
この記事で分かること(要旨)
- 兵庫県内41市町の最新動向:2025年末時点の推計人口は約530万人で減少傾向。地域により高齢化や社会増減の状況が異なります。
- 地域ごとの特徴と差:神戸・阪神など都市部は人口・産業が集中する一方、但馬・丹波・淡路などでは過疎化・高齢化が進み、空き家率も20%以上の地域があります。
- 市区町村が直面する課題:人口減少と少子高齢化、空き家・老朽インフラ、財政硬直化、南海トラフ地震や豪雨災害リスク、公共交通の縮小、産業人材不足、行政のデジタル化停滞など、多岐にわたります。
- 地域別の優先施策:地域の強み・弱みを踏まえ、都市部では都市インフラ再生や産業高度化、中山間部では移住促進や暮らしの足の確保、島しょ部では観光振興など、それぞれ重点が異なります。
- 今すぐ始める対策ロードマップ:各自治体が0〜6か月でデータ収集・計画策定、6〜18か月で体制整備と重点施策着手、18か月以降に本格実行と検証という段階で進める方法を提案します。失敗を防ぐポイントも解説します。
結論(先出し):兵庫県は都市と農山村・離島が混在し、地域ごとに課題の表れ方が大きく異なります。人口減少や高齢化は県内全域の共通課題ですが、都市部では空洞化した住宅地の再生や老朽インフラ更新、中山間地域では生活サービス維持や担い手確保が喫緊の課題です。自治体と住民・企業が協力し、 データに基づく計画立案 と 地域の実情に合った対策実装 を進めることで、人口減少下でも持続可能な地域づくりが可能です。そのためには、行政サービスのデジタル化や広域連携による効率化、新たな人材の呼び込み、災害への備え強化など、多面的なアプローチが必要です。本記事では、兵庫県内市区町村の現状データを整理し、地域差と共通課題を分析したうえで、 住民と自治体が明日から動ける具体策 を提示します。
1. 兵庫県の市区町村を俯瞰する(前提)
兵庫県の基本構造:兵庫県には現在、29市12町の計41市町があります(村は1962年までに消滅)。県庁所在地は神戸市(政令指定都市)で、9区に区分された人口約151万人の大都市です。神戸市だけで県人口の3割弱を占め、都市機能も集中しています。その他の主要都市として、阪神間の尼崎市・西宮市、播磨地域の姫路市などが挙げられます。これら都市部以外は中小規模の市町が広がり、地域ごとに特色のある「五国」(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路)の文化圏が存在します。
県内の地域区分:兵庫県は公式に10の地域(県民局・県民センター管内)に分けられます。各地域と構成自治体、および特徴は以下のとおりです。
- 神戸地域(神戸市):県都・神戸市のみ。人口規模・経済規模で突出し、港湾・企業本社・大学病院など都市機能が集中。六甲山地を背にし南に海を臨む地形で、都心部以外に郊外住宅地も広がる。
- 阪神南地域(尼崎市・西宮市・芦屋市):大阪都市圏に連なる都市住宅地域。人口密度が高く、尼崎は工業都市、西宮・芦屋は住宅都市として発展。大阪・神戸への通勤圏で若い世代も多いが、一部に老朽住宅団地も抱える。
- 阪神北地域(伊丹市・宝塚市・川西市・三田市・猪名川町):大阪・神戸のベッドタウン圏。伊丹市には大阪国際空港(伊丹空港)が立地し、宝塚市は文化都市として知られる。猪名川町など山間部は自然豊かだが高齢化が進行。
- 東播磨地域(明石市・加古川市・高砂市・稲美町・播磨町):神戸市と中播磨を結ぶ臨海工業エリア。明石・加古川は人口規模が大きく、製鉄・機械など製造業の大工場が立地。新興住宅地もあり比較的若年層も定住するが、郊外農村部との格差もある。
- 北播磨地域(西脇市・三木市・小野市・加西市・加東市・多可町):播磨内陸部の中小都市と農村。織物産業が盛んだった西脇市や金物生産で知られる三木市など地場産業の町が点在する。全般に人口流出が続き、生活サービス維持が課題。
- 中播磨地域(姫路市・神河町・市川町・福崎町):播磨南西部の中心地。姫路市は県内第二の都市で世界遺産姫路城を擁し、重工業と観光が共存する。周辺町村は姫路都市圏に属するものの農村的性格が強い。
- 西播磨地域(相生市・たつの市・赤穂市・宍粟市・太子町・上郡町・佐用町):播磨西部から岡山県境にかけての地域。臨海部の相生市は造船で栄え、赤穂市は塩業と観光(忠臣蔵の史跡)で知られる。内陸の宍粟市・佐用町などは山林が多く、過疎高齢化が深刻。
- 但馬地域(豊岡市・養父市・朝来市・香美町・新温泉町):兵庫県北部の日本海側。豊岡市は城崎温泉やコウノトリで有名で観光業が盛り。全域が豪雪地帯で農林水産業が中心。人口密度が低く、高齢化率も高水準。冬季の交通確保や医療提供体制が課題。
- 丹波地域(丹波篠山市・丹波市):兵庫県中央部の内陸丘陵地。丹波篠山市は黒豆や陶芸で知られる城下町、丹波市も農産物(栗や山の芋など)ブランドを持つ。大阪・京都から程近く近年は移住促進にも力を入れるが、依然として少子高齢化が進展。
- 淡路地域(洲本市・南あわじ市・淡路市):瀬戸内海の淡路島全域。温暖な気候で玉ねぎなど農業が盛ん。近年は島内にテーマパークやリゾート開発も進み観光客が増加。明石海峡大橋と大鳴門橋で本州・四国と結ばれるが、島内の公共交通は弱く車への依存が高い。
こうした地域区分は、地理・歴史的背景に基づく生活圏を示すもので、「都会」と「田舎」が混在する兵庫県の特性を表しています。六甲山や中国山地、日本海と瀬戸内海といった多様な地形により、 地域差が非常に大きい県 となっています。県平均で見ると産業構造や人口構成は全国平均に近いと言われますが、実態は 過密都市圏と過疎地域を抱える二極構造 です。例えば、阪神地域には大企業の工場や研究機関が集積し若い労働力も流入しますが、但馬・淡路などでは地元就業先の減少で若年層が流出し、高齢化率が40%前後に達する自治体もあります。以下、県全体および各地域ブロックの現状データを確認し、課題と解決策を見ていきます。
2. データで見る「現状」:人口・世帯・居住の変化
兵庫県全体の人口動向
兵庫県の人口は2009年をピークに減少に転じ、本格的な人口減少社会に入っています。2020年の国勢調査では県人口は約546.5万人と5年前から7万人減少し、その後も毎年減り続けています。直近の推計では2025年12月1日現在の人口は5,304,127人となり、前月比で2,081人の減少でした。月間の動きを見ると、自然増減(出生 minus 死亡)は▲2,857人と大幅な減少で、社会増減(転入 minus 転出)は+776人と転入超過でした。つまり最近では、死亡超過による自然減を、他地域からの転入超過が一部補う構造になっています。実際、2025年秋には兵庫県全体で「転入者が転出者を1,550人上回る社会増」が観測された月もあります。もっとも、こうした社会増は神戸・阪神間など都市圏への流入が中心で、全県10地域すべてで人口が増えているわけではありません。11月中は県内全地域で人口減少(自然減が社会増を上回る)が起きたとの統計も出ています。
年齢構成と高齢化:人口減少とともに高齢化も進んでいます。兵庫県の65歳以上人口割合(高齢化率)は2020年時点で約26.8%(全国平均26.6%)でした。令和時代に入りさらに上昇し、県発表では2023年2月時点で29.3%、2025年には概ね30%前後に達していると推計されます。しかし県平均を上回るスピードで高齢化が進む市町も多く、地域差が大きいのが特徴です。例えば、2023年時点で佐用町の高齢化率は約44%にもなり、県内で最も高齢化が進展しています。養父市や香美町など他の過疎地域も40%前後に達しています。一方、阪神間の都市部は相対的に低く、芦屋市は22%台(2020年時点)と県内では若い部類です。それでも今後は都市部も高齢者数が増える見込みで、例えば神戸市では2045年に人口の2割減・高齢化率30%以上との推計もあります。高齢単身世帯の増加も課題で、県全体では高齢者の約11%が一人暮らし(2015年)ですが、農山村では家族扶養者がいない高齢者の割合がさらに高い地域もあります。
世帯数と構成:人口減にやや遅れて、総世帯数も減少に転じました。2015年頃までは核家族化で世帯数が増えていましたが、直近の2018年住宅・土地統計調査で兵庫県の総世帯数は232万3,300世帯と5年前から約6.1万世帯減少しました。平均世帯人員は約2.28人となり(2018年)、小世帯化が進む一方で世帯そのものも減っています。世帯構成は地域によって差があり、都市部では単身や夫婦のみ世帯の比率が高まり、農村部では高齢夫婦のみ・独居が目立ちます。生産年齢人口(15~64歳)は1995年から2015年にかけ県全体で約10ポイント比率が低下し、現在は全人口の約58%程度となっています。働き手世代の減少は今後も続く見通しです。
居住動向:住宅と空き家の現状
住宅ストック:兵庫県内の総住宅数は2018年時点で268万900戸でした。これは1978年(昭和53年)からの40年間で約106万戸増加した数ですが、直近の2013年から2018年にかけては約5万3千戸減少し、戦後初めて住宅数自体が減少に転じました。要因として、新規建築の減少と空き家の老朽化による滅失が上回ったことが挙げられます。一方、空き家(居住者のいない住宅)は増加傾向にあります。2018年調査時点で県内の空き家数は36万200戸で、5年前より3,700戸増えました。空き家率(住宅に占める空き家の割合)は13.4%となり、2013年比+0.4ポイントで過去最高です。これは全国平均(13.6%)並みですが、実態は地域により大きく異なります。
地域差:都市部では人の出入りがあり空き家率は県平均程度かそれ以下ですが、過疎地域では深刻です。総務省の住宅統計調査令和5年速報によれば、兵庫県内では空き家率20%超の地域が複数あります。例えば但馬地域は21.2%、淡路地域は23.8%、西播磨地域は19.0%と、5軒に1軒以上が空き家という状況です。市町別に見ると、佐用町が空き家率31.4%で県内最悪、次いで相生市27.2%、淡路市26.9%、養父市26.4%などが続きます。一方、神戸市全体の空き家率は13.1%と県平均より低めですが、内実は区により差があり、兵庫区では24.7%と県内市町を凌ぐ水準に達しています。これは戦後の狭小住宅密集地に「再建築不可物件」が多く残り、建て替えも取り壊しも進まず放置されていることが一因です。このように、空き家問題は過疎地だけでなく都市部でも潜在化しており、景観悪化や治安上の不安、地域コミュニティの衰退につながっています。
以上のデータから読み取れる要点:
- 人口減少と自然減:兵庫県の人口は2009年以降減少し続け、2025年現在で約530万人。毎年2万人規模で減っており、特に出生数の減少で自然減が拡大している。社会増減は地域差があり、阪神間への流入と中山間からの流出が同時進行。
- 少子高齢化の進展:高齢化率は約30%に達し、一部町村では40~45%と限界的水準。15~64歳の生産年齢人口比率低下で働き手不足が顕著。高齢単身世帯が増え、支え手不在の高齢者ケアが課題に。
- 空き家の増加:県全体の空き家率は13.8%(2023年速報値)で過去最悪。特に過疎地域や旧市街で空き家密度が高く、佐用町などでは住宅の3戸に1戸が空き家。神戸市内でも老朽住宅密集地で空き家が放置され、防災上の懸念となっている。
