
痛風の基本ポイント(概要)
ポイント | 解説 |
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痛風とは | 血中尿酸値の上昇(高尿酸血症)により関節に尿酸塩結晶が沈着し、激しい関節炎発作を起こす疾患。典型的には足の親指のつけ根が赤く腫れて強い痛みを生じる(痛風発作)。慢性化すると痛風結節(尿酸塩のかたまり)や関節破壊を引き起こす。 |
発症のメカニズム | 尿酸はプリン体の代謝産物で、本来は尿中に排泄される。しかし体内で尿酸が過剰に産生されたり排泄障害があると血中尿酸値が上昇し、結晶が関節内に蓄積。免疫細胞が結晶を異物とみなして攻撃するため激痛・発赤など炎症反応が起きる。 |
主な原因・リスク因子 | 高プリン体食(肉類・魚介類の過剰摂取)やアルコール(ビールなど)、果糖を多く含む飲料、肥満やメタボ体質、腎機能低下、遺伝的要因(尿酸輸送異常など)。男性に多く、女性は閉経後にリスク増加。 |
症状 | 関節の激痛、腫れ、発赤、熱感が突然起こり(夜間~明け方に多い)、数日~1週間程度で自然軽快する。初発は足の親指(第一中足趾節関節)が最多だが、足首・膝・手指など他の関節も起こりうる。発作間期は症状がない。 |
合併症 | 再発を繰り返すと結晶が沈着し痛風結節を生じ変形性関節症につながる。尿酸塩の沈着により尿路結石(腎結石)が約2割で合併し、慢性の高尿酸血症は慢性腎臓病や腎機能低下を招く。さらに痛風患者は高血圧・糖尿病・脂質異常症を併発しやすく、心筋梗塞など心血管疾患リスクも高い。 |
痛風発作の対処 | 発作を感じたら速やかに消炎鎮痛薬(NSAIDs)を服用し炎症を抑える。痛みが強い場合は医師に相談しコルヒチンやステロイドの処方を受ける。患部は安静にして心臓より高く挙上し、氷嚢などで冷却する。発作中はアルコールやプリン体の多い食品を避け、水分を十分にとる。 |
予防・対策 | 食事改善:プリン体摂取を減らし、肉や内臓、魚介類、ビール・果糖飲料を控える。野菜・豆腐・海藻は適量OK、低脂肪乳製品(牛乳・ヨーグルト)は尿酸値を下げる効果があり積極活用。生活習慣:肥満解消、定期的な運動(過激な運動は避ける)、十分な水分摂取・禁酒を心がけ尿酸コントロール。薬物療法:発作再発防止に尿酸降下薬(アロプリノールやフェブキソスタット等)で血清尿酸値6mg/dL以下を維持。無症状でも尿酸9以上(合併症あれば8以上)では治療検討。 |
※本記事では、日本における痛風の特徴や最新の研究知見を踏まえ、痛風の原因から予防策までをわかりやすく解説します。

図: 痛風発作により右足の親指付け根(第一中足趾節関節)が赤く腫れている様子。典型的な足の親指の痛風発作(ポダグラ)では、この部分に激痛と腫脹・発赤が生じ、歩行も困難になる。
痛風の病態・発症メカニズムとは
「痛風」はどのように発症するのか? 痛風は体内の尿酸(にょうさん)が関節に蓄積し、結晶化することで起こります。尿酸は細胞の核酸や食物中のプリン体が分解されてできる老廃物です。通常、尿酸は血液から腎臓を通じて尿中に排泄されます。しかし何らかの理由で血液中の尿酸が過剰になる(高尿酸血症)と、尿酸は溶けきれずに結晶(尿酸塩結晶)となって関節や腎臓に沈着します。
関節内に針状の尿酸結晶が沈着すると、体の免疫システムがそれを異物と認識して攻撃を始めます。このとき好中球など白血球が関節に集まり、サイトカイン(炎症物質)を放出することで激しい炎症反応が起こります。その結果、関節が赤く腫れて耐え難い痛みを伴う痛風発作が生じるのです。特に足の親指の付け根は体温が低く尿酸結晶が沈着しやすいため、ここで発症するケースが有名です。痛風発作は突然夜間から明け方にかけて起こることが多く、シーツが触れても痛むほどの激痛が典型的です。
