の会も与党陣営として逆風を受け、伸ばすどころか30議席前後に留まるか微減とします。維新は関西の牙城を新党に崩され、自民から借りていた票も戻らず苦戦するでしょう。結果、与党系合計でも200議席前後にとどまり、野党勢力に議席数で逆転される事態が起こります。
一方、中道改革連合は大躍進し、単独で180議席規模を獲得すると予測します。これは旧民主党が2009年に獲得した議席(308議席)には及ばないものの、少なくとも自民党とほぼ同水準かそれ以上となり、第1党になるシナリオです。小選挙区では先述の時事試算通り139議席前後を制し、比例でも自民党に迫る票を獲得するとします。特に首都圏・中京圏・関西圏などで一人区含め軒並み議席を奪取し、北は北海道から南は九州まで全国で幅広く議席を増やす計算です。合流前の立民148+公明24=172議席を上回り、さらに国民民主党(旧民進系)からも合流が進めば、非自民勢力が一挙に多数派となる状況です。
その他野党では、国民民主党が存続していれば数議席~十数議席を維持(あるいは健闘)し、共産党・れいわなど左派は野党共闘の裏で候補を絞られ減少、全体では非与党勢力が合計で250議席近くに達する計算です。つまり、この下振れシナリオでは与党が過半数(233)を割り込み、野党側が初めて過半数獲得に手が届く状態となります。
この波乱シナリオが起きるには、いくつかの条件が重なる必要があります。まず、新党の選挙協力が100%機能し、創価学会票がほぼ全て新党候補に流れること。加えて共産党や他の野党勢力も多くの選挙区で候補を立てず新党を事実上支援するなど、野党票の極限の結集が必要です。さらに、高市政権側に何らかの致命的な失策・スキャンダルが終盤で噴出することも考えられます。例えば大臣の不祥事発覚や首相自身の不適切発言、または経済的ショック(株価急落や大型倒産)などです。極端な話、選挙戦最中に首相や閣僚が失言し野党攻勢に晒されたり、「選挙買収疑惑」などが持ち上がれば一気に支持離れが進むでしょう。また、投票率が大幅上昇(70%近く)して若者や無党派が大量投票するような局面も野党有利に働きます。過去、2009年の政権交代時は投票率が69.3%と高く、無党派層の8割近くが民主党に投票したと言われます。同様の空気が醸成され、「高市政権に一度お灸を据える」ムードが広がれば、このシナリオは現実味を帯びます。
シナリオCになった場合、選挙後の政局は大混乱です。自民党は大敗の責任を取り高市総裁が辞任する可能性が高くなります。与党は衆院で過半数を失ったため、高市首相は首班指名で敗北し退陣を余儀なくされるでしょう。では次の首相は誰か——鍵を握るのは野党新党と維新、そして国民民主の動向です。中道改革連合が第1党になれば、野田佳彦共同代表(元首相)の首班指名を野党側で擁立することになります。既に斉藤公明代表は「衆院選後は野田佳彦氏を首相に」と発言しており、新党内は野田政権樹立で一致するでしょう。しかし、中道改革連合単独では過半数にやや足りない可能性があり、その場合維新や国民民主との連立交渉が必要です。維新は理念の違う立民系との連立に難色を示すかもしれませんが、ポスト獲得や政策合意次第では「反自民勢力」として協力しうる余地もあります。国民民主は中道連合との連携に前向きとみられます。最終的には、新党+国民+維新(の一部)+その他無所属で過半数を形成し「非自民連立政権」が誕生する可能性があります。かつての細川連立政権(1993年)の再現に近い形です。この際、首相は最大勢力の野田氏、維新から副総理に吉村氏、斉藤公明代表は入閣せず与党議員として政権支えるなどの形も考えられます。【ただ、維新内には自民との連立継続を望む声もあるため、維新が造反し高市首相続投に協力するケースもありえます。この場合、衆院で自民+維新+一部無所属で過半数を確保し、辛うじて高市続投というシナリオD的展開も想定されます。】しかし今回のシナリオCでは維新は中道連合に協力すると仮定しましょう。そうなれば、2012年以来約14年ぶりに非自民勢力が政権を握り、野田佳彦氏が2度目の首相就任となります。