- 地域間格差:神戸・阪神など都市部では人口規模が大きく若年層も一定数いるが、郊外住宅団地の高齢化や都心部の空洞化が問題化。一方、北播磨・但馬・西播磨・淡路などでは人口流出と高齢化で生活維持自体が厳しい地区あり。地域ごとに抱える問題の重みや優先度が異なる。
次章では、こうしたデータ上の現象について、テーマ別に背景要因や影響を掘り下げます。また、放置すれば将来どんなリスクにつながるかを整理します。
3. 市区町村が直面する主要課題(テーマ別)
ここでは兵庫県内の市区町村に共通または類型化できる課題を、AからGのテーマ別に整理します。それぞれ現状と背景、住民生活や地域経済への影響、放置した場合のリスクを述べます。
課題A:人口減少・少子高齢化と生活基盤の維持
現状・背景:兵庫県全体で出生数の減少による人口減少が続き、2040年代まで人口は減り続ける推計です。若年人口の県外流出も長年の課題で、特に大学進学や就職で大阪・東京へ移る人が多く、地方圏に人が戻らない傾向があります。例えば但馬や丹波の高校生が卒業後に神戸や京阪神の大学へ進学し、そのまま都会で就職・定住するケースが一般的です。その結果、中山間地域では20~30代の人口割合が極端に低くなっています。高齢化については前述のとおりですが、高齢夫婦のみ・独居世帯が増えることで、地域の生活基盤(医療・買い物・コミュニティ)が維持困難になる現象が各地で起きています。過疎地域では近隣の商店や病院が次々と閉鎖し、自家用車を持たない高齢者が「買い物難民」「受診難民」になるケースも少なくありません。実際、県内農村部では軽トラックの移動販売(移動スーパー)が高齢者の命綱となっているとの報道もあります。
影響:人口減・高齢化が進む地域では、医師や介護職の不足も深刻です。兵庫県の場合、医師数は全体では全国平均並みでも、地域偏在が顕著で、都市部(神戸市は医師数17.8人/1万人)に比べ但馬(9.9人)・西播磨(9.4人)は半分程度しかおらず、診療科も偏っています。例えば産科では、神戸市立中央市民病院に但馬や西播磨から50~60km離れて妊婦が救急搬送される事例があるなど、地域内で完結できない医療が現実化しています。また介護人材も慢性的に不足し、高齢者世帯を訪問する生活支援サービスの担い手が見つからない自治体もあります。買い物に関しては、地元スーパーがなくなり日々の食料品入手に苦労する高齢者が増えています。加西市などでは行政が買い物代行サービスの実証実験を行うなど対応を始めましたが、抜本策とは言えません。こうした生活インフラの脆弱化は、高齢者の健康悪化や社会的孤立を招き、結果として医療費・介護費の増大や地域コミュニティ崩壊につながります。
放置リスク:この課題を放置すると、まず地域から若者がいなくなり高齢者ばかりになる「限界集落」化が広がります。日常サービスの担い手もいなくなり、地域経済は縮小し税収も減少する悪循環です。医療難民・介護難民が増えれば生命の危機にも直結します。人口減によって学校や病院、路線バスなど公共サービスも維持困難となり、生活の利便性がさらに低下して移住・定住も進まないという負のスパイラルに陥ります。また、地域に働き手が不足すれば企業活動にも支障が出て、工場や事業所の撤退が相次ぐおそれもあります。最終的には自治体運営自体が困難となり、町村の消滅・合併のような事態も現実味を帯びます。
課題B:空き家・老朽住宅・中心市街地の空洞化
現状・背景:前章で述べた通り、空き家の増加は兵庫県内全域の課題です。人口が減る以上、使われない住宅が増えるのは避けられませんが、問題は適切に管理・除却されない空き家が蓄積している点です。特に築数十年を経た木造住宅が放置されると倒壊の危険や害虫発生など周辺環境への悪影響があります。空き家が集中する地区では、景観が損なわれるだけでなく、治安の悪化(不法侵入や放火のリスク)も指摘されます。背景には、相続問題や所有者不明土地の問題が横たわります。都市部の狭小宅地では相続人が利用せず放置するケース、農村部では所有者が都市在住で管理せず荒れ放題といったケースが典型です。
また、空き家問題と表裏の関係にあるのが中心市街地の空洞化です。兵庫県内の中小都市の多くで、駅前・繁華街のシャッター商店街化が進行しています。大型店や郊外型モールに押され、かつて賑わった商店街が閑散としている例(姫路市の二階町商店街、豊岡市の大開通り商店街など)は数多く見られます。中心部から人通りと店舗が減れば、街全体の活力も失われ、さらに人が来なくなるという悪循環になります。
影響:空き家の増加は、自治体財政にも影響します。行政代執行で危険空き家を解体すれば費用が発生し、多くの場合回収は困難です。また居住者が減ることで上下水道などインフラの利用料収入が減り、維持管理コストの負担が相対的に増大します。中心市街地の空洞化により地価が下落すると、自治体の固定資産税収にも響きます。コミュニティ面では、空き家が増え人が減ると地域の見守り機能が低下します。特に高齢者独居世帯が散在する地区で空き家が増えると、近所付き合いが希薄化し、災害時の安否確認や日常の声かけができなくなります。
さらに、都市計画上の非効率も生じます。市街地に空き家が点在し人口密度が下がる一方で、郊外に新興住宅地が開発されると、市全体としてはスプロール(無秩序な広がり)となり、インフラを広範囲に維持するコストがかさみます。兵庫県の都市では神戸市北区や西区、三木市などで郊外ニュータウンの高齢化と都心空洞化が同時進行しており、効率的な街づくりの妨げとなっています。
放置リスク:このまま手を打たなければ、地域の衰退が加速します。空き家だらけの集落や商店街は新たな住民や企業を呼び込めず、さらなる過疎化につながります。老朽空き家が地震などで倒壊すれば避難路を塞ぐ危険もありますし、防災・防犯上のリスクは看過できません。中心市街地の荒廃は、その都市全体のブランドイメージ低下にも直結します。例えば観光地である城崎温泉(豊岡市)でも、一歩メイン通りを外れると空き家が目立ち、観光客の動線が限定的になるという問題があります。まちなかの空洞化は都市機能の低下を招き、移住者や投資の対象から外れてしまう可能性があります。
課題C:財政の持続性(歳入構造・社会保障費・投資余力など)
現状・背景:人口減と経済規模縮小は自治体財政に直結します。兵庫県の市町村財政を見ると、地方交付税などに頼らず自主財源でまかなえる都市(神戸市や阪神間の市など)と、依存財源が多く財政力の弱い町村とで二極化しています。加えて全国的な問題として、社会保障関係経費(高齢者福祉・医療・介護など)が年々増加し、自治体の自由に使える投資的経費を圧迫しています。いわゆる「財政の硬直化」です。指標で見ると、県内市町の経常収支比率(人件費や扶助費など固定的経費が歳入に占める割合)は平均94.8%に達し(令和5年度)、ほとんどの自治体で毎年の収入の大半が固定費に消えている状態です。例えば川西市では経常収支比率が100%に達し、新たな事業に財源を振り向ける余裕がほぼ無い状況です。一方、佐用町は83.4%と低めで余力がありますが、これは逆に言えば社会資本整備など投資を控えている結果とも読めます。
兵庫県内では財政破綻寸前の自治体こそないものの、将来負担比率(将来債務の現在収入に対する比率)を見ると上郡町が108.2%、丹波篠山市が76.1%と負債負担が大きい自治体もあります。これは将来世代へのツケとも言え、インフラ更新費や公債償還が今後重く圧し掛かることを示唆します。
影響:財政の硬直化が進むと、自治体は新しい政策や設備投資ができなくなります。例えば老朽化した公共施設(学校や橋梁など)の改修や建て替えを先送りせざるを得ず、公共インフラが劣化する恐れがあります。また、財政難の自治体では職員採用も抑制され、行政サービスの質低下や人材不足につながります。住民にとっては、例えば図書館や公民館の統廃合、福祉サービスの縮減といった形で影響が現れるでしょう。さらには、財政悪化が深刻化すれば住民税や水道料金等の負担増も検討せざるを得なくなります。
財政指標上も、経常収支比率が100%を超え赤字に転落すれば早期健全化団体となり、市町は緊縮財政を強いられます。幸い兵庫県内には実質公債費比率や連結赤字比率で早期健全化基準を超える自治体は現在ありません。しかし、かつて夕張市が財政破綻したように、税収減と支出増が臨界点を超えれば財政破綻(自治体版倒産)のリスクもゼロではありません。
放置リスク:この課題を放置することは、自治体の将来を危うくします。公共施設の更新ができず老朽化すれば、災害時に機能を失う危険もありますし、日常利用にも支障が出ます。また将来負担が蓄積すれば、子や孫の世代に過大な債務を残すことになります。最悪の場合、財政破綻した自治体では住民サービスが大幅カットされ、職員も削減、地方債の起債にも国の許可が必要となり復旧復興もままならない状況に陥ります。財政問題は目に見えにくいですが、実は住民生活の土台を支える重要課題であり、対応が遅れるほど立て直しに時間がかかります。
課題D:災害リスク(地震・津波・風水害・土砂災害・暑熱)と避難・復旧の課題
現状・背景:兵庫県は阪神・淡路大震災(1995年)という未曾有の都市直下型地震を経験しました。その復興を経て、防災意識は高まっていますが、新たな巨大リスクとして南海トラフ巨大地震が想定されています。政府想定では30年以内発生確率は60~90%とも言われ、兵庫県南部・淡路島も震度6強~7の揺れや最大クラス津波に襲われる可能性があります。県の被害想定(最悪シナリオ)によれば、建物全壊は約3.68万棟、半壊約17.76万棟に上り、死者数は約2万9千人(うち津波による死者が96%)と試算されています。特に南あわじ市・洲本市など津波の高さが想定される沿岸部で被害が集中し、県全体の全壊被害の半数を占める恐れがあります。こうした大規模災害に対し、全住民が適切に避難できる体制整備や耐震化など減災対策が急務です。
一方、近年頻発する豪雨・台風による風水害リスクも看過できません。兵庫県では2009年の台風9号豪雨で佐用町が甚大な浸水被害を受け、死者18名・行方不明2名、床上浸水1,787棟という惨事が発生しました。また2004年の台風23号では豊岡市や朝来市で河川氾濫が起き死者・行方不明者2名が出ています。土砂災害も各地の山間部で起きており、小規模ながら人的被害につながるケースがあります。近年は線状降水帯など極端な豪雨が頻発し、「数十年に一度」が日常的になりつつあります。さらに夏の猛暑・熱波も高齢者の健康リスクを高めています。
影響:大規模地震・津波が発生すれば人的被害はもとより、都市機能・産業への打撃は計り知れません。神戸港や阪神工業地帯が被災すれば、日本全体の物流・生産にも影響します。観光地が被災すれば風評被害含め地域経済は長期低迷するでしょう。風水害では農地流出や交通網寸断が起こり、復旧に巨費と時間を要します。例えば佐用町は2009年水害からの復興に数年を要し、人口流出にも拍車がかかりました。度重なる災害は地域住民の精神的負担となり、将来への不安から移住を考える人が増えることも懸念されます。
また、高齢化と災害の複合も問題です。高齢世帯が多い地域では、避難勧告を出しても自力で避難できない人が多くいます。実際2009年の佐用水害では亡くなった20名中12名が避難所への移動途中で被災しており、避難行動の難しさが浮き彫りになりました。要支援者の避難計画づくりがどの市町村でも課題です。
