
「Z世代を雇用しない企業が増えている」という話を見て、不安になった人もいるでしょう。結論からいうと、日本企業全体でZ世代を一律に採用対象から外す動きが広がったと示す公的統計は、2026年8月23日現在確認できません。一部企業の新卒採用抑制や、米国で最近の大学卒業者を敬遠する採用担当者調査はありますが、「新卒を減らすこと」と「Z世代を世代だけで排除すること」は別です。募集・採用で実質的に年齢を基準にする場合は、法律上の注意も必要です。
直接回答: 日本企業全体でZ世代を一律に雇用しなくなったと示す公的統計は確認できません。一部企業の新卒採用抑制や米国の最近の大卒者への否定的調査はありますが、新卒採用の削減とZ世代の排除は別の問題です。
この記事の結論
| ポイント | 結論 |
|---|---|
| 日本企業はZ世代を採らなくなった? | 全国的な一律排除は確認できない |
| 新卒採用は消えている? | 大卒求人倍率は低下したが1.62倍、大学就職率は98.0% |
| Z世代はすぐ辞める? | 大卒3年以内離職率は33.8%だが、同程度以上の離職率は過去にも長く存在 |
| AIで新卒は不要になる? | 日本企業1,579社の90.3%は「新卒採用数は変わらない」、減るは4.0% |
| Z世代を採用しないのは自由? | 実質的な年齢基準なら募集・採用時の年齢制限禁止との関係が生じる |
「Z世代を雇用しない」企業は本当に増えているのか
日本企業全体で、Z世代そのものを理由に採用対象から外す企業が増えているとは確認できません。
まず分ける必要があるのは、次の二つです。
「2027年卒の採用人数を前年より減らす」は採用計画の変更です。一方、「1990年代後半以降に生まれた人は採らない」は世代・年齢層そのものを選考基準にする行為です。同じものではありません。
リクルートワークス研究所「大卒求人倍率調査(2027年卒)」によると、2027年卒の大卒求人倍率は1.62倍でした。2026年卒の1.66倍から0.04ポイント低下し、2年連続の低下です。ただし、研究所自身は企業の採用意欲について「高い状況が続いている」と評価しています。
厚生労働省・文部科学省「令和8年3月大学等卒業者の就職状況」でも、2026年3月卒業の大学生の就職率は98.0%で、前年同期と同水準でした。就職率は就職希望者に対する就職者の割合なので「卒業者全員の98%」という意味ではありませんが、若者への採用需要が全国から消えたというデータでもありません。
表:「Z世代を雇用しない」という主張の検証
| 主張 | 判定 | 根拠 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 日本企業はZ世代を採用しなくなっている | 日本では確認できない | 大卒求人倍率1.62倍、大学就職率98.0% | 一部企業の削減と全国動向は別 |
| Z世代はすぐ辞める | 根拠が限定的 | 2022年大卒の3年以内離職率33.8% | 過去にも30%台が長く続く |
| Z世代は仕事ができない | 日本では確認できない | 企業側の否定的な認識調査は存在 | 認識と能力測定は別 |
| AIで若手の仕事がなくなる | 一部確認できる | 米国のAI曝露職では22~25歳の採用に弱さ。日本でAIによる新卒採用減を見込む企業は4.0% | 米国と日本を混同しない |
| Z世代を採用対象から外しても問題ない | 誤解を招く | 募集・採用で年齢による制限は原則禁止 | 法令上の例外あり |
なぜ「Z世代を雇用しない」が話題になったのか
話題の背景には、一部主要企業の新卒採用抑制、即戦力採用、AI、米国の刺激的な採用担当者調査、そして「静かな解雇」という言葉が重なっています。ただし、それぞれ別のデータです。
主要企業の新卒採用を減らす動き
共同通信による主要企業111社の調査として複数媒体が報じた内容では、2027年度入社の新卒採用を「減らす」とした企業が25社、約23%、「増やす」が18社、約16%とされました。「減らす」が「増やす」を上回ったことが注目されました。減らす理由としてデジタル化・省人化、生成AIを含む業務効率化や、キャリア採用の強化を挙げた企業があったとされています。
ただし、これは主要企業111社の調査で、日本の全企業を母集団とする統計ではありません。また「新卒採用人数を減らす」のであって、「Z世代だから採用しない」と回答した調査ではありません。
