
茨城県は32市・10町・2村の計44市町村から成り、県北・県央・鹿行・県南・県西の5地域に区分されます。2025年10月時点の県人口は約279万1,000人で、9月中に454人減少しました。本記事では、この茨城県の市町村が直面する人口減少・高齢化や産業・財政・インフラなどの課題を、最新データと一次資料から徹底検証し、実行可能な解決策を探ります。結論として、地域ごとの特性に応じた「コンパクト+ネットワーク」戦略や広域連携による行政効率化が鍵となります。その具体像を以下で詳述します。
要点(ポイント):
- 人口動向と将来:茨城県の人口は2000年の約298.5万人をピークに減少へ転じ、2025年に約279万人と1980年代末の水準まで減りました。自然減(出生減・死亡超過)が大きく、近年は社会増(転入超過)も見られますが人口減少に歯止めはかかっていません。国推計では2050年に約224.5万人まで約2割減少する見込みで、高齢化率は30%から40%に上昇します。市町村ごとに差が大きく、筑波研究学園都市を抱えるつくば市は人口増を維持する一方、多くの町村は人口減が避けられません。
- 急速な高齢化:県全体の65歳以上人口割合は31.2%(2025年10月)で全国平均29.4%を上回ります。特に農山村部で高齢化が深刻で、大子町は高齢化率51.8%と2人に1人が65歳超。反面、東京圏通勤圏のつくば市は20.0%と若年層が多く、県内で最も低い高齢化率です。この極端な地域差が医療・介護需要や地域活力に影響しています。
- 産業構造の強みと脆弱性:茨城県は製造業が強く、2022年の製造品出荷額は約14.86兆円で全国7位。鹿行地域(鹿嶋市・神栖市)の鹿島臨海工業地帯は製鉄・化学拠点で、神栖市は市町村別出荷額約1.99兆円と県内最大です。日立市や日立製作所発祥の県北地域も重工業が盛んです。一方、県南のつくば市は研究学園都市として科学技術産業やベンチャーが集中します。農業も全国屈指で、レンコン生産量は全国シェア50.5%で日本一、メロンも全国1位(シェア26.8%、23年連続)など多彩な農林水産物があります。しかし産業の地域偏在も課題で、北部山間部では雇用の受け皿が少なく、若年層の流出要因となっています。
- 財政の持続可能性:市町村財政は総じて健全性を維持しています。2024年決算ベースで財政健全化判断比率の実質公債費比率県平均は6.7%で、早期健全化基準(25%)を大きく下回り、全自治体で財政再生基準に抵触する指標はありません。しかし自治体間格差が顕著で、税収力を示す財政力指数はつくば市が1.10と不交付団体(交付税不交付)なのに対し、高齢化の進む大子町は0.33程度で半分以上を交付税等に頼ります。こうした小規模自治体ではインフラ維持や行政サービス提供に財政面の制約が大きく、広域での財源確保策や事業の重点化が必要です。
- インフラ・公共施設老朽化:高度成長期~バブル期に整備された庁舎・学校・道路橋などが更新期を迎え、一斉更新による財政圧迫が懸念されています。全市町村が公共施設等総合管理計画を策定し、施設削減目標や長寿命化方策を定めています。例えば笠間市は計画的改修で更新コスト平準化を図り、石岡市は用途が重複する施設を集約する方針です(各市計画より)。県内の公共建物延床面積は都市部で増加する一方、利用率低下に悩む施設も少なくありません。将来世代に過大な負担を残さぬよう、施設の統廃合・多機能化や民間活用が重要です。
- 交通・移動の課題:県民の生活交通は自家用車への依存度が高く、地域公共交通の維持が課題です。多くの市町村で路線バスの減便・廃止が相次ぎ、高齢者の免許返納後の移動手段や交通空白地対策が求められています。県は2023年に地域公共交通計画を策定し、デマンド交通(乗合タクシー)導入や幹線バスの再編支援に乗り出しました。実際、常陸大宮市や利根町などではAI予約型の乗合タクシーを運行し、通院や買物の足を確保し始めています。また、つくばエクスプレス延伸や水戸市など主要駅周辺の公共交通結節点整備も検討されています。広域的には、鉄道網(JR常磐線・水郡線など)の維持活性化と、隣県(千葉・埼玉)への通勤流動に対応した高速バスの充実も課題です。
- 医療・介護・子育て:医師・看護師など人材不足と地域偏在が深刻です。人口10万あたり医師数は212.3人(2022年)で全国平均274.7人を大きく下回り全国46位、特に病院勤務医師は202.0人と埼玉県に次ぐ少なさです。県北・鹿行地域では医師の高齢化と後継不足で産科や小児科の休止が相次ぎ、住民は遠方の水戸市や筑波研究学園都市圏の病院に頼る状況です。このため県は医学部定員増や医学生奨学金で医師確保を図る一方、日立市などで遠隔診療モデルを導入し医療アクセス改善に努めています。介護分野も要介護高齢者の急増に比して担い手確保が追いつかず、外国人技能実習生やロボット導入など多角的対応が模索されています。子育て面では待機児童は減少傾向にあるものの、保育士確保や小児医療提供体制強化が課題です。県南のつくば市・守谷市など若い世代の流入する市では保育需要が高く、施設整備と人材育成が急務です。
- 防災・減災:茨城県は太平洋に面し、内陸にも一級河川を多数抱えるため、水害・土砂災害リスクへの備えが不可欠です。特に利根川・那珂川・久慈川水系などの氾濫想定区域が広範囲に及び、2015年には常総市で鬼怒川堤防決壊により市街地が浸水、大きな被害が出ました。この教訓から県は全管理河川で洪水浸水想定区域図を公表し、市町村ハザードマップ整備を支援しています。想定最大規模の豪雨を前提にした浸水深・範囲データを示し、住民の円滑な避難計画や土地利用規制(都市計画の立地適正化)に活かしています。また、沿岸部は東日本大震災で津波被害も受けたことから、防潮堤強化や避難タワー設置が進められています。今後は気候変動で豪雨頻度が増す可能性も踏まえ、広域避難訓練や減災型まちづくり(宅地の嵩上げなど)への取り組みも重要です。
- 行政運営(組織・広域連携):人口減に伴い各市町村役場の職員数も減少傾向で、特に小規模町村では専門人材の確保が難しくなっています。そのため、自治体間で事務の共同処理や広域連合による業務集約が進んでいます。例えば県西地域では複数市町合同でごみ処理施設を運営したり、県北では職員研修や人事交流で行政力維持を図っています。また、住民ニーズに応じた行政サービスを効率よく提供するため、マイナンバー活用やオンライン窓口整備などデジタル化も推進中です。一方で、地域課題の解決には行政だけでなくNPOや住民ボランティア、地元企業との協働も重要性を増しています。各地で住民参加のまちづくり協議会が結成され、公共交通の運営や空き家対策などに乗り出す事例も増えています。
以上の現状認識を踏まえ、次章以降で茨城県の市町村に共通する主要課題を深掘りし、地域差ごとの特徴と優先策を整理します。さらに、実現性の高い解決策パッケージを提示し、ロードマップと具体的なアクションプランを提案します。
1. 茨城県の市町村の全体像
44市町村の構成と地域区分:茨城県は32市・10町・2村の計44市町村で構成されます。一般的に以下の5つの地域圏に区分され、それぞれ地理・産業に特徴があります。
- 県北地域(日立市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、常陸大宮市、大子町など):阿武隈山地から太平洋岸に広がる北部エリア。重工業都市の日立市を除き人口密度は低く、農林業が盛ん。山間部では過疎と高齢化が顕著です。
- 県央地域(水戸市、笠間市、ひたちなか市、那珂市、小美玉市、東茨城郡〔茨城町、大洗町、城里町〕、那珂郡東海村):県庁所在地の水戸市を中心とした中部。行政・商業機能が集中し、那珂湊港(ひたちなか市)など港湾もあります。東海村には原子力科学研究所が立地し、科学技術従事者も多い地域です。
- 鹿行(ろっこう)地域(鹿嶋市、潮来市、神栖市、行方市、鉾田市):鹿島灘沿岸から霞ヶ浦にかけた南東部。鹿島臨海工業地帯を擁し、製鉄・化学コンビナートで知られます。一方で水郷地帯として農業(米、レンコン、サツマイモ等)が盛んで、鉾田市はメロン産地として著名です。
- 県南地域(土浦市、石岡市、龍ケ崎市、取手市、牛久市、つくば市、守谷市、稲敷市、かすみがうら市、つくばみらい市、稲敷郡〔美浦村、阿見町、河内町〕、北相馬郡利根町):首都圏に近い南部。筑波研究学園都市を擁するつくば市や、常磐線沿線の土浦市・取手市など、東京のベッドタウン的性格も強いエリアです。農業も盛んで、美浦村は酪農、河内町はコメの産地です。近年、つくばエクスプレス開業により守谷市・つくばみらい市で人口増が続いています。
- 県西地域(古河市、結城市、下妻市、常総市、筑西市、坂東市、桜川市、猿島郡〔五霞町、境町〕、結城郡八千代町):茨城県西部で栃木・埼玉県境に接する内陸。古河市は江戸時代からの城下町で工業団地も多く、五霞町・境町は利根川を挟んで埼玉県と経済圏がつながっています。製造業出荷額では古河市が約9,828億円と県内上位です。筑西市や桜川市は農業基盤が強く、結城市は結城紬の織物産業で有名です。
これら地域ごとの特徴は後述する課題の現れ方にも影響します。まず、県全体の人口・世帯数の最新状況と増減傾向を確認します。
人口・世帯の最新データ:茨城県の常住人口は2025年10月1日現在で2,791,231人(外国人住民95,343人を含む)です。前月比では454人の減少で、内訳は自然減1,738人(出生1,252人・死亡2,990人)と社会増1,284人(転入9,968人・転出8,684人)でした。社会増がプラスになったのは、首都圏からの転入や外国人技能実習生の受け入れが増えているためです。実際、近年の人口動態を見ると、東京圏からの転入超過で社会増加を記録する年がある一方、死亡超過が大きく人口減少に歯止めはかかっていない状況です。
市町村別に見ると、2025年9月時点で人口が前年同月比で増加していたのは、水戸市、つくば市、守谷市など9市1町1村のみで、残る33市町村は減少でした。特に増加率が高いのはつくば市(筑波研究学園都市への人口流入)、守谷市(首都圏通勤圏として人気)など県南の都市です。反対に減少幅が大きいのは県北の高萩市、常陸太田市などで、高齢化と若者流出が要因と考えられます。世帯数は同期間に1,244世帯増加し1,251,326世帯となっており、小家族化の進行で人口減でも世帯は増える傾向が続いています。
人口ピラミッドと将来推計:2020年国勢調査時点で茨城県の年少人口(0~14歳)は11.6%、生産年齢人口(15~64歳)は58.7%、老年人口(65歳以上)は29.7%でした。老年人口割合(高齢化率)は全国平均(28.6%)より高く、今後も上昇して2040年代に40%前後に達する見通しです。国立社会保障・人口問題研究所の市町村別推計(2023年推計)によれば、2050年までに県内全ての市町村で人口減少が進み、とりわけ大子町は2020年比で半数以下、常陸太田市や高萩市など県北の市も3割以上減少すると予測されています。一方、県南のつくば市や守谷市は減少率が小さく、2040年頃まで人口維持または微増する可能性が示されています。つまり、「南肥北瘦(なんひほくしょう)」――南部が太り北部が痩せる構図が鮮明になると予想されます。
総じて、茨城県の全体像として「ゆるやかに人口が減り高齢化する県」でありつつ、地域ごとの多様性が非常に大きい点が特徴です。次章では、この多様な市町村に共通する課題を抽出し、データに基づき分析します。
2. 市町村の“現状”をデータで把握する(指標ダッシュボード)
この章では、人口・社会動態、産業・雇用、財政、インフラ、交通、防災といったカテゴリーごとに、市町村の現状を示す主要指標を整理します。データ→解釈→含意の順で述べ、ファクトに基づいて課題の所在を明らかにします。
人口・高齢化・社会動態
人口規模の分布:茨城県内で人口が最も多いのはつくば市(約24.1万人)と水戸市(約26.6万人)ですが、それでも県人口の1割未満に留まります。最大の水戸市でさえ全県の約9.5%に過ぎず、都道府県庁所在市のシェアとして全国最低レベルです。20万人以上の都市は水戸・つくば両市のみ、10~20万人が土浦市や日立市など5市、残る37市町村は人口10万人未満の中小自治体です。このように、県人口が特定の都市に偏在せず比較的広域に分散しているのが特徴で、行政サービスを効率化しにくい一因ともなっています。
