投資 株式 相続

初めて株を相続したらどうする?対処法と選択肢をわかりやすく解説

誰かの遺産で株式を相続したけれど、「何をどうすればいいの?」と戸惑っていませんか? 株の相続は、証券会社での手続きや名義変更、相続税の申告など普段馴染みのないことばかりで、不安になるのも無理はありません。この記事では、株を相続した経験のない方や相続や投資に詳しくない方に向けて、相続直後にやるべき手続きの流れから、相続した株を売るか保有するかの判断ポイント、さらには上手に活用する方法や注意すべきリスク、専門家への相談が必要なケースまで、丁寧に解説します。初心者でも安心して読めるようにストーリー仕立ての事例も紹介しますので、自分ごととしてイメージしながら理解を深めてください。それでは順を追って見ていきましょう。

株を相続した直後にやるべき基本手続きの流れ

相続した株式を引き継ぐ基本的な手続きの流れ。証券会社への連絡から必要書類の準備・提出を経て、株式が相続人の証券口座に移管される流れを示しています。まず相続人名義の証券口座を用意し(未開設の場合は新規開設)、亡くなった方が取引していた証券会社に連絡して相続手続きを開始します。必要書類を揃えて提出すれば、証券会社での名義書換・移管手続き完了を待つだけです。

株式を相続したら、まずは基本的な手続きを踏みましょう。大まかな流れは次のとおりです:

  1. 被相続人が取引していた証券会社を確認して連絡する。 亡くなられた方(被相続人)がどこの証券会社に口座を持っていたかを調べ、その証券会社に「相続が発生したので手続きをしたい」と連絡します。証券会社が分からない場合は、証券保管振替機構(ほふり)に問い合わせて口座を探す方法もあります。証券会社に連絡すると、相続手続き用の書類一式が自宅に郵送されてきます。
  2. 相続人名義の証券口座を用意する。 株式は名義変更自体はできず、いったん相続人の口座に移す形になります。相続人がすでに証券口座を持っていればその口座に移管できますが、口座を持っていない場合は新たに証券口座を開設する必要があります。※口座開設については後述の「初心者にやさしい証券会社」の項で詳しく触れます。
  3. 必要書類を準備する。 郵送されてきた相続届出書に記入し、以下のような必要書類を揃えます。証券会社によって多少異なる場合もありますが、主な書類は次のとおりです:
    • 被相続人の証券会社から送られてきた相続手続き届出書

    • 被相続人が残した遺言書または相続人全員で作成した遺産分割協議書(あれば提出)

    • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの連続した戸籍。相続関係を証明するため)

    • 相続人全員の戸籍謄本(相続人であることを証明するため)

    • 相続人全員の印鑑証明書(実印による相続手続き同意の証明)
    以上に加え、証券会社から案内されたその他の書類(例えば相続人全員の同意書など)があれば用意します。必要書類の具体的な内容は証券会社ごとに指示があるので、送付資料に従って準備しましょう。
  4. 書類を証券会社に提出する。 準備した書類一式を証券会社に提出します。提出方法は、郵送のほか直接窓口でも可能な場合があります。不備なく受理されれば、あとは証券会社が名義変更(株式の口座間移管)手続きを行ってくれます。
  5. 株式が相続人の口座に移管されるのを待つ。 証券会社での手続きには一定の時間がかかります。無事に相続人名義への株の移管が完了すれば、その時点で手続きはひとまず完了です。晴れてあなたの証券口座に故人の株式が移り、自由に売却・保有などの判断ができるようになります。

以上が基本的な流れです。なお、相続税の申告・納付も忘れてはいけません。相続した財産の総額が基礎控除(3,000万円 + 法定相続人×600万円)を超える場合は、相続開始(被相続人の死亡を知った日の翌日)から10か月以内に所轄税務署で相続税の申告と納税を行う必要があります。この期限を過ぎると延滞税や加算税といったペナルティが課されるので注意してください。株式の評価額は上場株式であれば死亡日の終値や前後月平均値などから算出されます(通常は証券会社等が提示してくれます)。相続税の計算が複雑な場合や申告が必要か判断がつかない場合は、早めに税理士等の専門家に相談すると安心です。