より幅広い企業を対象としたマイナビの2027年卒企業新卒採用予定調査では1,579社が回答し、採用予定数は「増やす」が23.0%、「前年並み」が63.0%でした。採用意欲に鈍化はみられるものの、「新卒をやめる」とは異なる状況です。
「静かな解雇」という言葉の広がり
2026年春には、「静かな退職」に対する「静かな解雇」という表現と、Z世代の新卒採用抑制を組み合わせた記事が検索結果で注目されました。
ただし、「静かな解雇」は労働契約法などに定義された正式な法律用語ではありません。一般には、仕事を与えない、昇進・評価の機会を狭めるなどして本人の退職を促す状況を表すビジネス・メディア用語として使われますが、実際の法的問題は解雇、配置転換、退職勧奨、ハラスメントなど個々の行為ごとに判断する必要があります。
したがって、「静かな解雇が広がっている」ことと「企業がZ世代を正式に採用対象から外している」ことも同義ではありません。
米国の採用担当者調査
「企業がZ世代を採らなくなった」という記事で注意したいのが、米国の商業調査です。
Intelligent.comの2025年向け調査は、2024年12月30日にPollfishを使い、米国でentry-level採用に関与する管理職1,000人を調査しました。そのうち12%が2025年に「recent college graduates」を避け、より年上の候補者を優先すると答えています。
しかし同じ調査で、97%は2025年にentry-level職を採用すると回答しています。また、質問対象は「最近の大学卒業者」であって、10代から20代後半までを含む「Z世代全員」ではありません。
2024年8月のIntelligent.comの別調査でも、966人の米国企業リーダーのうち、翌年に最近の大学卒業者を採る予定が84%、採らないが約5%、不明が10%でした。刺激的な「1 in 6 companies are hesitant」という見出しだけで、「多くの会社がZ世代を採用しない」と解釈するのは不正確です。
日本と海外の調査は同じではない
| 調査 | 国 | 対象者 | 回答数 | 調査内容 | 日本への適用上の注意 |
|---|---|---|---|---|---|
| 厚労省・文科省 大学等卒業者就職状況 | 日本 | 大学等 | 標本調査 | 就職状況 | 日本の新卒市場を直接示す |
| マイナビ 2027企業採用予定 | 日本 | 企業 | 1,579社 | 新卒採用計画・AI | 利用企業等へのWEB調査 |
| Intelligent 2024年12月 | 米国 | entry-level採用管理職 | 1,000人 | recent college graduatesへの姿勢 | 日本企業、Z世代全体へ一般化不可 |
| ResumeTemplates 2025年6月 | 米国 | 採用に関与する管理職 | 1,115人 | Gen Z候補のghosting | 商業オンライン調査、日本には直接適用不可 |
| Stanford DEL 2026 | 米国 | 給与データ上の労働者 | 数百万人規模 | AI曝露度と若年雇用 | 記述的研究で因果推定ではない |
SNSの体験談は統計ではない
検索すると、「Z世代は急に辞めた」「内定後に連絡が取れなくなった」「若手を採りたくない」といった個人の投稿も見つかります。しかし、SNS投稿は「実際にそういう体験をした人がいる」ことは示せても、その経験が日本のZ世代全体にどれだけ多いかは示せません。
反対に、「自分の会社のZ世代は優秀だ」という投稿だけから、世代全体を高く評価することもできません。本稿ではSNSを検索者の不安や言葉遣いの把握には使いますが、社会全体の事実認定には使いません。
Z世代とは何年生まれを指すのか
Z世代には、日本の法律や公的統計で統一された唯一の出生年定義はありません。
Pew Research Centerはミレニアル世代を1981~1996年生まれとし、1997年以降を次世代として扱っています。さらに初期の分析では同世代を16年間の範囲として分析しており、一般に使われる「1997~2012年」という区切りにつながります。ただしPew自身も、世代区分は分析上の構成概念で、境界には不確実性があると説明しています。
この記事では便宜上、1997~2012年生まれをZ世代の目安とします。2026年には、おおむね13~29歳です。