この政権交代シナリオのもとでは、政策面でも大きな転換がありえます。まず消費税0%公約の実現に向けた動きが出るでしょう。外交・安保では高市路線から一転し対話重視・専守防衛路線に舵を切るかもしれません。もっとも、参議院では依然として自民・維新が一定勢力を保っているため、新政権はねじれ国会に直面します。法案成立には維新や自民の協力が必要となり、思うように政策を実現できない恐れもあります。また野党連立政権は多様なイデオロギー混合のため内部亀裂も生じやすく、政権の安定性は未知数です。次の参院選(2028年)まで持たず、短命政権に終わる可能性もあります。それでも、政権交代が起これば日本政治は新たな局面を迎え、「自民一強時代の終焉」として歴史に刻まれるでしょう。
以上、3つのシナリオを描きましたが、現時点の情勢はこの中間に位置すると言えます。専門家の多くはベースケース寄りを予想していますが、不確実性は依然高い状況です。選挙戦は生き物であり、一瞬のムード変化でシナリオBやCに振れる可能性も排除できません。過去の一般的傾向では、有権者は「強すぎる政権」に対してある程度揺り戻しを起こす傾向があります。高市政権があまりに高支持率のままだと、逆に投票行動では「少し勢力を削ってバランスを取ろう」と考える層も出るかもしれません。逆に解散直前まで自民党が議席をかなり失うとの観測が出れば、危機感から自民支持層が奮起して巻き返すこともあります。事実、匿名のネット上には自民党調査と称する極端な議席減予測が流れ(「自民199→260、立民148→70」等と逆の数字のような情報)、与党支持層の結束を促す意図もうかがえます。こうした情報戦も踏まえ、我々有権者は最後まで冷静に情勢を見極めていく必要があるでしょう。
選挙後の政局シナリオ:与党過半数維持か、新たな連立模索か
選挙が終わった後、国政はどう動くのか—「選挙後の政局」についても展望しておきます。上記議席予測シナリオごとに触れましたが、ポイントを整理します。
● 与党過半数維持の場合(シナリオA/B):
この場合は高市早苗首相が続投し、第2次高市内閣が発足する見込みです。自民党内の基盤も盤石となり、高市氏は党総裁任期(2028年まで)に向け長期政権を目指すでしょう。連立・協力関係としては、現在の日本維新の会との協力が継続される可能性が高いです。特に自民単独過半数に満たないケースでは、維新や場合によっては国民民主党を加えた「3党連立」の模索も考えられます。国民民主は玉木代表が「政策実現のためなら与党入りも排除しない」としており、与党が過半数割れに近い状況ならキャスティングボートを握り得ます。現に玉木氏は高市首相の解散直前に極秘会談したとも噂され、連立打診があった可能性があります(双方否定)。
公明党は今回野党側に回ったため、選挙結果次第では政界再編の動きもありえます。仮に公明党系議員が新党で振るわず野党に甘んじた場合、公明党執行部への批判が強まり、再び自民党と接近する道を探るシナリオも想定できます。実際、自民党内には「いずれ公明と復縁する可能性は残すべき」との声もあるようです。ただ、すぐにとはいかず、しばらくは野党新党としての対応に追われるでしょう。高市首相としては、公明抜きでも法案処理に必要な数合わせができれば、安易な公明復帰は求めないと見られます。
与党が勝利した場合、直ちに取り組むべきは新年度予算の成立です。本予算案は3月末まで成立しなければなりませんが、選挙で遅れたため暫定予算でつなぐことも検討されています。選挙後、与党は早期に特別国会を招集し首班指名・内閣発足、直ちに通常国会を再開して予算審議という流れでしょう。高市首相は選挙公約実現のため、「4月には物価高対策の追加策を講じる」と述べており、補正予算編成も視野です。与党内最大の焦点は憲法改正です。高市首相は「来年2027年までに国民投票を実現したい」としており、与党過半数維持で弾みがつきます。ただし参院での改憲勢力2/3確保が難しい場合(維新を加えても届かないなど)は、当面9条改正は見送り、公明党を除く各党間での合意づくりに専念するでしょう。逆に大勝シナリオなら、2026年中にも改憲発議を目指す可能性があります。
