
最近の市場動向:原油・金・為替・金利・株式の反応
中東情勢の緊迫(イスラエルの対イラン攻撃リスク)を受けて原油価格が急騰しています。6月13日には北海ブレント原油先物が一時1バレル=78ドル超まで急伸し、日中ベースの上昇率はロシアのウクライナ侵攻開始以来の大きさとなりました。米WTI原油先物も7%以上の上昇で、約4カ月ぶりの高値となる1バレル=72.98ドルで引けています。金価格も安全資産需要から上昇し、一時1.7%高で過去最高値水準に迫りました。ニューヨーク金先物(8月限)は前日比+1.48%の水準で清算値を付け、約1ヵ月半ぶりに史上最高値を更新しています。こうしたコモディティ高は市場のインフレ懸念を一段と強めています。
為替市場では円が一時急騰しました。中東リスクでリスク回避の円買いが進み、ドル円相場は一時1ドル=142円台後半まで円高が進行(約1週間ぶりの円高水準)しました。その後は143円台後半に戻し小幅な円高留まりとなりましたが、米ドルも世界的な安全資産とみなされており、米国市場ではドル指数(DXY)が反発上昇する場面も見られました。金利動向を見ると、日本では長期国債が買われて利回り低下(新発10年債利回りは前日比-0.055%の1.400%に低下)し、安全資産である国債への資金流入が確認されています。一方、米国では当面の利下げ観測が後退したこともあり長期金利が上昇し、10年債利回りは4.42%近辺まで急伸しました。中東リスクによる原油高は米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和を難しくし、将来的な利下げの余地を狭めるとの見方が強まっています。
株式市場はリスクオフの動きが鮮明になりました。日経平均株価は6月13日に前日比-338円(-0.9%)の37,834円となり、一時は600円超下落する場面もありました。イスラエルによるイラン攻撃報道で前場から投資家心理が悪化し、円高進行も重なって主力株に幅広い売りが出ました。もっとも、大引けにかけては押し目買いも入り下げ幅を縮小しています。米国市場でもダウ平均が769ドル安と急落し、世界的な地政学リスク高まりで投資家の信頼感が損なわれました。S&P500指数の主要セクターのうちエネルギー株など一部を除く10業種が下落し、特に金融株(-2.06%)やハイテク株(-1.5%)の下げが目立ちました。リスク回避の動きから防衛関連株(ロッキード・マーチンやRTXなど米国で+3%以上)に買いが入る一方、原油高で燃料費増が懸念される航空株は4~5%の大幅安となるなど明暗が分かれました。全体として株式・商品・為替が地政学リスクに敏感に反応し、市場はボラティリティの高い状況となっています。
インフレ局面で強いとされる日本株セクターの動向
インフレ環境下では、一般に以下のようなセクターが相対的に底堅いパフォーマンスを示すと考えられます。実際、直近の市場でも原油高を受けてこれらのセクターの一部に資金流入が見られました。
- エネルギー・資源セクター(鉱業、石油・石炭など):原油や資源価格の上昇メリットを享受できるため、インフレ局面で株価が強含みやすい傾向があります。6月13日も東証33業種中で鉱業や石油・石炭製品株が上昇し、エネルギー関連株に買いが入りました。資源開発大手のINPEXなどは依然としてPBR0.5倍前後と割安感があり、資源高を背景に業績拡大が期待されています。また商社株(エネルギー・資源取引を手掛ける総合商社)も商品市況高で好業績が見込まれ、2022~2023年に大幅増益・増配を実現しました(例えば三菱商事や三井物産は資源価格高騰で過去最高益を更新)。こうした銘柄はインフレヘッジとして引き続き注目されます。
- 生活必需品セクター(食品・飲料・日用品・小売など):景気に左右されにくいディフェンシブ業種であり、価格転嫁によってインフレ環境でも収益確保が期待できます。日本の食品企業は2022~2024年にかけて度重なる値上げを実施し、消費者物価(食料品)の上昇率は+10%近くに達しました。値上げによって一部消費減退リスクも懸念されましたが、足元では賃上げの動きも広がり、生活必需品の需要は底堅いとみられます。実際、国内大手食品メーカーや日用品メーカーの中には値上げ効果で収益が改善し、株価がTOPIXをアウトパフォームした例もあります(例:醤油大手キッコーマンや飲料大手サントリー食品の株価は近年の物価上昇局面で堅調推移)。こうした生活必需セクターはインフレ下でも安定したキャッシュフローと高配当利回りを持つ銘柄が多く、実物資産インフレヘッジとして個人投資家にも人気です。