つまり、Z世代には大学生や新卒社員だけでなく、中学生・高校生、20代後半の社会人も含まれます。「Z世代」と「新卒者」、「Z世代」と「15~34歳の若年労働者」は重なる部分があっても同じ集団ではありません。
この区別をしないと、「大卒新入社員の調査結果」を「Z世代全員の性格」と誤読してしまいます。
日本の新卒採用市場は本当に縮小しているのか
採用意欲にやや鈍化する指標はありますが、「新卒市場が全国的に急縮小した」とまではいえません。
大卒求人倍率は1.62倍
リクルートワークス研究所による2027年卒の大卒求人倍率は1.62倍です。2025年卒1.75倍、2026年卒1.66倍から2年続けて低下しました。
求人倍率が低下したことは、学生側にとって前年より売り手市場が弱まった可能性を示します。しかし1倍を上回っており、研究所は全体として企業の採用意欲が高い状態が続くと評価しています。
また、全体の求人倍率が高くても、人気企業、人気職種、地域、企業規模によって難易度は異なります。「求人倍率が1倍を超える=希望する会社へ誰でも入れる」という意味ではありません。
大学生の就職率は98.0%
2026年4月1日時点の大学生就職率は98.0%で、前年と同じでした。短期大学は97.4%、大学・短大・高専全体でも98.0%でした。
ここでいう就職率は、就職を希望している学生のうち就職した人の割合です。進学者や就職を希望しない人を含む「全卒業者の98%が就職」という意味ではありません。
それでも、「Z世代だから全国的に採用されなくなった」という説明とは整合しません。
労働市場全体も求人超過が続く
厚生労働省の2026年6月の一般職業紹介状況では、有効求人倍率は1.18倍、新規求人倍率は2.16倍でした。これはハローワーク全体の指標で新卒専用ではありませんが、日本の労働需要全体が消滅した状況でもありません。
総務省の2026年6月労働力調査では完全失業率は2.5%でした。こちらもZ世代専用の統計ではない点に注意が必要です。
日本の若年採用を示す主要指標
| 指標 | 最新値 | 対象 | 前年・過去との比較 | 読み方の注意 |
|---|---|---|---|---|
| 大卒求人倍率 | 1.62倍 | 2027年卒 | 2026年卒1.66倍から低下 | 全企業・職種が同じ採用難度ではない |
| 大学就職率 | 98.0% | 2026年3月卒 | 前年同期比横ばい | 就職希望者ベース |
| 有効求人倍率 | 1.18倍 | ハローワーク市場、2026年6月 | 前月比+0.01 | 新卒専用ではない |
| 新規求人倍率 | 2.16倍 | 同 | 前月比+0.05 | 同上 |
| 大卒3年以内離職率 | 33.8% | 2022年3月卒 | 2021年卒34.9%から低下 | Z世代だけの調査ではない |
| AIで新卒採用数が「減る」 | 4.0% | マイナビ回答企業1,579社 | 「変わらない」90.3% | 実績ではなく企業の見通し |
AIで新卒採用はすでに大幅に減ったのか
日本については、「AIで新卒採用が大幅に消えた」とする証拠は確認できません。
マイナビが2026年1月26日~2月8日に1,579社を調査したところ、AIの浸透による新卒採用数への影響について、90.3%が「変わらない」、5.7%が「増える」、4.0%が「減る」と回答しました。
一方、仕事内容は変わり始めています。同調査では、従来新入社員に担当させてきた仕事のうち、「データ入力」は57.0%、「集計業務」は53.8%、「定型的な資料作成」は50.7%の企業が「新入社員に任せていてAIで代替可能」と回答しました。これは実際に全件がAIへ置き換わった比率ではなく、企業側が代替可能と考えている割合です。
同じ調査で、AI時代でも新卒採用を続ける理由は「若手人材の長期育成を重視しているため」が65.1%で最多でした。AIがあるから若手そのものが不要になる、という単純な構図ではありません。
Z世代を雇いたくないと言われる主な理由
「Z世代を雇いたくない」と語る企業側の理由には、事実として測れるものと、担当者の印象にとどまるものがあります。
特に重要なのが、「誰が誰について答えた調査か」です。