高齢化の進展:前述の通り県平均の高齢化率は31.2%ですが、市町村ごとの差が極めて大きいです。筑波研究学園都市の若い人口を抱えるつくば市(20.0%)や東京通勤圏の守谷市(24.6%)は全国平均を大きく下回る一方、山間地の大子町(51.8%)や常陸太田市(43.4%)、利根川沿いの利根町(44.3%)は4割を超えます。こうした自治体では「限界集落」化した地区も多く、日常生活の維持に支障を来し始めています。高齢単身世帯数も増加の一途で、県全体で約12.5万世帯(2020年時点、全世帯の1割)あり、特に常陸太田市や高萩市では全世帯の20%以上が高齢単身です。地域包括ケアシステムの構築や見守り体制づくりが急がれます。
社会増減(転入・転出):社会動態を見ると、首都圏近接エリアである県南・県西では東京都への通勤・通学者を中心に人口流出が続いてきました。しかし近年は、東京圏の住宅費高騰やテレワーク普及を背景に茨城県への転入超過に転じる動きもあります。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によれば、2021~2022年は茨城県の転入者が転出者を上回り社会増に寄与しました。特に増加が顕著だったのは守谷市・つくばみらい市(つくばエクスプレス沿線)、つくば市、阿見町(圏央道IC周辺の開発が進む)などです。一方、県北の多くの市町村では依然として転出超過が続き、若年層が県外に流出しています。このギャップは地域間の人口構造の不均衡を拡大させ、県全体としての持続可能性にも影響します。
将来推計人口:先述のように、国の推計では県全体で2020年から2050年に約-22%(約286.7万人→224.5万人)の減少が見込まれています。市町村別では、大都市圏アクセスの良い一部を除き軒並み2~4割減という厳しい見通しです。例えば日立市は約38%減、常陸太田市は約44%減、大子町に至っては約55%減との推計値もあります(2023年推計)。“消滅可能性都市”という言葉が話題になりましたが、茨城県内でも若年女性人口が急減する自治体が複数指摘されています。もっとも、政策介入や企業立地により推計を上回る人口維持を達成した自治体も全国にあるため、将来推計は警鐘として受け止め、施策で覆すターゲットと位置付けることが重要です。
以上の人口・高齢化動向は、各種行政需要や経済規模に直結するため、以下で述べる課題の前提となります。
産業・雇用の骨格
県内総生産と産業別構成:茨城県の名目県内総生産は約11.3兆円(2020年度)で、産業別では製造業が約28%、サービス業(商業・医療福祉等)が約60%、農林水産業が約1%を占めます(茨城県統計年鑑より)。市町村内総生産を見ると、つくば市(約1兆3千億円)や日立市(1兆円超)、水戸市(9千億円台)、神栖市(鹿行工業地帯、推計8千億円台)などが経済規模で上位にあります。一人当たりの市町村GDPでは工業都市の神栖市や鹿嶋市が突出して高く、農村部では低い傾向があります。
製造業の集積:冒頭でも触れた通り、茨城県は製造品出荷額が全国7位と工業県です。鹿嶋市・神栖市の鹿島臨海工業地帯(日鉄・住友化学等)、日立市の日立製作所関連事業所、ひたちなか市の日立製作所交通システム工場や航空宇宙関連、筑西市・古河市の機械・食品工業団地などが主要な集積地です。市町村別では神栖市が1兆9868億円(2019年)、日立市1兆3200億円、ひたちなか市1兆1284億円、鹿嶋市1兆0443億円と“四大工業都市”が県全体を牽引します。一方、中小企業主体の地域では工業出荷額が1千億円未満の自治体も多く、製造業の空洞化が進む市町村もあります。製造業の雇用者数は県全体で約27.8万人(2023年6月時点、全国7位)ですが、高度成長期に比べれば機械化で人員は減少しています。特に日立市ではかつて6万人超いた製造業就業者が現在は約2万人まで減り、代替産業創出が課題となっています。
研究開発・サービス産業:茨城県のユニークな強みは科学研究施設の集中です。つくば市には国の研究機関や筑波大学等が集積し、研究者人口が多く、産学連携のベンチャー企業育成も活発です。2020年のデータで、県内の研究費支出額は約3,300億円(民間・公的含む)で全国8位となっています(つくば市が大半)。“知の集積”が県南地域の成長エンジンですが、研究成果を県内企業の新事業に繋げる仕組みはまだ発展途上です。一方、サービス業では水戸市の卸売・小売業、つくば市の情報通信業など都市部に人材が集まる一方、過疎地では商店の廃業が進み買い物難民問題も顕在化しています。観光面では、鹿島神宮や袋田の滝、筑波山など豊富な資源がありますが、インバウンド対応や広域周遊ルート整備が今後の課題です。
農林水産業:県全体では就業人口の4%弱(約6万人)に過ぎないものの、茨城県の農業生産額は全国トップクラスです。2021年農業産出額は全国5位の2,730億円で、品目別にれんこん(1位)、メロン(1位)、白菜(1位)、ピーマン(2位)、栗(2位)など多くの「日本一」があります。また、稲敷市・行方市周辺の水郷地帯はコメの大産地です。課題は農業従事者の高齢化(平均年齢67歳)と後継者不足で、県はスマート農業や大規模経営体への集積を支援しています。漁業では北茨城市の平潟港や大洗港が水揚げ基地ですが、水産資源の減少や担い手不足が課題です。林業は八溝山地など北部に資源がありますが採算に厳しく、木材は県外からの流入が多いのが実態です。
雇用と所得:有効求人倍率は2023年度で1.5倍前後と全国平均並みですが、地域差があります。県北では介護・医療など人手不足業種の求人が多い一方、若者向けの製造業・IT系求人は県南に集中します。結果として、若年層の県内就職率はそれほど高くなく、大学卒業者の県外流出が続いています。平均所得はつくば市が最も高く(研究者や高収入層が多いため)年収水準で県平均を2割ほど上回ります。反対に農林業主体の町村や旧炭鉱地域の高萩市などでは平均所得が低くなっています。このような所得格差は消費や税収入の地域差にも繋がり、行政サービス水準にも影響します。
以上から、産業・雇用面では「工業・研究都市と農山村の二極化」が進んでおり、地方部での産業多角化・雇用創出が重要課題となっています。
財政指標で見る自治体の現状
財政力と交付税依存度:財政力指数(※1)は自治体の自主財源充実度を示す指標で、1.0以上なら不交付団体です。茨城県ではつくば市が1.112(令和7年度)と突出して高く、県内唯一の普通交付税不交付団体となっています。守谷市・神栖市・鹿嶋市・ひたちなか市など工業や住宅都市も0.9前後と高めです。一方、大子町は0.326、常陸太田市0.411、東海村0.258(原子力施設立地交付金等特殊要因あり)など、小規模町村では0.3~0.5台が並びます。県平均は0.666(R7年度)で全国平均をやや下回ります。要するに、つくば市のような富裕な自治体から大子町のような財政脆弱自治体まで、財政力の開きが非常に大きいことが分かります。なお、財政力指数が低い自治体ほど、歳入に占める地方交付税の割合が高く、景気変動には強いものの人口減で需要が減っても歳出構造を絞りにくい面があります。
健全化判断比率:これは自治体の赤字や債務の健全度を見る指標群です。2024年(令和6年度)決算では、実質赤字比率・連結実質赤字比率が赤字となった市町村は皆無で、全自治体が黒字決算を維持しました。また借入金返済負担を示す実質公債費比率は県平均6.7%(前年6.6%)で、どの市町村も早期健全化基準25%を大きく下回っています。最も高い自治体でも16%台(鉾田市)で、地方債発行の許可団体基準18%を超えるケースはここ15年間ありません。将来負担比率(隠れ負債も含む指標)も県平均28.2%で、健全ラインとされる350%を超える自治体は皆無です。これらから見ると、茨城県内自治体の財政は総じて健全性が高い状態にあります。これは大規模開発による巨額の第三セクター債務などが少なかったことや、合併特例債の発行を抑制してきたことも要因でしょう。
もっとも、健全化判断比率はあくまで赤字・債務の深刻度を見る指標であり、財政運営の余力まで示すものではありません。多くの自治体で今後、インフラ老朽化対策費や扶助費増により財政硬直化が進む見込みです。実質公債費比率が低いのは裏を返せば「これから必要となる投資余地がある」とも言えますが、人口減少下でどこまで将来負担を増やせるかは悩ましい問題です。
歳入構造と課税力:県内各自治体の歳入に占める自主財源(主に地方税)の比率は、つくば市で約75%、水戸市や日立市で65%前後、反対に大子町・高萩市などでは30~40%にとどまります(令和5年度決算カードより)。地方税収入は人口と産業規模に依存するため、過疎高齢地域ではどうしても限界があります。例えば人口約1.3万人の大子町の市町村税収は約9.9億円(R5)で、つくば市(人口約24万人)の約341億円のわずか3%に過ぎません。交付税措置で一定の是正はされているものの、交付税も将来は国の財源難で満額保証されるか不透明です。したがって、小規模自治体では今後歳入減に見合った歳出縮減(職員数適正化、事業見直し)や、広域連携によるコスト削減が避けられないでしょう。
歳出構造と社会保障費:市町村の歳出を大きく三分すると、行政運営経費(人件費・物件費)、投資的経費(公共事業等)、扶助費(社会保障)が挙げられます。近年、各自治体で扶助費の割合が増加しています。高齢者福祉・介護の給付や児童扶養手当等が増え、令和5年度決算では扶助費が歳出の30%超を占める自治体も出てきました。逆に公共事業関係費はピーク時より削減されており、将来世代への資産形成より現世代の福祉給付優先の構図とも言えます。この傾向自体は全国共通ですが、茨城県では災害復旧事業や道路橋りょうの更新など必要投資も多く、ジレンマに直面しています。たとえば、常総市では2015年水害からの復興費用が財政に重くのしかかり、河川改修や堤防強化への負担が続いています。一方、守谷市やつくば市では人口増に対応する学校整備など投資的経費の必要があり、住民ニーズに応じた予算配分が問われます。
基金(貯金)残高:財政のバッファを見る指標として基金残高があります。令和5年度末で見ると、水戸市は約300億円、つくば市約250億円、逆に小規模町村では数億円規模という開きがあります(財政状況資料集より)。基金は緊急時や大型事業に活用できますが、平常時は財源調整に活用されがちで、徐々に取り崩す自治体もあります。茨城県内では現在のところ基金が極端に枯渇している自治体はありませんが、長期計画的な積立も十分とは言えません。こうした点からも、今後の財政運営ではスリムで持続可能な行政サービス提供モデルへの転換が必要と考えられます。
公共施設・インフラの老朽化と更新問題
公共施設の現状:茨城県内の市町村が保有する公共建築物(庁舎、学校、体育館、公民館など)の総延床面積は、全44市町村合計で約1,900万㎡に達します(2022年度時点)。高度成長期~バブル期に建設されたものが多いため、築後30年以上の施設が大半です。学校施設では昭和40~50年代築が多く、耐震化は概ね完了したものの老朽化対策が課題です。道路や橋梁も、県内の道路橋延長のうち約4割が供用後50年以上となる見込み(2030年代)で、計画的な補修・架替が必要です。例えば、常陸太田市では総延長98kmの水道管の更新費だけで今後20年間に30億円超と試算され、財政負担が懸念されています(常陸太田市公共施設計画より)。
公共施設等総合管理計画:国の指針に基づき、全市町村が公共施設マネジメントの基本計画を策定済みです。各計画では概ね今後20年間で公共建築物の延床面積を▲10~20%縮減する目標を掲げています。具体策としては、(1)利用率の低い施設の統廃合・用途転換、(2)複数施設をまとめた複合施設化、(3)民間譲渡や民営化による維持費削減、(4)PPP/PFIの活用などが盛り込まれています。実例として、潮来市は旧公民館等を集約した「交流センター」建設を計画し既存施設を整理する方針ですし、筑西市では市役所本庁舎を建て替える際に付属施設を内包して面積削減を図る計画です。重要なのは、老朽化が進む公共施設を単純に更新するのではなくサービス機能を維持しつつ総量を減らす発想です。