興味深いことに、血清尿酸値が高くても必ず痛風になるわけではありません。高尿酸血症の人すべてが痛風発作を起こすわけではなく、発症には尿酸値以外の要因(急な尿酸値変動や関節への衝撃など)が関与します。ただし血清尿酸値が高いほど痛風発症リスクが上がるのは確かで、尿酸値7.0mg/dLを超えると結晶が析出しやすくなるため注意が必要です。
痛風の原因とリスク因子
痛風を引き起こす根本原因は高尿酸血症ですが、その背景にはさまざまなリスク因子が存在します。以下に主な要因を挙げます。
- 食事(プリン体の過剰摂取): プリン体を多く含む食品の摂りすぎは尿酸値上昇につながります。代表的なのは肉類(特にレバーなどの内臓)や魚介類(イワシ・ニシン・貝類など)で、これらを日常的に多く食べる人は痛風発症リスクが高まります。実際、ある研究では肉類摂取量が多い群で1.4倍、魚介類摂取が多い群で1.5倍も痛風になりやすかったと報告されています。日本人は魚介の摂取が多いため注意が必要です。
- アルコール: アルコールは尿酸の排泄を妨げ、さらにビールなどプリン体を含む酒類は尿酸産生も増やします。飲酒習慣のある人は痛風リスクが高く、特にビールの大量摂取は発作の誘因になります。医師調査でも「宴席(飲酒会)の連続」が痛風発作の最大のトリガーだと半数以上の医師が指摘しています。
- 甘い飲料(果糖): 清涼飲料水やジュースなどに含まれる果糖(フルクトース)は尿酸値を上げることが知られています。果糖の代謝にはATP(エネルギー分子)が消費され、その最終産物として尿酸が生成されるためです。実際、砂糖入り飲料を多く飲む人は痛風リスクが約1.9倍との報告もあります。甘い飲み物の飲みすぎにも注意しましょう。
- 肥満・メタボリックシンドローム: 太り過ぎや内臓脂肪型肥満の人は尿酸産生が増え、排泄も低下しがちです。また高血糖や高インスリン血症も尿酸排泄を妨げます。肥満の人は痛風になりやすく、減量することで尿酸値が下がることが知られています。
- 腎機能低下: 腎臓からの尿酸排泄能力が落ちると尿酸値が上がります。慢性腎臓病(CKD)の患者や加齢による腎機能低下は痛風のリスクです。利尿剤の長期使用も尿酸の再吸収を促進し痛風を招くことがあります。
- 性別・年齢: 痛風は男性に圧倒的に多く、女性は閉経まではまれですが閉経後は発症しやすくなります。これは女性ホルモン(エストロゲン)に尿酸排泄を促す作用があるためで、閉経後に尿酸値が上昇しやすくなるためです。男性では30~50代で発症するケースが多く、「中年男性の病気」のイメージがあります。
- 遺伝的素因: 痛風・高尿酸血症には遺伝要因も関与します。例えば尿酸排泄輸送体の遺伝子(ABCG2など)の特定変異があると尿酸がたまりやすく、日本人にもこれを持つ人が多いことが研究で明らかになっています。ただし遺伝的素因だけでなく生活環境の変化(食習慣の欧米化など)が近年の患者増加に大きく影響していると考えられます。
- その他の要因: 関節への軽い外傷や手術後、激しい運動や脱水(汗をかくサウナなど)も発作の引き金になります。実際、医師の報告では「脱水傾向」も痛風悪化の大きな要因(約58%)とされています。また、抗がん剤治療(大量の細胞分解が起こる白血病治療等)や特定の薬剤(利尿薬、低用量アスピリン、シクロスポリンなど)も尿酸代謝に影響して痛風を誘発し得ます。
以上のように、「痛風の原因」は一つではなく食事・飲酒をはじめ生活習慣と体質の双方が関与します。とりわけ現代の日本では食生活の欧米化や肥満の増加により痛風患者が増えており、1980年代に約25万人だった痛風患者数が2016年には約110万人(男性は5倍増)に達しました。高尿酸血症予備軍も含めると1,000万人以上と推定されます。痛風はまさに「生活習慣病」の一つとして注意すべき疾患なのです。
痛風の症状(痛風発作)
痛風の主症状は、なんと言っても関節の激痛発作です。典型的な痛風発作の特徴をまとめます。