人事面では、内閣改造・党役員人事が注目されます。高市政権継続時には、新たな公明党との関係を睨みつつ閣僚・役員配置を行うでしょう。公明出身議員の閣僚ポストは現状なくなっていますが、公明党が野党となった今、自民・維新だけで人事を組むことになります。場合によっては維新から閣僚を起用(例えば藤田文武幹事長を入閣など)するなど、異例の連立人事もありえます。一方、自民党内では今回の選挙結果を受けて派閥力学も変化します。高市派(無派閥含む)は勢力を伸ばすでしょうが、岸田前首相や石破前首相の影響力も残り、党内融和が課題です。選挙で埋没した保守強硬派(例えば「政調会長に安倍昭恵氏を」などの声もあったとか)はどう出るか、注目です。
● 与党過半数割れ・政権交代の場合(シナリオC):
この場合、非自民連立政権の組閣が焦点となります。既に触れたように、中道改革連合+維新+国民民主+その他無所属といった組み合わせで過半数を確保できるかどうかが第一です。最もスムーズなのは、新党+国民民主+社民・無所属中道で233超えするケースですが、現実にはあと数十議席足りないかもしれません。その場合は維新を巻き込む他なく、ここが最大の難関です。維新は政策的に自民との親和性が高く、「非自民政権」に入ることに党内反発も予想されます。しかし、維新もまた政権に一度は参画して改革を実行したい野心があります。妥協点としては、維新にとって悲願の統治機構改革(議員定数・歳費削減など)を新政権合意に盛り込み、実現を約束することです。また、大阪都構想への協力(来年W選実施予定)など地方政策で譲歩を引き出すことも考えられます。
首班指名では新党から野田佳彦氏が擁立されるでしょう。維新は独自候補を立てず野田氏に同調するか、または敢えて維新代表の吉村洋文氏に投票するかもしれません。しかし、維新が吉村氏に投票した場合、自民党+維新で票が割れて野田氏が相対過半数を得る可能性もあり(小渕内閣末期の羽田vs海部vs宮澤の三つ巴を想起)、結果として野田首相が誕生すると予想されます。
新政権では、野田佳彦首相の下で斉藤鉄夫公明代表が副総理、吉村維新代表が行政改革相または副首相級ポスト、玉木国民代表が経済財政相、といったオールスター内閣が組まれるかもしれません。公明党から正式参加するかは微妙ですが、閣外協力か党員資格のまま入閣もあり得ます。かつて細川連立政権では日本新党・新生党・公明・社民など8党派が参画しましたが、それに匹敵する大型連立となるでしょう。政策調整は困難を極めます。経済政策一つとっても維新は小さな政府志向、立民系は大きな政府志向で相容れない部分があります。そこで「最小公約数」として減税・行政改革・教育無償化・クリーン政治など合意しやすい項目を優先するのではないでしょうか。外交では野田氏が比較的現実派なので、日米同盟堅持や防衛費増凍結くらいに留め、大胆な方向転換は避けるかもしれません。ただ、高市政権の象徴的政策(例えば敵基地攻撃能力保持や原発新増設)などは凍結するでしょう。
鍵となる参議院では、野党連立は少数派です。2025年参院選で与党(当時自公)過半数割れとされましたが、それでも自民+維新+残留公明で過半数近くあるはずです。新政権は法案通過に苦労し、公明党参院や維新参院の協力を都度得ねばなりません。最悪の場合、参院で否決が続き衆参ねじれで機能不全になる懸念もあります。その場合、解散含めた政界再編も視野に入るでしょう。もっとも新政権発足直後に再解散は有権者に許されず、ある程度国民的人気策を打ち出して支持を固めたいところです。例えば消費税ゼロの緊急措置や内閣府特命チームで政治腐敗追及など、ウケの良い施策を次々出す可能性があります。
政権交代が起きると、自民党は野党に転落します。最大野党となった自民党は、新総裁選びに入ります。高市氏は恐らく責任を取り辞任(議員は続けるでしょうが)、ポスト高市として有力なのは石破茂前首相(党内基盤弱いが国民人気あり)や岸田文雄前首相(今回選挙不出馬でキングメーカー?)、あるいは若手エースの河野太郎氏・小野寺五典氏などでしょう。自民党は長期野党になる可能性は低く、各派閥が切磋琢磨して早期政権奪還を目指す動きが強まるはずです。連立解消していた公明党はどちらの陣営につくか曖昧ですが、政権に入った以上、中道改革連合に協力せざるを得ません。野党に下った自民党は維新らと共闘して参院で抵抗する構図もあり、数年は混沌とした政局が続くでしょう。