東京商工会議所の2025年調査をJILPTが紹介した結果では、Z世代の若手社員を指導・育成する際に「ストレスやトラブルに対して打たれ弱い」と答えた企業が42.2%、「価値観や就労観が分からない」が35.0%でした。
しかしこの調査は、Z世代本人の心理耐性を試験したものではありません。2025年3月3~21日に、過去に東商の研修講座を利用した5,777社へ調査し377社が回答、回答率は6.5%で、回答企業の75.4%は100人未満でした。つまり、企業の人材育成担当者が若手をどう感じているかという認識調査です。
企業側が感じる課題と確認できる強み
| 企業側の認識・傾向 | 根拠資料 | 世代特性と断定できるか | 対応策 |
|---|---|---|---|
| 「打たれ弱い」42.2% | 東商・JILPT | できない。担当者の認識 | 失敗時の改善手順とフィードバックを具体化 |
| 「価値観・就労観が分からない」35.0% | 同上 | できない | 1on1等で本人の希望を直接確認 |
| IT・デジタルスキルがある49.9% | 同上 | 全員には一般化不可 | DX・AI活用等で実務機会を与える |
| 効率性を重視する26.5% | 同上 | 全員には一般化不可 | 業務改善の提案を評価する |
| 自己成長意欲が高い24.7% | 同上 | 同調査では「低い」とする企業も18.0% | 個人差を前提に育成目標を設定 |
| 勤務地・配属を明確にしてほしい | 電通調査:勤務地88.0%、職種・配属85.3% | 調査対象学生の傾向 | 採用時に配属・転勤条件を具体化 |
| 給与より自由だけを重視する | マイナビでは安定55.4%、給料26.6% | 支持されない | 待遇・働き方を両方説明 |
「連絡をしない」「内定後に消える」はどうか
日本でZ世代だけの「内定後ghosting率」を全国代表標本で示す公的統計は確認できません。
米国のResumeTemplates.comが2025年6月に採用に関与する管理職1,115人を調査したところ、54%が「Gen Z候補から求人オファー後にghostingされた経験がある」と回答しました。具体的には、オファーを受けた後に書類手続きが終わらない、手続きを終えた後に初日に来ない、数日働いて連絡なく来なくなるなど、複数の段階をまとめています。
しかし、これは日本のデータではありません。また「内定を正式に辞退する」「初日に無断欠席する」「入社後に無断で来なくなる」「通常の早期離職」は、採用管理上も法律上も別の行動です。
若手側にも、約束した期限への返信、遅刻・欠席時の連絡、辞退意思の明確な連絡は必要です。ただし、一部の事例から世代全員を選考対象から外す根拠にはなりません。
Z世代は本当に「すぐ辞める」のか
「大卒新入社員の約3人に1人が3年以内に離職する」のは事実ですが、これはZ世代になって突然生まれた現象ではありません。
厚生労働省によると、2022年3月に大学を卒業して就職した人の3年以内離職率は33.8%でした。高校卒は37.9%、短大等は44.5%です。
重要なのは長期比較です。厚労省の時系列では、大卒3年以内離職率は1995年卒32.0%、2000年卒36.5%、2004年卒36.6%、2010年卒31.0%、2015年卒31.8%、2019年卒31.5%、2021年卒34.9%、2022年卒33.8%でした。
| 大学卒業年 | 3年以内離職率 |
|---|---|
| 1995年 | 32.0% |
| 2000年 | 36.5% |
| 2004年 | 36.6% |
| 2010年 | 31.0% |
| 2015年 | 31.8% |
| 2019年 | 31.5% |
| 2020年 | 32.3% |
| 2021年 | 34.9% |
| 2022年 | 33.8% |
この推移を見ると、「3年で約3割辞める」現象はZ世代より前から続いています。現在の若者の早期離職をすべて「Z世代の性格」で説明するのは難しいと分かります。
さらに離職率は企業規模で大きく違います。2022年3月大卒者の場合、従業員5人未満の事業所は57.5%、5~29人は52.0%、30~99人は41.9%、100~499人は33.9%、500~999人は31.5%、1,000人以上は27.0%でした。
産業別でも、宿泊・飲食サービス55.4%、生活関連サービス・娯楽54.7%などと差があります。教育・学習支援44.2%、医療・福祉40.8%、小売40.4%でした。