- 激烈な痛み: ある日突然、局所に耐え難い痛みが走ります。多くは夜間から明け方にかけて痛み出し、痛さで目が覚めるほどです。痛む部位に触れたり歩いたりするのは困難で、シーツが触れるだけでも飛び上がるほどと言われます。
- 関節の腫れ・発赤・熱感: 痛みとともに関節が赤く腫れ上がり、熱をもったようになります。皮膚がピンと張って光沢を帯び、周囲より明らかに腫脹します(図参照)。痛風発作は通常単一の関節で起こり、左右対称に複数関節が同時に痛むことはまれです。
- 好発部位: 約7割の患者で足の母趾の付け根(第一中足趾節関節)に初発の痛風発作が起こります。これは古くから「ポダグラ」(足の罠)とも呼ばれる典型所見です。ただしそのほか足首、膝、手指関節、耳介(耳たぶ)などにも起こり得ます。いったん発作が治まっても、高尿酸血症が続く限りまた別の関節で再発作することも少なくありません。
- 発作の経過: 治療しない場合、痛風発作の激痛は通常数日から1週間ほどで徐々に軽減し、やがて自然に治まります。初回発作後、次の発作まで半年~数年空くこともあります。しかし治療をせず放置するとだんだん発作の頻度が増し、症状が長引く傾向があります。
痛風発作は経験した人にしか分からない激痛ですが、適切な治療で早く和らげることができます。次節で対処法を詳しく述べます。
痛風の合併症・長期的影響
痛風は急性の関節炎発作だけでなく、長期的には様々な合併症や慢性的影響を及ぼします。
- 痛風結節(トーファス): 高尿酸血症の状態が長く続くと、尿酸塩結晶が皮下組織や軟骨、関節周囲にまで沈着し白色の結節(こぶ)を形成することがあります。これを痛風結節と呼びます。耳たぶや肘、指関節などにできやすく、初期は無痛ですが大きくなると関節可動域を制限したり、潰瘍化することもあります。痛風結節ができるほど病状が進んだ場合、積極的な尿酸降下療法で結晶を溶かす必要があります。
- 慢性関節炎・関節破壊: 繰り返す炎症発作により、関節の軟骨や骨が侵食され変形してしまうことがあります(痛風性関節症)。長年放置すると関節の痛みや可動域制限が慢性的に残り、骨棘や骨の欠損像がX線で認められる場合もあります。適切な治療により多くは予防可能ですが、重症化した痛風ではこのような関節破壊が起こりえます。
- 尿路結石(腎結石): 血中だけでなく尿中でも尿酸が結晶化すると尿路結石の原因になります。痛風患者の約10~20%は尿酸やカルシウムの結石を腎臓・尿管に合併するとされます。結石は激痛や血尿の原因となるだけでなく、腎機能の低下にもつながります。
- 腎障害(痛風腎): 高尿酸血症そのものが長期に腎臓を傷害する可能性があります。尿酸の結晶が腎臓の細尿管に沈着して炎症や線維化を起こし、慢性腎臓病(CKD)を進行させると考えられています。痛風患者では腎機能低下や蛋白尿がみられることも多く、腎臓の保護は重要です。
- 心血管疾患との関連: 痛風の背景には高血圧、脂質異常症、2型糖尿病などいわゆるメタボリックシンドロームがしばしば存在します。そのため痛風患者は心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化性疾患のリスクも高い傾向があります。近年、高尿酸血症自体が心不全や心血管死亡率を上げる可能性も指摘されており、実際に日本の医師の約83%が「高尿酸血症は心血管リスクと強く関連する」と感じています。痛風は単なる関節の病気にとどまらず、全身の合併症管理が重要です。
このように痛風は全身性の影響を及ぼし得る疾患です。痛みが引いたからといって安心せず、尿酸値を適正にコントロールすることが合併症予防の観点からも大切です。
痛風発作が起きたときの具体的対処法
突然痛風発作が起きてしまったら、適切な対処で症状を和らげましょう。最新のエビデンスに基づく痛風発作時の対処法を以下にまとめます。