インフラ維持管理コスト:道路・橋梁・上下水道・公営住宅・公園など多岐にわたる社会資本の維持管理費が、今後自治体財政を圧迫すると見込まれます。総務省試算では、全国的に今後30年間のインフラ更新需要は現在ペースの1.5倍以上に増えるとされ、茨城県も例外ではありません。県内を見ると、下水道普及率は約70%(2021年末)ですが、老朽管路の更新費が年々増加しています。土浦市では老朽下水管が陥没する事故が発生し、緊急補修に数億円を要するケースもありました。民営化や広域化による効率化が検討されていますが、住民サービスへの影響も考慮しつつ進める必要があります。
空き家問題:人口減と建物老朽化の交錯する問題として空き家があります。茨城県の空き家率は14.2%(2018年住宅・土地統計調査)で全国平均並みですが、鹿行・県北の一部自治体では20%近い空き家率となっています。特に古い木造住宅密集地で管理不全な空き家が増え、防災上・衛生上の懸念もあります。市町村では空き家バンク制度や除却補助金制度を設け、利活用促進や解体支援を行っていますが、利用率は限定的です。今後は、空き家発生を見越した都市計画誘導(立地適正化計画による居住集約)も併せて進め、「コンパクトシティ+ネットワーク」への転換が模索されています。
以上のデータから、公共施設・インフラの分野では「維持困難な資産をどう縮減し、安全性とサービス水準を確保するか」がキーポイントであると分かります。
交通・移動の現状
自動車依存と免許保有:茨城県は1世帯あたりの自家用車保有台数が全国トップクラスで(2.0台/世帯近く)、通勤・通学・買物の多くが自動車移動です。地理的に平坦で道路網が発達している一方、鉄道・バス等の公共交通は主要幹線以外は脆弱です。その結果、高齢者も長く運転を続ける傾向にあり、75歳以上の運転免許保有率が高めです。しかし、高齢ドライバーの事故増加や認知機能低下の問題から、近年は免許自主返納が促進されています。免許返納者数は2022年に県内で約4,000人と年々増加していますが、返納後の移動手段をどう確保するかが地域課題となっています。
鉄道網と利用状況:県内を南北に貫くJR常磐線は東京通勤圏として沿線人口を支えています。水戸市以北は利用客減少が続くものの、特急の高速化もあり都心から水戸まで約1時間強で結ばれています。水戸以北のJR水郡線・常陸太田線、鹿島臨海鉄道、関東鉄道常総線など地方路線は、モータリゼーションの中で利用者が減り、将来存廃の議論も出ています。例えばJR水郡線はコロナ前でも輸送密度1,000人未満の赤字路線で、災害被害時にはバス代行が長期化しました。一方、県南のつくばエクスプレス(TX)は東京秋葉原まで最速45分で結び、沿線の都市成長を牽引する存在です。延伸構想も具体化しつつあり、開業すれば土浦市方面への波及効果が期待されます。
地域公共交通:バス路線は、水戸市・日立市・土浦市・つくば市などで路線バス網が維持されていますが、本数減や路線縮小が進んでいます。特に郊外部や町村部では「交通空白地」が広がり、高齢者が移動に困る事例が増えています。これに対応し、各市町村でコミュニティバスやデマンド交通(予約乗合タクシー)が導入されています。2020年度時点で全44市町村中、7割以上が何らかのコミュニティ交通を運行しています。しかしながら、利用者数は財政投入に見合わず苦戦するケースも多々あります。自治体間連携による広域バス(例:近隣市町共同運行のバス)や、AIを活用した効率運行など、国の支援メニューを活かした改善が模索されています。
茨城県は2023年、「地域公共交通計画」を策定し、目指す交通ネットワーク像を示しました。そこでは主要拠点間を結ぶ幹線(鉄道・幹線バス)の維持充実と、周辺地域から幹線へのアクセス手段(デマンド交通等)の確保、そして自家用車も活用した総合的モビリティ確保を掲げています。加えて、高齢者・障害者など交通弱者への配慮やMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の導入検討も盛り込まれました。例えば、日立市では高齢者が100円で乗車できるバス「ぐるーん号」を運行し、外出支援に成果を上げています。また、自治体間連携の動きとして、近接する小規模町村が共同でデマンドタクシーを運行する試みもあります。こうした取り組みはまだ始まったばかりで、効果検証と持続可能な運営スキーム構築が今後の課題です。
道路インフラと渋滞:道路網に目を向けると、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が県南を東西に横断し、常磐自動車道・東関東道とあわせて県内高速道路網が整いました。これにより物流効率化や企業立地促進に寄与しています。一方、県庁所在地水戸市などでは慢性的な道路渋滞も課題です。特に朝夕の通勤時間帯に主要幹線道路が混雑し、バスの定時運行にも支障を来しています。水戸市やつくば市ではパークアンドライドの推進やバス優先レーンの整備が検討されていますが、抜本対策には至っていません。気候変動対策の観点からも自動車交通量の抑制と公共交通への転換が求められますが、住民意識や生活様式の変革が必要で容易ではありません。
全体として、交通・移動面では「車社会から次のモビリティ社会への移行」という大きな転換期にあります。持続可能な移動手段を地域ごとに設計し直すことが、高齢者の生活や地域経済の活力維持に不可欠です。
医療・介護・子育ての基盤
医療資源の地域偏在:茨城県は医師数が全国でも少ない部類であり、医師偏在指標でもワーストクラスです。特に県北(北茨城・高萩など)と鹿行(行方・鉾田など)は医師数/人口が県内でも低く、医療過疎に近い状態です。「県庁所在地なのに医学部がない唯一の県」と言われてきましたが、2024年4月にようやく水戸市に医療大学(自治医科大学連携)設置が決まり、地域医療医師の養成に期待がかかります。また県は、医師確保のため奨学金による縛りや病院間の医師派遣調整を進めています。それでも、産科・小児科・外科など特定診療科の地方不足は深刻です。例えば常陸太田市では市立病院の常勤産婦人科医がおらず、水戸市の病院と連携して週数回の診療でしのいでいます。地域住民は出産や小児救急で遠距離通院を強いられるケースが多く、こうした状況改善が急務です。
介護・福祉人材不足:高齢者が増える一方で介護職員・ヘルパーの不足が顕在化しています。県内有効求人倍率は介護分野で3倍を超え(有効求人3に対し求職1)ており、人材確保が各事業者の経営課題です。さらに、都市部と地方部で介護サービス提供体制に差があり、地方では特養ホーム入所待機者が多かったり訪問介護事業所が撤退するケースもあります。県は介護ロボット導入補助や外国人技能実習生の受け入れ支援を行っていますが、根本的には処遇改善と働きやすい環境づくりが必要です。また、高齢化率が50%前後に達する町村では地域包括ケアシステムの維持そのものが難しくなりつつあり、近隣自治体との広域連携で訪問看護ステーションを共用したり、買い物支援・見守りなどをNPOと協働するなど、新しいモデルが模索されています。
子育て環境:茨城県の合計特殊出生率は1.50前後(2022年1.50)と全国平均(1.33)より高めですが、年々低下傾向です。県は子育て支援施策に力を入れており、第3子以降保育料無料化や高校生までの医療費助成(2023年10月より完全無料化)を実施しています。待機児童数は2023年4月時点で0人(潜在的待機は除く)となり、一応解消しました。しかし、保育士確保や幼保一体化など課題は残ります。土浦市などでは老朽化した保育所の統廃合が進められています。また、小児科医不足から夜間小児救急が担保できない地域もあり、子育て世帯の不安要素となっています。学童保育(放課後児童クラブ)についても、都市部で利用希望者が急増し定員拡大が課題です。総じて、子育て支援は自治体間競争の様相も呈しており、魅力的な施策を打ち出す自治体(例:つくば市の高校3年まで子育て世帯への定額給付など)もあります。ただ、手厚い支援ほど財政負担も増すため、持続可能性とのバランスが問われます。
教育・学校規模:少子化で公立小中学校の小規模化が進み、統廃合の検討が各地でされています。2020年度からの10年間で、小学校数は県内で10校以上減る見通しです。中山間地域では1学年1桁人数の学校も珍しくなくなり、教育環境維持に苦慮しています。例えば大子町では全小中学校を1校ずつに再編し小中一貫校とする構想を議論中です。一方、水戸市・つくば市などでは新興住宅地への学校新設需要もあり、地域差が極端です。ICT教育や不登校支援など、教育内容面の課題もあります。県平均の学力テスト成績は全国平均前後ですが、都市と地方で差があります。教育格差を是正し人材育成につなげるため、県立高校再編(統廃合や専門校新設)や大学誘致なども議論されています。
以上、医療・福祉・子育て分野は住民生活の質に直結するサービスであり、市町村が最も力を入れるべき領域です。しかし人材と財源の制約が厳しく、広域で補完し合うネットワーク構築が解決のカギとなるでしょう。
防災・減災(自然災害リスク)
水害リスク:茨城県は利根川・那珂川・久慈川など大河川の下流域を含み、多くの氾濫想定区域があります。2015年9月の関東東北豪雨では常総市鬼怒川の堤防が決壊し、市域の1/3が浸水、2名の犠牲者と住宅被害約7,000棟を出しました。この経験から、防災への意識が高まり、県は全ての主要河川で洪水浸水想定区域図を新基準で公表しました。想定最大規模(千年に一度程度)の降雨で浸水が想定されるエリアと水深・継続時間を示したもので、各市町村のハザードマップはこれに基づき最新化されています。例えば、霞ヶ浦周辺(行方市・潮来市など)では広範囲が0.5~3mの浸水想定区域に指定され、住民への周知と避難計画策定が進められています。加えて、排水路整備や遊水地確保など流域治水の取り組みも始まりました。稲敷市では遊水池を活用した内水氾濫対策モデル事業を行っています。とはいえ、地形的に低平地が多い茨城では水害リスクをゼロにすることは難しく、減災の発想(被害を最小限にとどめる)が重要です。
地震・津波リスク:茨城県沖は地震の多発地帯で、マグニチュード5~6クラスの地震が頻繁です。想定される最大級のものはプレート境界型の「茨城県沖地震」や「首都直下地震」の揺れ、あるいは関東大震災型の地震です。県の被害想定では、最大クラスの地震発生時に県内で死者1,000人超、全壊家屋数7万棟超と試算されています(首都直下地震想定)。特に液状化の危険がある埋立地(神栖市波崎地区など)や、耐震化が遅れた木造住宅密集地(水戸市旧市街地など)で被害拡大が懸念されます。津波については、東日本大震災(2011年)で県沿岸に最大5m級の津波が押し寄せ、大洗町で港湾施設が損壊し、那珂湊や鹿島港でも被害が出ました。県は震災後に沿岸市町村と協力し、防潮堤や水門の整備、高台避難施設の設置を進めました。現在、沿岸の津波避難ビル指定は150棟以上に上り、ハザードマップも津波浸水想定(最大クラスで10m超の高さ)を住民に周知しています。災害に強いまちづくりとして、日立市では海抜の低い平野部から高台への住宅団地移転も検討されましたが、住民合意形成が課題となっています。
土砂災害・その他:県内には八溝山系・筑波山系など山地も多く、土砂災害警戒区域は約1,700か所指定されています。2019年台風19号では大子町で土石流が発生し住宅被害が出ました。県は砂防堰堤や斜面崩壊防止工事を順次進めていますが、全ての危険箇所にハード対策を施すのは困難で、避難誘導や警戒体制整備が重視されています。また、冬季の常陸太田市・大子町などでは豪雪は稀ながら数十cmの降雪が交通に支障を来すこともあり、除雪体制の確保も必要です。さらに昨今は台風の大型化により暴風被害も懸念され、2019年台風15号では鉾田市で長時間停電が発生し農業用ハウスに大きな被害を与えました。気候変動に伴う異常気象リスクへの適応策も各分野で求められています。
総じて、茨城県の市町村は「想定外を想定する」防災力強化が共通課題です。幸い、住民の防災意識は震災以降高まっており、地域の自主防災組織も9割以上の自治会で結成されています。今後はそれを維持発展させ、行政と地域が協働した減災体制を如何に構築するかが鍵となるでしょう。