この差は、「何年生まれか」だけでなく、企業規模、仕事の性質、職場環境、雇用条件なども見る必要があることを示しています。
なお、厚労省の離職率は雇用保険記録を基に、最初に就職した事業所を3年以内に離れた人を数えます。退職理由や退職後の進路を問わず離職として計上されます。したがって、「全員が職場への不満で辞めた」という数字ではありません。
企業が見落としやすいZ世代の強み
否定的な評価だけを取り上げるのもデータの読み方として公平ではありません。
東京商工会議所の企業向け調査では、Z世代が他世代より優れていると企業が感じる点として、「ITやデジタル関連のスキルがある」が49.9%、「効率性を重視した発想」が26.5%、「自己成長に対する意欲が高い」が24.7%、「柔軟性がある」が14.3%でした。
もちろん、これも「Z世代全員がデジタルに強い」と証明する客観テストではなく、企業側の認識です。しかし同じ調査の「打たれ弱い」は引用するのに、「IT・デジタルに強い」は無視するのでは、調査の利用方法として偏ります。
AI時代には若手のデジタル活用自体が採用価値になる可能性もあります。米国のResumeTemplates調査では、AI経験を採用上有益と見る企業が多数でした。日本でもマイナビ調査では、AI時代に新卒社員へ求める能力として「AIを補完し、人との協働を円滑にするコミュニケーション力」が50.0%で最多でした。
企業に必要なのは「Z世代だからデジタルが得意」と決めつけることではなく、候補者ごとに実際のAI利用経験、情報検証力、業務改善力などを確認することです。
Z世代を雇用しない方針は違法なのか
「Z世代を採用しない方針は必ず違法」と一律にはいえませんが、世代名が実質的な年齢基準として使われれば、募集・採用時の年齢制限禁止との関係が生じます。
募集・採用時の年齢制限は原則禁止
厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」は、労働施策総合推進法に基づき、事業主が募集・採用で年齢による制限を設けることを原則禁止していると説明しています。
さらに重要なのは、求人票だけ「年齢不問」にすればよいわけではない点です。厚労省は、求人票を年齢不問としながら実際には年齢を理由に応募を断ったり、書類選考・面接で年齢を基準に採否を判断したりすることも、法の規定に反すると明記しています。
年齢制限には例外がある
原則禁止には例外があります。代表的なのは、定年年齢を上限に期間の定めのない雇用を募集する場合、法律上特定年齢が必要な業務、長期的なキャリア形成を目的に若年者等を無期雇用・経験不問で募集する場合、技能継承のため特定年齢層が極端に少ない場合などです。芸術・芸能上の表現や、60歳以上など国の雇用促進施策に関する例外もあります。
したがって、「年齢条件は何があっても禁止」という制度でもありません。
「Z世代」という言葉なら問題ないのか
「Z世代」という言葉は法律上の年齢区分ではありません。
しかし、たとえば社内方針として「1997年以降生まれは採用しない」「20代のZ世代を一律に落とす」と運用すれば、名前を「世代」に変えただけで実質的には年齢を選考基準にしている可能性があります。厚労省の年齢制限禁止の説明に照らせば、問題になり得ると考えられます。
一方、「この職務には特定の専門資格が必要」「実務でこの技術を使用した経験が必要」と、年齢ではなく職務に必要な能力・経験を評価することは別の話です。
個別案件が違法かどうかは、募集条件、職務内容、実際の選考理由、例外事由、証拠などによって異なるため、本記事だけで判断はできません。
採用後の解雇は別問題
募集・採用時の年齢制限と、採用後の解雇は別の法律問題です。
労働契約法16条では、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合、権利濫用として無効になるとされています。
試用期間であっても、「気に入らない」「Z世代らしいから」と自由に解雇できる制度ではありません。能力不足を理由にする場合も、職務内容、求められた能力、評価、改善機会、教育、本人の行動など個別の事情が問題になります。
「静かな解雇」という表現も、法律上の解雇と同じではありません。
相談先
世代や年齢を理由に明示的に応募を拒否された場合は、求人画面、メール、チャット、選考担当者から説明された内容などを保存しておくと、相談時に事実関係を整理しやすくなります。
