
自動運転タクシー(ロボタクシー)の仕組みから最新動向、安全性の実績、各国の規制と主要企業の展開状況まで、2025年9月21日現在の一次情報に基づき徹底解説します。最新のサービス提供エリアや今後の課題にも触れ、導入を検討する自治体・事業者が押さえるべきポイントを網羅しました。
要点(TL;DR)
- 自動運転タクシーとは何か? 自動運転タクシー(ロボタクシー)は、運転者が乗車せずに走行する完全自動運転(SAEレベル4以上)のタクシーサービスです。2023年に日本でも限定条件下で初の商用レベル4運行が実現しました。
- 主要各社の最新状況: 米国のWaymoはフェニックスやサンフランシスコなど都市部で無人タクシーの商用運行を拡大し、2025年時点で週25万回以上のライドを提供しています。Zoox(Amazon傘下)は2025年9月、ラスベガスのストリップ周辺で“一般向けの無料ドライバーレス体験サービス”を開始しました(当面は無料体験として提供)。中国ではBaidu(Apollo Go)やPony.ai、WeRideなどが複数都市でドライバーレス走行を実現しています。
- 日本の展開: 2023年5月、福井県永平寺町で国内初のレベル4無人運行サービスが開始されました。しかし運行範囲は2kmの参道遊歩道と限定的で、都市部でのロボタクシーサービスはまだ実証段階です。東京では2025年4月、WaymoがGO・日本交通と連携し、港区・新宿区・渋谷区・千代田区・中央区・品川区・江東区などで“日本交通のドライバーによる手動走行(マッピング・データ収集)”を開始しました。
- 安全性の実績: Waymoの最新データ(2025年6月更新)によれば、無人運行の累計9,600万マイルで、エアバッグ展開を伴う衝突は79%減、負傷事故は80%減、重傷以上の事故は91%減となっています。一方で2023年10月には米カリフォルニア州当局が安全上の懸念からCruise(GM)の無人タクシー運行許可を停止するなど、当局はリスクに応じた介入も行っています。
- ビジネスモデルと提携: 料金設定や運用コスト削減の模索が続いています。米国では既存配車アプリとの提携が進み、CruiseはUberとの連携計画を発表していましたが、2024年12月にGMが“ロボタクシー開発からの撤退(Cruiseの開発投資停止)”を決定し、事業の先行きは不透明となりました。
(※出典は記事末尾の参考文献一覧を参照)
自動運転タクシーの基礎知識
レベル定義とロボタクシーの位置づけ
自動運転タクシー(ロボタクシー)とは、ドライバー(運転手)が一切乗車せずに、車両自身の自動運転システムによって走行するタクシーサービスです。その多くはSAEインターナショナルが定める自動運転レベル4(特定条件下での完全自動運転)に相当し、限定された地域や条件内でドライバー不在の運行が可能となったものです2。レベル4はシステムがすべての運転操作を担い、人間の運転者を必要としない点で画期的ですが、走行可能な範囲や条件(Operational Design Domain, ODD)があらかじめ限定されています。一方、理論上レベル5になれば地理的・環境的な制限なく人間不在で運転できるとされますが、現状レベル5の実現例は存在しません3。ロボタクシーはまずレベル4で実用化が進んでおり、特定の都市やエリアでドライバーレスのタクシーサービスが提供されています。
日本の法制度でも2023年の道路交通法改正により、レベル4相当の「特定自動運行」が新設されました。特定自動運行とは「限定区域内で運転者非同乗で行う自動運行」を指し、公安委員会の許可を受けることで実施可能となったものです4。この制度により、警察庁が定めた許可基準の下で公道上の無人運転が解禁され、日本でもロボタクシーの社会実装が始まりました。
主要技術要素(センサー・AI・遠隔監視)
ロボタクシーを支える中核技術は、大きく車載センサー群、AI運転システム、遠隔監視・支援に分けられます。まずセンサーとしては、車両周囲の環境を高精度に把握するためにLiDAR(ライダー:レーザー測距センサー)、カメラ、ミリ波レーダーなどが多重に搭載されます。例えばWaymoの車両では360度をカバーする複数のLiDARとカメラ・レーダーを組み合わせ、歩行者や他車両を数百メートル先まで検知可能です。これらのセンサー情報を統合し、リアルタイムで周囲のオブジェクト認識・位置特定・走行経路計画を行うのがAI運転システム(自動運転ソフトウェア)です。ディープラーニングなどAI技術によって、信号や標識の認識、他車の挙動予測、安全な走行制御が実現されています。