放置リスク:言うまでもなく、備えなければ被害は最大化します。南海トラフ地震では兵庫県内だけで数万人規模の死者が想定され、これは防災対策によって減らせる余地があります。耐震化率向上や津波避難タワー整備、ソフト面では早期避難の徹底などで、被害を半減・十分の一にできるとされています。備えを怠れば、そのまま想定通りの惨事になりかねません。また、頻発する風水害に適応しなければ、毎年のようにどこかの地域で甚大な被害が起こり、復旧・復興費が財政を圧迫します。最悪の場合、人命喪失だけでなく、「この地域には住み続けられない」と集落ごと移転せざるを得ない事態も起こり得ます。それは地域の歴史文化の喪失にもつながります。防災・減災は行政任せではなく住民一人ひとりの備えも重要ですが、行政側が計画策定やハード整備を怠れば被害軽減は望めません。
課題E:交通・移動(公共交通維持、通学通勤、観光の足、物流)
現状・背景:少子高齢化とモータリゼーションの進行で、地域の公共交通網が縮小しています。兵庫県内ではJRローカル線や第三セクター鉄道の利用者減が著しく、JR西日本が公表した2017~19年度平均のデータでは、加古川線西脇市~谷川、播但線和田山~寺前、姫新線播磨新宮~上月など6区間が大幅な赤字となっています。例えば加古川線西脇市~谷川間の輸送密度(1日1kmあたりの乗客数)は、1987年度の1131人から2019年度は321人へ激減しました。利用者数がこのままでは、路線バス・鉄道の廃止も現実味を帯びます。既に神河町や宍粟市などでは自治体主体のコミュニティバスや乗合タクシーで代替輸送していますが、運行本数が限られ利便性は低下しています。
都市近郊部でも、ニュータウン地域でバス路線が減便・撤退する事例があります。高齢運転者の免許返納も進む中、「交通弱者」となる住民が増えています。買い物や通院の足がなくなり、行政がボランティア輸送を検討する自治体もあります。また高校再編で遠距離通学を余儀なくされる生徒もおり、「もしJR◯線が廃線になれば学校に通えない」という声も出ています。
一方で、道路物流や観光交通の課題もあります。神戸・阪神間は幹線道路が慢性的に渋滞し、物流コスト増や通勤時間の長時間化を招いています。山陽道や中国道など高速道路整備は進んでいますが、ラッシュ時のボトルネック解消には至っていません。観光地では、城崎温泉や淡路島など一部を除き公共交通でのアクセスが不便で、観光MaaS(マース:統合移動サービス)構築が遅れています。
影響:地域公共交通がなくなると、高齢者や学生など自家用車を運転できない層の生活が立ち行かなくなります。外出機会が減れば高齢者は閉じこもりがちになり健康に影響しますし、学生は進学先・就職先の選択肢が狭まります。地域としても、人の移動が滞れば経済活動が縮小します。買い物客が郊外大型店に流れ、地元商店街がさらに衰退する一因にもなります。
物流面では、2024年問題(トラックドライバー残業規制強化)もあり、山間部・離島への配送が今後難しくなる懸念があります。兵庫県北部のある市では「狭い谷筋に集落が点在し配送効率が悪いため、今後宅配人材の不足で日常の配達が困難になる可能性」が指摘されています。郵便局や宅配業者が撤退すれば、生活物資の供給にも支障が出ます。
観光地では、アクセスが悪いと宿泊客数や満足度にも影響します。旅行者はレンタカーやタクシーに頼るため費用がかさみ、リピーターが減るかもしれません。交通は人流・物流の動脈であり、その滞りは地域活力の低下に直結します。
放置リスク:この課題を放置すると、地域の孤立化が進みます。鉄道・バスがなくなり道路も整備されない地域は、人々の往来から取り残され、「陸の島」のようになってしまいます。一度廃線になれば復活は極めて困難で、自治体負担でバスを走らせても限界があります。最終的にはその地域から住民が去り、自治体消滅につながりかねません。物流崩壊は生活のみならず産業にも打撃で、農林水産物を出荷できず産業存続が危うくなります。観光地はアクセス改善しないと訪問者数が頭打ちになり、地域振興のチャンスを逃します。
また、自家用車依存のまま高齢化が進むと、高齢ドライバーの事故リスクや移動制約の問題が顕在化します。移動手段を確保できない高齢者が増えれば福祉コストも増加します。交通はライフラインであり、これを維持・再設計しないと地域社会の存立基盤が揺らぎます。
課題F:産業・雇用(製造業、港湾、農林水産、観光、スタートアップ・研究開発、労働力不足)
現状・背景:兵庫県の産業構造は、大都市圏に近いこともあり多様です。製造業は神戸製鋼や川崎重工など重工業が伝統的に強く、県内総生産に占める製造業の比率は約24%(2018年度)と全国平均をやや上回ります。一方で情報通信関連の成長は全国平均に比べ鈍く、サービス産業化の波に乗り遅れている面もあります。港湾物流では神戸港がかつて「東洋一の港」と呼ばれましたが、現在は国際コンテナ取扱量で国内4位にとどまり、釜山港など海外ハブ港にシェアを奪われています。農林水産業は県内GDPの0.4%(2016年)と規模は小さいですが、淡路島の玉ねぎや但馬牛、丹波の黒豆など地域ブランド産品が数多くあります。観光業も重要で、2019年の観光客数は延べ約9,000万人(宿泊は1,500万人)に上りました。姫路城・城崎温泉・神戸南京町などの観光地が牽引しています。
こうした中で、共通する課題は人手不足です。少子化で若年労働力が減り、特に中小企業や第一次産業では深刻です。工場でも高年齢化が進み、技能継承が課題になっています。また、県内企業の新陳代謝も活発とは言えず、スタートアップ(新興企業)の育成が全国的な課題となっています。神戸市は医療産業都市構想で医療ベンチャー誘致に努め一定の成果がありますが、阪神間以外では起業環境が整わず、大学・高専の研究シーズもうまく産業化されていないとの指摘があります。
影響:産業人材の不足は、生産性低下や事業縮小につながります。例えば農業では高齢化で担い手が激減し、耕作放棄地の増加を招いています。林業でも森林管理が行き届かず災害リスクが高まっています。製造業でも、中小企業が求人難で設備投資に踏み切れず競争力を落とす事例があります。雇用のミスマッチも問題で、県全体の有効求人倍率は2025年秋時点で0.94倍と1倍を下回り(求職者超過)、求職者に見合う良質な雇用機会が不足しています。この背景には、都市部に仕事が偏り地方にないこと、高度人材向けの産業が少ないことなどがあります。
観光産業もコロナ禍で大打撃を受け、回復途上ですが、人員不足でサービス提供に支障が出ている宿泊施設もあります。さらに、産業構造転換が進まないと、全国的な脱炭素・DXの波に乗り遅れ、県経済全体が停滞するリスクもあります。
放置リスク:人材難・産業競争力低下を放置すれば、地域経済の地盤沈下が避けられません。企業収益が落ち込めば賃金も上がらず、優秀な人材ほど県外へ流出するという悪循環です。特にものづくり産業の弱体化は関連下請け企業や地域の雇用を一気に失わせかねません。第一次産業が衰退すれば農山村の維持にも関わりますし、食料供給や森林環境にも影響します。
また、若者に魅力的な産業や企業がない地域は、定住選択肢から外れてしまいます。結果、人口減少にさらに拍車がかかります。産業が縮小し雇用が失われることは地域消滅への最短ルートとも言えます。観光地でも、サービスの質低下やコンテンツ不足が顕著になるとリピーターが離れ、稼げる産業を失います。自治体財政も法人税・個人住民税の減収でさらに苦しくなり、悪影響が連鎖します。
課題G:デジタル化と行政サービス(人材不足、窓口対応、データ活用、地域DX)
現状・背景:デジタル技術の活用は行政効率化と住民サービス向上の切り札とされています。しかし、多くの市町でDX(デジタルトランスフォーメーション)人材の不足が深刻です。特に小規模町村では専門知識を持つ職員がいないか、ごく少数しかおらず、システム導入やデータ分析を外部委託に頼りがちです。兵庫県の調査でも「必要な人材の役割やスキルが明確にできず、人材育成や外部人材の活用が進んでいない」自治体が多いと指摘されています。また、行政内部の縦割りや老朽システムの存在がデジタル化推進の障壁になっています。市町村ごとに別々の住民情報システムを使っていたり、書類主義・ハンコ文化が根強かったりするのも共通課題です。
コロナ禍で一部オンライン手続きが進みましたが、それでも他県に比べ電子申請の利用率が低い自治体もあります。窓口業務に人手を取られ、本来取り組むべき企画立案や住民対応が後手に回ることもあります。さらに、オープンデータやAI活用など新しい施策は都市部(神戸市など)で先行する一方、多くの市町では模索段階です。
影響:行政のデジタル化が遅れると、住民の利便性に差が生じます。例えばオンライン申請できない手続きが多い自治体では、平日日中に役所へ出向かねばならず、働く世代に負担です。データ連携が不十分だと、引っ越し時に何度も同じ情報を書かされるなど非効率が続きます。行政内部でも、紙資料の照合作業や手計算など無駄な作業に時間を取られ、生産性が低下します。これは職員の残業増や離職にもつながり、若手職員の離職加速という悪循環が懸念されます。
また、住民に身近な市町村でDXが進まないと、地域全体のデジタル化も進みません。企業誘致の際にも、行政サービスのデジタル度は評価ポイントになります。さらに行政サービスが非デジタルのままでは、パンデミックや災害時にリモートで業務継続が難しく、危機対応力にも差が出ます。
放置リスク:この課題を放置すれば、行政サービスの質と効率が低下し、住民の満足度も下がります。窓口での長時間待ちや手続きの煩雑さは、市民の行政不信を招きかねません。職員の負担が減らないまま高齢化社会に突入すると、職員数も限られる中で膨大な業務を回せず、行政機能不全に陥る恐れもあります。国は自治体間でシステム標準化を進めていますが、これに対応できなければ今後の補助金配分などでも不利になる可能性があります。最悪の場合、情報セキュリティや個人情報管理の不備から重大な漏洩事故が起きたり、AI活用の遅れで行政判断が陳腐化したりと、地域間競争に取り残されるリスクがあります。
以上、A~Gの主要課題を見てきました。それぞれの問題は相互に関連し、複合的に地域に影を落としています。では、地域ごとにこれら課題がどのように現れているのか、次章で整理します。
4. 地域別に見る課題の出方と打ち手の優先順位
兵庫県の公式地域区分(神戸、阪神南、阪神北、東播磨、北播磨、中播磨、西播磨、但馬、丹波、淡路)の各地域ごとに、強みとボトルネック(弱点)、優先的に講じるべき解決策トップ3を示します。地域によって置かれた状況は異なるため、解決策にもメリハリが必要です。
神戸地域(神戸市)
- 強み:人口約151万人の政令指定都市で、産業・医療・文化などあらゆる都市機能が集積しています。港湾都市としての歴史と国際性、大学や研究機関(医療産業都市)の集積により、高度人材も多いです。税収や財政力も県内トップクラスで政策的裁量が大きい点が強みです。
- ボトルネック:六甲山を挟み市域が南北に分かれる地形ゆえ、都市インフラ維持費がかさみます。老朽化した阪神間モダニズム時代の住宅(異人館街周辺など)や、高度成長期の団地(須磨区・長田区など)が更新期を迎えています。空き家率は市平均13%程度ですが、兵庫区で24.7%と極端に高いなど地域差が大きく、再開発が進んでいない地区があります。また、大規模災害の記憶が薄れる中、防災意識の継承も課題です。都市としての魅力向上(大阪・京都との競争に勝つ都市戦略)も求められます。
- 優先解決策トップ3:
- 老朽住宅地区の再生 – 空き家対策特措法等を活用し、兵庫区・長田区など木造密集地域の空き家除却・建替えを促進。市営住宅とセットで住替え支援を行い、防災集団移転も検討。再建築不可物件の解消へ道路拡幅など都市計画事業を重点化。
- 都市インフラの耐震・更新 – 上下水道管や港湾施設、病院・学校校舎の耐震化率100%を早期に達成。老朽インフラの長寿命化計画を推進し、将来更新費用を平準化。特に灘区・東灘区の阪神大水害(1938年)の教訓から、水害対策インフラも再点検。
- 産業高度化とスタートアップ支援 – メリケンパーク周辺などにスタートアップ拠点を整備し、大学発ベンチャーを誘致・育成。既存製造業にはAI/IoT導入支援で生産性向上を図る。神戸港の物流DXや観光MaaSを先行実施し、「デジタル都市KOBE」のブランド確立。海外・国内から人材と企業を呼び込む戦略を強化する。
阪神南地域(尼崎市・西宮市・芦屋市)
- 強み:大阪・神戸の中間に位置し、交通利便性が非常に高いエリアです。人口集中が続き、西宮市は県内第3位の約49万人、尼崎市も45万人規模です(2020年)。高い財政力を背景に子育て支援など先進的政策を展開する市もあります。芦屋市は全国有数の高所得者層が住む街で市民の教育水準も高いです。
- ボトルネック:都市化に伴う住宅街の高齢化が進んでいます。西宮北部のニュータウンでは住民の高齢化と人口減少が始まり、バス路線維持が課題です。尼崎市は工業地帯の公害・環境問題からの転換に取り組んできましたが、いまだ一部に低未利用地が残ります。また阪神南3市は密集市街地ゆえ地震・火災リスクも高いです。地価が高く宅地開発の余地が少ない中で、空き家活用や高度利用が求められます。
- 優先解決策トップ3:
- 郊外住宅地のコミュニティ再編 – 西宮名塩ニュータウンなどで高齢者向け住宅改修支援や、空き家に子育て世帯を誘致するモデル事業を実施。小学校の統廃合に合わせ地域拠点(交流館+診療所+商業)を集積する「コンパクトシティ・ミニ」の実践。
- 産業跡地の有効活用 – 尼崎の工場跡地等に物流施設や研究開発拠点を誘致(既に進行中の尼崎臨海部再開発を加速)。環境技術や創業支援のインキュベーション施設を整備し、新産業の呼び水にする。芦屋市では景観に配慮した中高層住宅への建替え誘導で人口維持。
- 防災力強化 – 3市共同で木造住宅密集地の耐震改修補助を拡充。マンションの耐震診断・修繕を促し、帰宅困難者対策や石油コンビナート火災対策(尼崎沿岸)も一体で進める。市民向け防災教育(シミュレーションゲーム等)により減災行動力を底上げ。広域避難訓練を定期実施。
阪神北地域(伊丹市・宝塚市・川西市・三田市・猪名川町)
- 強み:大阪国際空港が立地する伊丹市や、文化都市宝塚、市街地と田園が調和する川西・三田があり、多様性があります。大阪への通勤圏で人口増を続けた地域であり、三田市は大型ニュータウン(ウッディタウン)の成功例として人口流入を果たしました。比較的若い世代の割合が県平均より高く(例えば三田市の高齢化率は23.7%で県平均より低い)、子育て施策にも力を入れています。
- ボトルネック:今後はニュータウンの高齢化と人口減が避けられません。猪名川町のスーパー郊外型住宅地(日生中央エリアなど)では車がないと生活できず、高齢住民の移動支援が課題です。三田市もニュータウン区域外の山間部で過疎化する集落があります。また宝塚市は文化・観光都市ゆえ観光客対応インフラの老朽化がみられます。広域交通では大阪空港へのアクセス強化や鉄道路線(JR福知山線)の輸送力増強など要望がある一方、自治体単独では難しい課題を抱えます。
- 優先解決策トップ3:
- ニュータウンの再生とスマートシティ化 – 三田市や猪名川町の日生中央などで、ICTを活用した高齢者見守りサービスやオンデマンド交通を導入。空き区画に小規模多機能の福祉施設や買い物ミニ拠点を整備し、歩いて暮らせる街へアップデート。民間デベロッパーと連携してスマートシティ計画を策定。
- 交流人口・関係人口の創出 – 宝塚歌劇や有馬温泉(神戸市だが隣接)など観光資源への来訪者を周辺市にも波及させる広域観光ルート開発。伊丹空港を活かし、国際交流イベントや長期滞在プログラムを誘致(川西市の能勢妙見山エリアなど自然体験資源を活用)。都市近郊農業の援農ボランティアや二地域居住者(平日は大阪、週末は猪名川など)の受け入れ促進。
- 基盤インフラ整備の推進 – JR福知山線の複線区間延伸や、新名神高速のスマートIC増設など交通インフラの充実に向け、沿線自治体で期成同盟会を組織し国・府県に働きかけ。伊丹空港周辺の騒音対策と逆に空港便数増による地域活性化策の両面検討。豪雨対策では猪名川水系の治水事業推進(流域治水による遊水機能確保)に注力。
東播磨地域(明石市・加古川市・高砂市・稲美町・播磨町)
- 強み:播磨灘に面する東播磨は重工業地帯であり、製鉄(神戸製鋼所加古川製鉄所)や造船、化学工場が立地し製造品出荷額が県内最大規模です。加古川市は人口26万人超で県内第四の都市、明石市も30万人規模で特に子育て支援策の充実により人口が微増傾向です。交通の便も良く、新快速電車で神戸・大阪に通勤可能な住宅都市としての顔も持っています。財政面では明石市が独自施策(こども施策)を次々打ち出せるだけの余裕を持っています。
- ボトルネック:沿岸部工業地帯の再編が進まず、遊休化した企業社宅や工場跡が散見されます。また一部企業城下町では製造業依存の経済構造ゆえ、産業転換への対応力が課題です。郊外の稲美町・播磨町はベッドタウン化が進みましたが、宅地開発による人口増が一巡し今後は高齢化フェーズです。公共交通はJR神戸線以外弱く、郊外部の移動は自動車頼みで、高齢運転者対策が課題となってきます。
- 優先解決策トップ3:
- 臨海部のリノベーション – 高砂・加古川の臨海工業用地で遊休化しているエリアを調査し、企業の集約移転で生み出される余剰地を再開発。再生可能エネルギー拠点(大規模太陽光や洋上風力関連施設)や物流拠点、スタートアップの実証フィールド(自動運転試験場など)として活用。産業構造転換を後押し。
- 子育て世代の定住促進 – 明石市の先進事例(子ども医療費完全無料化、保育所待機児童ゼロ等)を他市町にも横展開。稲美町・播磨町では宅地供給とセットで「子育て村」的なコミュニティづくりを支援し、近隣大都市からのUJIターンを呼び込む。若年世代に人気の高い明石市では、在住者の市外流出を防ぐため住宅施策(リフォーム補助や空き家バンク充実)を追加。
- 交通・環境対策 – 加古川バイパスなど慢性的渋滞路線の対策として、パークアンドライド推進や道路拡幅などを国と協議。JR線沿線開発では駅前に高層住宅を誘導するコンパクトシティ戦略を検討。工場地帯の環境改善(騒音・大気汚染監視)を続け、SDGsに沿った「脱炭素先進地域」を宣言して企業の協力を得る。
北播磨地域(西脇市・三木市・小野市・加西市・加東市・多可町)
- 強み:北播磨は中小企業の地場産業が息づく地域です。西脇市は「日本のへそ」として織物(播州織)が有名で、加西市は酒造や農産加工、三木市は金物産業など特徴ある産品があります。小野市・加東市は神戸電鉄沿線で、大型団地開発により人口を増やした実績もあります。豊かな田園風景と里山資源が残り、都市住民の田舎暮らし希望者には魅力的なエリアでもあります。
- ボトルネック:都市圏から離れた北播磨では若者流出と高齢化が深刻です。多可町など町村部では合計特殊出生率は比較的高めでも、育った若者が就職で市外へ出て定住しないため人口減が止まりません。産業面でも後継者不足が顕著で、伝統産業の維持に黄信号が灯っています。公共交通は神鉄粟生線やコミュニティバス程度で、自家用車がないと生活しにくいです。買い物難民対策も市町によってはこれから本格化させるところです。
- 優先解決策トップ3:
- 地場産業の高度化とブランド化 – 播州織や三木金物など伝統産業にデザインやICTを導入する支援を強化。若手クリエイターや職人の移住を促し、産地企業とコラボした新商品開発(ファッション、DIYツール等)を国内外にPR。加西市の地酒や特産野菜なども「兵庫テロワール」として統一ブランド化し、都市圏マーケットに売り込む。
- 小さな拠点づくり – 多可町などで、集落ごとに小規模多機能拠点(直売所+サロン+診療所出張所など)を整備して生活サービス確保。移動販売車や宅配便との連携で買い物弱者をゼロにする。地域住民と行政が協働で運営する「住民運営バス」や乗合タクシーの仕組みを作り、高齢者の通院・買い物を支援。
- UIターン支援と関係人口創出 – 空き家バンクの充実とリフォーム補助で若い移住希望者を受け入れやすく。テレワーク可能な移住者向けに、お試し住宅やレンタルオフィスを整備。西脇市が進める「日本のへそ日時計の丘」など観光資源を磨き、都市住民の長期滞在プログラム(ワーケーション等)を企画。関係人口(たまに訪れる第二のふるさとファン)を増やす。
中播磨地域(姫路市・神河町・市川町・福崎町)
- 強み:中播磨の中心は世界遺産・姫路城を擁する姫路市で、人口約50万人の中核市です。製鉄・機械など工業も盛んで、姫路港は重要港湾として交易拠点です。観光客数も多く、姫路城や書写山圓教寺への国内外観光客で賑わいます。周辺3町は姫路への通勤圏で、自然豊かな環境を活かしつつ姫路市と連携したまちづくりが可能です。山陽新幹線や中国自動車道など交通の要衝でもあります。
- ボトルネック:姫路市は市域が広大(政令市並み)で、北部山間地域(旧家島町など離島含む)と市街地との行政サービス格差が課題です。市街地中心部では再開発が進む一方、郊外の住宅団地は高齢化しています。伝統産業の皮革(たつの市にも関連)などは後継者不足です。周辺町では人口流出が続き、神河町は将来消滅可能性も指摘される水準です。広域合併議論は一段落しましたが、小規模町の財政自立は難しく、姫路市への依存度が高い状況です。
- 優先解決策トップ3:
- 姫路市街地のスマートシティ化 – 姫路駅前から姫路城までのエリアで、公共Wi-Fiやキャッシュレス決済、観光型MaaSを導入しDXを推進。AIによる多言語ガイドや混雑予測システムで観光客受入を高度化。中心市街地にスマート公共交通(EV小型バス等)を巡回させ、高齢者も観光客も移動しやすい街へ。
- 周辺町との広域連携サービス – 神河町・市川町・福崎町と姫路市で、図書館・病院・学校など公共サービスの広域利用協定を締結。例えば福崎町の県立こども病院姫路分院(仮)を周辺町が共同利用するよう調整する等、各自治体単独で抱えるのではなく共有化で効率アップ。将来的な合併を視野に入れ、まずは行政システムやバス路線の統合運行などから始める。
- 産業人材育成と集積 – 姫路工業団地にロボット・AI関連企業を誘致し、産学官連携拠点とする。地元高校・高専・大学と企業が連携した人材育成プログラムで、若者が地域に定着する雇用を創出。皮革・機械など地場産業の技術者育成学校を姫路市などが支援し、伝統技術の継承者を確保する。
西播磨地域(相生市・たつの市・赤穂市・宍粟市・太子町・上郡町・佐用町)
- 強み:播磨西部は瀬戸内沿岸の相生・たつの・赤穂と、内陸の宍粟・佐用など多様なエリアです。沿岸部は牡蠣や塩など特色産品と歴史観光資源(赤穂義士など)を持ち、相生市は新幹線駅もあります。宍粟市は森林面積が広大で林業ポテンシャルがあります。佐用町には世界的な大型放射光施設SPring-8や天文台もあり、先端科学と自然が共存する地域です。高速道路(中国道・山陽道)で京阪神や岡山との交通利便性も確保されています。