- 金融セクター(銀行・保険など):一般にインフレ期には金利上昇が伴うため、利ざや拡大や運用利回り改善を通じて銀行株や保険株の業績が向上しやすいとされます。日本銀行の超低金利政策修正観測が高まった2023年以降、メガバンクを中心に銀行株は大きく見直されました。実際、TOPIX銀行指数は2023年度に約+50%前後の上昇を遂げ、低迷が続いていた邦銀株に投資マネーが流入しました(海外投資家の買い越しも増加)。主要銀行株の株価純資産倍率(PBR)は依然1倍を下回るものの、各行は自社株買いや増配など株主還元を強化しておりROE向上策を打ち出しています。長期低迷していた邦銀のROE(2022年度は5~8%台)はようやく改善基調にあり、PBRの低さが見直されつつあります。他方、足元の急激な金利低下局面(安全資産買いによる国債利回り低下)では銀行株が売られる場面もありました。これは利ザヤ縮小懸念による一時的な株安ですが、中長期ではインフレと金利上昇を背景に金融セクターの収益環境は追い風と見る向きが多いです。保険株も有価証券運用利回りの改善や販売する保険商品の利率引き上げ余地が出るため、インフレ下で相対的に強いセクターと言えます。
- J-REIT(不動産投資信託):不動産など実物資産はインフレ耐性があるとされ、不動産賃料や資産価値の上昇が期待できます。J-REIT指数は2022年に金利上昇観測で大きく調整しましたが、その後は横ばい圏からやや持ち直し、2025年にかけて分配利回りは平均4%前後と株式配当利回り(約2%台)に比べ高水準を維持しています。インフレ局面では実質資産価値の目減りを避けるため不動産への資金シフトが起こりやすく、特に賃料にインデックス(連動条項)のあるオフィス・住宅系REITは物価上昇をテナント賃料に反映できる可能性があります。一方で急激な金利上昇はREITの借入コスト増や配当利回り相対魅力低下につながるため注意が必要です。現状、日本の長期金利上昇は緩やかで、日銀のYCC(長短金利操作)下で10年国債利回りは1.4%程度に抑えられているため、J-REITにも安定配当狙いの買いが入っています。インフレが長期化する局面では不動産セクター全般(デベロッパー各社やREIT)が相対的に価値保存に寄与し得る資産クラスと位置付けられます。ただし金利動向との綱引きとなる点には留意が必要でしょう。
低PBR銘柄が注目される背景と代表例(2025年6月時点)
日本株市場では**「PBR1倍割れ」(株価純資産倍率が1倍未満)の銘柄群が近年クローズアップされています。その背景には、東京証券取引所が2023年以降、PBR1倍割れ企業に対し資本コストを意識した経営を促す要請を行ったことがあります。日本市場では長引くデフレや過剰な内部留保により、時価総額が純資産を下回る低PBR状態の企業が多数存在してきました。実際、東証プライム上場企業の約半数が2022年末時点でPBR1倍未満という状況で、これは海外投資家から「日本株は割安だが構造的に企業価値向上への動きが鈍い」と見られる一因でした。しかし2023年に入ってからは、企業側も自己株式取得や増配、事業ポートフォリオ見直しによるROE向上策に乗り出し、低PBR銘柄の再評価が進んでいます。2024年には低PBR常連だった大手海運各社が増配や株主還元強化でPBR1倍超えを果たすなど、市場の評価が変化してきています。
低PBR銘柄の代表格としてまず挙げられるのが銀行株です。PBR低位の上位200銘柄の業種構成を見ると、金融業が半数超を占めるという分析もあり、低PBR銘柄への投資は事実上「銀行株投資」に等しい面があります。三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループなどメガバンクは、株価上昇にもかかわらず2025年6月時点でもPBRが約0.9倍前後に留まっています。しかし預貸利ザヤの拡大や海外事業の貢献で収益力は向上しており、自己株買いも積極化するなど株主価値向上策を打ち出すことで市場の評価が高まりつつあります。例えば三菱UFJは2023年度に大型の自社株買い(上限株数の約3%規模)を発表し、配当も増額しました。その結果株価は年初来高値圏にありつつも依然PBR1倍割れという状況で、「依然割安」と見る投資家が少なくありません。