もっとも現時点では、AIがすべての状況を完璧に判断できるわけではありません。そこで遠隔監視(リモートモニタリング)や遠隔支援の仕組みがほぼ全てのロボタクシーに用意されています。具体的には、管制センターのスタッフ(遠隔オペレーター)が複数台の車両の走行状況をモニタリングし、必要に応じてアドバイスやリモート操作で介入できる体制です。日本のガイドラインでは、緊急時に「遠隔型運行補助者」が即座に車両を停止させることなどが求められており、1人の監視員が同時に複数車両を担当する運用効率も検証されています。なお遠隔から直接ハンドルやペダルを操作する遠隔操縦(Teleoperation)は技術的には可能ですが、通信遅延等のリスクから商用サービスでは限定的にしか用いられていません。主に遠隔オペレーターは音声で乗客や警察と会話したり、車両に経路提案や徐行指示を送るなどアドバイザー的役割を果たします。
高精度地図(HDマップ)とV2X
ロボタクシーの安定走行には高精度地図(HDマップ)と呼ばれる詳細な3D地図データが欠かせません。HDマップには車線の幅・形状、標識や信号機の位置、路面の勾配、縁石の高さなど通常の地図以上に精密な情報が含まれています。自動運転車はGPSなどで自車位置を把握しつつ、センサーで捉えた周囲のランドマーク(建物や標識など)とHDマップを照合することで、センチメートル単位の自己位置特定を行います。これにより車線内のどの位置を走行しているか、次の交差点までの正確な道路形状などを把握し、安定した経路追従が可能になります。ただしHDマップには作成と維持にコストがかかり、地図にない急な工事や道路変更には弱いという課題もあります(後述「課題と論点」参照)。
またV2X(Vehicle-to-Everything)通信もロボタクシーを補完する重要技術です。V2Xとは車車間や路車間で情報をやり取りする通信技術の総称で、例えば信号機から残り青信号時間を車に送信したり、路側のセンサーが死角の歩行者情報を車に通知したりといった活用が期待されています。中国では一部都市でインフラ側の協調システムが導入され、Apollo Goの車両が路側センサーから得た情報で見通しの悪い交差点を安全に通過するケースもあります。日本でも今後、路側カメラ映像を遠隔監視者と共有したり、緊急車両接近情報を配信するといったV2X施策が検討されています。もっともV2Xは車両側の自律走行を前提に補助的な役割を果たす段階であり、現行のロボタクシーはV2X無しでも走行できる設計です。ただ将来的にはインフラ協調型により安全性・効率性を一層高めることが期待されます。
システムの冗長化と安全設計
ロボタクシーの車両開発では、安全のための冗長化(レダンダンシー)設計が徹底されています。これは一つの機器や系統が故障しても直ちに安全に停止・走行継続できるよう、重要なコンポーネントを二重三重に備える考え方です。具体的には、ステアリング(操舵)やブレーキ、電源、通信モジュールといった命綱となる系統にバックアップ系を用意します。たとえばGM Cruiseが開発した車両「Origin」では、2系統の独立したステアリング・ブレーキを持ち、一方が故障してももう一方で安全停止できるようになっていました5。またセンサーもLiDAR・カメラ・レーダーの冗長な組み合わせで死角を減らし、いずれかが一時的に信号を失っても他が補完する設計です。
ソフトウェア面でも、異常検知やフェイルセーフの仕組みが組み込まれています。例えば自己診断でセンサーに校正ズレや故障の兆候が出れば即座にシステムが警告し、必要に応じて車両を安全な場所に停車させる措置(ミニマムリスクマヌーバ)がとられます。走行中に判断が追いつかない未経験の状況に遭遇した場合も、無理に続行せず安全停止して遠隔オペレーターの指示を仰ぐよう設計されています。「止まって安全を確保し、人に助けを求める」のが自動運転車の基本的な安全戦略です。
その他、万一の事故に備えた記録装置(ブラックボックス)や、衝突被害軽減ボディ、乗員の緊急手動停止ボタンなども搭載されます。以上のようにハード・ソフト両面で可能な限りのリスク低減策を施した上で、それでも起こり得る残留リスクについては後述の規制枠組みや保険・補償の整備によって社会的受容性を高めていく形となっています。
自動運転タクシーの最新動向【2025年9月】
ここでは2025年9月現在の最新動向を、主要プレイヤー(企業)別と地域別に整理します。2023年以降、この分野は世界各地で実用サービス開始や法制度の変化、業界再編が相次いでいます。それぞれ一次情報に基づいて現状を把握しましょう。