- ボトルネック:過疎と高齢化の進行が県内でも特に深刻な地域です。佐用町・宍粟市などは65歳以上が4割前後、将来さらに上昇する見込み。若者流出に歯止めがかからず、このままでは集落維持が難しい地区が点在します。相生市の造船所縮小や上郡町の人口減など、産業・雇用面でも苦戦しています。空き家率も佐用町31%と県内最悪で、インフラ維持や公共交通(コミュニティバスなど)も財政逼迫で綱渡りの自治体があります。
- 優先解決策トップ3:
- 先端科学と地域振興の融合 – 佐用町・上郡町に跨る播磨科学公園都市(SPring-8等所在地)の潜在力を地域に還元。研究施設の見学ツアーやサイエンスフェス開催で科学観光誘致し、地域イメージアップ。研究者や技術者に二地域居住してもらうなど、地域交流を推進。周辺に研究成果を応用したベンチャー企業を誘致するインキュベータ整備。
- 超高齢社会への対応モデル – 宍粟市・佐用町で、地域包括ケアシステムを深化させた「高齢者100%自治体でも暮らせる」モデルづくり。AI見守りや遠隔医療、移動販売連携、シニアボランティアによる助け合いなどをパッケージ化し、全国に発信。特別養護老人ホーム等の増設と人材確保策(外国人介護士受入など)も県・国と連携して進め、要介護難民ゼロを目指す。
- 観光・交流による稼ぐ地域づくり – 赤穂市・たつの市を中心に歴史観光ルート(赤穂城跡~御崎~室津~たつの城下町など)を整備し、滞在型観光を促進。地域住民が観光ガイドや農泊ホストとして関わり、観光収入を地域に落とす仕組みを構築。佐用町の「銀河もみじライン」(星空観察と紅葉)や宍粟市の氷ノ山登山など自然観光資源も磨き、交流人口増で地域活性化。
但馬地域(豊岡市・養父市・朝来市・香美町・新温泉町)
- 強み:但馬は雄大な自然と温泉・食など観光資源の宝庫です。豊岡市の城崎温泉は年間観光客150万人を超える人気地で、香美町の香住港は松葉ガニや海水浴で知られます。地域ぐるみの環境共生の取り組み(コウノトリ野生復帰など)は全国に発信され成功しています。農業では但馬牛のブランド価値が高く、林業でも質の高い木材を産出します。人口規模は小さいながら、地域のまとまり(但馬県民意識)が強く、広域での取り組みが比較的進めやすい点も強みです。
- ボトルネック:日本海側特有の豪雪・寒冷地条件で、冬季の交通や暮らしにコストがかかります。豊岡以外の市町は著しい過疎高齢化で、養父市は国家戦略特区(農業改革)に挑戦していますが人口減には歯止めがかかっていません。道路・鉄道など基盤整備は一定進むも、大阪からの距離が遠く若者の定着に苦戦します。雇用先が観光・公務員・医療以外に乏しく、Uターン希望者も仕事が無く断念する例があります。医療提供体制も脆弱で、北近畿唯一の公立豊岡病院に負荷が集中しています。
- 優先解決策トップ3:
- 観光による地域経済循環強化 – 観光客を温泉街だけでなく周辺市町に回遊させる仕組みづくり。鉄道・バスのフリーパスや観光タクシー券を発行し、城崎→出石→竹田城跡(朝来市)→湯村温泉(新温泉町)など周遊ルートを定着。観光消費が地元事業者に最大化するよう、体験プログラム(農漁業体験・工芸体験など)を商品化。インバウンド対応として多言語案内やWi-Fi整備も広域で統一。
- 「田園回帰」移住の促進 – 全国からの移住希望者に対し、但馬全体でワンストップ相談窓口を設置し、希望に応じて各市町を紹介。お試し移住住宅を全市町に整備し、テレワーク可の環境(光回線など)を提供。空き家のリノベ支援や、移住者と地元住民の交流促進イベントを定期開催し、「移住してから孤立しない」安心感を醸成。特に子育て世帯には住宅支援金や保育料完全無償化など思い切った優遇策で呼び込む。
- 広域インフラ・医療の充実 – 但馬全域をカバーするデマンド型交通ネットワークを構築。JR山陰本線等の維持確保に向け、沿線自治体とJRで利用促進策(高校生定期補助や観光列車運行)を実施。北近畿豊岡自動車道の早期全通を働きかけ、救急搬送時間短縮を図る。医療ではオンライン診療普及とドクターヘリの運用強化でへき地の診療体制を補完し、豊岡病院の負荷を軽減する。
丹波地域(丹波篠山市・丹波市)
- 強み:丹波篠山市は歴史的町並みと黒豆など特産品で人気が高まり、近年は都市住民の移住希望先として注目されています。実際「篠山暮らし」に憧れる若者が増え、地域おこし協力隊の活躍もあります。丹波市も京都府と接する立地で、アクセスは比較的良く、自然と共生したライフスタイルを売りにできます。古民家や里山など、昔ながらの日本の農村風景が残るエリアとして価値があります。
- ボトルネック:2市とも人口は減少傾向で、特に高齢化が顕著な集落があります。かつての合併前の町村単位では、行政サービス維持が困難な箇所も見られます。篠山市から「丹波篠山市」に改名したのも知名度向上策でしたが、持続的な移住増には課題もあります。企業誘致では大企業工場は少なく、地元就職口が限られるため、若者流出の構造が続いています。交通はJR福知山線と舞鶴若狭道があるものの、市内公共交通は弱く、高校生の通学にも苦労する地域があります。
- 優先解決策トップ3:
- スローライフ移住の受け皿づくり – 丹波篠山の古民家バンク事業を充実させ、リモートワーカーや二拠点居住者向けに貸し出し。地域のベテラン大工や移住者DIY支援チームを組成し、古民家再生を低コストで可能にする。都市圏で丹波暮らし体験イベントを開催し、都会の子育て世帯を招致。
- 農泊・グリーンツーリズムの推進 – 丹波黒豆収穫や山菜狩り、里山サイクリングなど都市住民が魅力を感じる滞在型観光コンテンツを開発。民泊や農家民宿の開業を支援し、地域に交流人口による収入源を創出。地域住民もガイドや講師として参加し、生きがい・収入アップを図る。
- 生活利便性の確保 – 両市とも、市街地(柏原や篠山城下町)に医療・商業を集約し、郊外から乗合タクシーなどでアクセスできる仕組みづくり。「買い物バス」の定期運行や、移動スーパーの拡充で高齢者の買い物難民をゼロに。病院送迎サービスをNPOと協働で実施し、「クルマがなくても暮らせる丹波」の安心感を醸成。
淡路地域(洲本市・南あわじ市・淡路市)
- 強み:淡路島は温暖な気候と豊かな自然、美しい海岸線に恵まれ、「御食国(みけつくに)」と呼ばれた食材の宝庫です。玉ねぎを筆頭に農産物ブランドが確立し、近年は島全体が大型レジャー施設(ニジゲンノモリなど)やリゾートホテル誘致で観光地化しつつあります。明石海峡大橋の開通以降、神戸・大阪からのアクセスも向上し、都市近郊のリゾートとして人気です。
- ボトルネック:島内3市とも人口減が著しく、特に若年層の流出が課題です。島内就学後に神戸・大阪へ出てそのまま戻らない若者が多いです。公共交通は神戸・徳島へ高速バスこそありますが、島内バス路線は縮小傾向で、高齢者の移動に不便があります。また海に囲まれ津波・高潮など自然災害リスクも抱えます。水資源が乏しく他地域から送水している点や、島全体で医師不足(大きな病院が洲本に偏在)もウィークポイントです。
- 優先解決策トップ3:
- 島全体の観光戦略強化 – 三市合同で「淡路アイランドツーリズム局(仮)」を設立し、観光資源の磨き上げとPRを一元化。食・アート・アウトドアなどテーマ別に誘客キャンペーンを実施し、日帰り客を宿泊に繋げる。将来的に鉄道(淡路鉄道構想)復活の機運も探りつつ、現状はレンタカー・バス・自転車を組み合わせたMaaSアプリを導入し、滞在中ストレスなく島内移動できる環境を提供。
- UIJターン起業支援 – 島内でのIT企業サテライトオフィス誘致は既に進行中だが、更に加速させる。空き店舗や廃校舎をコワーキングスペースや起業拠点に改装し、移住創業希望者に格安提供。農業・漁業の6次産業化(加工・流通)にチャレンジする若者に対し、市が事業化支援や資金助成を行い、淡路発の新商品を創出。自治体や企業が連携して、将来的に淡路島で起業→本州展開するような成長モデルを発掘。
- 暮らしの安心確保 – 津波・高潮対策として、防潮堤や避難タワー整備を継続。全住民へのハザードマップ周知徹底と避難訓練を定期実施し、観光客向け案内も強化。医療アクセスでは、洲本の県立病院への送迎バスを南北から運行し、高齢者が通院しやすい体制を整える。離島ゆえの物流課題にも対応し、買い物弱者向けのネットスーパーと郵便局配送の連携モデルを構築する。
以上、地域別に課題と重点策を示しました。それぞれ地域の強みを活かしつつ、弱点を補う施策が重要です。共通して言えるのは、地域内だけで解決困難なこと(医療や交通など)は広域連携や県・国の支援を積極的に取り入れること、そして限られた人材・資源を重点課題に振り向けるメリハリです。次章では、こうした具体策を踏まえ、全県の市区町村が取るべき共通の解決策パッケージを提案します。
5. 解決方法:兵庫県の市区町村で“実装できる”対策パッケージ
ここでは、前章までに挙がった課題を解決するため、どの市町村でも実務的に導入可能な対策をテーマ別にまとめます。理想論に終わらず、現場で動かせる形にブレークダウンし、実行ステップや成果指標(KPI)も交えて解説します。
5-1. 人口・暮らし対策:子育て支援、医療介護、移住定住、関係人口づくり
- 子育て支援の充実:少子化対策として有効なのは、経済的不安の軽減と育児環境の整備です。多くの自治体で取り組む子ども医療費助成については、中学生まで無料化はもちろん、高校卒業まで拡充する動きもあります(明石市などの例)。保育所待機児童ゼロは最低ラインとして、延長保育・病児保育の拡充や、第2子以降の保育料無償化も検討します。KPI例:「合計特殊出生率の上昇(例えば現状1.4→目標1.6へ)」、「転出する子育て世帯数の減少」など。自治体は独自施策と国の施策(児童手当拡充など)を組み合わせ、総合的な子育てパッケージを用意します。
- 地域包括ケアと医療確保:高齢者が多い自治体ほど、地域包括ケアシステム(医療・介護・見守りの連携)を強化します。具体的には、地域の診療所・薬局・訪問看護が共同で高齢者宅を巡回する仕組みや、介護予防の教室開催、民生委員・ボランティアによる安否確認ネットワークの構築です。KPI例:「要介護認定率の上昇抑制」「在宅医療・看取りを希望通り実現できた割合」など。医師不足地域では、自治体が医学生に奨学金を出し地域勤務を促す、看護師等の復職支援研修を行うなどして人材確保にも努めます。また、オンライン診療設備の導入補助で遠隔地から専門医診療を受けられる環境を整えます。
- 攻めの移住・定住促進:人口減への直接策は移住者を呼び込むことです。各市町村は特色ある移住支援メニューを作ります。例えば、空き家バンク制度の充実・リフォーム補助(空き家購入費の一部助成)、就農・就業支援(移住者に地域おこし協力隊や企業紹介)、移住体験ツアーの定期実施などです。近年はテレワーク定着により地方移住希望者が増えており、これは好機です。自治体サイトに移住ポータルを設置し、移住者の声紹介、オンライン相談対応などワンストップサービスを提供します。KPI例:「年間移住者数◯人(前年比◯%増)」「移住後5年定着率◯%」。また都市出身の若者を地域に呼ぶ「地域おこし協力隊」制度を積極活用し、期限終了後も定住・起業できるようフォローします。