また、相続人が複数いる場合には遺産分割の方法も考えなくてはなりません。遺言書で株式の相続人が指定されていればそれに従いますが、指定がない場合は相続人全員で話し合って誰がどの株を相続するか決める必要があります。株式は分割しにくい財産なので、「株式は長男が相続し、その代わり他の財産で調整する」といった形で折り合うケースもあります。話し合いがまとまらないと相続税の申告にも影響が出るため、親族間で十分に協議しましょう。必要に応じて弁護士や司法書士に遺産分割協議書の作成を依頼することもできます。

相続した株を「売る」か「保有する」か?判断ポイントとメリット・デメリット

相続手続きが完了して株式が自分名義になったら、次に「その株を売却するか、それともこのまま持ち続けるか」を考える必要があります。どちらにも良い点と悪い点があり、正解は一概には言えません。ここでは売却する場合保有を続ける場合それぞれのメリット・デメリットを整理し、判断のポイントを解説します。

「売却する」選択肢のメリット・デメリット

相続した株式を売却して現金化する道を選ぶ人も多くいます。売る場合の利点と注意点は以下のとおりです。

  • 売却するメリット: 急に現金が必要な場合や、とにかく資産価値を減らしたくない場合には売却することで安全な現金に換えることができます。まとまった資金を得られるため、相続税の納付資金や他の相続人への分配もしやすくなります。また、市場変動リスクをすぐに手放せるので、株価下落による目減りの心配がなくなります。特に相続した株が先細りしている企業のものだったり、配当も少ない「塩漬け株」の状態なら、思い切って売却して別の資産に切り替える方が有意義と言えるでしょう。さらに売却益に対する課税面の特例として、相続開始から3年10か月以内に売却すれば、支払った相続税分を取得費(原価)に加算できる制度があります。これにより譲渡益(売却利益)を圧縮でき、所得税・住民税の負担を軽減できる点もメリットです。
  • 売却するデメリット: ご本人が期待している将来の値上がり益や長期的な配当収入を放棄することになるため、後で株価が上昇したり高配当になった場合の機会損失が生じます。特に、相続した株が業績好調で今後も成長が見込める企業のものだった場合、早々に売ってしまうと「もう少し持っていれば…」と後悔する可能性もあります。また、売却時には売却益に対して約20%(所得税+住民税)の譲渡所得税がかかります。ここで注意したいのは「相続税を払ったから、株を売っても税金はもうかからない」という誤解です。これは間違いで、相続税とは別に売却益には課税されます。相続税は財産を受け取ったこと自体にかかる税金ですが、売却益に対する税金は譲渡所得税(キャピタルゲイン課税)であり全く別物だからです。したがって、たとえ相続時に税金を払っていても、その株を相続時と同じ価格で売っても、被相続人の取得価格と比べて利益が出ていれば課税されます。加えて、売却には証券会社への手数料がかかりますが、こちらはネット証券を使えば比較的安く抑えられるとはいえゼロではありません。最後に、思い出や愛着のある株を売る心理的ハードルもデメリットと言えるでしょう。ご家族から受け継いだ株を手放すことに抵抗を感じる方もいます。

「保有し続ける」選択肢のメリット・デメリット

相続した株式をそのまま自分名義で保有し続けることももちろん可能です。長期保有する場合の利点とリスクは次のとおりです。

  • 保有を続けるメリット: 株式を売らずに持っていれば、将来その株価が上昇した際に大きな値上がり益を得られる可能性があります。特に相続した株が成長企業(グロース株)で業績拡大に伴い株価が上昇基調にある場合、すぐに売却せず長期保有することで恩恵を受けられるでしょう。また、配当金が出る株であれば、持ち続けることで定期的なインカムゲイン(配当収入)を得られます。相続した株が高配当株や景気に左右されにくいディフェンシブ株の場合、安定した配当が期待できるため保有を続ける意義は大きいです。売却せずに株式という形で資産を保有しておけば、インフレや円安へのヘッジになる点もメリットと言えます。現金で持っていると目減りする恐れがありますが、株式なら企業の成長に合わせて価値が維持・増加しやすいからです。さらに、売却しなければ譲渡益課税も発生しませんから、相続税を払った後に追加の税負担なく資産を運用できるとも言えます(※配当金には別途20%課税あり)。
  • 保有を続けるデメリット: 株価変動リスクを引き続き背負うことになります。株価は日々変動し、将来値上がりする可能性もありますが値下がりして資産価値が減る可能性も常にあることを忘れてはいけません。特に、一社の株式に資産が集中している場合、その会社の業績悪化や市場環境の変化で大きく価値を減らすリスクがあります。また、株を保有し続けるということは、市場や企業情報をウォッチし続ける手間もかかります。投資経験がない人にとっては管理が負担に感じられるかもしれません。加えて、相続した株式が元々取得価格より値下がりして塩漬け状態のものだった場合、相続人にとって取得コストはゼロでも税法上は被相続人の取得価格を引き継ぐため、含み損を抱えたままの状態になります。将来的に株価回復の見込みが薄い銘柄を持ち続けるのは資産効率の面でデメリットとなりえます。このような場合は無理に保有を続けず、損失を確定させて他の投資の利益と相殺(損益通算)することで節税できるケースもあります。さらに、保有中にも配当金には課税(原則20%源泉徴収)があるため、利益を再投資するにしても若干目減りする点は留意が必要です。