主要プレイヤー別の進展
Waymo(ウェイモ)
WaymoはGoogleの親会社Alphabet傘下の自動運転企業で、ロボタクシー分野の先駆者です。提供サービス規模では世界をリードしており、2025年現在、米国の複数都市で完全無人の配車サービスを一般向けに提供しています。Waymoのロボタクシーは2018年にフェニックス近郊での試験サービスから始まり、2020年10月には初めて安全ドライバー無しのサービスを一般乗客に提供しました6。その後サンフランシスコやロサンゼルス、オースティンなどにも展開を拡大し、2025年4月時点で週25万回以上の有償ライド提供(1週間あたり約100万マイル=160万km走行)に達したと報じられています。これは2023年夏時点と比べても数十倍規模の利用増で、特にカリフォルニア州での商用化認可(後述)を機に急速にサービスを拡大しました。
Waymoの特徴として、安全実績データの積極的開示があります。2024年9月には「Safety Data Hub」を公開し、自社の無人運転車が走行した2,200万マイル超の実データから、人間ドライバーと比べてエアバッグ展開を伴う重大事故が84%少なく、負傷者が出る事故は73%少ないと発表しました。これはフェニックスやサンフランシスコでの走行実績に基づくもので、統計的に有意な差とされています。Waymoはこの安全性を武器に各都市でサービス拡大を図っており、2024年にはロサンゼルスでのサービスを一般開放し、2025年にはフロリダ州マイアミやテキサス州ダラス、ワシントンD.C.、テネシー州ナッシュビルへの進出も計画中です。さらにWaymoは日本での初の海外展開にも乗り出しており、東京の複数区で2025年4月より日本交通・GO社と連携した走行テストを開始しました。初期段階は日本交通のドライバーが運転しながらデータ収集を行い、将来的な自動運転サービス開始を目指す段取りです。
一方、Waymoと並ぶ米国大手だったGM Cruiseの動向(後述)により、米国ロボタクシー市場は事実上Waymoが独走する形になっています。2024年10月、カリフォルニア当局(DMV)はCruiseのサンフランシスコでの無人タクシー営業許可を一時停止し、その後2024年12月には親会社GMがCruise向けのロボタクシー開発投資を停止する決定を下しました。このため米国で継続的に無人タクシー事業を拡大している大手はWaymoと、Amazon傘下のZoox(後述)、および一部の新興企業のみという状況です。
Zoox(ゾークス)
ZooxはAmazonが2020年に買収したロボタクシー開発企業で、独自開発の専用車両を用いる点が特徴です。Zoox車は四角い「おもちゃ箱」あるいは「トースター」とも形容される独特の形状で、ハンドルやアクセルなど人間用の操作系を一切持たず、4人の乗客が向かい合って座るデザインになっています。車両は前後両方向に等しく走行可能で、その場での方向転換(ゼロ半径旋回)もできるため、狭い都市空間での機動性に優れます。
Zooxは2023年まで社内従業員や限定ユーザーへの試乗を重ねてきましたが、2025年9月にラスベガスで一般向けサービスを開始しました。ネバダ州当局より商用運行の認可を得るまでの間、まずは無料の体験乗車としてラスベガス・ストリップ周辺で運行を開始し、数週間で週あたり数千人の乗客を乗せる人気となっています。ZooxのAicha Evans CEOによれば、「まず無料サービスで多くの人に乗ってもらい、ロボタクシーへの理解を深めフィードバックを得たい」とのことで、これにより地域社会の受容性向上と車両改良に役立てる狙いです。Zoox車は外見や乗り心地が他社と大きく異なるため、その「慣れ」のプロセスを重視していると言えます。
今後Zooxはラスベガスで有料サービス許可を取得し次第、運賃を徴収する商用サービスに移行する計画です。さらにサンフランシスコやロサンゼルス、マイアミ、アトランタ、オースティンなど他都市への展開も目指しています。AmazonはZooxの生産能力も強化しており、2023年にはカリフォルニアに量産工場を開設しました。現在50台程度と推定されるテスト車両数を今後増産し、2026年以降本格展開する構想です。
もっともZooxの課題は他社に比べサービス開始が遅れた点で、Waymoや中国勢が既に実地データを積み上げる中、追いつくには迅速な拡大が求められます。とはいえ親会社Amazonの潤沢な資金と、物流網とのシナジー(将来は配送への応用も可能)が強みであり、ロボタクシー業界の有力な競合として注目されています。