以上が、想定される選挙後シナリオです。どのシナリオになるかは、まさに有権者の選択次第です。「一度野党に政権を任せてみよう」という空気が高まるか、それとも「やはり自民が安定」という判断になるか。あるいはその中間で新たな連立模索となるか。今回の選挙は、政権の枠組みそのものが問われる点で極めて重要です。選挙結果の如何によって、日本の政治のかたちが大きく変わる可能性があることを認識しておきたいと思います。
投票日までに注目すべき指標・動向
投開票日まで残りわずかとなりましたが、最後まで情勢を見極めるために注目すべきポイントを挙げます。刻一刻と変わる状況に対応し、有権者として判断材料を収集しましょう。
- 直近の世論調査結果:特に投票日直前(2月上旬)に発表される各社の世論調査は重要です。終盤戦で内閣支持率や政党支持率に変化が出ていないか、無党派層の投票先がどう動いたかを確認しましょう。例えば、NHKや共同通信が直前の電話調査を公表する可能性があります。ここで「与党支持が微減」「新党支持が伸長」などの傾向が出れば、風向きが変わりつつあるサインです。
- 各党の“選挙の顔”の動向:高市首相や野田・斉藤両代表、吉村維新代表ら各党トップの発信内容、メディア露出が情勢に影響します。テレビ討論会や街頭演説での受け答えがニュースとなり、有権者心理を左右するでしょう。例えば党首討論で高市首相が新党側の政策を「財源なきバラマキ」と一刀両断すれば与党支持層が結束するかもしれませんし、逆に野田氏が冷静かつ具体的に物価対策を訴えれば浮動票に響くかもしれません。各党首の“一言”が票を動かし得る局面です。
- 選挙区ごとの候補者調整の最終状況:公示後でも候補者辞退や推薦の動きがあるか注目しましょう。新党と共産党の間で非公式に共闘が進む選挙区や、維新と自民が争う中で国民民主候補が立てない判断をする選挙区など、選挙協力の穴が埋まっていく可能性があります。接戦が予想される選挙区リストや有力候補同士の激突区(例:東京25区など)から目が離せません。また“刺客”の存在も注目されます。維新は「多文化共生掲げる自民議員には候補者立てる」と宣言しており、自民リベラル派に対抗馬を当てています。こうした構図が結果にどう影響するか見ておきたいところです。
- 争点に関する出来事の発生:物価・税・安保・不祥事といった争点に関連するイベントが直前に起きれば、支持動向に影響します。例えば投票直前に電気料金の大幅値上げが発表されれば野党に追い風でしょうし、北朝鮮のミサイル発射や周辺国での有事があれば与党の主張(防衛力強化)が説得力を増すでしょう。また、選挙期間中に万一閣僚や候補者のスキャンダル(公選法違反や過去の失言など)が出れば、該当政党への批判票が増え得ます。新聞・テレビ報道やSNSでのそうした情報にアンテナを張りましょう。
- 期日前投票の状況:近年期日前投票を利用する有権者が増えています。自治体ごとに発表される期日前投票者数の推移も指標となります。もし期日前投票が前回比で大幅増であれば、選挙への関心が高く投票率上昇傾向と見ます。逆に微増程度なら前回並み、減少なら投票率低下が予想されます。投票率が60%を超えそうなら野党が勢いづいている可能性あり、55%割れなら与党優位と推測できます。期日前投票の出口調査結果などが報道されることもあり、それも情勢判断に役立つでしょう。
- 有権者の声や街の雰囲気:最後は肌感覚になりますが、身近な家族・友人の会話や街中の反応も無視できません。「今回は投票に行くつもり」「○○党に入れる」といった声が普段政治に無関心な層からも聞かれるようなら風が吹いている証拠です。また、街頭演説にどれだけ聴衆が集まっているか、拍手の熱量はどうか、といった現場の雰囲気も各陣営の勢いを象徴します。SNS上のトレンドや検索数などビッグデータ解析も最近では情勢分析に用いられますが、それらも参考程度に見ておくと良いでしょう。
投票日直前まで情勢は動き続けます。最後まで自分の目と耳で情報を集め、熟慮の上、大切な一票を投じましょう。戦後最短の短期決戦だからこそ、判断を誤らないよう冷静に見極めたいものです。
よくある質問(Q&A)
Q1. なぜこのタイミング(1月)で解散総選挙になったのですか?