行政運営(組織・人材・広域連携)
職員数と組織力:茨城県の市町村職員数は、平成の大合併以降一貫して削減され、令和4年度で合計約13,000人(一般職フルタイム)となっています。これは県人口あたりでは全国平均より少ない水準です。特に小規模町村では職員定数100人以下という所もあり、一人ひとりにかかる業務量が大きいのが実態です。専門職(医師・保健師・IT技術者など)の確保も難しく、人材不足が行政サービス水準に影響しかねません。これに対し、県は市町村行政支援のため、例えば広域でごみ処理施設を運営する際の財政補助、人事交流(自治大学校での研修受入れ拡充)などを行っています。また、市町村間でも「連携中枢都市圏」制度を活用し、中心市(例:水戸市)と周辺市町村が職員を相互派遣したりノウハウ共有する動きがあります。一方で、行政のデジタル化により職員業務の効率化・省力化も期待されます。マイナンバーを活用した情報連携や、申請手続のオンライン化は徐々に進んでいますが、システム改修費や住民側のITリテラシー対応など課題も多いです。県は生成AI(ChatGPT等)試行による業務負担軽減にも着手し、市町村にも展開予定です。
財政面の広域連携:財政力の弱い町村では、一自治体単独では難しい事業を、複数自治体合同で実施する例が増えています。例えば、県西地域の境町・五霞町は、民間バス会社と連携し圏央道経由で東京駅へ直通するバスを共同運行しており、単独では採算が取れない路線を維持しています。また、東海村と日立市はごみ焼却施設を共同利用し、建設コストを折半する計画です。さらには、県北5市町村(常陸太田・常陸大宮・大子など)が消防広域化を進め、指令センターを統合して迅速な119対応を図っています。このように、行政サービスを「広域でシェアする」発想が浸透しつつあります。今後さらに、庁舎統合や議会の合同開催など踏み込んだ議論も出てくるかもしれません。実際、境町は隣接する五霞町との合併検討を呼びかけるなど、再編への言及もあります。ただ、広域連携には地元の理解・調整が不可欠で、スピード感には限界があります。したがって、まずは共同事業や設備共用から着実に進めるのが現実的です。
住民参加と地域力:行政運営の新しい潮流として、住民や地域団体の参加協働が重要性を増しています。少子高齢化で行政サービスの担い手が不足する中、地域住民が自ら支え合う取り組みが各地で芽生えています。例えば、常陸大宮市の山間部では住民組織が自主運行する買い物支援バスがあります。また、守谷市では市民活動センターがNPOやボランティア団体を支援し、行政と協働で子育て支援や環境美化を行っています。こうした「地域のプラットフォーム」づくりは、行政にとっても頼もしい補完戦力となります。行政側も、市民提案制度の整備やパブリックコメントの充実、アンケート調査の頻繁な実施など、住民の声を政策に反映する努力を強めています。
行政評価とガバナンス:自治体経営の視点も浸透してきました。多くの市町村で行政評価やKPI管理が導入され、成果に基づく予算配分が試行されています。茨城県自体も総合計画「いばらき未来共創プラン」でKPIを掲げ進捗管理をしています。また、ガバナンス強化として、情報公開度やコンプライアンス研修などにも注力しています。全国的に問題となった自治体不祥事(職員の不正経理など)を防ぐため、内部統制制度が導入され、庁内チェック機能も整備されました。市町村議会も、住民との意見交換や議会報告会を開催するところが増え、開かれた議会に変わりつつあります。もっとも、議員数削減やなり手不足も指摘されており、真の意味で住民意見を代弁する議会であり続けるためには改革が必要でしょう。
以上、行政運営面では「人的・財政制約下での行政サービス維持」がキーワードで、そのための広域連携・デジタル化・住民協働という手段が浮上しています。
以上、データに基づき茨城県市町村の現状を俯瞰しました。次章では、これらを踏まえて県内に共通する主要課題をテーマごとに整理し、なぜその課題が生じているか、放置するとどうなるかを考察します。
3. 茨城県の市町村に共通する主要課題
前章で見た現状データを背景に、茨城県44市町村に広く共通する課題を洗い出します。主なテーマは人口減少・少子高齢化、地域経済の活性化、財政の持続性、社会インフラ維持、交通弱者対策、医療介護人材不足、防災力強化、行政経営改革の8つです。それぞれについて、「何が起きているか/なぜ起きるか/放置すると何が起きるか」を整理します。
課題1:人口減少と少子高齢化への対応
何が起きているか:ほぼ全ての市町村で人口が減り、高齢者比率が上昇しています。一極集中傾向の弱かった茨城県でも、県南の一部を除き若者の転出超過が続き、2040年頃には多くの自治体で現在の人口から2~4割減になる見通しです。出生数も減少が著しく、2024年の県内出生数は13,976人と過去最少を更新しました。高齢者は2040年代に団塊ジュニア世代が75歳以上となり、要介護者のさらなる増加が避けられません。一部地域では限界集落・消滅集落が現実化しつつあります。
なぜ起きるか:根本要因は少子高齢化という全国的潮流ですが、茨城特有の事情もあります。東京圏に近く交通も発達しているため、若年層が進学や就職で県外に流出しやすいことが挙げられます。特に県西・県北の若者が大都市圏へ出て戻らないケースが多いです。また、県内就職しても、研究学園都市など特定エリアに人材が集中し、他地域は人口を維持できません。結婚・出産が減っているのは社会経済状況の影響もありますが、若い女性ほど県外転出超過が顕著(「消滅可能性自治体」の指標)という構造もあります。高齢化が進むのは出生減のみならず「若者流出→地域縮小→更なる流出」のスパイラルも一因です。
放置すると何が起きるか:人口減少そのものは不可避としても、無対策なら地域社会の維持が困難になります。具体的には、労働力不足で地域経済が縮小する、公民館・学校・病院など社会インフラが利用者不足で維持できなくなる、地域コミュニティが崩壊し防災力や治安が低下する、といった悪影響が想定されます。最終的には自治体そのものの存続(財政や組織)が危うくなり、近隣自治体との合併や廃止すら現実味を帯びるでしょう。また、急激な人口減は空き家放置や耕作放棄地増大をもたらし、景観悪化や環境問題(鳥獣被害など)にも繋がります。地域の担い手不足が全ての地域課題のボトルネックとなりかねない状況です。
課題2:地域経済の停滞と雇用創出
何が起きているか:県全体では製造業とサービス業でそこそこの雇用が維持されていますが、地域差が大きく、県北・鹿行などでは地域経済が縮小基調です。企業数・事業所数の減少率が全国平均より高く、中小企業の廃業が増えています。商店街のシャッター通り化や、農漁業の衰退による関連産業の消失も顕著です。その結果、地域で働く場がなく若者が地元に定着しません。例えば高萩市では市内就業者の3割以上が市外通勤となっており、地元で完結しない経済構造です。観光面でも茨城県は訪問者数・観光消費額が伸び悩み、交流人口の喚起に課題があります。
なぜ起きるか:要因の一つは産業構造の転換と企業立地の偏りです。高度経済成長期に繁栄した鉱工業都市(日立市、高萩市など)は、エネルギー革命や円高で基幹産業が縮小しました。一方、守谷市やつくばみらい市のように東京都心から近い地域に物流拠点や工場が立地し、県内でも企業立地の南北格差が生じました。また、農産物価格低迷と高齢化で農業収入が減り、農村地域の消費購買力が落ちています。さらに、茨城県はイメージ戦略で出遅れた面もあり(長年「魅力度ランキング」最下位が話題にされました)、観光資源がありながら集客に苦戦してきました。こうした複合要因で地域経済に需要不足と供給力不足の悪循環が生じています。
放置すると何が起きるか:地域経済の停滞が続けば、税収減→公共サービス低下→さらに人が離れる、という負のスパイラルに陥ります。特に雇用機会が乏しいままだと若年世代のUターンも期待できず、地域活力が回復不能となりかねません。また、小規模自治体では地元中小企業が地域コミュニティの担い手でもありますが、その企業が消えると祭りの運営や消防団活動など地域維持機能にも支障が出ます。広域的にも、県経済の中心を担う地域が限られれば、将来的に県全体の経済規模縮小(県内総生産の減少)が避けられず、財政力にも跳ね返ります。経済あっての地域である以上、経済停滞は他の課題を一層深刻化させる要因となるでしょう。
課題3:自治体財政の持続可能性
何が起きているか:現状、茨城県内自治体の財政は指標上は健全ですが、長期的には歳入減・歳出増の構造的課題を抱えています。人口減により将来の税収は確実に目減りする一方、高齢者福祉費やインフラ更新費は今後ピークを迎えます。また、地方交付税も国の財政事情で減額傾向にあり、交付団体は財源不足に陥る懸念があります。すでに一般財源の不足を補うため臨時財政対策債(将来交付税措置される借金)に頼る自治体も多く、茨城県内でも合計で年間数百億円規模が発行されています。このように、表面的な黒字の裏側で見えない負債が増えている状況です。
なぜ起きるか:最大の要因は人口構造変化に財政が追いつかないことです。自治体の支出は高齢者向けやインフラ維持にシフトしつつありますが、人が減る分コストカットできるかというとそう簡単ではありません。固定的経費(職員数や公共施設等)は急には減らせず、むしろ単位当たりコストが上昇するジレンマです。また、小規模自治体ほど規模の経済が働かず、一人当たり行政コストが高くなります。さらに、合併特例措置が終了し地方交付税が減額され始めた自治体もあり、財政運営に余裕がなくなってきました。投資的経費を絞り続けたためにインフラ老朽化対策の先送りが積み上がり、今後一気に費用発生するという要因もあります。このように、歳入減と歳出膨張のタイムラグが財政を圧迫し始めています。
放置すると何が起きるか:財政状況が悪化すれば、最悪の場合、財政再生団体(夕張市のような財政破綻)になるリスクも否定できません。それを避けるためにはサービス水準を下げる(行政の縮小)ことになりますが、住民の安全・安心や快適な暮らしが損なわれる恐れがあります。例えば道路補修ができず穴ぼこだらけになる、水道料金を大幅値上げせざるを得ない、子育て支援策をカットする、といったことが現実味を帯びます。また、財政難は自治体職員のモチベーション低下や人材流出も招き、行政サービスの質低下に直結します。さらに、財政に余裕がなければ将来への投資(教育や産業振興)もできず、地域の発展機会を逃すという負の循環に陥ります。財政の悪化は自治体経営の自由度を奪い、悪循環を固定化してしまうでしょう。
課題4:社会インフラの老朽化・維持管理
何が起きているか:高度成長期に整備されたインフラが次々に寿命を迎えています。道路橋では、長さ15m以上の橋梁576橋のうち約20%が建設後50年以上を経過(2021年度)し、毎年増加しています。水道管も老朽化による破裂事故が県内で毎年数十件発生しています。公共建築物では学校や庁舎などで耐震補強済でも設備更新が追いつかず、空調故障や雨漏りといった支障例が報告されています。自治体は数多くの施設・設備を抱えますが、点検・補修に人手と予算が足りないのが実情です。このままでは想定寿命を超えて酷使され、やがて大規模な事故(橋梁崩落や水道大規模漏水など)につながりかねません。
なぜ起きるか:要因は二つあります。一つは計画的更新の先送りです。財政制約から更新投資を抑えてきた結果、更新需要が後年度に累積しました。特に1990年代以降、公共事業費削減の流れもありインフラ維持更新への投資が不足しました。二つ目は資産総量の過大です。昭和期に将来人口増を見込んで作ったインフラが、人口減少で必要量以上になっています。本来縮減すべきところを維持しているため管理負担が重荷になっています(使われない施設でも維持費はかかる)。さらに、技術者不足もあり、自治体によってはインフラ管理台帳すら十分整備できていないところもあります。