またエネルギー・素材関連にも低PBRの大型株が多く存在します。国内最大の石油会社ENEOSホールディングスはPBRが0.6倍前後で推移し、石油精製・販売という成熟事業ゆえ割安放置されてきました。しかし原油市況好転時には収益が急増しうる体質であり、実際2022年度には過去最高益を計上して大幅増配しています。鉄鋼大手の日本製鉄やJFEホールディングスもPBR0.5倍前後ながら、自動車用鋼材価格転嫁の進展で業績は改善傾向です。JFEは2024年3月期に純利益2,000億円超を見込み、自己資本比率改善も進んだことでPBR是正(株価上昇)の余地が意識されています。その他、自動車メーカーでは日産自動車(PBR約0.2倍)やホンダ(約0.5倍)、電力・ガスでは東京電力(約0.3倍)や関西電力(約0.6倍)など、名だたる大企業が依然低PBRです。これらの企業は過去の経営課題や規制リスクを抱えつつも、潜在的な資産価値や復配余力を持っているためハイリスク・ハイリターンのバリュー株として注目する向きもあります。実際、東京電力は原発再稼働政策の進展次第では大幅な収益改善余地があるとして投機的な買いが入る場面も見られます。
低PBRが注目されるのは「割安解消期待」だけでなく高配当利回りも魅力の一つです。PBR1倍割れ銘柄には配当利回り5~6%超の高配当株も多く存在します。例えば高島(アパレル卸)や青山商事(紳士服)などは配当利回り6%台でPBR0.6倍前後、製造業の愛知製鋼は利回り6.1%・PBR0.5倍といった具合です。これらの銘柄は業績低迷や構造転換途上ゆえ低評価ですが、企業側が資本政策を是正したり業績回復した場合には株価のテコ入れ余地が大きいといえます。市場では「低PBR改善=ROE向上」を掲げる経営陣への期待感が高まっており、実際にPBR改善を進める企業は株価アウトパフォーム傾向が続くとの見方があります。総じて低PBR銘柄はインフレ環境下でも下値抵抗力がありつつ、経営改革次第で大きな評価益を狙えるテーマとして2025年6月現在も注目度が高い状況です。
戦争長期化と原油高騰が招くスタグフレーション懸念とポートフォリオ戦略
イラン・イスラエル間の軍事衝突が長期化し原油価格の高騰が続く場合、世界経済にとってスタグフレーション(景気停滞下での物価高騰)のリスクが懸念されます。原油高は企業のコスト上昇と消費者の購買力低下を招き、景気を減速させる一方でインフレ率を押し上げます。米国ではFRBがインフレ抑制のため高金利政策を長引かせれば景気失速との板挟みとなり、日本を含む世界経済にネガティブなショックを与えかねません。まさに1970年代のオイルショック時に似た状況で、実際T&D資産管理のストラテジストは「中東リスクによる原油高が米利下げを困難にし、スタグフレーションに陥れば日本も悪影響を受ける」と分析しています。
このようなシナリオに備えて、投資ポートフォリオの見直しが重要です。スタグフレーション環境では株式・債券とも下落しやすく、伝統的な資産配分だけではリスク分散が効きにくくなるためです。以下にいくつかの戦略ポイントを整理します。
- インフレ連動資産への配分強化:物価上昇に連動して価値が上がる資産をポートフォリオに組み入れることが有効です。代表的なのは商品(コモディティ)や貴金属(金)への投資です。今回のような地政学リスク下で金価格が上昇し「有事の金」として機能したように、金や原油・穀物などのコモディティはインフレヘッジ資産として有効です。実際、戦争や貿易摩擦の局面では金価格が輝きを増すとの分析もあり、金現物・金ETFの保有や商品インデックス連動ファンドへの投資は検討に値します。また各国政府が発行するインフレ連動国債(物価連動債)も、インフレ率に応じて元本や利息が調整されるためスタグフレーション下の債券投資先として注目されています。日本でも物価連動国債は発行されており、個人でも証券会社経由で購入可能です。これらインフレ連動資産は、ポートフォリオ全体のボラティリティ低減に寄与します。