A. 高市首相が就任3か月で解散に踏み切った背景には、内閣支持率が高いうちに選挙で信任を得たい思惑がありました。また、昨年の衆院・参院選で自民党が議席を減らし連立与党がねじれた中、公明党が連立離脱する事態となったため、新たな枠組みを選挙で問う必要があったとも言えます。1月解散は予算編成時期で異例ですが、高市首相は「物価高対策を進めるため国民の信任が必要」と判断し、あえて通常国会冒頭での解散に踏み切りました。
Q2. 高市早苗首相とはどんな人?首相就任前はどんな経歴ですか?
A. 高市早苗氏は奈良県出身の衆議院議員(当選10回)で、自民党保守派の論客として知られます。安倍政権で総務大臣などを務め、党政調会長も経験しました。2021年の自民党総裁選に立候補し注目を集め、その後も女性初の首相候補として存在感を高めてきました。2025年10月、石破前首相の後任を決める自民党総裁選で勝利し、日本初の女性総理大臣に就任しています。毅然としたタカ派姿勢から「日本版サッチャー」と称され、内政では経済成長・積極財政、外交では安保重視が持論です。
Q3. 新党「中道改革連合」とは具体的に何ですか?どの党が一緒になったのですか?
A. 中道改革連合は、野党第一党の立憲民主党と、これまで与党だった公明党が中心となり結成した新党です。衆議院の両党議員が離党して参加し、野田佳彦氏(立民)と斉藤鉄夫氏(公明)が共同代表を務めます。理念は「中道政治の力」で、生活者ファースト・人間尊重の政治を掲げています。簡単に言えば、自民党の保守右派路線に対抗する穏健中道勢力の結集です。綱領には5つの基本政策(消費税0%や新社会保障モデルなど)を掲げ、比例代表では統一名簿で戦います。2026年1月15日に両党の合意で結成され、公示前時点で衆院172議席規模の勢力です。
Q4. なぜ公明党は長年組んだ自民党を離れて立憲民主党と組んだのですか?
A. 公明党が連立離脱・野党合流に踏み切ったのは、高市政権の路線への違和感と組織の生き残り戦略が背景にあります。公明党は平和主義・福祉重視の党ですが、高市首相は安保強硬で右傾色が強く、公明支持母体の創価学会に不満が広がりました。さらに2024年選挙連敗で公明議席も減らし、与党に居ても存在感低下が懸念されました。そこで、自公連立に一区切りつけ「中道勢力結集」の旗を掲げる方針を打ち出し、より政策志向が近い穏健野党勢力(立民など)と組む道を選んだのです。学会としても、一度与党を離れれば組織票を自由に使え、議席増も狙えるとの計算があったと思われます。つまり、公明党にとっては政権との距離調整と組織防衛のための戦略的選択だったと言えるでしょう。
Q5. 今回の選挙の主要な争点は何でしょうか?
A. 主な争点(1)物価高・増税への対応、(2)社会保障と少子化対策、(3)防衛・安保政策、(4)政治とカネのクリーンさ、この他エネルギー政策や教育無償化なども議論されています。物価高に対して与党はエネルギー補助や賃上げ促進で対応、一方野党新党は消費税ゼロや現金給付拡充を訴えます。社会保障では与党は年金維持と少子化対策バランス型、新党は積極財政で子育て支援強化を主張。安保では与党が防衛費増・反撃能力保有、野党は専守防衛重視で抑制的です。また、政治とカネでは新党が企業献金規制を掲げ、与党の過去の不祥事を批判しています。要約すれば「物価・税金」「安全保障」「政治腐敗」が三大争点で、各党の立場が明確に分かれているのが特徴です。
Q6. 選挙結果によって本当に政権交代の可能性がありますか?