募集・採用時の年齢制限は都道府県労働局やハローワークに相談できます。労働条件、解雇、退職勧奨、いじめ・嫌がらせなど幅広い問題は総合労働相談コーナーも相談先になります。
就職活動中のハラスメントについては、NEWS DAILYの就活セクハラの具体例と2026年10月からの企業義務も参考にしてください。2026年10月1日からは求職者等へのセクシュアルハラスメントについて企業の防止措置義務が施行されます。
企業はZ世代を排除する代わりに何を見直すべきか
「Z世代だから採らない」という判断は、企業自身の採用問題を隠してしまう可能性があります。
なぜなら、同じ世代でも職務適性、経験、学習力、連絡の丁寧さ、ストレスへの対処、AIスキルは大きく違うからです。採用の失敗を減らすには、世代ではなく「その仕事に何が必要か」まで分解する方が実務的です。
採用判断で適切な基準・避けるべき基準
| 判断材料 | 適切性 | 理由 | 改善例 |
|---|---|---|---|
| 職務に必要な知識・技能 | 高い | 仕事との関連が明確 | 必須・歓迎条件を分ける |
| 過去の行動・成果 | 高い | 実際の行動を確認できる | STAR形式などで具体例を聞く |
| ワークサンプル・実技課題 | 高い | 実際に近い能力を確認 | 全候補者へ同条件で実施 |
| 共通質問・共通評価表 | 高い | 候補者間の比較基準をそろえられる | 5段階評価と根拠メモ |
| AI使用経験 | 職務次第 | 使用自体より検証・修正能力が重要 | AI出力の誤りを直す課題 |
| 「なんとなく合いそう」だけ | 低い | 評価者の先入観が入りやすい | 「カルチャーフィット」を行動項目に分解 |
| 「Z世代だから」 | 避ける | 個人能力を見ておらず、実質的年齢基準となる可能性 | 職務に必要な要件へ置き換える |
| 「若いから忍耐力がない」 | 避ける | 世代への推測 | 困難への対応経験を具体的に聞く |
採用要件を明確にする
まず、候補者を探す前に「この仕事で成果を出すには何が必要か」を書き出します。
たとえば「コミュニケーション力がある人」では曖昧です。「顧客の要望を確認し、期限と対応内容を文章で共有できる」「問題が起きたとき当日中に上司へ報告できる」まで分ければ、世代に関係なく評価できます。
面接官ごとに質問が大きく異なる場合も、判断が「印象」に引っ張られやすくなります。共通質問、共通の評価項目、具体的な採点基準を決める構造化された面接が実務上有効です。
入社前に「何を約束でき、何を約束できないか」を伝える
採用ミスマッチは、入社後だけの問題ではありません。
電通の2025年調査では、2025・2026年卒予定の大学生・大学院生483人のうち、入社後の勤務地・エリアを確約してほしいと答えた人が88.0%、職種・配属先は85.3%でした。内定辞退理由でも「給料や福利厚生への不満」23.1%、「勤務地・転勤への不安」20.2%が上位でした。
これは「Z世代がわがまま」というより、どこで何をするかを採用前に知りたい学生が多いというデータです。
会社側は、仕事内容、勤務地、転勤可能性、配属の決め方、給与、残業、評価基準、研修、キャリアパスを、分かる範囲で具体的に伝えることが重要です。決まっていない項目は「決まっていない」と伝えます。
仕事の良い面だけでなく、繁忙期、顧客対応、異動可能性など現実的な情報も説明する「リアリスティック・ジョブ・プレビュー」の発想が、期待値のずれを減らすうえで役立ちます。
指示を具体化する
「自分で考えてやって」「いい感じにまとめて」と依頼した後、完成した仕事を見て「最近の若手は指示待ちだ」「言われたことしかできない」と評価していないかも確認が必要です。
最初は、目的、期限、優先順位、完成条件、相談してほしいタイミングを明示します。そのうえで、慣れるにつれて本人に任せる範囲を広げる方が、能力と指示不足を切り分けやすくなります。
具体的な確認方法は、NEWS DAILYの上司の指示が曖昧なときの確認方法と文例でも整理しています。
入社後30日・60日・90日の目標を決める
NEWS DAILYでは、若手社員の初期育成について、少なくとも次のような段階目標を推奨します。
入社30日では「業務ルール、相談先、基本ツールを理解する」、60日では「指導を受けながら定型業務を完了する」、90日では「担当業務の一部を自走し、問題時に報告できる」といった形です。