1. 安静にして患部を冷やす: まず痛む関節を動かさず安静にします。可能であれば患部を心臓より高い位置に挙上すると腫れが引きやすくなります。例えば足なら横になり、クッションを足の下に入れて高く保ちます。また痛む関節に氷嚢や冷却パックをあてて冷やすと炎症が鎮まり痛みも軽減します。氷はタオルで包み15~20分程度あて、休みながら一日に数回行います。ただし凍傷に注意し直接肌に長時間当てないようにしましょう。
2. 市販の痛み止めを服用する: 痛みが強い場合、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)をできるだけ早めに服用します。市販のイブプロフェンやナプロキセン(日本ではナプロキセンは要処方)などは痛風発作の痛みと腫れを軽減するのに有効です。できれば発作の兆候を感じた時点で内服を開始すると効果的です。持病でNSAIDsが使えない場合は医師に相談しましょう。アスピリン(バファリンなど)は低用量では尿酸を上昇させるため痛風には逆効果なので避けます。
3. 医療機関での治療(必要に応じて): 痛みが非常に強かったりNSAIDsで改善しない場合、早めに医療機関を受診してください。医師はコルヒチンという抗炎症薬を処方することがあります。コルヒチンは発作の初期に飲むと効果的で、白血球の働きを抑えて炎症を鎮めます。下痢など副作用がありますが適切な用量で安全に使えます。また腎機能が悪い方にはコルヒチンは避ける場合があります。あるいは副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン等)を短期間内服したり、関節内や筋肉注射で投与する方法もあります。ステロイドは血糖上昇など注意点もありますが、NSAIDsやコルヒチンが使えない場合に有効です。
4. 発作時の生活上の注意: 発作が起きている間は、以下の点にも注意しましょう。
- 水分を十分に摂る: 尿をたくさん出して尿酸を排泄するために、意識して水や白湯を飲みます。脱水は発作を悪化させるので避けてください。ただし糖分の多いジュースやアルコール飲料は逆効果です。
- アルコールやプリン体の多い食品を避ける: 発作中に焼肉やビールなどを摂取すると治りが悪くなる可能性があります。痛みが治まるまでは節制しましょう。
- 患部への刺激を避ける: 痛い関節はなるべく動かさず、布団や衣服が擦れる刺激も極力減らす工夫をします。必要に応じて足先を布団から出したり、ベッドクラッド(足先に掛け布団が触れないようにする支え具)を利用すると良いでしょう。
- ストレスを減らし安静に過ごす: 激痛でストレスも溜まりますが、できるだけリラックスして休息を取ります。無理に仕事や運動をしようとせず、痛み止めが効いている間に睡眠を確保することも大切です。
以上が家庭でできる主な対処法です。多くの場合、適切に対処すれば痛みは数日で和らぎます。ただし初めて痛風発作が起きた場合は、念のため医師の診断を受けて本当に痛風か確認することをお勧めします。他の関節炎(例えば蜂窩織炎や関節感染症など)との鑑別が必要なこともあります。また繰り返す痛風発作を放置すると前述のように関節が破壊されていく可能性があります。したがって発作が治まった後も、再発予防のための対策を講じることが重要です。
痛風の予防と対策(再発防止のために)
痛風は適切な予防策により発作を減らしコントロールすることができます。その柱は「食事を含む生活習慣の改善」と「尿酸降下薬による治療」です。最新のエビデンスやガイドラインに基づき、有効とされる予防策を紹介します。
食事療法:痛風を防ぐ食生活とは
食事の見直しは痛風予防の基本です。高尿酸血症の原因となるプリン体やアルコール、果糖の摂取を減らし、尿酸を下げる食品を積極的に摂りましょう。