A. 可能性はゼロではありませんが、ハードルは高いです。野党新党が与党を上回る議席を取れば政権交代も起こり得ますが、現状では与党優位の見方が多いです。ただ、立民+公明の新党は合わせて衆院172議席もあり、ここに無党派層の支持が大量に乗れば自民を逆転するシナリオも描けます。特に小選挙区で1対1の構図が広がれば、一気に形勢逆転する可能性もあります。政権交代には野党が233議席以上獲得が必要ですが、維新や国民民主を含めた連立で達成するケースも考えられます。要は有権者の判断次第で、絶対に無理とは言えません。実際、過去に2009年に民主党が大勝し政権交代した例があります。そのため今回は「野党勝利なら野田佳彦氏を首相に」という話まで具体的に出ています。しかし、与党支持層もしっかり投票に行けば防げるため、結果は蓋を開けてみないと分からないというのが正直なところです。
Q7. 与党が過半数を割ったらどうなりますか?
A. 自民党が単独過半数(233議席)を割り、連立与党(今回なら自民+維新)が過半数未満になった場合、国会の首班指名選挙で別の首相が選ばれる可能性が高いです。自民党が議席トップでも過半数なければ、野党連合が過半数を形成して野党候補を首相指名できます。例えば新党+他野党で233を確保すれば野田佳彦氏が首相になるでしょう。ただ、自民党が最大議席で他がまとまらなければ、維新や国民民主を抱き込んで自民中心の新連立を模索する可能性もあります。いずれにせよ過半数割れなら現体制維持は困難で、政権の枠組み再編は避けられません。高市首相は辞任し、自民党は野党転落するか、あるいは一部野党と大連立組むようなシナリオも理論上はあり得ます。具体的には玉木国民民主代表を閣僚に入れるとか、自民・維新・国民で安定多数を目指すなどの動きです。いずれにせよ、「自公体制」は完全に崩壊していますから、新たな連立方程式を模索する展開になります。
Q8. 憲法改正の行方はどうなりますか?
A. 憲法改正には衆参両院で3分の2以上の賛成が必要です。今回の選挙で与党(自民・維新など改憲勢力)が大勝すれば、衆院では3分の2以上を占める可能性があります。その場合、高市首相は改憲発議に向けた議論を一気に進めるでしょう。特に争点となりうるのは9条への自衛隊明記や緊急事態条項ですが、与党と維新・国民民主はおおむね賛成です。反対する新党中道や共産党は数で劣れば止められません。問題は参議院です。2025年参院選で改憲勢力がどうなるかにもよりますが、現状自民+維新+国民+(旧公明)などで3分の2は微妙な情勢です。与党が勝利した場合でも、公明党が抜け改憲反対に回ると参院2/3は難しく、まず衆院から発議を目指す段取りでしょう。逆に野党新党が躍進し政権を取れば、憲法改正論議はストップします。「責任ある改憲論議の深化」と言っているものの、中道新政権で急いで改憲するとは考えにくいです。当面は発議どころか棚上げになるでしょう。したがって、選挙結果次第で改憲の進度は天と地ほど差が出ます。今回の選挙は、改憲是非の民意を測る機会でもあると言えます。
用語解説
- 公示(こうじ):選挙の候補者受付開始を公式に知らせること。公示日以降、候補者は選挙運動が可能になります。今回は1月27日が公示日です。
- 投開票日:投票日と即日開票の日を指します。今回の衆院選は2月8日投開票です。通常、日曜日に行われます。
- 過半数:議席数の半分を超える数。衆議院では465議席の過半数は233議席です。与党がこれを確保できるかが政権維持の目安となります。
- 内閣支持率:世論調査で「今の内閣を支持しますか?」と聞いた際の「支持する」割合です。政権の人気・信任度を示す指標で、高市内閣は60~70%台と非常に高い水準にあります。
- 政党支持率:どの政党を普段支持しているかを尋ねた割合。自民党は概ね30%前後、新党中道は10%台かそれ以下(調査による)と見られます。支持政党なし層(無党派)は4割以上に達することもあります。
- 小選挙区:衆議院の選挙区制度の一つで、各選挙区から1人のみ当選する方式。289の小選挙区があります。得票1位しか議席を得られないため、死票が多く発生し、野党票の分散が不利に働きます。