「一人前になれ」という抽象的な要求ではなく、到達点を観察可能な行動にします。
厚労省の2023年若年者雇用実態調査でも、若年正社員の定着のため、職場でのコミュニケーション、採用前の詳細な情報提供、能力・適性に合った配置、研修などを行う事業所が多くみられました。これは各対策の因果効果を証明する調査ではありませんが、企業が定着を「本人の我慢」だけの問題として扱っていないことは分かります。
退職理由を「世代別」だけで分析しない
「Z世代の離職率」だけを出すより、部署、職種、上司、勤務地、入社経路、勤続月数、残業、配属希望との一致などで分けた方が改善点を探しやすくなります。
たとえば特定部署だけ半年以内の離職が多ければ、「Z世代だから」より、仕事量、管理職の指導方法、採用時説明とのずれを先に点検すべきでしょう。
Z世代の求職者ができる対策
採用側に改善すべき点があっても、求職者側の基本的な職業行動が不要になるわけではありません。
特に、米国の採用担当者調査で否定的な印象として挙がる「連絡」「時間」「フィードバック」などは、世代論に反論することより、本人が行動で不安を消した方が採用では有利です。
返信には期限を設け、遅れる場合は先に連絡します。説明会や面接へ行けなくなったら無断欠席ではなく辞退・日程変更を伝えます。内定を辞退すると決めたら、連絡を止めるのではなく意思を明確に伝えます。
仕事の指示が分からない場合は、「何をすればよいですか」とだけ聞くより、「目的は○○、期限は金曜日、完成形はA4一枚という理解で合っていますか」と確認すると、双方の認識を合わせやすくなります。
就活前には、自分が譲れない勤務地、職種、転勤、給与、働き方を整理しておくことも重要です。電通やマイナビの調査でも、勤務地、配属、安定、給与は現在の学生にとって重要な項目です。
学生時代の経験を話すときは、「サークルを頑張った」「AIを使った」で終えず、何が問題で、自分が何をし、結果がどうなったかまで説明します。
AIについても、「ChatGPTが使えます」だけでは差別化しにくくなります。AIの回答に誤りがないか確認し、元資料を調べ、修正し、最終的な判断を自分で説明できることが重要です。
応募先には、研修内容、配属方法、評価基準、若手の定着状況、異動・転勤、上司との面談制度などを質問して構いません。
AI時代に若手採用はなくなるのか
若手採用全体がなくなると断定できる証拠はありません。ただし、若手が最初に担当してきた定型業務の一部は大きく変わる可能性があります。
ここでは「事実」「企業の意向」「編集部の分析」を分けます。
事実:米国の一部若手職では弱さが確認されている
Stanford Digital Economy Labが2026年8月に更新した研究では、ADPの数百万人規模の給与データを使い、AIへの曝露が高い職種で働く22~25歳の雇用が、低曝露職の同年代と同じペースで推移した場合の水準より約19%低くなっていました。差は主に離職増ではなく採用の弱さを通じて生じているとしています。
ただし研究者は、経済全体で広範な雇用喪失が起きた証拠はないとも明記しています。また結果を「初期の記述的指標」と位置付け、AIによる因果効果そのものとは断定していません。
米国テックではより大きな変化があります。SignalFireの2026年分析では、Tech Majorsのnew grad/entry-level採用は2019年比で約65%減、early-stage startupでは約76%減としています。
ただし、これは米国テック業界の話です。AIだけでなく、2022年までの過剰採用からの反動、金利、資金調達環境、組織の小型化などが重なります。
企業の意向:日本では90.3%が「新卒採用数は変わらない」
日本では状況が違います。
2026年のマイナビ企業調査では、AIの浸透によって新卒採用数が「減る」と回答した企業は4.0%、「増える」が5.7%、「変わらない」が90.3%でした。
一方、データ入力、集計、定型資料作成などはAIで代替可能だと考える企業が半数を超えています。したがって、変わるのは「新人を採るかどうか」だけでなく、新人に最初に何を経験させるかです。
編集部の分析:入口業務が消えるなら育成方法を作り直す必要がある
従来は、データ入力、議事録、集計、簡単な資料作成を通じて、若手が業界知識や社内ルールを覚える職場がありました。