- プリン体の多い食品を控える: プリン体は尿酸の元になる物質です。特に肉の内臓(レバー、白子など)や一部の魚介類(アンチョビ、ニシン、サバ、エビ、ホタテなど)はプリン体含有量が多めです。また干物やエキス類(煮干し、かつお節、肉エキススープ)も濃縮されているため注意。これらの食品を毎日大量に食べるのは避け、量と頻度を控えめにします。ただし魚や肉を全く食べない必要はなく、適量(例えば肉や魚は1日60~90g程度)であれば問題ありません。プリン体の少ない食品(卵、乳製品、野菜、果物、米やパンなど)は気にせず摂って構いません。
- アルコールを減らす: アルコール自体が尿酸排泄を抑えるほか、ビールや焼酎などはプリン体を含み尿酸産生も増やします。痛風予防の観点では禁酒が理想ですが、難しい場合は量を減らし、休肝日を作りましょう。特にビールは控えめにし、飲むなら蒸留酒(焼酎やウイスキー)の水割りを少量など工夫します。厚労省の指針ではプリン体含有量の少ないお酒でもエタノール20g/日以内(ビール中瓶1本、日本酒1合相当)に留めることが推奨されています。
- 果糖や砂糖の多い飲食物を控える: 清涼飲料水や甘味飲料、菓子類の過剰摂取は痛風リスクを高めます。特に高果糖コーンシロップを多く含む清涼飲料は要注意です。スポーツドリンクや缶コーヒー、清涼飲料の習慣的多飲は避け、砂糖控えめの食生活を心がけます。
- 水分を十分にとる: 一日を通じてこまめな水分補給をします。尿量が増えると尿酸が排泄されやすくなり、腎結石の予防にもなります。目安として1日2リットル程度の水分摂取が推奨されますが、心疾患等で制限がある方は主治医の指示に従ってください。利尿作用のあるカフェイン飲料より、水や麦茶などがおすすめです。
- 乳製品を積極的に摂る: 意外かもしれませんが、牛乳やヨーグルトなどの乳製品は尿酸値を下げる効果が報告されています。乳タンパク質が尿中への尿酸排泄を促すためと考えられます。日本の医師アンケートでも約7割が手軽な尿酸値対策として乳製品を勧めており、特にヨーグルトや牛乳を日常的に摂ることを推奨しています。低脂肪乳や無糖ヨーグルトを毎日1~2杯取り入れると良いでしょう。
- 野菜・海藻・きのこ・大豆製品: これらはプリン体を多少含みますが、野菜や海藻由来のプリン体は痛風にあまり影響しないとされています。むしろ食物繊維やカリウムが尿酸排泄を助ける面もあるため、野菜類(特に緑黄色野菜やきのこ、海藻、豆腐・納豆などの大豆製品)はバランス良く摂取してください。ビタミンCも尿酸値を下げる可能性が示唆されており、フルーツや野菜を適量とることは有益です。
このように食事療法では「控えるもの」と「積極的に摂るもの」を意識することが大切です。完全な食事制限はストレスになりますので、無理のない範囲で続けることがポイントです。痛風学会などでもプリン体摂取量の目安は1日400mg以下とされています。例えばビール中瓶1本(プリン体約15mg)程度であれば許容範囲ですが、痛風発作が起きた人はより厳密に管理した方が再発防止につながります。
生活習慣の改善:運動・減量・禁煙
日々の生活習慣を整えることも尿酸値コントロールに欠かせません。
- 減量(肥満の解消): 肥満は痛風最大のリスク因子の一つです。適正体重まで減量すると尿酸値が有意に低下することが知られています。急激な減量(断食や過度な食事制限)はかえって尿酸値を乱高下させ発作を誘発しかねないため、適度なカロリー制限と運動による徐々の減量を目指します。目標としてBMI25未満、可能なら22程度を目指しましょう。ただし痛風発作中は激しい運動は避け、痛みがない時期に取り組みます。
- 適度な運動習慣: 定期的な運動は肥満解消のみならず、循環を良くして尿酸代謝を促します。ウォーキングや水泳、軽いジョギングなど有酸素運動を週に150分程度行うと良いとされます。ただし激しい筋力トレーニングや無酸素運動は発作を誘発することがあるため注意が必要です。実際、医師からも「筋トレのしすぎ」や「激しいスポーツ」が痛風の誘因になり得ると指摘されています。息が上がらない程度の軽~中等度の運動を継続しましょう。