- 比例代表:政党の得票率に応じて議席配分する選挙制度。衆院では11ブロック計176議席。各党の得票に比例して議席が割り当てられるため、少数政党も議席獲得可能です。重複立候補制度により、小選挙区で敗れても一定の惜敗率なら比例復活できます。
- 創価学会票:公明党の支持母体である宗教団体・創価学会の信者票のこと。全国に約600万とも言われる固い組織票で、公明党候補だけでなくこれまで自民候補にも振り分けられてきました。今回初めて自民から離れ、野党新党候補に流れる動きとなっています。
- 野合(やごう):本来相いれない勢力同士が選挙目当てに手を組むことを批判的に言う言葉。今回、立民と公明の合流を指して一部で「野合」との指摘があります。
- 統一名簿:比例代表選挙で複数の政党が合同で一つの政党名簿を作ること。中道改革連合は立民・公明の比例候補を統一名簿「中道」で登録しています。これにより比例票を一本化し議席獲得効率を高めます。
- 無党派層(むとうはそう):支持政党が特にないと答える層。浮動票とも言われ、選挙ごとに支持先を変えるため選挙結果を左右します。今回も無党派の動向がカギです。
- ねじれ国会:衆議院と参議院で多数派が異なる状態。例えば衆院は野党多数だが参院は与党多数などの場合、政府提出法案が片方で否決され政治が停滞します。政権交代シナリオでは衆参ねじれが起こる懸念があります。
- 暫定予算:新年度予算が年度内に成立しない場合、一時的に必要最小限の歳出を認める予算。今回のように解散で予算審議ができない時に編成されます。高市政権は選挙後、4月開始に間に合わない場合暫定予算編成の準備をしています。
- 首班指名選挙:国会で内閣総理大臣を指名する選挙。衆参両院で実施し、異なる場合は衆院の議決が優先します。選挙後の特別国会で行われ、多数派の候補が首相に選出されます。
- 連立政権:複数の政党が協力して組織する政権。自公連立が典型ですが、今回維新や国民を含む連立模索も話題です。連立政権では政策合意や閣僚ポスト配分が行われます。
参考文献・出典
- 【NHK選挙WEB】「高市内閣『支持』62%『不支持』21%」 (NHK世論調査2026年1月)
- 【JNN/TBSニュース】「高市内閣支持率78.1%、先月から2.3ポイント上昇」 (JNN調査2026年1月)
- 【時事ドットコム】「立民・公明、新党結成で合意『中道』掲げ政権に対抗—比例代表で統一名簿」 (時事通信, 2026/1/15)
- 【公明党ニュース】「中道改革連合 綱領と基本政策を発表」 (公明党公式, 2026/1/20)
- 【公明党ニュース】「『中道』大きな勢力に – 公明、立憲と新党結成へ」 (公明党公式, 2026/1/16)
- 【日本経済新聞】「公明・斉藤代表『首相は野田佳彦氏に』 衆院選後の首班指名巡り」 (日経, 2026/1/16)
- 【朝日新聞】「立憲民主と公明、新党結成を視野に調整 15日に協議へ」 (朝日新聞デジタル, 2026/1/14)
- 【読売新聞 (The Japan News)】「Takaichi Eyes Feb.8 for General Election; Temporary Budget May Be Needed」 (読売英字, 2026/1/14)
- 【nippon.com】「高市内閣、支持微増61% = 対中姿勢『評価』4割超 – 時事世論調査」 (ニッポンドットコム, 2026/1/15)
- 【nippon.com】「主要メディア8社 2025年12月世論調査まとめ – 高市内閣支持率6〜7割台維持」 (KSI政策ニュース, 2026/1/4)
- 【選挙ドットコム】「新党『中道改革連合』結成後、政党支持率や内閣支持率はどう変わった?」 (JX通信社・選挙.com共同調査, 2026/1/20)
- 【TBS NEWS DIG】「立憲・公明が『新党結成』の衝撃 公明票の行方に自民閣僚経験者『気が気じゃない』【Nスタ解説】」 (TBS, 2026/1/15)
- 【TBS NEWS DIG】「維新・吉村代表『選挙区調整やる必要ない。戦えばいい』(FNNプライムオンライン)」 (FNN, 2026/1/13)
- 【CNBC】"Takaichi's bid jolted as Komeito quits ruling coalition, NHK reports" (CNBC, 2025/10/10)