放置すると何が起きるか:最悪のケースでは重大事故が起こり、人命や地域経済に深刻な被害を及ぼします。例えば道路橋の崩落が起これば物流が遮断され孤立地域が出るかもしれません。上下水道の大規模故障は生活と衛生を直撃します。また、施設が老朽化して使い物にならなくなれば、代替施設がない場合サービス停止となります。図書館や公民館が閉鎖されコミュニティの場が失われる、小中学校の老朽校舎が教育環境を悪化させ学力にも影響する、といった問題も想定されます。インフラ事故は行政への信頼失墜にも直結します。さらに、老朽資産を抱え続けると維持費が雪だるま式に増え財政を圧迫し、他の政策に充てる財源を食い潰します。早めに手を打たないと、インフラ老朽化→事故リスク→緊急対策費増→財政悪化→計画的更新が更に困難…という悪循環が加速しかねません。
課題5:交通弱者と地域交通の維持
何が起きているか:住民の中に「交通弱者」が増えています。高齢で運転できない人、障害や病気で移動困難な人、免許を持たない学生などです。かつては公共交通がその受け皿でしたが、路線バス・鉄道の衰退で、その役割が十分果たせていません。農村部では買い物や通院にタクシーを頻繁に使う高齢者もおり、経済的負担にもなっています。交通手段を失った高齢者は引きこもりがちになり、健康面・精神面への影響も懸念されます。また、地域公共交通が消えることは観光やまちづくりにもマイナスです。観光客が車でしか来られないエリアでは集客にも限界があります。
なぜ起きるか:背景には自家用車前提の都市構造と採算性の壁があります。人口密度が低く拠点が分散した地域では、従来型の定時定路線バスは利用者が少なく赤字になりやすいです。自家用車が普及しすぎたために、公共交通の需要自体が細ってしまいました。また、過去のモータリゼーション政策で道路整備は進んだ一方、公共交通への投資は後回しでした。さらに、運転手不足や燃料費高騰などで、バス・タクシー事業者の経営も厳しく、路線維持に行政補助金を投入しても限界があります。要するに、効率と利便性のジレンマで、需要が少ない地域ほど移動手段が失われ、必要な人が取り残される構造です。
放置すると何が起きるか:交通弱者の増加は、その人たちの生活の質を著しく低下させ、ひいては地域社会全体に負担を及ぼします。例えば、通院できないことで健康悪化⇒医療費増や介護認定者増につながったり、買い物難民化⇒栄養状態悪化という問題も考えられます。また、移動が不便な地域には人も企業も定着しませんから、地域の衰退が一層進みます。脱炭素の観点からも、公共交通がなく皆がマイカーではCO2排出が減らず、持続可能性に逆行します。若者にとっても、車がないと暮らせない地域は魅力が下がり、都市部流出を助長するでしょう。今後高齢ドライバーがさらに増えれば、悲惨な交通事故も増える恐れがあります。移動の自由の喪失は人権や幸福度の問題でもあり、そのまま放置することは地域の存立基盤を危うくします。
課題6:医療・介護人材の不足と地域医療体制
何が起きているか:県内多くの地域で、医師・看護師・介護職の人手不足が顕在化しています。病院では医師確保が難しくなり診療科休止や病床削減が起きています。例えば、ひたちなか市では産婦人科の常勤医減少により分娩取扱病院が減り、周産期医療体制に不安が出ています。訪問看護や介護事業所でもスタッフ不足で利用希望に応えきれず、サービス提供を断るケースもあります。薬剤師・保健師なども慢性的に不足気味です。このままでは地域の医療提供体制や介護サービス網が維持できなくなり、医療難民・介護難民が発生しかねません。
なぜ起きるか:原因の一つは若い専門人材の県外流出です。医師は東京の大学でそのまま首都圏に残る人が多く、県内に戻ってきません。看護師や介護職も都市部のほうが給与待遇が良く、魅力的なキャリアパスがあるため流出が見られます。もう一つは業務の過重負担と待遇です。慢性的な人手不足がさらに職場環境を悪化させ、人が定着しない悪循環に陥っています。介護職は重労働の割に賃金が低く敬遠されがちです。医師については地域間の魅力格差もあり、水戸市に医学部がないことが県全体の医師採用を困難にしてきた歴史もあります。また、女性が多い職種である看護・介護分野では、結婚出産を機に離職し復帰しにくい状況もあって、人材プールが有効活用されていません。
放置すると何が起きるか:医療介護人材の不足は住民の生命・健康に直結する重大問題です。放置すれば、救える命が救えない、介護が必要なのに受けられないといった事態が現実化し、地域住民の安心安全が損なわれます。病院の機能縮小が進めば、重症患者は遠方の都市病院に搬送せざるを得ず、搬送中のリスクも高まります。介護難民が増えれば、家族の介護負担が増して共倒れ(老老介護の末の孤立死など)も懸念されます。専門職不足はまた、公衆衛生の面でも脆弱性となります。新興感染症や災害医療に対応できる人員がいなければ、非常時に地域医療が崩壊しかねません。社会保障の最後の砦が抜け落ちるようなもので、生活基盤としての地域の魅力も大きく低下します。これは人口流出をさらに加速させ、地域衰退を決定的なものとするでしょう。
課題7:災害に強い地域づくり
何が起きているか:前述したように、水害・地震・津波・土砂災害など茨城県は多様な自然災害リスクにさらされています。気候変動で災害の頻度・規模が増す傾向も指摘されており、もはや「想定外」は通用しません。各自治体でハザードマップ配布や避難訓練など進めていますが、実際に近年の大規模災害では想定を超える被害が出ています。例えば2019年台風19号で那珂川が堤防決壊した際、想定浸水エリア外にまで水が広がりました。つまり、現行の備えでも不十分な可能性があり、さらなる減災策が必要です。しかし一方で、ハード対策には莫大な費用がかかり、財政が持ちません。住民も「自助」の重要性は理解しつつ、高齢者ばかりの地域では避難行動にも限界があります。
なぜ起きるか:根本には、茨城県が広大で地形も多様なことがあります。全域をまんべんなく守るには国費・県費含め相当の年月と資金が必要ですが、優先順位付けや事業計画が難しい状況です。さらに、地球温暖化による線状降水帯頻発など、ハードでは完全対応できない自然の猛威があります。結局のところ、被害をゼロにすることは困難で、逃げ遅れゼロを目指すなどソフト対策充実がカギとなります。しかし、住民意識にはまだムラがあり、「自分は大丈夫」と避難しない人が一定数います。こうした人的要因も災害被害を拡大させる原因です。また、インフラ老朽化の放置が災害時被害を助長するケース(大雨で老朽水道管破裂による断水など)も懸念されます。
放置すると何が起きるか:大規模災害はいつ発生してもおかしくなく、備え不足のままでは住民の生命財産が大きく損なわれる恐れがあります。最悪の場合、多数の死者・行方不明者を出し、地域社会が壊滅的打撃を受けるでしょう。災害後に住民が戻らず地域消滅に至る事例(例:福島原発事故での帰還困難区域)が示す通り、一度の災害が地域の未来を決定づけることもあります。経済的損失も莫大です。例えば鬼怒川水害では約400億円超の被害額となり、市の予算規模を超える復旧費が必要となりました。その負担は将来世代にものしかかります。さらに、頻発する中小規模災害への対応疲れで行政や住民の余力が奪われ、他の課題への対処が遅れる恐れもあります。結局、災害に弱い地域は持続不可能であり、安全性が確保できなければ企業も人も定着せず悪循環に陥ります。
課題8:行政経営の変革と住民参加
何が起きているか:上記の課題に対処するには行政自らの変革が求められますが、自治体組織の硬直や人材不足がボトルネックになりつつあります。特に小規模自治体ほど守備範囲が広い割に人員が少なく、職員一人当たりの業務量が限界に近いです。新しい政策にチャレンジする余裕がなく、従来事業を淡々とこなすだけになりがちです。また、縦割りや前例踏襲の文化が残り、データや科学的根拠に基づく政策立案(EBPM)が十分でないという指摘もあります。住民とのコミュニケーション面でも、情報発信や説明が不十分で誤解・不信を生むケースがあります。行政と住民の距離が開くと、協働による地域課題解決が進まず膠着状態に陥ります。
なぜ起きるか:原因の一つはリソース不足(ヒト・カネ・時間)で、新しい取組や改革のためのエネルギーを生み出せていないことです。もう一つは変革への心理的抵抗です。公務員組織は基本的に安定志向が強く、ミスなく現状維持することに注力しがちです。外部人材の登用なども都市部以外では進んでおらず、多様な発想が入りにくい土壌もあります。住民側も自治への参画意識が必ずしも高くなく、「行政がやること」と受け身でいる面があります。このため住民と行政の協働体制づくりがスムーズにいきません。また、議会を含めた統治構造も、監視と協調のバランスが難しく、首長のリーダーシップが強すぎても弱すぎても改革は進みません。組織文化と統治機構の問題が変革の足枷になっています。
放置すると何が起きるか:行政改革が進まなければ、これまで述べてきた諸課題に対し有効な手が打てず、状況は悪化の一途を辿るでしょう。時代に合わない行政サービスを漫然と続け、財政浪費や住民ニーズとの乖離が拡大します。住民の行政不信が高まれば、税や公共料金の負担にも非協力的になり、地域経営自体が行き詰まります。さらには、優秀な職員がやりがいを求めて他に流出し、人材の枯渇で組織の維持が難しくなるかもしれません。「行政の失敗は地域の失敗」です。自治体経営を取り巻く環境は厳しさを増すばかりで、従来の延長線では立ち行かないことは明白です。改革なくして未来なしと言っても過言ではありません。
以上、8つの主要課題を挙げました。それぞれ相互に関連し合っており、例えば人口減が経済・財政を悪化させ、医療人材不足や公共交通衰退に繋がる、といった複合問題です。この複雑な課題に対し、次章では地域差による特徴を踏まえつつ、解決策の方向性を探ります。
4. 地域差で見る課題の“出方”
茨城県は5つの地域区分(県北・県央・鹿行・県南・県西)ごとに地勢や産業構造、人口動態が異なり、前章の課題の現れ方や深刻さにも差があります。ここでは公式の地域区分に沿って各地域の特徴・強み・課題を整理し、優先すべき対策の方向性を検討します。また、具体例として複数の市町村の取り組みを紹介します(あくまで例示であり、各地域内にも多様性がある点に留意)。
県北地域:産業再生と生活インフラ維持が急務
特徴・強み:県北は日立市に代表される工業地帯と、奥久慈など自然豊かな農山村が共存する地域です。日立製作所など重厚長大型産業の技術蓄積があり、関連中小企業も存在します。また、袋田の滝・竜神峡・花貫渓谷など観光資源が豊富で、温泉地も点在します。森林・清流に恵まれクリーンエネルギー(小水力発電等)のポテンシャルもあります。強みとしてはものづくり人材と観光資源が挙げられます。
課題の出方:県北は人口減少・高齢化が県内で最も深刻です。高萩市・北茨城市・常陸太田市などはいずれも総人口がピーク時から2~3割減少、高齢化率は40%前後に達しています。産業面では日立市以外の市町村で主力産業を失い、若者流出が著しいです。医療・買い物など生活利便施設も水戸市などへの集中で地元には不足がちです。生活インフラ維持コストが高く、財政力の低い自治体が多いです(常陸太田市の財政力指数0.41など)。交通ではJR常磐線以北の支線が不便で、高速道路も日立以北は縦貫道が未整備でした(2024年にようやく常磐道日立~高萩間4車線化)。観光資源も個別には優れるもののアクセスの悪さから活かし切れていません。
優先策:県北ではまず地域産業の再生が重要です。日立市の研究開発機能を核に、ロボット・ドローン等新産業に挑む(例:日立市のロボット実証実験特区)ことや、北茨城市の漁業×観光のように既存資源を磨き上げ新たな付加価値を創ることが考えられます。奥久慈地域では道の駅などを拠点に交流人口拡大を図り、関東近郊からの観光・移住を誘致する施策が必要です。交通面では、日立市・高萩市・北茨城市が連携し広域バス路線を確保する、鉄道水郡線の高速バス転換など思い切った再編も検討すべきでしょう。生活インフラ維持には、県北5市町村で共同の公営企業体を設立し上下水道や病院を統合運営する案も出ています。財政が厳しい自治体が単独で抱えるより、広域でコスト分担する仕組みづくりが優先されます。また、各市町村の行政サービス(窓口等)を県北地域で融通し合うこと、ICTを活用した遠隔行政サービスで山間部住民の利便を確保することも有効です。要するに、県北は「広く・少ない資源をシェアして効率化」する視点が不可欠です。