- セクター配分の見直し:上述のようにエネルギー・素材・生活必需品・高配当金融といったインフレ耐性セクターへの比重を高める戦略が有効です。スタグフレーション下では景気循環に敏感な景気消費セクター(自動車、レジャー、小売(耐久消費財)など)が打撃を受けやすい一方、生活必需や公益(電力・ガス)は需要が底堅く価格転嫁が可能です。またエネルギーや素材はコモディティ市況上昇で利益拡大が期待できます。金融も名目金利上昇で利ザヤ改善が見込めます(ただし景気悪化時の信用コスト増大リスクには注意)。一方、ハイテク・グロース株は金利上昇で現在価値評価が低下しやすく、景気減速局面では業績面でも逆風となるため、過度な比重は抑えることが望ましいでしょう。ポートフォリオ全体でディフェンシブ株とバリュー株の割合を増やし、景気循環株の比率を下げることで耐久力を高める戦略が考えられます。
- 地政学リスクに備える分散投資:中東リスクやその他地政学リスクによって特定の地域・資産クラスが大きく変動する可能性があります。国際分散投資を強化し、一極集中を避けることが重要です。例えば、エネルギー自給率の高い国(産油国や資源国)の株式や通貨は原油高で相対的に恩恵を受けやすいため、一部組み入れておくと全体のバランスに寄与します。具体的にはカナダやオーストラリアの株式・通貨、あるいは中東産油国の株式指数やファンドへの投資が考えられます。また通貨分散も有効です。リスクオフ局面では円や米ドルが買われやすく、逆に高金利新興国通貨は売られがちです。主要通貨である円・ドル・ユーロをバランスよく保有し、必要に応じて為替ヘッジを利用することで急激な為替変動から資産を守ることができます。
- 流動性と投資期間の確保:スタグフレーションが現実化すると市場のボラティリティが高騰し、想定外の価格変動が起きる可能性があります。そのため、必要な流動性(すぐ現金化できる資産)を手元に置いておくことも戦略の一つです。余裕資金で運用し、急な出費や担保請求にも対応できる体制を整えれば、不測の暴落時にも狼狽売りせず耐えることができます。また投資期間の長短を考慮し、短期の値動きに左右されにくい長期投資枠と、リスクヘッジや機動的な売買を行う短期運用枠を明確に分けることも有効です。例えば、年金や教育資金など数年~十年以上先の目的資金は基本ポートフォリオで粘り強く運用し、一方で地政学リスク対応のヘッジ目的で先物やオプション、ボラティリティ指数連動ETFなどを使う場合は短期枠で行う、といった具合に役割を区別します。
アライアンス・バーンスタインは「ウクライナ戦争開始前から投資家はインフレ対策を急務と考えていたが、戦争でその必要性が一段と高まった」と指摘しています。まさに今般の中東リスクも同様に、平時からのインフレ耐性ポートフォリオ構築の重要性を再認識させるものと言えるでしょう。
個人投資家が取れる具体的アクションと留意点
最後に、個人投資家がこのような不透明な局面で心掛けたい具体的な行動や注意点をまとめます。
- ポートフォリオの現状を点検:まず自身の資産配分を確認し、インフレや金利上昇に脆弱な資産に偏り過ぎていないかチェックしましょう。例えば長期債券や高PERのハイテク株に集中している場合、前述のようなインフレ環境では大きく目減りする可能性があります。必要に応じてセクター比率や資産クラス配分を見直し、前述のインフレ耐性資産を適切に組み入れることが重要です。
- 高配当株・バリュー株の活用:日本株市場では依然高配当かつ割安な銘柄が多数あります。新NISA制度も始まり、長期の非課税運用枠が拡大している今、安定配当を出し続ける生活必需品メーカーやインフラ企業、金融機関などに投資するのは有力な選択肢です。こうした銘柄はインフレにより実物資産や貸出金利の価値が上がる恩恵も受けやすく、株価下落耐性も高い傾向があります。配当利回り5~6%超でPBRが著しく低い銘柄もあるため、財務健全性や事業持続力を見極めつつポートフォリオに組み込むと、インカムゲインを得ながらインフレに備えられます。
- 積極的な情報収集と冷静な対応:地政学リスクは刻一刻と状況が変化します。信頼できる一次情報(政府発表や大手報道機関のニュース)を継続的に追い、デマや憶測に惑わされないようにしましょう。また市場の急変に直面しても慌てた売買は禁物です。例えば中東情勢の悪化で日経平均が急落した際も、一部では押し目買いが入って下げ渋る動きが見られました。リスクオフ一色に見える局面でも必要以上に悲観せず、企業の業績動向やバリュエーションを冷静に判断することが大切です。「地政学リスクは1日で消化しきれず、しばらく不安定な相場が続く可能性がある」との指摘もある通り、短期的な値動きに一喜一憂せず長期視点を保つことが求められます。