Cruise(クルーズ)
Cruiseはゼネラルモーターズ(GM)が出資・買収して育ててきたロボタクシー企業で、かつてはWaymoと並ぶ米国の二大プレイヤーでした。シボレー・ボルトEVを改造した車両でサンフランシスコを中心に実証を進め、2022年には市内一部エリアで一般乗客への深夜無人タクシーサービスを開始しました7。さらにフェニックス(アリゾナ州)やオースティン(テキサス州)にも展開し、2023年にはカリフォルニア州当局(CPUC)からサンフランシスコ市全域・24時間での有償サービス認可を獲得しました8。このように順調に見えたCruiseですが、2023年後半から一転して逆風に晒されます。
きっかけは2023年10月、サンフランシスコでCruise車両が他車に跳ねられて転倒していた歩行者を轢き、そのまま約6メートル引きずるという重大事故が発生したことです。幸い歩行者は命を取り留めましたが重傷を負い、米運輸当局(NHTSA)や州当局が調査を開始。さらにCruise社が事故当初、当局への映像提出に不備があったことも問題視され、カリフォルニアDMVは同年10月24日付でCruiseの無人運行許可を即時停止しました。DMVは「車両の性能に基づき、公共の安全に対する不合理なリスクが認められた」としており、安全性と情報開示姿勢への信頼が揺らいだ形です。この停止措置によりCruiseはサンフランシスコ市内での営業を中断し、フェニックス等他都市の限定サービスに縮小しました。
追い打ちをかけたのがGM本社の方針転換です。2024年12月、GMは「事業の将来性とコスト」を理由にCruiseに対するロボタクシー開発投資を終了すると発表しました。GMは2016年以来Cruiseに100億ドル以上を投じてきましたが、収益化の見通しが立たず巨額の損失が続いていたこと、また自社EV事業の立て直しに経営資源を集中する必要があったことが背景です。この決定によりCruiseは組織縮小と技術のGM車両向け転用(高度運転支援への応用)に舵を切るとみられ、ロボタクシー単独事業としてのCruiseは事実上撤退する見通しとなりました。
Cruiseの撤退はロボタクシー業界に大きな波紋を広げましたが、その教訓として「ビジネスとしてのスケール化の壁」が改めて浮き彫りになったと言われます。GMのメアリー・バーラCEOも「ロボタクシー車両群を運営するコストは非常に大きく、当社のコア事業ではない」旨を述べています。Cruiseは一時、無人車両「Origin」(ハンドル無しシャトル型)の量産計画も進めていましたが、2024年に計画停止となりました。今後、Cruiseの残した技術や知見が他のGM事業に活かされる一方、WaymoやZooxなど残るプレイヤーにとっては市場シェア拡大のチャンスともなっています。
Baidu Apollo Go(百度・アポロゴー)
中国に目を移すと、百度(Baidu)が展開するロボタクシープラットフォーム「Apollo Go(アポロゴー)」が最大のプレイヤーです。Apollo計画は2017年に開始された中国の自動運転オープンプラットフォームで、Baidu自身がロボタクシー車両を開発・運行するほか、アポロ技術を他社にも提供しています。Apollo Goのサービスは2020年以降、中国各地で急速に拡大してきました。中国では2025年時点で“35都市以上”に展開が広がり、北京・武漢・深圳・重慶などでドライバーレス運行が認可・実装されています。特に武漢市ではApollo車両が1000台規模で投入される計画があり、2025年現在Baidu Apollo Goは武漢で数百台規模(“400台超”規模と報じられる)のフリート運用を進めています。
Baidu Apolloの強みは、中国政府・地方自治体と連携しつつ大規模運用データを蓄積している点です。習近平国家主席が「新たな生産力」として自動運転技術育成を呼びかけたこともあり、各都市が競うようにロボタクシー実証を誘致しています。北京では経済技術開発区(亦荘)での無人タクシー営業が認可され、広州市も市内全域への走行拡大を公表しました。このような官民挙げての推進により、中国では開発スピードが非常に速い状況にあります。一方で、タクシー運転手の失業懸念や交通混雑への影響など社会的議論も起きています。2023年には「無人車はタクシー運転手の生計を奪うのか?」といったハッシュタグがSNSで急上昇し、当局が展開速度を調整する可能性も指摘されています。