具体例(常陸太田市):常陸太田市は人口約4万人から約1.7万人へ大幅減となった中、行政改革で乗り切ろうとしています。公共施設を大幅統廃合し、市民交流センターに複合化したほか、市立病院も民間譲渡(公設民営化)し経営改善を図りました。また、観光では廃校舎をカフェやゲストハウスにリノベーションする取り組みを地元NPOと協働しています。広域連携では常陸大宮市などと定住自立圏を組み、消防や図書館利用で提携しています。これらは縮充モデル(コンパクト化して充実化)の先行例として注目されます。
県央地域:都市機能の強化と周辺町村支援
特徴・強み:県央は水戸市を中心に行政・教育・医療資源が集中します。県庁所在地である水戸市には県内最多の医療機関と高次医療施設、商業施設が揃い、ひたちなか市には工業港湾と自動車関連工場があります。東海村には原子力科学の中核機関があり、技術者人材もいます。地理的に県の中央に位置し、県全体をリードするポテンシャルがあります。また、大洗町の観光港(フェリー)や笠間市の焼き物産業など特色ある資源も点在します。強みは行政中枢機能と多様な産業集積にあります。
課題の出方:県央では人口減少や高齢化は県北ほど深刻ではありませんが、それでも水戸市以外では減少傾向です。小美玉市・茨城町・城里町など周辺町村は財政力が弱く(水戸市0.78に対し茨城町0.58)、都市と郊外の格差が見られます。水戸市は人口流出でピーク時より減少に転じ、近年は若者流出(つくば市や東京へ)の課題があります。都市機能面では、老朽化した市街地インフラ更新(水戸駅ビル建替え等)が進められている一方、公共交通の脆弱さ(水戸市のバス路線縮小)や中心街空洞化(大規模店郊外移転による空きビル増)があります。都市圏としての求心力低下が課題です。また、東海村など原子力施設立地地域では安全対策と将来的なエネルギー政策転換への対応が独特の課題です。
優先策:県央地域は都市圏戦略が鍵です。水戸市を核に周辺自治体と連携して「いばらき県央地域中枢都市圏」を形成する構想があります。具体的には、水戸市の文化・商業機能を強化しつつ、近隣の笠間市・ひたちなか市と役割分担(笠間は観光芸術、ひたちなかは工業・物流など)して広域の雇用と暮らしを支えることです。そのために、公共交通ネットワークの再構築が必須です。水戸市と周辺市町村を結ぶBRT(バス高速輸送システム)整備や、新交通システム導入の検討が望まれます。また、中心市街地の再生として、水戸駅周辺再開発や歴史資源(偕楽園・弘道館など)の観光活用で集客力を上げるべきでしょう。周辺町村支援策としては、水戸市の病院が城里町などから患者受け入れを円滑化するなど、中枢都市としての支援機能強化が挙げられます。茨城町・城里町などに対しては、広域で学校適正配置を考え、水戸市の高校との統合や通学支援をするなど、県央全体で教育環境を維持することも検討に値します。
具体例(水戸市と周辺連携):水戸市は2019年に近隣6市町村(ひたちなか・那珂・小美玉・茨城・大洗・城里)と「連携中枢都市圏協定」を締結しました。これにより、観光PRの共同実施、市民活動団体の相互交流、救急医療情報の共有化などが行われています。さらに、那珂市・東海村とは広域水道企業団を組織し、上水道の安定供給を図っています。これは県央エリアが一体となってインフラ・サービスを運営する好例です。また、ひたちなか市と水戸市は合同でテレワーク移住者向け支援策を講じ、都市部ITワーカーを受け入れる試みも始めました。県央は「1+1を3にする」広域連携のメリットが出やすい地域であり、こうした取り組みを深化させる必要があります。
鹿行地域:工業地帯の維持と農漁業・観光振興
特徴・強み:鹿行地域(鹿嶋・神栖・潮来・行方・鉾田)は鹿島臨海工業地帯を擁し、鉄鋼・化学など基幹産業があります。神栖市は人口9万人超で雇用も多く、鹿嶋市もJリーグの鹿島アントラーズなど全国ブランドを持ちます。霞ヶ浦・北浦・利根川に囲まれた水郷地帯で農業が盛んであり、前述の通りメロン・レンコン等の一大産地です。潮来市の水郷観光や、息栖神社など歴史資源もあります。工業と農業という二大産業が共存し、首都圏にも比較的近い利点があります(都心まで高速バスで2時間弱)。
課題の出方:鹿行の特徴は、工業地帯と周辺農村の落差が大きいことです。神栖市・鹿嶋市は比較的財政力もあり(鹿嶋市財政力指数0.965)人口も微減程度ですが、行方市・鉾田市は人口減少率が高く高齢化率も36%前後です。工業地帯自体も、製鉄所のCO2排出問題や将来的な縮小懸念があります。漁業(鹿島灘)は不漁や高齢化で斜陽化しており、沿岸部の集落維持が課題です。また、工業化に伴い環境公害(過去の大気汚染等)の歴史もあり、住民の健康や環境対策も引き続き留意が必要です。交通では鉄道が鹿島線のみで不便なため、道路交通(東関東道・圏央道)の整備が課題でしたが、近年改善されつつあります。とはいえ、鹿嶋・神栖エリアの通勤渋滞などは依然課題です。農業は基幹産業ですが、担い手不足が深刻で、大規模経営体への移行とブランド化が求められます。
優先策:鹿行地域は産業ポートフォリオの多角化が重要です。まず、鹿島臨海工業地帯の企業存続と低炭素化への投資誘導です。水素製鉄など先端技術導入で製鉄所の競争力と雇用を守ること、化学プラントの高付加価値化支援が必要です。また、工業依存からサービス業育成へシフトを図るため、スポーツ・観光振興が挙げられます。鹿嶋市ではアントラーズを軸にスポーツツーリズムを展開可能ですし、潮来市は水郷佐原(千葉県)と連携した広域観光でインバウンドを狙えます。行方市は霞ヶ浦沿いの直売所やレジャー施設を整備し、農産物と観光を結び付ける戦略を取っています。農業では、鉾田市などで進む企業的農業(大規模園芸)を県が技術・販路支援すること、6次産業化や輸出拡大で農家所得向上を目指すことが課題解決につながります。交通面では、東京駅~鹿島神宮駅の高速バスを増発・高速化するとともに、地域内移動では潮来・鹿嶋・神栖の3市を結ぶコミュニティバスの路線統合などでモビリティ確保を図るべきでしょう。医療面では、神栖市に県立病院の誘致構想があり、鹿行圏域の中核医療施設を整備することで医療不安を和らげることも重要です。
具体例(行方市のチャレンジ):行方市は人口3万人弱の農村市ですが、「なめがたブランド」と称して農産物の加工品開発や直売所の運営に力を入れています。サツマイモから焼酎を造ったり、レンコンを使ったスイーツを開発するなど、若手経営者と行政が協働し6次産業化を進めています。また、市は霞ヶ浦沿いに移住体験施設を整備し、テレワーク希望の子育て世帯にアピールしています。さらに空き学校を利用したドローン飛行訓練場を誘致するなど、新産業にも積極的です。こうした多角化策は他の鹿行農村部にも参考になるでしょう。
県南地域:都市成長管理と広域交通ネットワーク
特徴・強み:県南は筑波研究学園都市(つくば市)と常磐線沿線都市(土浦・牛久・龍ケ崎・取手など)、さらに首都圏ベッドタウン(守谷市)を含むエリアで、県内で最も人口が多く(約95万人、県全体の34%)、若年人口比率も高めです。首都東京に近い地の利があり、圏央道・常磐道・TXなど交通も発達してきました。つくば市は科学技術の集積で国際的競争力を持ち、取手市・守谷市は東京都心通勤圏として人気が高いです。産業では、つくば市にIT・研究系ベンチャー、土浦市に流通業、牛久市などに食品製造など多彩です。農業も霞ヶ浦近辺で米やレンコン、果物などが盛ん。強みは首都圏アクセスと高度人材と言えます。
課題の出方:県南は概ね発展的要素が多い一方で、無秩序な都市化や交通渋滞など成長ゆえの問題があります。土浦市・つくば市は郊外に大型店が広がり、旧市街地の空洞化が課題です。宅地開発も広範囲に及び、車依存の都市構造で公共交通が脆弱な地区が多々あります(例:つくば市郊外の学園住宅地でバス路線が少ない)。守谷市などでは人口急増に上下水道整備や学校整備が追いつかない時期もありました。人口増が一段落した自治体(取手市や牛久市)は、今後高齢化に直面します。実際、取手市の高齢化率は28%(2025年)と県平均並みになりつつあり、高齢者サービスニーズが高まっています。つくば市は人口増でも出生率は低下傾向で、若い子育て世帯支援が重要です。加えて、県南は東京都心への人口流出(特に大学進学後に戻らない)があり、高学歴人材の定着が課題です。また、都市化圏と筑波山麓など農村との地域内格差もあります。
優先策:県南地域では計画的な都市づくり(コンパクトシティ志向)が必要です。つくば市・土浦市では立地適正化計画を策定済みで、医療・商業・公共施設を集約する都市機能誘導地区を定めています。これを着実に実行し、郊外住宅地はコミュニティ縮小を見据えて公共施設を再編、中心部は高齢者も暮らしやすい街なか居住を促進します。交通ネットワークでは、常磐線とTX、圏央道を軸に県南広域交通網を整備する展望があります。具体的には、土浦駅~つくば駅間にBRTを導入し、さらに守谷・取手方面へ接続することで環状公共交通を形成する案などが考えられます。道路渋滞対策は、スマート渋滞対策(信号制御の最適化)やパークアンドライドの拡充で対応します。産業面では、つくば科学技術の産業化を県全体に波及させるため、つくば発ベンチャーの県内他地域展開を支援することや、土浦市の進める「コワーキング施設誘致」で東京のテレワーカーを受け入れるなど、新たなビジネス誘致が鍵です。加えて、県南の教育資源(大学・高校)を活かし、人材が地元就職したくなる魅力ある企業誘致(研究所や開発拠点など高付加価値産業)を進めることも優先事項でしょう。
具体例(つくば市のまちづくり):つくば市は「つくばモビリティロボット実験特区」に指定され、自動運転バスや配送ロボットの実証実験を積極展開しています。広大な郊外住宅街の移動課題にロボット技術で対処する先進事例です。また、中心部「つくば駅周辺」ではTX延伸を見据えた再開発計画を策定し、公共施設・商業・住宅の複合ビル整備でコンパクト化を図っています。さらに「Smart City Tsukuba」として、防災やエネルギー面でスマート技術を導入し、データ連携基盤を構築する試みも進行中です。市民参加も重視し、国内外からの多様な人材と共創する都市像を描いています。こうした先端的取り組みは県南全体のモデルとなり、土浦市や周辺町も連携してスマートシティネットワーク化すれば、県南の競争力は一段と増すでしょう。
県西地域:東京圏隣接の利点活用と農村振興
特徴・強み:県西地域(古河・結城・下妻・常総・筑西・坂東・桜川・八千代町・境町・五霞町)は茨城県最西端で埼玉・栃木と接し、首都圏通勤圏の北端にも当たります。古河市はJR宇都宮線で都心へ直結し住宅都市としても機能しつつ、工業団地も抱えます。結城市や桜川市は繊維産業(結城紬)や石材産業といった伝統産業があります。地域全体として農地が広く、梨や米の生産が盛ん。小山市(栃木)や館林市(群馬)と経済圏を共有する部分もあり、広域連携の素地があります。強みは首都圏と北関東の結節点に位置する物流適性や、古河駐屯地などの公共施設立地もあります。また、結城紬や笠間焼など伝統文化資源も観光材料です。
課題の出方:県西は交通面で鉄道空白地が多く、公共交通不便が顕著でした。近年圏央道が境古河ICまで開通し改善傾向ですが、相対的に交通利便が高い古河市に人口が集中し、他市町は減少が続いています。特に下妻市・常総市などは2005年の水害後に人口減が加速しました。財政面では、古河市は比較的余裕(財政力指数0.728)ですが、他は交付税依存の自治体が多いです。産業では、県北や鹿行と同様地元就業機会が限られ、若年層が埼玉・東京方面に流出しがちです。常総市の鬼怒川氾濫の記憶も新しく、防災インフラ強化と住民の防災意識向上が課題です。また、県西南部(境町・五霞町)は埼玉県との合併構想も過去に浮上したように、茨城の行政枠組みに属しながら生活圏は他県と一体という問題もあり、広域調整が欠かせません。