- 【BBC News】"Japan PM Takaichi calls snap election three months after taking office" (BBC, 2026/1/19)
- 【共同通信 (47NEWS)】「首相、通常国会冒頭で解散の意向 衆院選、自民幹部に伝達」 (共同, 2026/1/13)
- 【毎日新聞】「立憲・公明が新党結成へ調整 野田・斉藤共同代表案も」 (毎日, 2026/1/14)
- 【Japan Times】"Ishiba to quit as prime minister amid LDP discontent" (JT, 2025/9/7)
- 【政策研究大学院】「衆院選データ分析: 無党派層と政権交代の関係」 (参考資料)
- 【総務省・衆議院】「衆議院議員総選挙の結果(第49回,2021)」「小選挙区と比例代表並立制の仕組み」 (制度解説)
茨城県44市町村の現状と課題をデータで読む――人口減少時代の地域戦略
茨城県は32市・10町・2村の計44市町村から成り、県北・県央・鹿行・県南・県西の5地域に区分されます。2025年10月時点の県人口は約279万1,000人で、9月中に454人減少しました。本記事では、この茨城県の市町村が直面する人口減少・高齢化や産業・財政・インフラなどの課題を、最新データと一次資料から徹底検証し、実行可能な解決策を探ります。結論として、地域ごとの特性に応じた「コンパクト+ネットワーク」戦略や広域連携による行政効率化が鍵となります。その具体像を以下で詳述します。 要点(ポイント): 人口 ...
【衆院選2026】自民「単独過半数」報道が相次ぐ一方、未定層は2〜3割――2月2日時点の情勢と議席レンジ
2026年2月8日投開票の衆議院総選挙は、現時点では自民党が単独で過半数(233)をうかがい、連立(自民+維新)が300前後まで伸ばす可能性を複数の情勢報道が示している。一方で、比例・小選挙区とも未定層が大きく、天候(降雪)や投票率、野党側の候補調整でブレ幅が拡大し得る局面だ。[1][3][7][8] 日程:公示 2026年1月27日、投開票 2月8日。[1][2] 制度:定数465(小選挙区289+比例代表176)。小選挙区と比例代表は同日実 ...
青森県40市町村の現状データと課題・対策が一目でわかるレポート
青森県では人口減少と高齢化が全国でも極めて深刻です。2020年の国勢調査時点で県人口は約123.8万人で、2015年比 -5.3%(全国平均 -0.7%)と全国トップクラスの減少率でした。さらに2025年1月1日現在で118万5,767人と120万人を割り込み、前年から1.64%減(秋田県に次ぐ全国2位)となっています。若年層の県外流出(社会減少率0.37%)が特に大きく、これは全国最悪です。出生数の急減により2040年頃には人口が90万人を下回り、高齢化率は40%超に達すると推計されています。 こうした ...
静岡県の市町村:現状と課題、そして解決策
静岡県内の全35市町(政令指定都市の行政区を含む)の現状をデータで俯瞰し、直面する共通課題と地域特有の問題を洗い出します。また、それらの根本原因を分析した上で、自治体・企業・住民が協働して取り組める実行可能な解決策を提示します。以下のポイントが本記事の結論です。 人口減少と高齢化の急進展: 静岡県の総人口は2007年(平成19年)の約379.6万人をピークに減少へ転じ、2023年10月時点で約355.3万人まで縮小しました1。全県平均の高齢化率は3割を超え、一部の町では人口の半数以上が65歳以上という深刻 ...
兵庫県の市区町村:現状・課題・解決策まとめ
この記事で分かること(要旨) 兵庫県内41市町の最新動向:2025年末時点の推計人口は約530万人で減少傾向。地域により高齢化や社会増減の状況が異なります。 地域ごとの特徴と差:神戸・阪神など都市部は人口・産業が集中する一方、但馬・丹波・淡路などでは過疎化・高齢化が進み、空き家率も20%以上の地域があります。 市区町村が直面する課題:人口減少と少子高齢化、空き家・老朽インフラ、財政硬直化、南海トラフ地震や豪雨災害リスク、公共交通の縮小、産業人材不足、行政のデジタル化停滞など、多岐にわたります。 地域別の優 ...