- 十分な水分摂取と排尿: 前述のとおり、水分をこまめにとり尿を出す習慣は尿酸排泄に有効です。特に汗をかく夏場やサウナ利用時は意識して水を飲み、脱水を避けることが大切です。「夜間トイレに行きたくなるから」と水分を控える方もいますが、痛風予防の面では寝る前にもコップ1杯の水を飲むとよいでしょう。
- 休養とストレス管理: 過労やストレスも間接的に痛風発作に影響します。ストレスで食生活が乱れたり飲酒量が増えることも多いため、十分な睡眠とリラックスできる時間を確保してください。
- 禁煙: 喫煙そのものが直接痛風を悪化させる証拠は明確ではありませんが、タバコは血管を傷害し腎機能や循環に悪影響を及ぼします。痛風の合併症である腎臓病や心血管疾患予防のためにも禁煙が望ましいです。
生活習慣の改善は即効性はないものの、長期的に見て痛風管理には欠かせません。日本のガイドラインでもまず生活指導が強調されており、医師の約97%が「食生活の是正が重要」と認識しています。できることから少しずつ始めましょう。
薬物療法:尿酸値を下げる治療
再発を繰り返す痛風や、高尿酸血症が持続するケースでは薬による尿酸コントロール(尿酸降下療法)が推奨されます。薬物療法のポイントを解説します。
- 尿酸降下薬の種類: 現在、尿酸値を下げる主な薬剤として以下があります。
- キサンチンオキシダーゼ阻害薬: 尿酸が作られるのを抑える薬です。代表はアロプリノールと、より新しいフェブキソスタットです。尿酸産生を抑制し、最も基本となる治療薬です。
- 尿酸排泄促進薬: 腎臓からの尿酸の排泄を促す薬で、プロベネシド(日本未承認)やベンズブロマロン(日本で使用)があります。腎機能が比較的保たれている患者に用います。
- 尿酸分解酵素製剤: 重症の難治性痛風に使われるペグロティカーゼ(注射薬)など、尿酸そのものを分解する酵素製剤もあります。一般的な治療ではありませんが、他の薬で効果不十分な際に考慮されます。
- 治療開始のタイミング: 通常、尿酸降下薬は痛風発作が収まってから開始します。発作中に始めるとかえって尿酸値変動で症状が悪化する恐れがあるためです。初期6か月ほどは尿酸値の変動で発作が起きやすくなるため、コルヒチン少量投与で発作予防を併用することもあります。
- 目標尿酸値: ガイドラインでは、痛風患者では血清尿酸値6.0mg/dL以下を目標に降下療法を行います。痛風結節や重症の場合は5.0mg/dL以下を目指すこともあります。尿酸値を飽和濃度以下に保つことで、関節内の尿酸結晶が少しずつ溶けていき再発が減ります。実際、尿酸値を6未満に維持できれば痛風発作はほとんど起きなくなるとされています。
- 服薬の注意: 尿酸降下薬は長期間継続する必要があります。「痛みがないから」と自己判断で中断すると、再び尿酸値が上がり発作が再発してしまいます。日本の調査でも、コロナ禍で自己中断して悪化した患者が増えたことが報告されています。したがって医師の指示通りに毎日きちんと服用を続けることが大切です。定期的に血液検査を受け、尿酸値や肝腎機能のチェックを怠らないようにしましょう。
- 副作用への対策: アロプリノールはごくまれに重篤な皮膚反応(スティーブンス・ジョンソン症候群)を起こすことがあり、腎機能が低下している人では少量から開始します。フェブキソスタットは一部報告で心血管リスク増加の懸念が示されましたが、最新の試験では大きな差はないとされています。いずれにせよ定期フォローが重要です。ベンズブロマロンは肝障害のリスクがあるため定期的な肝機能チェックが必要です。
薬物療法を適切に行えば、痛風は「コントロール可能な病気」です。実際、多くの患者さんが薬と生活改善の両輪で尿酸値を管理し、発作なく日常生活を送っています。医師と相談しながら自分に合った治療計画を立てましょう。