Apollo Goのビジネスモデルに関して、Baiduはロボタクシーの商用化で世界初の黒字化を目指すと表明しています。証券会社の試算によれば、現在武漢でのApollo Go運行は1台あたり年間約1.1万ドルの赤字だが、より低コストの新型車(約2.8万ドル=約400万円で製造可能)を導入すれば1台あたり年1.6万ドルの黒字に転換できる可能性があるとされます。実際Baiduは2024年、安価な次世代ロボタクシー車両「Apollo RT6」を発表し、大量展開によるコスト低減を図っています。また2023年にはUberおよびLyftとそれぞれ戦略提携を結び、中国国外でのロボタクシー展開にも乗り出しました。Wall Street Journalの報道によれば、Baiduはスイスに現地法人を設立し2025年末までに同国でApollo Goをテストする計画で、さらにトルコや香港への進出も視野に入れています。このようにBaidu Apollo Goは中国国内トップランナーからグローバル挑戦者へと活動領域を広げつつあります。
Pony.ai(ポニーエーアイ)
Pony.aiは中国・北京と米国・シリコンバレーに拠点を置くスタートアップで、トヨタ自動車や中国OEM各社から出資を受ける国際色の強いロボタクシー企業です。Pony.aiもBaidu同様に中国各地で無人運転実証を進めており、広州・北京(亦荘)・上海・深圳などでテスト走行を実施しています。保有するテスト車両は約300台と言われ、2026年までに1000台規模への拡大を計画しています。トヨタと提携してレクサスSUVを改造したロボタクシーを開発したり、自社ソフトをトラック輸送へ応用する試みも行っています。
2023~2024年のPony.aiに関するニュースとしては、北京での無人タクシー営業許可取得(百度と共に2023年取得)や、米国ナスダック市場へのSPAC経由上場準備が注目されました11。しかし2022年にカリフォルニア州でテスト中の公道事故(軽微)が発生しDMVから一時許可停止処分を受けた経緯もあり、米国展開には慎重さが必要とされています。中国国内では2025年5月、北京で走行中のPony.ai車両が火災事故を起こしSNSで拡散されました。これはシステム故障で停車後、整備スタッフが対応中に出火したもので乗客はおらず怪我人もありませんでした。Pony.ai側は原因を調査し再発防止策を講じたと発表しましたが、こうした技術トラブルへの監督当局の目も厳しくなりつつあります。
総じてPony.aiはトヨタという強力なパートナーを武器に、ハードウェア量産や日本市場進出の可能性も秘めています。また広州ではWeRide(後述)と共に市街地無人運行の実績を積んでおり、収益化タイミングについて「あと5年は持続可能な利益には達しないが、その後指数関数的成長が期待できる」と副社長が語るなど、中長期の視点で投資が続けられています。
AutoX(オートエックス)
AutoXはアリババや上海自動車(SAIC)などが出資する中国系スタートアップで、深圳を本拠にしています。AutoXは比較的安価なカメラ中心の技術戦略で知られていましたが、近年はLiDARも組み合わせたハイブリッド戦略に転換しています。北京・上海・深圳・広州などでテストを行い、とくに上海市嘉定区では早期から一般利用者向け試乗サービスを提供しました13。2020年にはカリフォルニアで無人運転テスト許可も取得しましたが、現在まで米国で大々的な展開はしていません。
AutoXの強みはアリババとの関係もありモバイル決済・配車アプリとの統合がスムーズな点で、中国の各都市で市民が気軽に使えるロボタクシーアプリを志向しています。一方で近年は他の中国勢(BaiduやPony.aiなど)の猛追に押され、存在感がやや薄れているとの指摘もあります14。それでも北京市で完全無人タクシー営業許可を獲得するなど一定の成果を出しておりreuters.com、アリババ系のリソースを背景に今後も市場の一角を担っていくと見られます。なおAutoXは日本企業のZMPとも連携し東京・歌舞伎町でのロボタクシーデモ走行(遠隔監視型)を行った実績もあります15。
WeRide(ウィーライド)