【判断のポイント】 売るか保つかは状況によって異なりますが、判断材料としては「すぐに資金が必要か」「リスク許容度はどの程度か」「その株の将来性は明るいか」が重要です。例えば「当面使い道はないが父から引き継いだ株なので将来に期待して保有したい」とか、「介護費用が必要なので売却して現金化したい」といったご自身の事情で選択して構いません。大切なのは一度決めたら放置せず、状況の変化に応じて柔軟に見直すことです。「売る・保有」のどちらを選んだ場合でも、後述するリスク管理や税金面のポイントを踏まえて、適切に対処していきましょう。

相続した株を有効活用する節税・資産運用の方法

相続した株式は、ただ持っているだけでなく上手に活用することで節税や資産形成につなげることも可能です。ここでは、相続株式を活用する代表的な方法としてNISAの活用配当金の再投資、そして相続税に関する非上場株式の特例制度について紹介します。

NISA口座を活用した非課税運用

NISA(少額投資非課税制度)は、株式や投資信託の運用益や配当を一定枠まで非課税にできる個人投資家向けの制度です。相続した株式そのものをNISA口座に移すことはできませんが、株式を売却して得た資金で新たに株式や投資信託を購入する場合や、今後追加で投資をする場合にはNISA口座を利用することで税負担を軽減できます。2024年からNISA制度が拡充され、生涯1,800万円までの投資が非課税枠となる新NISAがスタートしました。NISA口座内で購入した金融商品から得られる売却益や配当金が非課税になるため、長期的な資産運用を考える上で非常に有利です。

例えば、相続した株を一部売却して得た現金で株式投資信託(ファンド)を買い直し、それをNISA枠で運用すれば、値上がり益や分配金に税金がかかりません。また、相続した株を売らずに保有し続ける場合でも、新たな資金で分散投資を始めたいときはNISA口座で株式やETFを買うことで将来の税金を抑えられます。非課税の恩恵を受けながら資産を増やせるのがNISA活用のメリットです。

ただし、NISAには年間投資枠や取扱商品の制限があります。証券会社によってはNISA口座で投資信託を扱っていない場合もあります(※DMM.com証券は投資信託未取扱のため新NISAの「つみたて投資枠」は利用不可ですが、「成長投資枠」で株式・ETFの売買は可能です)。NISA口座の開設には手続きに時間がかかることもありますので、相続株式の今後の運用方針が決まったら早めに準備すると良いでしょう。

配当金は再投資で複利運用

相続した株式を保有し続ける場合、配当金の使い方もポイントになります。生活資金に充てる予定のない配当金は、そのまま再投資することで資産の雪だるま式成長(複利効果)を狙えます。具体的には、受け取った配当金で新たに株式やETFを買い増したり、投資信託を購入するといった方法です。

例えば毎年3%の利回りで配当が出る株を相続したとします。100万円相当保有していれば年間3万円の配当を受け取る計算ですが、その3万円でさらに同じ株を買い増せば翌年以降は元本103万円に対して配当が出ることになります。これを繰り返していけば、配当金自体が新たな投資元本となり、複利の力で資産が増えていくわけです。銀行預金の利息と違い株の配当は変動しますが、長期で見れば再投資した分だけ確実に保有株数(もしくは口数)は増えていきます。