日本における痛風の特徴
最後に、日本における痛風の傾向や特徴について触れておきます。他国と共通する点も多いですが、日本人特有の要因もあります。
- 魚介類摂取の多さ: 日本人は伝統的に魚介類を多く食べます。前述のように魚介に含まれるプリン体は痛風リスクを高める可能性があります。実際、日本で行われた疫学研究でも魚介類摂取量が多い人は痛風発症リスクが1.5倍に高まると報告されています。肉類についても食の欧米化で摂取量が増えており、注意が必要です。
- 肥満と生活習慣病の増加: かつて日本人は欧米人に比べ肥満が少ないと言われましたが、近年は肥満者の割合が増加傾向にあります。痛風患者数の増加もこれと歩調を合わせています。また痛風患者の多くは高血圧・糖尿病・脂質異常症などを合併しており、日本痛風・尿酸核酸学会でも痛風を含めたメタボリックシンドローム対策を重視しています。日本の医師は痛風そのもの以上に「痛風以外の合併症リスク」を懸念しているとの調査結果もあり、生活習慣病全体の管理が課題です。
- 遺伝的素因: 日本人は欧米人に比べて尿酸排泄低下型の高尿酸血症が多いとされています。その背景にはABCG2遺伝子変異など東アジア人に多い遺伝子要因が指摘されています。このため比較的食事に気をつけていても尿酸が高くなりやすい体質の方がおり、「父親が痛風だから自分も」というケースも見受けられます。
- 季節性と誘因: 日本では気温が上がる夏場に痛風発作が増える傾向が指摘されています。医師のアンケートでも「痛風が多い季節は夏」と回答した割合が最も高く、脱水やビール消費量の増加が原因ではないかと考えられます。また近年の健康ブームでサウナや激しい運動が流行していますが、やりすぎは痛風発作の引き金になりうるため注意喚起が必要です。
- 患者数の動向: 前述の通り日本の痛風患者は30年間で激増しました。厚労省の2019年調査では痛風有病者約125万人と報告されていますが、実際には無症状高尿酸血症を含めその数倍が予備軍と考えられます。コロナ禍では在宅生活の影響で痛風患者がさらに増えたとの指摘もあり(ある医師調査では35%が患者増加を実感)、油断できません。またコロナ禍で通院中断により悪化した例も散見され、継続治療の大切さが改めて認識されています。
このように日本における痛風は、食文化や遺伝的背景に影響を受けつつ、「生活習慣病」の一側面として広がっているのが特徴です。日本痛風・尿酸核酸学会や日本リウマチ学会ではガイドライン整備や啓発活動が行われており、日本発のエビデンスも蓄積されています。今後も最新の研究動向を踏まえつつ、生活習慣の見直しと適切な治療で痛風患者さんのQOL向上を図っていくことが期待されています。
おわりに
痛風は「贅沢病」などと揶揄されることもありますが、実際には遺伝的要因や生活習慣病との関連も深いれっきとした代謝疾患です。放置すれば関節の変形や腎臓・心臓への悪影響も生じかねない怖い病気ですが、幸い適切な対策で十分コントロール可能です。
本記事では最新の知見に基づき、痛風の原因から予防・対処法まで解説しました。ポイントは、まず尿酸値を意識した生活(食事・運動・水分・節酒)を送り、そして必要に応じて医師と相談の上で薬物療法を行うことです。実践的な食事の工夫(プリン体カットや乳製品摂取)や発作時の対処法も紹介しましたので、ぜひ日々の健康管理に役立ててください。
痛風発作の激痛は体験したくないものですが、正しい知識と予防策があれば怖がる必要はありません。「痛風かな?」と思ったら早めに医療機関で相談し、今日からできる対策を始めましょう。尿酸値をしっかりコントロールし、痛風に悩まされない快適な生活を取り戻しましょう。
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