AIがこれらを短時間で処理するようになった場合、「単純作業が減ってよかった」で終わるとは限りません。その作業が新人の学習機会でもあったなら、代わりに何を経験させるかを設計する必要があります。
企業が若手採用を長期間止めれば、数年後・十数年後に中堅社員、管理職、専門人材の社内候補が薄くなるリスクもあります。これは将来に関する編集部の分析であり、すべての企業に同じ結果が起こると断定するものではありません。
AI時代の若手には、入力作業そのものより、顧客の状況を理解する力、AIへ適切に指示する力、出力の間違いを見抜く力、現場で判断する力、人と合意形成する力がより重要になる可能性があります。マイナビ調査で企業が「AIを補完するコミュニケーション力」を最も多く挙げたこととも整合します。
まとめ
「Z世代を雇用しない企業が増えている」という表現は、そのまま日本企業全体の事実として受け取るべきではありません。
確認できるのは、一部主要企業で新卒採用人数を減らす動きがあること、米国では最近の大学卒業者を敬遠する採用担当者が一定数いること、米国テックやAI曝露度の高い職種でentry-level採用が弱くなっていることです。
一方、日本の2027年卒大卒求人倍率は1.62倍、2026年3月卒大学生の就職率は98.0%です。日本企業全体がZ世代を採用しなくなったという公的統計は確認できません。
「Z世代はすぐ辞める」という説明にも注意が必要です。2022年大卒の3年以内離職率は33.8%ですが、2000年代には35~36%台の年もあり、約3割の早期離職はZ世代以前から続いています。企業規模・産業による差も非常に大きく、世代だけで原因を説明することはできません。
募集・採用では年齢制限が原則禁止されています。「Z世代」という世代名を、実質的な年齢基準として一律排除に使うことには法的な注意が必要です。ただし年齢制限には例外があり、個別事案の違法性は事実関係によって異なります。
企業にとって重要なのは、「何年生まれか」より、仕事に必要な能力を定義し、配属・勤務地・評価・仕事内容を明確にし、若手を育成できる仕組みを作ることです。
求職者側も、返信、期限、報告、欠席時の連絡、分からない指示の確認といった基本行動を丁寧にし、自分の経験やAI活用力を具体的な行動と成果で説明する必要があります。
「企業が悪い」「Z世代が悪い」という二択ではなく、採用要件、仕事の説明、配属、上司の指示、フィードバック、教育体制、待遇と、本人の職業行動を一つずつ分けて見ることが、世代論より有効な出発点です。
主要参考資料
- 厚生労働省・文部科学省「令和8年3月大学等卒業者の就職状況」
- リクルートワークス研究所「大卒求人倍率調査(2027年卒)」
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)」
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」
- 厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」
- マイナビ「2027年卒 企業新卒採用予定調査」
- マイナビ「2027年卒大学生就職意識調査」
- 電通「Z世代就活生 まるわかり調査2025」
- 厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」
- Intelligent.com 米国採用管理職調査
- ResumeTemplates.com Gen Z ghosting調査
- SignalFire State of Tech Talent Report 2026
- Stanford Digital Economy Lab「Canaries in the Coal Mine?」
注意書き: 本記事は2026年8月23日現在の公開資料に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の採用選考、解雇、退職勧奨その他の事案についての法律相談ではありません。個別事案は事実関係や適用される法令・例外によって判断が異なります。必要に応じて都道府県労働局、ハローワーク、総合労働相談コーナー、弁護士等へ相談してください。
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