優先策:県西地域のカギは広域連携と首都圏市場の取り込みです。古河・結城・筑西の3市は既に「県西地域市長会」等で連携を模索していますが、例えば広域定住自立圏を組むことで、医療や消防などコスト削減を図れます。鉄道整備では難しいですが、代わりに高速バス網を充実させる策があります。境町は独自に東京直結バスを走らせ人口減抑制に成功しており、他自治体も共同で圏央道を活用した都心直結バスを整備すれば都心通勤者を呼び込めます。農業は強みなので、首都圏への農産物直売・輸出を県西ブランドで推進し、付加価値アップを図るべきです。結城紬や歴史遺産(古河城址など)も絡め、観光周遊ルートを作ることも考えられます。企業誘致では、圏央道沿線の坂東市・五霞町など工業団地ポテンシャルがあり、物流施設や食品工場を誘致して雇用創出を目指します。人口対策としては、古河市など交通利便地に若者世帯を集めつつ、下妻市などにはUIJターン希望者(テレワーク可な職種)に自然豊かな住環境を売り込み、二地域居住なども提案できます。行政運営面では、県西5市3町で合同のDX推進プロジェクトを組んでシステムを共同調達する、職員研修や専門職共同採用を行うなど効率化が可能でしょう。
具体例(境町の挑戦):境町は人口約2.4万人の町ですが、「攻めの自治」を掲げ様々な施策を打ち出しています。自治体直営の高速バス「マイタウン・ダイレクトバス」で東京駅と町を結び、住民の足を確保しつつ都内通勤者の定住も促しました。また、ふるさと納税を活用して企業版ふるさと納税でEVバス導入や、民間校(開成教育グループ)との連携で中高一貫教育プログラムを提供するなど、ユニークな公民連携策を講じています。さらにPFIで町営温泉宿を開業し観光誘客も狙っています。五霞町との合併議論にも前向きでした。こうした改革姿勢は県西他自治体にも刺激を与えており、自立と広域連携のバランスをどう取るかのモデルケースと言えます。
以上、地域別に課題の出方と方向性を述べましたが、共通して重要なのは「広域で補い合う」視点です。茨城県は東西南北に広く、市町村単独では解決困難な課題も、地域ブロック全体で取り組めば効果的な場合があります。県もハブとなり各地域の実情に応じた支援を強化すべきでしょう。
5. 解決策パッケージ(実行可能性の高い順に)
これまで挙げた課題に対し、短期(0~1年)・中期(1~3年)・長期(3~10年)のスパンで実行可能な解決策を整理します。施策を「人口・人材」「産業・経済」「財政・行政改革」「インフラ・交通」「医療福祉」「防災」のマトリクスで示し、それぞれに実行主体(県、市町村、民間、住民)、必要な体制・コスト感、KPI例を付記します。ここでは、実現性の高い順に優先度をつけ、まず着手すべき施策から順に提示します。また、広域連携や官民協働といった横断的視点も組み込み、複数課題を同時解決できる「一石多鳥」のパッケージを目指します。
短期(0~1年)に実行すべき施策
- 公共サービスの広域連携強化
内容:近隣市町村で図書館・ごみ処理・水道などの共同利用協定締結や、職員の応援派遣協定を結ぶ。圏域内で行政サービスを相互利用可能にする。
主体:市町村同士(県が調整支援)
体制・コスト:既存組織で協議会設置、制度調整の人的コストのみ(低コスト)
KPI例:1年以内に県内全44市町村が少なくとも1つの広域行政協定を締結。 - デジタル窓口・オンライン手続の拡充
内容:住民票発行等の行政手続きをスマホ・PCから可能にするシステム導入。テレビ会議による相談窓口設置。
主体:市町村(共通システムは県主導で調達)
体制・コスト:県が一括でベンダー契約し、各自治体に展開(費用共同負担、国交付金活用)。中コスト。
KPI例:主要手続のオンライン化率(申請件数ベース)を1年で50%以上に。 - 地域公共交通の当面維持策
内容:廃止予定のバス路線への自治体補助延長や、デマンド交通の試行導入。住民ボランティア運転の移動サービス立ち上げ。
主体:市町村(民間交通事業者、NPO)
体制・コスト:予算措置(数百万円~数千万円規模補助)、住民有志募集。中コスト。
KPI例:1年以内に交通空白地区ゼロ(全住民が何らかの移動サービス利用可)。 - 空き家対策の迅速化
内容:老朽危険空き家のリストアップと所有者への除却指導。補助金を拡充し1年で重点空き家の半数を解体または活用。
主体:市町村(建築士会、宅建業者協力)
体制・コスト:補助金100~200万円/件×件数(数千万円程度)、担当職員増配置。中コスト。
KPI例:倒壊の恐れある特定空き家の措置率50%以上達成。 - 医療・介護提供体制の点検と応急支援
内容:各圏域の医療・介護事業所の人員充足状況を調査し、特に不足する診療科や施設に対し、県から応援職員派遣や業務の一時休止調整など緊急対応。
主体:県(医療介護圏調整会議)、市町村(地域包括ケア協議体)
体制・コスト:県職員・地域医療支援センター活用、人件費程度(低コスト)
KPI例:緊急度の高い地域で医師ゼロ科目・サービス中断の発生件数ゼロ維持。
短期策は比較的コストを要さず意思決定だけで着手できるものを揃えました。広域連携やデジタル化は行政の決断で即開始可能です。地域交通維持や空き家対応も予算措置次第ですぐ動けます。医療介護支援は既存ネットワークを活用し実態把握と応急措置を講じます。以上の短期施策で、当面の住民生活悪化を食い止めつつ、中長期策の基盤を築きます。
中期(1~3年)に実行すべき施策
- 人口対策:UIJターン促進と定住環境整備
内容:都市圏在住者向けの移住支援(就職マッチング、住居支援金)、子育て世帯向け住宅取得補助。県内大学卒業生への奨学金返還支援で県内就職誘導。
主体:県(奨学金制度・移住支援全県プログラム)、市町村(住宅補助)
体制・コスト:奨学金支援1人100万円×対象者、住宅補助1世帯50万円×件数(高コストだが国交付金活用可)。専門チーム配置。
KPI例:県全体の転出超過数を3年で半減。UIターン者年間1,000人以上。 - 産業振興:企業誘致と起業支援
内容:圏央道IC周辺などに産業用地を整備し、製造業・物流拠点を誘致(用地造成・税優遇)。つくば発技術ベンチャーに対し県西・県北へのサテライト拠点開設助成(賃料補助)。創業希望者に対し市町村と地元金融機関が連携した融資保証制度。
主体:県(用地取得整備、助成制度設計)、市町村(用地提供、許認可)、民間(金庫、銀行)
体制・コスト:用地整備に数十億円規模投資(要国補助)、助成金各数千万円規模。中~高コスト。専任部署必要。
KPI例:3年で50社以上の新規誘致・創業を達成、雇用創出数1,000人以上。 - 財政健全化:資産圧縮と行政DX
内容:公共施設総合管理計画に基づき、不要不急施設を3年以内に延床総計の▲10%削減(統廃合・売却)。RPA(業務自動化)を全庁導入し業務効率20%向上、人件費自然減。県主導で自治体の基幹システムをクラウド化しランニングコスト削減。
主体:市町村(資産売却、DX推進)、県(システム共通化)
体制・コスト:資産売却で逆に収入増も。RPA導入費用1自治体数千万円(国交付金活用)。専門人材採用or外部コンサル契約。中コスト。
KPI例:行政サービス経費対人口比を3年で▲10%圧縮、住民満足度維持。 - インフラ更新:包括管理とPPP/PFI推進
内容:インフラ点検・補修を包括委託するコンセッション導入(上下水道、道路維持など)。民間資金を活用したPFIで学校や公営住宅を順次建替え。県が一括で技術者派遣チームを設置し小自治体を支援。
主体:市町村(施設毎にPFI事業者公募)、県(広域インフラ公社設立)
体制・コスト:PFIはVFM確保で平準化、コンセッションで将来負担軽減期待。ただ立上げに専門知見要。中コスト。
KPI例:インフラ維持管理費の民間委託率80%以上、更新遅延ゼロ(計画通り進行)。 - 交通ネットワーク再編(地域鉄道・バス改善)
内容:利用低迷鉄道路線のBRT転換や運賃補助導入で維持。新規にBRT/コミバス幹線を設定し都市間を高速結ぶ(例:水戸~つくば、土浦~筑西)。デマンド交通を全市町村展開し、AI配車で効率運行。広域IC乗継バスで県南・県西と東京駅を直結するネットワーク形成。
主体:県(広域計画策定、事業補助)、市町村(運行主体、民間委託)
体制・コスト:BRT整備費に数億円、中長距離バス補助年間数千万円程度。総合的交通計画チーム設置要。中コスト。
KPI例:地域公共交通利用者数を3年で20%増、移動制約者割合▲50%。 - 医療・介護人材確保:オール茨城アプローチ
内容:県内全病院・施設の求人情報を集約したポータルサイト構築、県独自の就学資金貸与(返還免除条件付き)で地域勤務促進。外国人材の受入支援(日本語研修補助、生活相談)。医師会・大学と協定し、休診中の診療科復活に専門医を派遣(圏域内ローテーション勤務)。
主体:県(資金制度、調整)、医師会・大学、民間介護事業者
体制・コスト:就学資金(医学部・看護学校等)1人500万円×年20人=1億円/年、サイト開発・運営数千万円、外国人研修100万円/人補助。中コスト。
KPI例:3年間で医師数+100人、看護師数+500人(対2025年)、離職率▲10%。
中期策は制度設計や調整に時間を要すもの、一定の予算伴うものです。人口対策や産業誘致は成果にタイムラグがありますが、中期的に効果を発現させるため早めの実行が大切です。財政健全化策やDX、インフラPPPも同様で、今始めれば数年後に効いてきます。広域交通網は計画策定・社会実験を経て3年程度で本格導入という想定です。医療人材確保策も制度化から定着まで年単位の時間が要ります。中期パッケージ全体で、「人・金・仕組み」を変革する土台を築きます。
長期(3~10年)に目指す施策
- 自治体再編・道州制も見据えた広域行政
内容:将来的な市町村合併(希望する自治体の円滑合併支援)や、県域を超えた広域連合(例:北関東3県医療連合)を検討。人口規模数万人未満の自治体については、10年以内に少なくとも広域連合化・合区(行政区画再編)を推進。
主体:国(制度枠提供)、県(調整役)、市町村(住民合意形成)
体制・コスト:合併には時間と住民投票等のコスト。メリット明示と財政支援必要。高コスト(合併特例債等活用)。
KPI例:10年以内に自治体数を44から30程度に再編、または広域連携体制で実質的共同運営達成。 - 抜本的エネルギー・防災インフラ強化
内容:再生可能エネルギー導入拡大(メガソーラー規制と調和、洋上風力など)で地域電力会社設立し収益確保。内水氾濫対策の雨水貯留池大規模整備、海岸部に高台移転促進(津波避難タウン計画)。重要インフラ複線化(予備系統整備)。
主体:県(総合計画立案・財源確保)、国(補助金・規制緩和)、民間(発電事業者)
体制・コスト:インフラ整備に数百億円規模(国費メイン)。再エネ事業は民間資本活用で採算性確保。中~高コスト。
KPI例:2035年までに県全体エネルギー自給率50%超、想定災害死者ゼロ目標達成。 - 教育・人づくり革命
内容:県内大学(筑波大など)・高専・企業と連携した「いばらきイノベーション人材育成プログラム」を構築、STEAM教育や起業教育を全高校で実施。奨学金や留学支援でグローバル人材育成し、地元産業に呼び戻す。自治体職員も抜本的リスキリング(行政DX研修義務化等)。
主体:県(教育委員会、高校)、大学、経済団体
体制・コスト:教育カリキュラム改革に伴う研修費・設備投資。奨学金基金造成(10億円規模)。中~高コスト。
KPI例:10年で県内起業数2倍、高校卒大学進学率向上(関東平均並みに)。自治体DX資格保有人員1000人輩出。
長期策は構造的転換を伴うビジョンです。自治体再編などはハードルが高いですが、10年先を見据え検討開始は必要です。エネルギー・防災の抜本策も長期視点で計画的に進めます。教育人材育成は成果が出るまで年限を要するので早期から着手し10年後に実る形を狙います。これら長期ビジョンは、短期・中期施策で時間を稼ぎつつ並行して準備を進めるものです。
以上、短期・中期・長期に分けた解決策パッケージを示しました。ここで重視したのは実行主体ごとの役割分担です。例えば広域インフラは県が旗振り、市町村が現場実行、民間が技術提供という連携が必要です。人口対策や産業策では県と市町村、そして企業が一体となり、住民も当事者として参加する形が望ましいでしょう。各施策に設定したKPIは進捗管理の目安ですが、柔軟に見直しPDCAを回すことが重要です。
また、「課題×解決策」のマトリクスで見ると、多くの施策は複数課題に横串で効くことがわかります。例えばデジタル化は行政効率向上だけでなく交通弱者支援(オンラインサービス拡充)や人材確保(テレワーク移住誘致)にもプラスです。広域連携は財政効率化とともに医療介護カバー範囲拡大、防災相互応援など相乗効果があります。マルチベネフィットを意識し、限られた資源で最大の効果を狙うのが持続可能な地域戦略の肝となります。