再投資の方法は、自分で配当金相当額の株を買い増すほか、証券会社によってはDRIP(配当金再投資制度)が利用できる場合もあります。これは配当金を自動で再投資する仕組みです。相続した株が高配当株であれば、この再投資を活用しない手はありません。「もらったお金でさらに資産を買う」というサイクルを回すことで、時間とともに相続した資産を効率よく増やしていくことができるでしょう。

非上場株式を相続した場合の特例制度

相続した株式が上場企業ではなく非上場会社(未公開企業)の株式だった場合、株式の評価や相続税の負担が大きな問題になります。特に、家族経営の会社の事業承継として株式を相続するケースでは、相続税額が莫大になることがあり、中小企業の後継者にとって大きな悩みでした。

そこで国は、中小企業の円滑な事業承継を支援するため、「非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予および免除の特例」(一般に事業承継税制と呼ばれます)を設けています。この制度を利用すると、一定の条件下で非上場株式にかかる相続税の納税が猶予され、最終的に事業を継続すれば税金が免除されるという大変有利な特例措置です。現在、この事業承継税制は2027年末までの時限措置で大幅に拡充されており、要件を満たせば対象株式にかかる相続税・贈与税の負担が実質ゼロになる前例のない仕組みとなっています。

例えば、先代社長から後継者である子が自社株を相続する場合にこの特例を使うと、相続株式に対応する相続税の納付が全額猶予されます。そして一定期間会社を継続し、後継者が株式を保有し続ければ、猶予されていた相続税がそのまま免除(ゼロ)されます。これによって、事業承継時に巨額の相続税を納めるために株式を手放したり会社を畳んだりする必要がなくなり、企業の存続が可能になります。

もっとも、この特例を受けるためには事前に都道府県知事への計画提出が必要であるなど手続きも複雑です。また対象は会社の後継者(事業承継の場合)に限られ、純投資目的で保有している非上場株には基本的に使えません。したがって、非上場株式を相続する場合は早めに専門家(税理士や中小企業診断士等)に相談し、自分がこの特例の対象になり得るか確認するとよいでしょう。使える制度は最大限に活用し、事業と資産を次世代へ引き継ぐ助けにしてください。

リスク回避や分散投資、税務上の注意点

相続した株式を扱う上で、リスク管理税金面の注意も欠かせません。ここでは、集中投資のリスクを避ける方法や、株式運用上の税務のポイントを解説します。大切な資産を守り、賢く活用するために押さえておきましょう。

株価変動リスクを抑える分散投資のすすめ

株式投資にはつきものの価格変動リスクにどう対処するかは、相続で急に株を持つことになった人にとって大きな課題です。特に一社の株式を大量に相続した場合、「その会社の業績次第で資産が大きく増減する」という偏ったリスクを抱えることになります。万一その会社が業績不振や不祥事に見舞われれば、資産価値が急落したり最悪倒産で無価値になる可能性もゼロではありません。

こうした事態に備える基本は分散投資です。具体的には、相続した株式しか持っていないのであれば、必要に応じて一部を売却し他の銘柄や資産クラスに振り向けることを検討しましょう。例えば相続株を売って得た現金で、別の複数の株やインデックスファンド、ETF、不動産投資信託(REIT)、預金などに分散して置けば、一つの銘柄の値下がりで資産全体が致命的な打撃を受けるリスクを減らせます。「卵を一つのカゴに盛るな」という投資の格言通り、資産をいくつかのカゴ(投資先)に分けておくことが重要なのです。

分散投資のもう一つの利点は、リスクとリターンのバランスを自分に合った形に調整できることです。例えば、安全性重視なら国債や定期預金の割合を増やし、成長を取りにいきたいなら株式や株式ファンドの割合を増やす、といった調整が可能です。相続した株がご自身の資産全体に占める割合を見て、偏りが大きいようならポートフォリオ(資産構成)の見直しを検討しましょう。

もちろん、「思い入れのある相続株はできるだけ手放したくない」という気持ちもあるでしょう。その場合は、その株以外の部分で分散を図るのも一つの手です。他の金融資産や追加の投資によって全体のバランスをとり、相続株のリスクを相対的に薄めるイメージです。大事なのは、相続した株式の価値変動に家計全体が振り回されない状態を作ることです。無理のない範囲で分散投資を取り入れ、リスクを上手にコントロールしましょう。