WeRide(文遠知行)は広州市発のスタートアップで、ロボタクシーのみならず小型バスや無人物流バン、清掃車など多角的に自動運転を展開しています。広州や深圳でのタクシー実証を軸に、2022年には中東・アブダビ首長国でも試験サービス(「TXAI」プロジェクト)を実施しました。WeRideは日産・ルノーや三菱商事からの出資も受け、日産の電気自動車「リーフ」を改造したロボタクシーで広州の公開道路を走行しています。特に広州では市中心部の一部エリアで終日無人タクシー営業を許可されており、観光客向けキャンペーンなども行っています。
WeRideのユニークな取り組みの一つに自動運転バス(ミニバス)があります。早朝・深夜の交通空白時間帯にオンデマンド運行するシャトルとして広州で試験され、高齢者や通勤客の足を補完する狙いです。また清掃車や配送バンは人手不足対策として地方政府と協力し導入が検討されています。ロボタクシー単体の収益化だけでなく、関連するモビリティサービス全般でトータルなビジネスモデル構築を目指すのがWeRideの戦略と言えます。
その他の企業・プロジェクト
上記以外にもロボタクシー領域には多様なプレイヤーが存在します。米国ではMotionalは2024年5月にUber/Lyftとのロボタクシー展開の“一時停止”と事業再編を発表しており、ラスベガスの商用運行も停止・延期中です(次期ドライバーレス計画は2026年以降に後ろ倒し)。Motionalはヒュンダイ製EV「IONIQ」をベースに自動運転車を開発し、2023年8月にラスベガスで安全ドライバー無しの一般乗車を開始しました。Uberも独自開発を断念した後はパートナー戦略に転換し、2023年にはWaymoやAurora Innovationとの提携を発表しています。
日本企業では、ソフトバンク系列のBOLDLY(ボードリー、旧SBドライブ)や、自動運転ソフトウェアを手掛けるTier IV(ティアフォー)などが国内外の実証に関与しています。ただ日本勢はシャトル型の低速自動運転や遠隔操作サービスが中心で、都市型ロボタクシーの分野ではまだ存在感が高いとは言えません。トヨタはWoven by Toyota(ウーブン・バイ・トヨタ)や子会社のTRI-ADで技術開発を進めていますが、こちらも自社の乗用車向けADASや専用モビリティ(e-Palette等)が主体で、タクシー事業への直接参入は現時点で見られません。とはいえトヨタは前述のPony.aiへの出資や、提携先のDiDi(中国配車大手)と実証実験を行うなど、将来の布石を打っています。
欧州ではWaymoやMobileyeがロンドンやパリで地図作成を進めたり、独フォルクスワーゲン系のMOIAがハンブルクで試験を実施していますが、安全規制の厳しさや高コストのため本格サービス開始はまだです。中東ではドバイが2030年までに25%の交通を自動運転化する野心的計画を掲げ、先述のCruise車両を導入予定でしたが、GMの撤退で計画見直しの可能性があります。
総じて、主要プレイヤーの勢力図は米中の企業がリードし、そこに一部欧米の新興企業や日本含む各国の実証プロジェクトが絡む形です。今後は各社の提携・統合も進むと予想され、技術・資本双方で勝ち残り競争が続いていくでしょう。
地域別の展開状況
日本
日本では2023年4月の道路交通法改正と道路運送車両法改正によって、レベル4自動運転の実用化が可能となる法枠組みが整いました(詳細は後述「日本:特定自動運行」参照)。これを受けて全国各地の自治体で実証実験や小規模サービスが相次いでいます。最初の事例が福井県永平寺町で、2023年5月に参道沿い約2kmの遊歩道で電動カートを使った無人運行サービスを開始しました。車内にも遠隔地にも運転者を配置しない完全無人運行で、土日祝の日中に定時運行し、町民や観光客が100円で乗車できる仕組みです。これは警察庁・国交省のプロジェクト「RoAD to the L4」の一環であり、日本初のレベル4サービスとして注目されました。永平寺町では2023年10月に自転車との接触事故も発生しましたが大事には至らず、現在も運行が継続されています。同町のモデルは過疎地の高齢者向け交通手段としての実装であり、電磁誘導線を敷設するなど安価な技術で安全性を担保しています。
他の地域でも限定エリアでのレベル4運行が広がりつつあります。石川県小松市では2023年、空港公園内のルートで無人運転バスを走行させる取り組みが認可を受けました。千葉県柏市では2024年、柏の葉キャンパス周辺で低速自動運転シャトルのレベル4運行が承認されています。北海道上士幌町でもバス路線での無人運転化が進められました。さらに茨城県日立市のひたちBRTは“2025年2月3日”にレベル4(乗務員乗車型)で営業運行を開始しました(無人=乗員ゼロではなく、当面は乗務員が同乗)。このように都市郊外や地方を中心に実装例が増えていますが、いずれも走行環境が限定された低速・短距離のサービスです。