- 関係人口の創出:移住まではしないが継続的に地域に関わってくれる関係人口を増やす戦略も重要です。例えば、都会の学生が長期休みに農家を手伝う「季節社員」制度や、二地域居住者に役場の非常勤職員として企画提案してもらう仕組みなどが考えられます。観光や交流イベントを通じてリピーターを増やし、その人たちに地域のファンクラブ的組織に入ってもらう(年会費を地域振興に充当する)などのアイデアもあります。KPI例:「関係人口数(イベント参加者やSNSコミュニティ人数)」。関係人口は将来の移住者予備軍でもあるため、大切に育てる視点が必要です。
5-2. 住まい・まちづくり対策:空き家活用、拠点形成、公共施設再編、土地利用
- 空き家の循環利用:空き家問題は「除却すべき危険空き家」と「活用できる空き家」を見極め、それぞれ対策を講じます。自治体は空き家バンクを拡充し、登録物件のリフォーム費補助、利活用マッチング(カフェやシェアオフィスへの転用)を支援します。利活用困難な空き家は所有者に働きかけ、解体や敷地のグリーン化(駐車場や菜園にする)を促します。悪質な放置には空き家対策特措法に基づき特定空家に指定して是正させます。KPI例:「空き家バンク成約件数◯件/年」「特定空家是正率◯%」。またリフォーム人材(大工等)の確保も課題なため、地元工務店と連携した補助制度で質の高い改修を低廉に提供します。
- 拠点の集約形成:人口減の中では、全域に満遍なくインフラを維持するのは困難です。コンパクトシティの考え方を取り入れ、市町村の中心拠点(駅周辺や旧城下町エリアなど)に居住・福祉・商業機能を集めます。そのために、中心部での住宅取得補助やマンション誘致、空き店舗への出店補助などで人を戻します。公共施設も中心部へ集約再配置し、郊外の旧施設は統廃合します。これにより行政サービスアクセスを改善し、車を運転しない高齢者でも暮らせる環境をつくります。KPI例:「中心市街地人口割合◯%(現在より増加)」「公共施設延床面積◯%削減」。集約に際しては住民合意形成が鍵であり、丁寧な説明と代替措置(コミュニティバス運行など)を用意します。
- 公共施設マネジメント:自治体が保有する庁舎・学校・体育館など施設の老朽化が進んでいます。一方で利用者減も著しいため、統廃合と多機能化が必要です。例えば小学校統合で空き校舎が出れば、そこを公民館や地域交流センターに転用し他の老朽施設を整理します。またPPP(官民連携)手法で、民間に運営を委ねることで費用削減とサービス向上を図ります。図書館+カフェや道の駅+市役所出張所のように、多機能複合施設へリニューアルすることで施設数を減らしつつ利便性維持を狙います。KPI例:「公共施設維持コスト◯%削減(中長期)」「施設利用率◯%向上」。
- 土地利用転換とまちの耐災害化:人口減で生じた未利用土地をチャンスと捉え、防災・環境に資する土地利用転換を行います。例えば、密集市街地の一角を公園や広場、防火帯に変えて地域の安全度を上げる、浸水常襲地の宅地を買い上げ遊水池にする、といった施策です。また農地や森林の耕作放棄も進むため、企業やNPOに貸し出してソーラーシェアリング(農業+太陽光)やバイオマス発電用エネルギー作物栽培など新用途に供します。土地利用転換は時間がかかりますが、計画的に進めれば防災と持続可能性に寄与します。KPI例:「防火空地面積◯㎡(5年で◯%増)」「耕作放棄地面積◯%減」。
5-3. 財政・行政改革:共同調達・広域連携、公共施設マネジメント、EBPM、デジタル窓口
- 共同調達・広域連携:財政を健全に保つには、自治体同士の共同調達や業務共同化が有効です。例えば、物品購入やシステム導入を複数市町で合同入札しスケールメリットを出す、特定業務(ゴミ収集・上下水管理など)を広域連合で一元化する、などです。兵庫県内でも県が音頭を取り、「阪神間7市で共同事務」「但馬3市2町で職員研修を共同実施」等の事例が増えています。KPI例:「共同調達額◯億円(コスト◯%削減)」「自治体間連携事業数◯件増」。広域連携には調整コストもかかりますが、県がコーディネーターとなり支援することで円滑化できます。
- EBPM(証拠に基づく政策立案):限られた財源を有効投資するには、データに基づく政策評価が欠かせません。各自治体は施策ごとにKPIを設定し、毎年度の達成度を数値で検証します。その上で、効果が薄い事業は縮小・廃止、効果が高い事業に重点配分するメリハリをつけます。EBPM推進には職員のスキル向上が必要なので、県内共通の研修プログラムを実施し、統計分析や費用対効果評価手法を学ぶ機会を提供します。KPI例:「主要施策毎にKPIを設定・公表した割合100%」「事業仕分け等で削減した予算額◯円」。
- デジタル窓口サービスの拡大:住民が便利さを実感できる改革として、オンライン手続きの導入があります。転出入届のオンライン事前申請、各種証明書のスマホ申請・郵送受取、税・料金のキャッシュレス決済など、できるところから始めます。兵庫県は自治体DX推進度が全国的にも高い方ですが、市町村間格差があるため遅れている自治体は近隣市と協力し標準システムを導入します。あわせてマイナンバーカードの活用促進(健康保険証や図書カード機能など統合)を図り、住民がカード1枚で行政手続きを済ませられる環境を整備します。KPI例:「主要手続のオンライン対応率◯%」「行政窓口混雑度(待ち時間)◯分短縮」。
- 人材確保と組織改革:行政改革の担い手となる職員の強化も欠かせません。慢性的な人手不足に対応し、民間人材の登用や職員の複業解禁など柔軟な人事戦略を取ります。兵庫県はデジタル人材を民間公募していますが、市町もCIO(最高情報統括役)を外部採用するなど検討します。組織も縦割り打破へプロジェクトチーム制を導入し、課題横断的に動ける体制を構築します。また若手職員が提案しやすい文化づくりやテレワーク環境整備で生産性向上と離職防止を図ります。KPI例:「民間出身職員比率◯%」「職員一人当たり残業時間◯%減」。
5-4. 防災・減災対策:ハザード可視化、避難計画、要配慮者支援、ライフライン強靭化
- ハザード情報の見える化と共有:住民一人ひとりが自分の地域の災害リスクを把握することが大前提です。自治体はハザードマップを最新化し全戸配布するとともに、ウェブ地図で閲覧・避難所ルート検索できるようにします。兵庫県のCGハザードマップなど既存情報も活用します。また、防災アプリやSNSでリアルタイムの避難情報発信を強化します。特に津波・浸水想定がある地域では、高台避難シミュレーション動画を作成し住民説明会で共有するなど、自分事化を促します。KPI例:「地域防災訓練参加率◯%(毎年上昇)」「ハザードマップ認知率◯%」。
- 避難計画と訓練の徹底:南海トラフ地震など大規模災害に備え、住民避難計画を詳細に策定します。津波が来る何分前までに誰がどこへ逃げるか、避難所の収容人数と物資計画はどうか、といったシミュレーションを予め行い、計画に落とし込みます。要配慮者(高齢者・障害者等)については個別避難プランを民生委員などと一緒に作成し、平時から声かけ・支援体制を準備します。毎年地域の自主防災組織と合同で避難訓練を行い、防災無線が届かない所は戸別受信機や携帯メールで補完します。KPI例:「全世帯の個別避難計画策定率◯%」「避難訓練実施回数(年◯回)」。
- ライフラインの強靭化:電気・水道・通信などライフラインが長期停止すれば、復旧前に生活が成り立たなくなります。そこで、重要施設の非常用発電装置や井戸・貯水槽整備、LPガス備蓄などを進め、最低3日~1週間は自治体単独でライフライン維持できるようにします。停電時に電気自動車(EV)を電源として活用する取り組みも有望です。また、燃料や食料の備蓄計画を策定し、流通在庫と合わせて地域全体で必要量を確保します。さらに倒壊等で道路寸断に備え、迂回路や緊急輸送ルートの事前確認・整備を進めます。KPI例:「非常用電源稼働施設数◯箇所」「備蓄食料で賄える人数日数◯人日」。
- 復旧力・復興力の強化:災害発生後の復旧・復興を迅速に行う体制も構築します。平時から応急仮設住宅用の空き地リストアップ、建設事業者との協定締結、ボランティアセンター運営訓練などをしておきます。自治体職員は被災対応のロールプレイ訓練を行い、罹災証明発行や避難所運営の手順を周知します。さらに近隣自治体と「発災時相互支援協定」を結び、職員派遣や物資融通を約束しておきます。これにより孤立を防ぎ、早期復興につなげます。KPI例:「災害対応マニュアル整備率100%」「復旧想定所要日数の短縮◯%」。
5-5. 交通・産業振興策:地域交通再設計、観光とMaaS、物流革新、地場産業高付加価値化
- 地域交通の再設計:不採算で廃止予定の公共交通を維持するには、需要に応じた運行形態への転換が必要です。具体的には、乗客の少ないバス路線を予約型のデマンドタクシーに切り替える、ボランティアドライバーによる乗合送迎(コミュニティ交通)を導入するなどです。兵庫県内でも過疎地で実績がある「NPOバス」モデルなどを参考に、地域に合った仕組みを選びます。自治体は運行補助金を出しつつ、利用者参加型で持続させます。KPI例:「地域内公共交通カバー率◯%(全住民が徒歩◯分圏で利用可能)」「交通空白地域ゼロ達成」。また高齢ドライバー対策では、免許返納者にバス券配布やタクシー補助を提供し、安心して運転卒業できる環境を作ります。
- 観光とMaaS(Mobility as a Service):観光客や住民がストレスなく移動できるよう、デジタル技術で交通サービスを一元化します。例えばスマホ一つで電車・バス・レンタサイクル・タクシー全て予約・決済できるアプリを導入します。兵庫県は都市と田舎が混在するので、モデル地区で実証してから広げると良いでしょう。城崎温泉や淡路島など観光地では、周遊観光バスと船・レンタカー等を組み合わせた乗り放題パスを発行し、観光消費を拡大させます。KPI例:「MaaSアプリ利用者数◯人」「公共交通二次交通利用率◯%増」。これによりマイカー依存を減らし、渋滞緩和や環境負荷軽減の効果も期待できます。
- 物流の効率化・維持:人手不足が懸念される地域物流には、新技術導入と共同化で対応します。具体策として、ドローン配送や無人走行ロボットの実証をへき地で行い、郵便局や宅配業者の負担軽減を図ります。兵庫県内では過疎地で郵便局員と民間宅配が合同で配達する取り組みも始まっています。これを全県展開し、事業者間連携で一括配送(1台の車で複数社の荷物を配る)を推進します。また、道の駅等に宅配ボックスを設置し、「まとめ配達」「取りに来てもらう」方式を広げます。KPI例:「高齢者への医薬品等ドローン配送実験回数」「物流共同化による配送効率◯%向上」。物流は民間主体ですが、行政がプラットフォーム作りを支援することが鍵です。
- 地場産業の高付加価値化:人口減市場でも生き残るには、製品・サービスの付加価値を上げ収益性を確保することです。兵庫の地場産業(織物、酒、金物、食品etc)は高い潜在力があり、デザイン導入やIT活用でブランド力を高められます。自治体は産業支援センター等で専門家マッチングを行い、中小企業に商品開発助言や海外展開支援を提供します。例えば播州織を世界的ファッションブランドと組ませる、淡路の農産品を東京高級スーパーで販促する、といった具合です。また6次産業化(生産+加工+販売)に挑む事業者への補助金・融資を充実させ、新製品創出を応援します。KPI例:「主要地場産品の年間販売額◯%増」「新輸出先国数◯ヶ国に増加」。こうした取り組みで、地元企業が人口減下でも稼ぎ地域へ還元できるようにします。