株式売却時の税金と損益通算に関する注意

前述のとおり、相続した株式を売却して利益(譲渡益)が出た場合、その利益部分に対して約20%の譲渡所得税・住民税が課税されます。ここで改めて注意しておきたいのが、相続税とは別に課税されるという点です。「相続税を払ったのにまた税金?」と思われるかもしれませんが、相続税と譲渡所得税は別物であり二重課税ではありません。相続税は財産の移転に対する税、一方で譲渡所得税は売買による利益に対する税なので、株を売れば必ず計算上利益か損失が発生し、それに応じて課税・控除が行われます。

被相続人から取得した株式の取得価格は、税法上被相続人が購入したときの価格を引き継ぐことになっています。したがって、たとえ相続時の評価額と同じ値段で売った場合でも、被相続人がもっと安く買っていたのであれば利益ありとみなされ課税対象になります。この取得価格は証券会社の特定口座で管理されていれば自動で引き継がれますが、故人が一般口座で取引していた場合は購入時の価格を自分で調べる必要があります。過去の取引報告書や証券会社の記録、株主名簿上の名義書換日などから調べ、それでも不明な場合はやむを得ず「売却額の5%を取得費」とする扱いもあります(しかしこの方法は取得費が過少に計算され不利になるケースが多いです)。相続が発生する前から、どの株をいくらで買ったか記録を整理しておくことが本当は理想ですが、相続後でも可能な範囲で取得価格の確認に努めましょう。

一方、売却して損失(譲渡損)が出た場合も取扱いに注意が必要です。譲渡損が発生した年は、確定申告を行うことで他の株式譲渡益や配当所得と損益通算することが可能です。例えば相続したA社株を売って50万円の損が出たが、同じ年に保有している他のB社株を売って50万円の利益が出た場合、確定申告で損益を相殺すれば譲渡益はゼロとなり税金がかからなくなります。また損失が大きく当年で控除しきれない場合、翌年以降3年間にわたって繰り越し控除することもできます。つまり、相続した株が値下がりして損になっても無駄にはならず、他の利益と相殺して節税に役立てられるということです。

さらに、既に述べた取得費加算の特例も税務上の重要ポイントです。相続発生から3年10ヶ月以内にその株を売却した場合、納付した相続税額のうち一定額を取得費にプラスできるため、譲渡益を減らすことができます。この特例を使うには相続税の申告を期限内に行っている必要があるなど条件がありますが、該当しそうな場合は税理士に相談してみましょう。適切に活用すれば「相続税を払ったのに売却益にも税」という二重の負担を和らげることができます。

最後に、相続した株式を保有中の税金についても触れておきます。保有しているだけでは評価益に課税されることはありませんが、配当金には原則20.315%(所得税+住民税+復興税)の源泉徴収課税が行われます。少額なら確定申告不要制度もありますが、額が大きかったり他の所得と合算して税率が下がる場合(配当控除)などは申告した方が有利なこともあります。いずれにせよ、相続後の株式にかかる税金は相続税だけではないことを念頭に置き、売却・運用時には税務面の手続きを怠らないようにしましょう。

専門家に相談すべきケースは?〜困ったときは早めの相談を

相続した株の扱いに少しでも不安がある場合、専門家の力を借りることも検討しましょう。プロに相談すべき主なケースや、相談先について紹介します。

  • 相続財産に非上場株式が含まれている場合: 上場株に比べて評価や手続きが格段に難しくなるため、税理士など専門家にできるだけ早く相談することをおすすめします。非上場株は評価額の算定に専門知識が必要で、相続税申告でも特例適用の有無で大きく税額が変わります。事業承継税制の活用なども含め、税理士や会計士のサポートを仰ぎましょう。
  • 相続人が複数いて遺産分割がまとまらない場合: 株式は現物で分けにくいため、弁護士に相談して円満に遺産分割協議を進める手助けをしてもらうのも有効です。誰が株式を引き継ぐか揉めてしまうと手続きが進まず相続税申告にも支障が出ます。中立的な専門家の調整で合意形成を図りましょう。
  • 相続税の申告や納税額が心配な場合: 相続税専門の税理士に依頼すれば、適切な財産評価や特例適用、必要書類の準備まで含めてスムーズに対応してくれます。特に相続税が発生しそうなケースでは、自分で無理に申告してミスをするより、プロに任せた方が結果的に節税になることもあります。申告期限(10ヶ月)を過ぎないよう、早めに相談しましょう。
  • 証券会社の手続きが複雑で自信がない場合: 証券会社での名義書換書類の書き方が分からない、必要書類集めに戸惑うといった場合は、司法書士や行政書士に依頼して手続きを代行・サポートしてもらえます。特に平日働いていて役所巡りが難しい方などは、専門家にお願いすることで時間と労力を節約できます。
  • 相続した株の今後の運用方針に迷う場合: ファイナンシャルプランナー(FP)や証券会社のコンサルタントに相談するのも一手です。相続財産も含めた家計全体の状況を踏まえ、「どのくらいリスク資産を持ってよいか」「運用プランをどう立てるか」といったアドバイスをもらえます。特にまとまった金融資産を急に持つことになった方は、一度FP相談を利用すると安心材料が増えるでしょう。