一方、都市部での実証も始動しました。東京都心では2023年に国交省主導の「Tokyo Robotaxi」実証実験が行われ、品川駅周辺の一般道をレベル4車両が遠隔監視下で試走しました。また前述のようにWaymoが2025年から東京23区内7区で走行テストを開始しています。初期段階は有人運転でデータ収集する段階ですが、将来的に日本交通などと組んだサービス提供が期待されます。大阪市でも2025年の大阪・関西万博に合わせた自動運転タクシー導入構想があり、臨海部の公道で実証計画が進んでいます。
日本の特徴は、地方の生活交通改善と都市部の観光・実証の二軸で動いている点です。前者は高齢化やドライバー不足に対応する地域内交通として、後者は世界的趨勢へのキャッチアップと観光PRとして位置づけられます。ただし今のところ乗客から運賃を取る本格商用サービスは永平寺町のみで、他はほぼ実証実験か法的には「自家用有償旅客運送」の形(運賃無料または実費相当)に留まっています。大都市で一般消費者がスマホ配車でロボタクシーに乗れるようになるには、法運用や社会受容、そして技術面であと数年の準備が必要とみられます。
アメリカ(米国)
アメリカはロボタクシーの技術開発で先行してきた国であり、WaymoとCruiseという2大企業が熾烈な競争を繰り広げてきました(Cruiseについては前述)。2023年にはカリフォルニア州サンフランシスコで両社が営業許可を得て一般乗客への無人タクシー提供を開始し、大きな話題となりました。現在(2025年時点)、米国内で一般向けにロボタクシーが利用可能な都市は以下の通りです。
- アリゾナ州フェニックス都市圏(フェニックス市・チャンドラー市ほか): Waymoが早くから展開し、24時間いつでも一般客が利用可能です。Phoenix Sky Harbor国際空港と市街地を連絡するサービスも提供しており、空港送迎にも活用されています。当初は郊外中心でしたが徐々に都心部にも拡大しました。Cruiseも2022年~2023年にかけ深夜帯中心にサービスしていましたが、現在は縮小しています。
- カリフォルニア州サンフランシスコ: Waymoが市内全域で24時間営業中です。利用者はアプリから呼び出せ、料金はUber等と同程度に設定されています。2023年8月に規制当局CPUCが商用サービスを認可したことで(当初はCruiseも含め認可)、夜間だけでなく昼間も運行できるようになりました。しかしCruiseは前述の通り2023年10月以降停止中で、市内を走るロボタクシーは現在Waymo車のみです。
- カリフォルニア州ロサンゼルス: Waymoが一部エリアで2024年11月から一般開放しました。ハリウッド地区など特定地域でサービスを開始し、今後範囲拡大中です。Motionalも2023年にサンタモニカで無人運転テスト許可を取得し、Lyft経由での乗車サービスを準備していま。
- ネバダ州ラスベガス: Zooxがストリップ地区で無料ライドを提供中。またMotionalがLyftアプリで有償配車サービスを展開し、安全ドライバー付きながら24時間利用できます。将来的にZooxは有料化を計画、Motionalはドライバーレス化を進めています。
- テキサス州オースティン: Waymoが限定エリア・限定ユーザー向けから徐々にサービスを広げています。2024年に一般開放予定との発表がありました。Cruiseもテストしていましたが、現在は積極展開していません。
- その他の都市: Waymoは2024年にアトランタ(ジョージア州)やマイアミ(フロリダ州)でのサービス計画を明かしており、2025~2026年に開始予定です。またワシントンD.C.でもテスト走行を再開しています。Cruiseは撤退方針により新展開は不透明ですが、2025年にUberとの連携でサービス復活を図る可能性があります。
以上のように、米国では西海岸と南部を中心にロボタクシーが走っています。ただ州毎の規制差が大きく、カリフォルニア州では行政や市民の監視も厳しいため頻繁に運行ルールが見直されています(後述「米国:州規制」参照)。一方、アリゾナ州やテキサス州は規制が比較的緩く企業フレンドリーな環境と言われ、Waymoはこれら地域で先行して商用化できた面があります。また米国のユニークな点として、Tesla(テスラ)社が独自路線でロボタクシー参入を狙っていることが挙げられます。テスラはロボタクシー構想を示唆していますが、2025年9月時点でFSDは“運転者の常時監視を要するレベル2”であり、ドライバー不在のライドシェア運用や公的許可は確認されていません。実現には技術的・法的課題がありますが、もし既存のテスラ車が無人タクシー化すれば、一気に数十万台規模のネットワークが生まれる可能性もあり注視されています。