5-6. 人材確保と活用:自治体職員スキル向上、地域おこし協力隊・民間連携、大学・高専との連携
- 自治体職員の育成と新陳代謝:自治体の実行力は職員の能力に左右されます。人材育成策として、兵庫県内各市町の職員を対象に異業種研修や先進自治体派遣を行います。他の市町村や民間企業に一定期間出向させ、多様な経験を積ませます。戻ってきた職員がノウハウを組織に広げることで全体の底上げを図ります。さらに新しい知見を入れるため、中途採用や民間経験者登用を継続します。デジタルや観光など専門分野では首長部局に民間アドバイザーを置き、職員と協働でプロジェクトを進めます。KPI例:「職員研修受講延べ人数◯人(前年比増)」「外部経験者比率◯%」。
- 地域おこし協力隊等の活用:全国的に利用が進む地域おこし協力隊(都市人材の受け入れ)は兵庫でも積極的に活用します。各市町がミッションを明確に設定し、IT・マーケティング・観光など専門スキルを持つ若者を募集します。着任後は単独行動ではなく、地元住民とチームを組ませ、定住・起業につなげるフォローをします。任期終了後の起業支援資金を助成する自治体も出ています。KPI例:「協力隊から定住起業につながった人数◯人」。またシニア版地域おこし協力隊(地域サポーター)として、UIターンした退職者の知見を地域経営に生かす仕組みも検討します。
- 官民連携プロジェクトの推進:自治体だけで解決困難な課題には、民間企業やNPOとの連携が有効です。例えば公共交通見守りサービスを地元タクシー会社と協働開発する、空き家リノベを建築会社とタイアップするなどです。PFI/PPPのスキームも活用し、公共施設の運営を民間委託してサービス向上とコスト削減を図ります。地域課題解決に熱意あるスタートアップ企業を誘致し、実証実験フィールドを提供して双方メリットを出す方法もあります。KPI例:「官民連携事業件数◯件(毎年増加)」「民間から提案募集したアイデア採用数◯件」。行政はコーディネーター役となり、異なるセクターの力を束ねます。
- 高等教育・研究機関との連携:兵庫県内には神戸大学や県立大学、豊岡の芸術文化専門職大学、各地の高専(工業高等専門学校)など教育機関が点在しています。これらと自治体が連携し、学生の地域実習や共同研究を進めます。例えば、養父市は農業特区で大学と新作物開発を行う、神戸市は大学生を行政インターンとして政策立案に参加させる等です。高専とは技術的課題(IoT導入等)で協力を仰ぎ、中小企業支援に当たります。KPI例:「大学等との連携協定締結数◯件」「研究成果の地域実装件数◯件」。若者が地域課題に関わることで、その地域への理解と愛着が生まれ、卒業後のUターン就職につながる効果も期待できます。
5-7. 進め方:合意形成・財源確保・KPI設定と検証サイクル
- 住民参加と合意形成:政策を実行する上で一番大切なのは、住民の理解と協力です。行政は説明責任を果たし、早い段階から住民や関係者を交えた話し合いの場(ワークショップ、パブリックコメント、公聴会など)を設けます。対立が予想されるテーマ(施設統廃合など)は、有識者第三者を交えた協議会を立ち上げ、透明性を確保します。住民提案制度や地域円卓会議を通じて草の根の意見を拾い上げ、計画に反映します。合意形成には時間がかかりますが、そのプロセスを大切にすることで実行段階での抵抗を最小化できます。KPI例:「主要政策ごとの住民説明会開催数」「計画策定への市民提案反映件数」。
- 多様な財源の確保:地方自治体の財源は限られますが、国庫補助金・交付金、企業版ふるさと納税、クラウドファンディング等あらゆる資金獲得手段を講じます。例えば、デジタル化には総務省のデジタル田園都市国家構想交付金、防災には国土強靱化予算、観光には観光庁の補助など、各メニューに対応した企画を作り獲得を狙います。また、企業版ふるさと納税では地域の社会課題に取り組む事業を提示し、賛同企業から寄附を募ります(企業側は税控除メリットあり)。市民からのクラウドファンディング(ガバメントクラファン)も近年成功例が多く、記念公園整備や文化財修復など共感を得やすいテーマで実施します。KPI例:「新規確保財源額◯千万円/年」「プロジェクト毎の財源充足率100%」。財源を多様化することで一般財源の負担を減らしつつ事業を前に進めます。
- 目標設定(KPI)とPDCAサイクル:前述のEBPMにも通じますが、全ての重要施策に数値目標(KPI)を設定し、進捗をチェックする仕組みを構築します。半期や年度ごとに目標達成度を点検(Check)し、達成困難であれば原因を分析して計画を見直し(Act)ます。その際、成功している他自治体の事例を参考に改善策を講じます。計画書にはPDCAサイクルを回す仕掛け(評価シートなど)を組み込み、やりっぱなしにしない運用を徹底します。またKPIは市民にも公表し、進捗を共有することで説明責任を果たします。KPI自体も毎年見直し、新たな指標の採用や不要な指標の削除を行い、常に実態に合った評価ができるようにします。
以上が兵庫県内市区町村で実装可能な解決策パッケージです。もちろん自治体ごとに優先順位は異なりますが、「データに基づき、住民と協働し、実効性のある策を講じ、結果を検証して改善する」という一連の流れは共通しています。最後に、これらを着実に前に進めるために、今から各市町村が何をすべきか、ロードマップを提案します。
6. まず何から始めるか:市区町村別の実行ロードマップ
改革には長期の視点が必要ですが、初動の半年~1年で軌道に乗せることが重要です。ここでは 0〜6か月、6〜18か月、18か月以降 の3フェーズに分けて、取り組むべきステップを示します。どの規模の自治体でも応用できる一般的なロードマップです。
フェーズ0〜6か月(準備期間)
- 現状データの収集と分析:まず自自治体の実態を正確に把握します。人口動態、財政指標、インフラ老朽度、空き家件数、防災危険度など、主要分野のデータを集約します(県提供データや国勢調査、市町村要覧の統計などを活用)。分析結果を職員全体で共有し、問題意識を統一します。
- 課題の絞り込みと目標設定:データ分析を元に、特に優先解決すべき課題を3〜5個に絞ります(例えば「空き家対策」「移住促進」「財政健全化」など)。経営トップ(首長)を中心に方向性を議論し、解決目標(KPI)を設定します。「◯年後に空き家率◯%に減少」等、可能な限り数値で具体化します。
- 推進体制の整備:庁内にプロジェクトチーム(横断組織)を設置します。若手・中堅職員を交えたチームで、課題ごとのアクションプランを立案させます。必要に応じ外部有識者(地域出身者や大学教授など)をアドバイザーに迎えます。また首長直轄の「改革推進本部」を設け、定期的に進捗をチェックする体制を整えます。
- 住民への周知と参加募り:この初期段階から、住民にも動きを知らせます。広報紙やウェブサイトで「○○市は今後○○に重点的に取り組みます」と宣言し、住民からアイデア募集や意見公募を行います。説明会やタウンミーティングを開催し、生の声を聞く場も設けます。住民の協力が得られそうな人材(キーパーソン)は、この段階でリストアップしておきます。自治会長や商工会、NPO代表などです。
フェーズ6〜18か月(計画策定と試行期間)
- 具体的計画書の策定:プロジェクトチームが中心となり、アクションプラン(実施計画)を作ります。例えば空き家対策なら「1年以内にモデル地区で◯棟利活用、不要空き家◯棟解体」という内容と、そのための施策(補助金や条例整備等)を盛り込みます。計画書は5年程度の中期計画とし、目標KPI、施策、スケジュール、担当部署、財源などを明記します。住民意見も取り入れ、最終案は議会に諮り承認を得ます。
- 体制・人材の投入:計画実行のため、必要な人員・予算を確保します。組織改編(例えば空き家対策室の新設など)や専門人材の登用(デジタル専門官の採用など)を行います。職員の意識改革研修も並行し、「○○プロジェクト」を全庁あげて進めるムードを醸成します。また、協力隊など外部人材が必要なら、この時期に募集・選考します。
- パイロット事業の実施:計画した施策の中で、すぐ着手できるものは試験的に実施します。例えば移動販売車導入や、小学校区単位の防災訓練など、小規模でも良いので動かしてみます。実施後に効果や課題を検証し、本格実施に備えて改善を加えます。PDCAサイクルの第一回転目です。
- 広報と経過報告:進捗状況は逐次、住民や議会に報告します。「空き家バンク登録件数が◯件になりました」「観光客アンケートで満足度が向上しました」等、わかりやすい指標で成果や課題を伝えます。停滞している場合も正直に公表し、協力を呼びかけます。広報紙で特集を組んだり、SNSで写真や図表とともに発信することで、市民の関心を引き続き引き寄せます。
フェーズ18か月以降(本格実装と継続改善)
- 全域展開・本格実装:試行で効果が確認できた施策は、町全域・全対象に広げます。例えば、デマンド交通を全エリアで導入、空き家対策を全ての地区で実施、といった具合です。本格実装には財源確保が必要になるため、国・県の補助金申請や予算措置をこの段階で行います。必要なら条例改正(例:空き家の適正管理義務条例制定)や、新規計画策定(例えば都市計画マスタープラン修正)も実施します。
- 進捗モニタリングとフィードバック:本格実施後も、定期的なモニタリングを続けます。半年~1年ごとにKPIの達成状況をチェックし、未達の場合は原因分析します。想定外の環境変化(例えばコロナ禍や物価高騰)があれば計画を柔軟に修正します。こうしたフィードバックは職員だけでなく、市民委員や専門家を交えた評価委員会を設けて客観的視点を入れるとベターです。改善策が見えたら速やかに実行(Act)し、第2ラウンドのPDCAに入ります。
- 成果の定着と次の課題へ:計画期間(仮に5年なら)終了時点で、目標達成度を評価します。目標がほぼ達成できた施策はルーチン化し、今後も回る仕組みを作って現業部門に引き継ぎます(例:空き家バンク運用は通常業務化)。逆に未達だった施策は、なぜ効果が出なかったか検証し、やり方を変えるか撤退するか判断します。その上で、次なる課題をまた洗い出し、新しい計画づくりに入ります。こうして継続的な地域課題解決のサイクルを回し続けることが、自治体経営の重要な姿勢となります。
失敗しやすいポイントと回避策:改革推進で陥りがちな失敗として、(a)計画倒れ(作っただけで実行されない)、(b)担当者頼み(キーパーソン1人に依存し、その人の異動で止まる)、(c)住民無視(トップダウン過ぎて反発を受ける)、などがあります。これを避けるには、組織全体で共有する、業務プロセスに組み込む、住民と対話する、の三点が大切です。例えば、計画目標を庁内各課の業績評価に組み込み、異動しても引き継がれるようにする。進捗会議を定例化し、トップが進捗に目を光らせる。住民説明は繰り返し粘り強く、批判も真摯に受け止め柔軟に計画修正する――これらを徹底することで失敗リスクは低減します。
以上がロードマップの概要です。要は「現状認識→計画→実行→評価→改善」の当たり前のサイクルを、住民と共に回していくことが肝要です。長期ビジョンを持ちながらも、小さな成功体験を積み重ねていけば、自治体も地域も着実に変わっていきます。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 移住先を選ぶ際、どんな指標をチェックすれば良いですか?