このように、相続手続きや資産運用は各分野の専門家に相談できます。それぞれ弁護士(法律)税理士(税務)司法書士(登記や書類作成)FP(資産運用)など得意分野がありますので、状況に応じて使い分けましょう。初回相談無料の窓口も増えていますし、「こんなこと聞いていいのかな?」という内容でも気軽に問い合わせてOKです。大切な資産を守るためにも、困ったと感じたら早めに専門家を頼ることをためらわないでください。

【事例】株式の相続を乗り越えたAさんのストーリー

最後に、株式を相続したある方の体験談をご紹介します。実際のストーリーを通じて、自分が同じ状況になったときのイメージをつかんでみましょう。

Aさん(仮名、45歳男性)の場合: 会社員のAさんは、数年前にお父様を亡くし、遺産として上場企業X社の株式を数千株相続することになりました。Aさん自身は投資の経験がほとんどなく、株式についての知識もありません。突然舞い込んだ株の相続に、「どう扱えばいいのか全くわからない…」と不安でいっぱいでした。

相続が発生してしばらくは実務的な手続きに追われましたが、Aさんはまずお父様の証券会社に連絡し、相続手続きを進めました。お父様は大手証券会社に口座を持っていたため、その会社から相続に必要な書類を取り寄せるところからスタートです。Aさんは戸籍謄本や遺産分割協議書など慣れない書類集めに苦労しましたが、兄弟とも協力しながらなんとか準備を整えました。問題だったのはAさん自身がその証券会社に口座を持っていなかったことです。そこでAさんは、これを機にネット証券の「DMM.com証券」に口座を開設することにしました。DMM.com証券は手数料が安く、スマホで簡単に申し込めて初心者にも使いやすいと聞いたからです。実際、スマホで本人確認書類を撮影して送信するだけでスムーズに口座開設が完了し、相続した株式は無事Aさん名義のDMM株の口座へと移管されました。

こうして株を自分名義で保有することになったAさんですが、当初は「リスクが怖いし、全部売って現金にしてしまおうか…」と考えていました。というのも、相続税の申告で数百万円の税を納めたこともあり、「これ以上株価が下がったら損をするのでは」という不安が強かったのです。しかし、Aさんは証券会社の担当者や信頼できる知人に相談し、すぐに全部を売るのではなく慎重に判断することにしました。相談の中で、「その株はここ数年業績好調で配当も年々増えている優良株だから、慌てて手放すのはもったいない」というアドバイスをもらったのです。また、相続税を支払った直後だったこともあり、「株を売却して利益が出るとさらに税金がかかる」ことも教えてもらいました。Aさんは「せっかく父が残してくれた資産を有意義に活用したい」という気持ちも芽生え、ここはひとまず売らずに持ち続けてみようと決心しました。

とはいえ、全てをそのまま保有するのも不安だったため、Aさんは相続したX社株のうち約半分を売却することにしました。売却した分の現金で相続税の支払い分を補填できたことに加え、残った資金の一部は預金として手元に置き、残りは投資信託を購入して分散投資に充てました。これで、X社株に万一何かあっても資産がゼロになるリスクは避けられます。そして残り半分のX社株はそのまま保有し続けることにしました。高配当株だったため毎年配当金が得られること、株主優待も魅力的だったこと、そして何より父親が大切に持っていた株でもあるので自分も長期応援したいという思いが理由でした。