6. 実行ロードマップ(失敗しない進め方)
良い計画も実行を誤れば絵に描いた餅に終わります。ここでは、提示した解決策パッケージを着実に遂行するためのロードマップと、推進体制、ステークホルダーごとのアクションを示します。「現状把握→合意形成→スモールスタート→拡張→評価」のステップで進め、失敗を最小化するアプローチです。
(1) 現状把握と目標設定(0~半年)
まず、各市町村および県はデータに基づく現状把握を徹底します。人口動態、財政指標、産業構造、インフラ台帳、住民ニーズ調査などを網羅的に点検し、「課題の見える化」作業を行います。これにより、地域ごとの優先課題を再確認します。同時に、解決策ごとの成果目標(KPI)を関係者間で共有します。例えば「転出超過半減」「財政不足額ゼロ」「医師数○人確保」など、定量目標を設定します。目標は高すぎず低すぎず、挑戦的だが現実的なラインに定め、合意します。この段階では行政内部だけでなく、地域の有識者(大学・シンクタンク等)や住民代表も交えたタスクフォースを設置し、多面的な視点で現状分析することが重要です。
(2) 合意形成と体制整備(半年~1年)
次に、ステークホルダーとの合意形成に注力します。県は市町村長や議会と定期協議の場を設け、広域施策の方針をすり合わせます。市町村では住民説明会やパブリックコメントを通じ、改革の必要性と内容を丁寧に説明し理解を求めます。特にセンシティブな問題(例:公共施設統廃合や合併議論)は、不安や反対意見に真摯に向き合い、代替案や補償策を示しながら合意点を探ります。並行して、実行のための推進体制を構築します。県庁内に「地域経営改革推進本部」(知事を本部長)を設置、市町村には専任の推進監を配置します。必要に応じて外部の専門人材(民間出身のCIO=Chief Innovation Officer等)を採用し、知見を補強します。広域連携施策については、当事者自治体間で協定や組合設立など法手続きを進めます。体制整備段階では根回しと下準備に十分な時間をかけ、「やるぞ」という現場の覚悟を固めることが失敗回避に繋がります。
(3) 小さく試す(スモールスタート)(1~2年)
改革は一度に大ナタを振ると副作用が出がちなので、試行的に小規模導入するところから始めます。一例として、デマンド交通は一部地区で実証運行し、使い勝手やコストを検証します。行政DXもまず限られた業務でRPAを導入し、効果と問題点を洗い出します。広域連携も、いきなり合併ではなく共同事業を1つ実施してみて、相互信頼を醸成します。スモールスタートの間に得られた現場の声をフィードバックし、計画を微修正します。例えば住民の負担が想定以上に大きいと判明したら補助制度を追加する、システム不具合が出たら別ベンダーに切り替える等、柔軟に対処します。「まずやってみる」文化を行政内に根付かせ、成功も失敗も共有することで、関係者の学習が進みます。
(4) 段階的拡大と本格実施(2~5年)
小規模試行で手応えを掴んだら、施策を本格展開します。交通であればデマンド交通を全域に拡大し、不採算バス路線を代替するなど段階的実施に移行します。行政サービスのオンライン化も主要手続すべてに拡大し、住民利用を促進します。公共施設の統廃合は、対策委員会等で策定した計画に沿って順次実行に移ります(まず耐震性の低い施設から閉鎖する等)。本格実施段階では、進捗管理が重要です。設定したKPIに基づき達成度を定期測定し、進みが遅ければ原因分析して対策を講じます。例えばUIターン者数が伸び悩むなら、プロモーション手法を見直すなど即応します。この段階では市町村間・部局間で進捗差が出るので、横展開も図ります。上手くいっている自治体の事例を全県フォーラムで共有し、他も追随する形を作ります。「横を見る刺激」が公務員組織には効くため、競争と協調をうまく演出していきます。
(5) 評価・見直しと次フェーズ計画(5年以降)
改革を一巡させたら、成果を第三者評価します。県民や専門家からなる評価委員会を設け、施策ごとの目標達成度やコスト効果を点検します。それに基づき、次の5か年計画で継続すべきか、修正か、中止かを判断します。成功事例はさらに伸ばし、失敗事例は潔く撤退も検討します。この時、成果を上げた職員やチームはきちんと表彰・昇進させ、モチベーション向上につなげます。住民にも分かりやすい形で成果を報告し、税金の使途と効果を説明します。透明性を確保することで次の政策への信頼を得ます。また、未解決の新たな課題が出てきたら、次フェーズで扱うよう計画に盛り込みます。例えば10年後に想定される問題(AIの進展による雇用変化等)にも視野を広げ、先手を打つ戦略を検討し始めます。最後に、常に学び続けアップデートする行政文化を定着させることが、長期的成功のカギとなります。
ステークホルダー別アクション:
- 県(茨城県庁):広域的課題の調整役となり、市町村への財政支援・専門支援を実施。改革推進本部に知事直轄組織を置き、進行管理。国への制度要望も代表して行う。
- 市町村:住民に最も身近な行政として、具体的施策の現場実行を担う。広域連携には積極的に参画し、自主権を維持しつつも協調する姿勢を持つ。職員はスキルアップと意識改革を図り、新しい手法も恐れず採用する。議会は二元代表制の一翼として改革を後押しし、チェック&バランス機能を通じて軌道修正を促す。
- 民間企業:地域経済の主役として、行政との連携を強化。人材育成や技術提供で社会課題解決に参画する(例:通信会社が遠隔医療システム構築、建設業者がインフラ点検協力など)。地域投資にも積極的に関与し、CSV(共有価値の創造)経営を推進する。
- 住民・NPO:自ら地域を良くする主人公という意識を持ち、まちづくり活動やボランティアに参加する。行政への提案や評価にも関与し、「お任せ」ではなく「一緒に作る」姿勢を貫く。特に若者や女性、高齢者のそれぞれの立場から声を上げ、多様なニーズを対話で政策に反映させる。
失敗しない進め方として大切なのは、小さく始めて大きく育てること、関係者全員が当事者意識を持つことです。これまでの行政は時に「やらされ感」で改革を進め失敗してきました。そうではなく、自分ごと化するプロセスをロードマップに組み込むことで、持続的な地域経営に転換できるでしょう。
7. よくある質問(FAQ)
最後に、茨城県の市町村の現状と課題・解決策に関して想定される読者からの質問と、その回答をまとめます。
Q1. 人口が増えている市町村もあるのですか?
A. はい、茨城県内でも人口増加を維持している自治体があります。代表的なのはつくば市(筑波研究学園都市)で、この10年でも緩やかな増加傾向です。守谷市・つくばみらい市など首都圏通勤圏の市も近年人口が増えています。ただ県全体では減少が続いており、増えている市でも将来は高齢化に直面します。増加自治体の要因(交通利便性や雇用機会)を活かし、県内他地域にも展開することが課題です。
Q2. どの自治体が財政的に厳しいか、サインはありますか?
A. 財政の厳しさを見る指標として、まず財政力指数があります。これが低い(0.5以下など)自治体は自主財源が少なく、交付税頼みです。また、将来負担比率が高い自治体は隠れ借金が多く注意が必要です。ただ茨城県では健全化判断比率で早期健全化基準を超える自治体は現在ありません。むしろ人口減少スピードが早い自治体は、今後税収減で厳しくなる可能性が大きいです。具体名では、町村部や産業基盤の弱い市(高萩市や大子町など)は今後警戒が必要でしょう。
Q3. 車がないと暮らせない地域はどう対策するのですか?
A. 交通空白地の対策として、デマンド型乗合タクシーやコミュニティバスの導入が進んでいます。スマートフォンや電話予約で利用でき、高齢者も安価に乗れるよう補助しています。また、自治体によっては買い物代行サービスや移動販売車で対応する所もあります。長期的には、地域拠点への集約(近くに診療所や商店があるコンパクトなまちづくり)が必要ですが、それまでの間は行政とNPO等が協力して「家まで迎えに行く交通サービス」を充実させていく方針です。
Q4. 防災に関して、住民は何を見て備えればいいですか?
A. まず自分の住む場所のハザードマップを確認しましょう。各市町村が洪水・土砂・津波などのハザードマップを公表しています。自宅が浸水想定区域なら、避難経路と避難先を家族で共有してください。非常持ち出し袋や備蓄も重要です。また、防災行政無線や緊急速報メールの情報を受け取れるようにし、避難指示には躊躇せず従う心構えが必要です。日頃から地域の防災訓練に参加し、近所同士で安否確認体制を作っておくことも有効です。行政もハザード情報の周知に努めていますので、それを活用した自助・共助の準備をお願いします。
Q5. 公共施設はどう減らすの?身近な施設が無くなるのは困る…
A. 公共施設等総合管理計画に基づき、老朽化や利用率低下の著しい施設から統廃合していきます。ただし代替策なしに突然廃止することはありません。同じ機能を持つ施設を1か所に集約したり、近隣市町と共同で新しい施設を造って共有するなどの対応を取ります。例えば、市町村の図書館を広域で1つの大型館にまとめ、移動図書館で補完するといったイメージです。身近な施設が無くなるデメリットは、IT活用(オンラインサービスで代替)や送迎サービスで補います。目的は住民サービスを維持しつつ、将来の維持費を減らすことにあります。住民の意見も伺いながら、必要なものは残し、工夫で代替できるものは集約する方針です。
以上が皆様から寄せられそうな質問と回答です。茨城県の市町村が直面する課題は厳しいものですが、データに基づき現実を直視し、地域の力を結集すれば乗り越えられると信じます。行政・住民・企業が共創し、次世代に誇れる茨城の地域づくりを進めていきましょう。
参考・出典
- 茨城県統計課「市町村早わかり(令和7年7月版)」(2025年8月1日更新) – 県内44市町村の一覧と地域区分、人口・年齢構成データ
- 茨城県企画部地域振興課「いばらきの土地」(令和6年3月発行) – 県内自治体数と地域区分、最大都市シェアの記述
- 茨城県統計課「茨城県の人口と世帯(推計)-令和7年10月1日現在-」(2025年11月27日更新) – 県人口最新値(2,791,231人)と増減要因
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」 – 2050年までの県人口・高齢化率見通し(約224.5万人、40.0%)
- 茨城県総務部財政課「令和6年度市町村決算の概要(記者提供資料) 健全化判断比率等」(2026年1月7日発表) – 全市町村の財政指標(実質公債費比率6.7%、早期健全化団体なし)
- 茨城県総務部市町村課「令和7年度 市町村別普通交付税決定額・財政力指数一覧」(2025年7月29日公表) – 主要市町村の財政力指数(つくば市1.112、常陸太田市0.411等)
- 茨城県福祉部長寿福祉課「市町村別高齢化率(令和7年10月1日現在)」※PDF(2025年10月28日更新) – つくば市20.0%、大子町51.8%など高齢化率の極値
- 茨城県政策企画部交通政策課「茨城県地域公共交通計画」(計画期間R5~R9、2025年8月23日施行) – 地域公共交通マスタープランの方向性(持続可能なネットワーク構築)
- 茨城県保健福祉部医療局「令和4年茨城県医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2023年3月公表) – 医師数の全国順位(人口10万対202.0人で全国46位)
- 茨城県土木部河川課「茨城県管理河川の洪水浸水想定区域図」(2025年9月24日更新) – 想定最大規模降雨による浸水区域図の公表と市町村ハザードマップ策定
(※本記事中のデータ・制度の出典は上記の他、茨城県公式サイト各種資料(2025年時点最新)および総務省・国交省公開資料等を参照しました。)
茨城県44市町村の現状と課題をデータで読む――人口減少時代の地域戦略
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