A. 人口動態や子育て支援策、医療体制などを確認すると良いでしょう。具体的には、その自治体の直近の人口増減(社会増減)や高齢化率を見ると、地域の活力がわかります。また子育て世帯なら保育所待機児童数や子育て支援サービス(医療費補助、学校教育の充実度など)を調べましょう。病院や診療所の数、休日夜間救急の体制も重要です。通勤圏なら公共交通の利便性、車移動なら道路事情も要チェックです。さらに、ハザードマップで災害リスクも確認して、安全性も考慮することをお勧めします。自治体の公式サイトや総務省の統計サイトでこうした情報は公開されています。
Q2. なぜ空き家はこんなに増えているのですか?
A. 人口減少と核家族化が根本要因です。子供が独立して都会へ出て行き、親が亡くなった後に実家が空き家になる、といったケースが典型です。また不動産市場が低迷し、売りたくても売れない家が残るのも原因です。特に郊外の不便な立地や築古物件は買い手・借り手がつきにくく、所有者も利用せず放置されがちです。所有者側の問題として、解体費用や固定資産税の負担を嫌って放置する例もあります(更地にすると税額が上がる制度上の問題も指摘されています)。空き家対策には、こうした構造的要因を踏まえ、利活用を促す支援策や税制の見直しが必要とされています。
Q3. 財政が厳しい自治体では、まず何を優先すべきですか?
A. 歳出の見直し(コスト削減)と重点投資のメリハリです。まずは無駄な支出がないか精査します。行政改革で経費節減(例えば庁舎の省エネ化や出張旅費の見直しなど細かいことから)を図りつつ、大きなところでは公共施設の統廃合で維持費を減らすことが有効です。その上で、地域の将来に必要な投資(例えば企業誘致や子育て支援など)は削らず、むしろ強化します。収入面では、ふるさと納税など自主財源確保にも力を入れます。大事なのは「全てを薄く配分」から脱却し、やることはやり、やめることはやめることです。優先順位を明確にして予算配分すれば、少ない財源でも効果を最大化できます。また住民にも財政状況をオープンに説明し、協力を仰ぐ姿勢が信頼を高めます。
Q4. 防災情報はどこで見られますか?また見方は?
A. 各市町村の防災マップや兵庫県のハザードマップポータルサイトで確認できます。例えば兵庫県の「CGハザードマップ」では、南海トラフ地震の津波浸水想定や洪水浸水想定区域を地図で見られます。市町村もハザードマップをホームページで公開しており、自宅周辺の危険箇所(洪水・土砂災害警戒区域など)や避難所の場所が載っています。見方としては、自分の住む地区が何の災害リスクに晒されているかをチェックし、避難経路や避難先を家族で共有しておくことが大切です。リアルタイムの防災情報は、防災気象情報システムや自治体の防災メール・アプリで入手できます。避難指示のレベルや意味合い(レベル4=避難指示で全員避難等)も日頃から把握しておきましょう。
Q5. 地方の公共交通がなくなりそうです。住民にできることは?
A. まずは利用促進が一つです。「乗らないと廃止になる」という危機感を地域で共有し、買い物や通院にできるだけ既存バス・鉄道を使う努力も大切です。その上で、自治体や事業者に働きかけ、代替交通を一緒に考えます。住民自ら乗合タクシーの運営に関わったり、運転ボランティアとして高齢者送迎を手伝ったりという活動も出ています。地域運営のコミュニティバスは、利用者が運行方法を提案することで利便性が上がり、結果的に存続につながります。また、国や県に対し補助を要望したり、署名活動で地域の声を届けることも有効です。住民が「なくなって困る」という声をきちんと形にして出すことで、行政も動きやすくなります。
Q6. 関西圏で兵庫県が目指す差別化戦略はありますか?
A. 兵庫県は「五国」と言われる多様性こそが強みです。大阪府や京都府が一極集中型なのに対し、兵庫は都市も田舎も抱えており、日本全体の縮図のような構造です。この強みを活かし、「多様性こそ活力」という戦略が考えられます。具体的には、神戸など都市部ではスタートアップや国際ビジネスを誘致し、但馬や淡路では自然や食を売りに観光・移住促進といった具合に、それぞれの地域資源を磨き上げます。そして県全体としては、その多様な魅力をパッケージ化し、「一つの県で都会も田舎も両方味わえる」「住む人のライフステージに合わせて地域を選べる」とPRします。広域連携によって、例えば神戸の企業と西播磨の素材産業を繋ぐなど、県内完結型の経済循環を作ることも差別化になります。要は、兵庫県に住めば一生の間に色んな暮らし方・働き方ができるという懐の深さを戦略的に打ち出すことが重要でしょう。
Q7. ひょうごDX(デジタル化)って具体的に何を目指しているの?
A. 兵庫県は「ひょうごデジタル社会推進計画」を掲げ、行政手続のオンライン化や地域産業のデジタル化支援などを進めています。市町村レベルでは、まず役所の窓口サービスのDX(例えば申請書類の電子化、RPAによる定型業務の自動化)に取り組んでいます。また、防災や交通、医療など生活分野でデータを活用し、きめ細かなサービスを提供するのも目標です。例えばバスロケーションシステムで待ち時間を減らす、電子母子手帳アプリで子育て支援情報を提供する、といった施策です。人材不足の自治体ではDXは避けて通れない課題であり、AIチャットボットで問い合わせ対応を効率化するなど、人を増やさずサービス向上する手段として期待されています。ひょうごDXの最終目標は、住民が行政手続や地域サービスを受ける際の手間を極力なくし、誰もが快適に暮らせるデジタル基盤を整えることです。そのために今は人材育成やネットワーク整備から段階的に進めている状況です。
最後に強調したいのは、兵庫県の各市区町村には課題と同じくらい可能性もあるということです。多様な地域ごとの強みを伸ばし、共通の弱みを皆で支え合えば、人口減時代でも持続可能な地域モデルを作り出せます。データに基づき現状を直視しつつ、住民と行政がともに汗をかいて知恵を出し合えば、“五国”兵庫はさらに魅力的で安定したふるさとになっていくでしょう。行動は小さな一歩からでも、ぜひ今日から始めてみてください。
参考文献
- 兵庫県企画県民部統計課 / 「兵庫県推計人口(令和7年12月1日現在)」記者発表 / 2025年12月26日 / 2026年1月27日参照
- 兵庫県(ひょうごビジョン2050公式サイト) / 「減り続ける人口」(兵庫県の人口動向分析) / 2022年 / 2026年1月27日参照
- 兵庫県企画県民部統計課 / 「平成30年住宅・土地統計調査 兵庫県結果の概要」 / 2019年3月公表 / 2026年1月27日参照
- Go不動産(民間企業) / コラム「兵庫県 地域格差が目立つ空き家問題」 / 2025年7月19日 / 2026年1月27日参照
- 兵庫県福祉部総務課 / 「高齢者保健福祉関係資料(高齢化率)令和7年2月1日現在」 / 2025年10月更新 / 2026年1月27日参照
- 神戸新聞NEXT / 「兵庫県内の推計人口530万6818人 10月1日時点 5カ月連続減少」 / 2025年11月27日 / 2026年1月27日参照
- 神戸新聞NEXT / 「JR赤字路線公表で波紋 沿線から存続への願い強く『廃線なら通学できない』」 / 2022年7月1日 / 2026年1月27日参照
- 前田裕斗(医療ガバナンス学会 MRIC記事) / 「意外な医療過疎地域、兵庫~関西修行記 vol.2~」 / 2015年12月21日 / 2026年1月27日参照
- 兵庫県防災企画局 / 「兵庫県南海トラフ巨大地震・津波被害想定(概要)」 / 2014年6月公表、2025年10月更新 / 2026年1月27日参照
- 佐用町企画防災課 / 「佐用町豪雨災害(平成21年8月)」被害状況リポート / 2010年発行 / 2026年1月27日参照
- 兵庫県市町村振興協会 / 「令和7年 兵庫県内市町財政の状況」 / 2023年3月公表 / 2026年1月27日参照
- 兵庫県企画県民部地域政策課 / 「兵庫県における地域DXの現状と課題」(第1回ひょうご地域DX推進検討会資料) / 2024年7月9日 / 2026年1月27日参照
- 兵庫県総務部地方課 / 「過疎地域持続的発展方針(兵庫県版)令和7年改定」 / 2025年11月策定 / 2026年1月27日参照
- 兵庫県産業労働部 / 「兵庫経済の現状と課題」(資料4) / 2018年8月6日 / 2026年1月27日参照
- 兵庫県企画県民部計画課 / 「産業構造の変化 – ひょうごビジョン2050」 / 2022年 / 2026年1月27日参照
茨城県44市町村の現状と課題をデータで読む――人口減少時代の地域戦略
茨城県は32市・10町・2村の計44市町村から成り、県北・県央・鹿行・県南・県西の5地域に区分されます。2025年10月時点の県人口は約279万1,000人で、9月中に454人減少しました。本記事では、この茨城県の市町村が直面する人口減少・高齢化や産業・財政・インフラなどの課題を、最新データと一次資料から徹底検証し、実行可能な解決策を探ります。結論として、地域ごとの特性に応じた「コンパクト+ネットワーク」戦略や広域連携による行政効率化が鍵となります。その具体像を以下で詳述します。 要点(ポイント): 人口 ...
青森県40市町村の現状データと課題・対策が一目でわかるレポート
青森県では人口減少と高齢化が全国でも極めて深刻です。2020年の国勢調査時点で県人口は約123.8万人で、2015年比 -5.3%(全国平均 -0.7%)と全国トップクラスの減少率でした。さらに2025年1月1日現在で118万5,767人と120万人を割り込み、前年から1.64%減(秋田県に次ぐ全国2位)となっています。若年層の県外流出(社会減少率0.37%)が特に大きく、これは全国最悪です。出生数の急減により2040年頃には人口が90万人を下回り、高齢化率は40%超に達すると推計されています。 こうした ...
静岡県の市町村:現状と課題、そして解決策
静岡県内の全35市町(政令指定都市の行政区を含む)の現状をデータで俯瞰し、直面する共通課題と地域特有の問題を洗い出します。また、それらの根本原因を分析した上で、自治体・企業・住民が協働して取り組める実行可能な解決策を提示します。以下のポイントが本記事の結論です。 人口減少と高齢化の急進展: 静岡県の総人口は2007年(平成19年)の約379.6万人をピークに減少へ転じ、2023年10月時点で約355.3万人まで縮小しました1。全県平均の高齢化率は3割を超え、一部の町では人口の半数以上が65歳以上という深刻 ...
兵庫県の市区町村:現状・課題・解決策まとめ
この記事で分かること(要旨) 兵庫県内41市町の最新動向:2025年末時点の推計人口は約530万人で減少傾向。地域により高齢化や社会増減の状況が異なります。 地域ごとの特徴と差:神戸・阪神など都市部は人口・産業が集中する一方、但馬・丹波・淡路などでは過疎化・高齢化が進み、空き家率も20%以上の地域があります。 市区町村が直面する課題:人口減少と少子高齢化、空き家・老朽インフラ、財政硬直化、南海トラフ地震や豪雨災害リスク、公共交通の縮小、産業人材不足、行政のデジタル化停滞など、多岐にわたります。 地域別の優 ...
大阪府の市区町村を取り巻く状況
大阪府は関西圏の中心に位置し、人口約880万人(2020年国勢調査)を擁する日本有数の大都市圏です。東京都に次ぐ規模の経済圏であり、製造業からサービス業まで多彩な産業が集積しています。一方で、大阪府内には大阪市(政令指定都市)や堺市(政令指定都市)を筆頭に、中核市(例:東大阪市、枚方市など)、一般市、さらには町村(唯一の村である千早赤阪村を含む)まで、規模も性格も様々な基礎自治体が存在します。大都市から人口数千人規模の町村までが混在する状況は、大阪府の地域課題を考える上で特有の多様性となっています。 近年 ...