こうしてAさんは、相続した株式の一部を売却しつつ、一部は保有するという選択をしました。売却時には特定口座の源泉徴収で税金も自動で差し引かれ、残る資金で購入した投資信託はNISA口座で運用を始めました。保有を続けたX社株からは毎年配当金が出るので、それをまたDMM.com証券の口座で別の株式購入に回し、配当再投資による複利効果も享受し始めています。最初は不安だった株の相続ですが、今では「良い資産運用の勉強になったし、将来のための財産ができた」と前向きに捉えられるようになったといいます。何より、専門家や周囲の助けを借りながら動いたことで、思っていたよりスムーズに相続手続きを乗り越えられたことがAさんの自信につながりました。

Aさんのケースから分かるように、最初は戸惑う株の相続も、正しい手順で対応し必要に応じて助言を得れば乗り越えられます。皆さんも、自分ひとりで抱え込まずに情報収集しながら、焦らずベストな選択をしていってください。

初心者にやさしい証券会社の選び方:DMM.com証券の活用

相続した株式を管理・運用するには、証券会社の口座が欠かせません。先述のAさんも口座を新規開設していましたが、これから株の取引を始める方にとって、どの証券会社を選ぶかは大きな悩みですよね。結論から言えば、手数料が安くて操作が簡単、サポートもしっかりした証券会社を選ぶと良いでしょう。中でも最近注目されているのが「株式会社DMM.com証券」(DMM株)です。

DMM.com証券(DMM株)は2018年にサービスを開始した比較的新しいネット証券で、口座開設や維持費用は無料です。特に初心者に嬉しいポイントは、その手軽さと取引コストの安さにあります。口座開設はオンラインで完結し、スマホで本人確認書類を送る「スマホでスピード本人確認」を使えば最短即日で取引を開始できる手軽さです。忙しい方でも店舗に出向く必要がなく、思い立ったらすぐ口座を作れるのは便利ですね。

また、取引手数料の安さも業界トップクラスです。例えば国内株式の現物取引手数料は1注文あたり5万円まで55円、10万円まで88円と非常に割安に設定されています(税込)。仮に100万円分の株を売買しても手数料は数百円程度に収まります。さらに25歳以下なら取引手数料実質無料(キャッシュバック)というユニークなサービスも提供しており、若年層にも優しい設計です。このようにコスト面では従来の証券会社より圧倒的に有利で、「取引手数料を気にせず少額からでも始められる」のがDMM株の強みです。

操作面でも、DMM株はシンプルで使いやすい取引ツールを備えています。初心者向けには「かんたんモード」と呼ばれる画面モードがあり、直感的な操作で銘柄を検索して注文を出すことができます。株価の値上がり率ランキングや専門家の予想コメントを見る機能もあり、投資先選びに悩んだときの参考にすることも可能です。投資に慣れてきたら「ノーマルモード」に切り替えて高度な注文方法を使うこともでき、初心者から上級者まで自分のペースに合わせて利用できる柔軟さも魅力です。実際にDMM株を利用している方からも「初心者でも1ヶ月ほどで使いこなせた」「チャートが見やすく、不明点はLINEで素早く丁寧に回答してもらえた」など好評の声が上がっています。サポート体制が充実しており、初心者の素朴な疑問にも親切に対応してくれるのは安心ですね。

さらに、DMM.com証券では米国株の取引にも対応しており、相続した株を売却して他の国の株に投資したい場合など選択肢が広がります。NISA口座にも対応しており、DMMのNISA口座では国内株式現物の売買手数料が完全無料になるメリットもあります。このように、コスト・使いやすさ・サポートの三拍子が揃ったDMM.com証券は、これから投資を始める方にとって有力な選択肢と言えるでしょう。

初めて証券口座を開くのは不安もあるかもしれませんが、DMM.com証券のように初心者に配慮したサービスなら安心です。公式サイトには口座開設の手順や取引方法のガイドも詳しく載っていますし、不明点は問い合わせれば丁寧に教えてもらえます。相続を機に新たに投資デビューする方は、ぜひ使いやすい証券会社をパートナーに選んでみてください。

まとめ:焦らず正しく対処すれば安心して資産を引き継げる

株式の相続は初めてだと戸惑うことも多いですが、適切な手順を踏み、各選択肢のメリット・デメリットを理解して判断すれば、決して怖がる必要はありません。 本記事で解説したように、まずは証券会社での名義変更など基本の手続きを確実に行い、その後は「売るか保有するか」を自身の状況と照らし合わせて決めましょう。どちらの選択肢でも、節税策や運用方法(NISA活用や配当再投資など)を上手に取り入れることで、相続した株式をご自身の資産形成に役立てていくことができます