- リスク管理とメンタルケア:個人投資家こそリスク許容度を明確にし、過度なレバレッジ取引や一点集中投資は避けるべきです。特に不安定な相場では、平常時に想定したリスクシナリオ通りに物事が進まないケースが増えます。余裕資金内での投資を厳守し、万一保有資産が一時的に大きく値下がりしても生活に支障が出ない範囲で運用を行いましょう。また、ニュースに触れすぎて必要以上に不安になる場合は、一度画面から離れるなどメンタル面のケアも重要です。暴落局面では「含み損に耐えられず投げ売りした直後に市場が反発する」という事態も起こりがちです。自分の投資判断が感情に左右されていないか常にチェックし、難しい場合は投資仲間や専門家の意見を聞くのも有効です。
- 長期的視野での戦略継続:最後に、スタグフレーション懸念など短期的な不安材料に対しても、長期の資産形成目標を見失わないことが大切です。インフレ局面は企業にとってもコスト増など逆風となりますが、一方で価格転嫁や効率化を進める契機にもなります。実際、近年の物価上昇で多くの日本企業がビジネスモデルの転換や財務戦略の見直しに踏み切り、株主還元を強化しています。こうした前向きな変化は中長期的に企業価値を高め、日本株市場全体の質を向上させる可能性があります。個人投資家としても、短期の波乱相場に適応しつつ将来の成長や収益機会を逃さないよう、バランスの取れた戦略を続けていくことが肝要でしょう。
以上のように、現在の中東リスク増大とインフレ圧力の高まりに対しては、「リスクを意識した守り」と「インフレを味方につける攻め」の両面からポートフォリオを点検・強化することが重要です。信頼できる情報と冷静な判断に基づき、適切な資産配分とリスク管理を行うことで、この不透明な局面を乗り切る一助となるでしょう。
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参考資料:
- ロイター「イスラエルのイラン攻撃でも原油供給混乱リスク限定的、アナリスト予想」(2025年6月13日)jp.reuters.comjp.reuters.com
- ブルームバーグ「原油急伸、イスラエルがイランを空爆-中東で新たな衝突懸念」(2025年6月13日)bloomberg.co.jpbloomberg.co.jp
- ロイター「NY市場サマリー(13日)ダウ769ドル安、利回り上昇 ドルも上昇」(2025年6月13日)jp.reuters.comjp.reuters.com
- 時事通信「東京市場サマリー(13日)中東情勢悪化でリスク回避強まる」(2025年6月13日)finance.yahoo.co.jpfinance.yahoo.co.jp
- ロイター「日経平均は続落、中東情勢緊迫で一時600円超安 円高も重し」(2025年6月13日)jp.reuters.comjp.reuters.com
- ブルームバーグ「日本市況:株は大幅安、中東緊迫でリスク回避-債券高、一時円買い」(2025年6月13日)bloomberg.co.jpbloomberg.co.jp
- 野村アセットマネジメント「日本の低PBRの代表業種、銀行株に投資機会はあるのか」(2023年7月5日)nextfunds.jpnextfunds.jp
- PayPay証券「割安解消期待!PBR1倍割れ銘柄一覧(2025年4月)」(2025年4月23日)media.paypay-sec.co.jpmedia.paypay-sec.co.jp
- ダイヤモンドZAiオンライン「“PBR1倍割れ”高配当利回りランキング50銘柄」(2025年6月2日)diamond.jpdiamond.jp
- マネックス証券 マネクリ「2025年、日本株市場の見通しと注目テーマ」(2024年12月19日)media.monex.co.jp
- ニッセイアセットマネジメント「食品企業の挑戦:インフレ継続をチャンスに変えられるか」(2024年12月13日)nam.co.jp
- アライアンス・バーンスタイン「ウクライナ戦争は戦略的資産配分に影響を及ぼすのか?」(2022年4月6日)alliancebernstein.co.jp
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