大切なのは、リスクと向き合いながら無理のない範囲で管理・運用することです。必要に応じて分散投資を行い、一極集中のリスクを避ければ、相続財産を守り育てる土台ができます。税金面では相続税だけでなく譲渡所得税や配当課税にも注意し、特例制度や損益通算など利用できる制度は積極的に活用しましょう。難しいと感じる部分は遠慮なく専門家に相談すれば、適切なアドバイスとサポートを得られるはずです。

初めてのことで不安もあるかもしれませんが、本記事の情報やAさんの事例が少しでも安心材料になれば幸いです。最後にもう一度強調したいのは、「焦らないこと」と「必要な知識を押さえること」。これに尽きます。相続した株式は、故人から受け継いだ大切な財産です。正しい対処法を知った今、ぜひ落ち着いて一つ一つ手続きを進め、将来に向けて有効に活用してください。あなたが安心して資産を引き継ぎ、運用していけることを心より願っています。

Food Science

2025/4/25

Fermented Foods and Health: Recent Research Findings (2023–2025)

1. Fermented Foods and Health Benefits – Meta-Analysis Evidence (2024) Several recent systematic reviews and meta-analyses have evaluated the health effects of fermented foods (FFs) on various outcomes: Metabolic Health (Diabetes/Prediabetes): Zhang et al ...

文化 社会

2025/4/25

日本に広がるインド料理店:ネパール人経営の実態と背景

日本のインド料理店市場の推移とネパール人経営の現状 日本各地で見かける「インド料理店」は、この十数年で急増しました。NTTタウンページの電話帳データによれば、業種分類「インド料理店」の登録件数は2008年の569店から2017年には2,162店へと約4倍に増加しています​。その後も増加傾向は続き、一説では2020年代半ばに全国で4,000~5,000店に達しているともいわれます​。こうした店舗の約7~8割がネパール人によって経営されているとされ、日本人の間では「インネパ(ネパール人経営のインド料理店)」と ...

介護

2025/4/25

全国の介護者が抱える主な困りごとと支援策(2025年4月現在)

身体的負担(からだへの負担) 介護者(家族介護者・介護職員ともに)は、要介護者の介助によって腰痛や疲労を抱えやすく、夜間の介護で睡眠不足になることもあります。例えばベッドから車いすへの移乗やおむつ交換などで腰に大きな負担がかかり、慢性的な痛みにつながります。在宅で1人で介護する家族は休む間もなく身体が疲弊しやすく、施設職員も重労働の繰り返しで体力の限界を感じることがあります。 公的サービス: 介護保険の訪問介護(ホームヘルプ)を利用し、入浴や移乗介助など体力を要するケアをプロに任せることができます。またデ ...

制度 政策 経済

2025/4/25

食料品消費税0%の提案を多角的に分析する

なぜ今「食料品消費税0%」が議論されるのか 日本で食料品の消費税率を0%に引き下げる案が注目されています。背景には、物価高騰と軽減税率制度の限界があります。総務省の統計によると、2020年を100とした食料品の消費者物価指数は2024年10月時点で120.4に達し、食料価格が約2割上昇しました。この価格上昇は特に低所得世帯の家計を圧迫しています。 現在の消費税は標準税率10%、食料品等に軽減税率8%が適用されていますが、軽減効果は限定的です。家計調査の試算では、軽減税率8%による1世帯当たりの税負担軽減は ...

不動産 住まい

2025/4/25

賃貸退去時トラブルを防ぐための完全ガイド

はじめに賃貸住宅から退去する際に、「敷金が返ってこない」「高額な修繕費を請求された」といったトラブルは珍しくありません。国民生活センターにも毎年数万件の相談が寄せられ、そのうち30~40%が敷金・原状回復に関するトラブルを占めています。本ガイドは、20代~40代の賃貸入居者や初めて退去を迎える方、過去に敷金トラブルを経験した方に向けて、退去時の手続きや注意点、法律・ガイドラインに基づく対処法を詳しく解説します。解約通知から敷金返還までのステップ、退去立ち会い時のチェックポイント、契約書の確認事項、原状回復 ...

-投資, 株式, 相続
-, , , , , , , , , , , , , ,