中国
中国では前述の通り、Baidu Apollo Goを筆頭に複数企業が覇を競っています。無人タクシーを一般市民が利用できる都市として代表的なのは、北京・武漢・重慶・深圳・広州などです。北京では経済技術開発区(通称「北京亦荘」)にて、BaiduとPony.aiがそれぞれ公安当局からドライバーレス運行許可を取得し、有料のロボタクシーサービスを展開しています39。利用者はスマホアプリで呼び出し、運賃決済もオンラインで完結します。武漢市はBaiduが2022年から一部エリアで無人タクシー営業を開始し、運行台数の大幅増強を図っていますreuters.com。重慶市(沙坪坝区・永川区など)でも2022年に国内初の完全無人運行許可が出され、Apollo車両が走行していますreuters.com。深圳市は中国でも規制先進地域で、2022年に全国初の自動運転法規を制定し市内での商用サービスを解禁しました40。広州市は2023年に市内全域の公道を自動運転テストに開放すると宣言しreuters.com、WeRideやPony.aiが中心市街での乗客輸送を手がけています。
上海市や杭州市、長春市、成都などでも続々と実証が行われており、延べ20都市近くでロボタクシーが走行している状況ですreuters.com。もっとも都市ごとに許可条件が異なり、多くは「特定区画内」「時間帯限定」「安全員同乗または遠隔監視義務あり」といった制約付きです。一般利用者もまだ技術物珍しさから無料クーポンで試す層が中心で、タクシー運賃を払って日常利用する段階には至っていません41。それでもBaiduなどは膨大な走行データを蓄積しており、アプリ上での呼び出しも通常のタクシー配車と同じ感覚で行えるまでUXを洗練させています。中国政府は2023年に「自動運転車の商用化ガイダンス」を発表し、2025年までの一部実現、2035年までの本格普及を目標としています42。その実現のため都市部だけでなく高速道路上での自動運転トラック隊列走行や、地方での無人配送車走行なども積極的に推進されています。
課題としては、前述の人件費削減による雇用影響や、安全性への信頼確保があります。2025年8月には重慶市でBaidu Apolloの車両が工事現場の大きな穴に転落する事故が起きました。乗客に怪我はなかったものの、現場には囲いと標識があったにも関わらず車が認識できなかった可能性が指摘されています。SNSでは「AIタクシーは融通が利かない」といった批判も出て、Baiduはコメントを控えましたが安全議論が高まっています。中国当局はこうした事故にも寛容過ぎず、必要に応じ指導・停止命令を出す姿勢です。全体として、中国は試行規模で米国を凌駕するが、安全と社会影響への慎重論も出始めたというのが最新の状況です。
欧州・英国
欧州ではロボタクシーの公道サービスはまだ始まっていません。ただし規制整備や試験走行は進んでおり、特に英国が積極的です。イギリスでは2024年5月に「自動運転車法(Automated Vehicles Act 2024)」が成立し、2026年までに自動運転車を道路に登場させる計画です。この新法では「自動運転モード中の車両が人間の慎重なドライバーと同等以上の安全性を達成すること」を義務づけ、また事故時の責任をメーカーや保険会社が負う仕組みを導入しました。これにより、ドライバーが自動運転車に乗っている間は運転責任を問われない(車側に責任転嫁できる)という大きな一歩が踏み出されています。さらに独立した事故調査機関の設置や、企業に対する継続的安全義務など、包括的な枠組みが整いました。英政府はこの新法に基づき、2026年には限定的な商用サービスを開始するため実証パイロットを前倒しすると発表しています。具体的にはロンドン市内や地方都市での自動運転タクシー試行を加速させる計画です。
欧州連合(EU)全体でも、AI法(AI Act)や車両安全規則の改正を通じて自動運転に備えています。ドイツは2021年にレベル4自動運転車の商用運行を可能にする国内法を成立させており、2022年以降一部シャトルサービスが始まりました。フランスやノルウェーでも限定環境で無人バスなどを運行するプロジェクトがあります。ただ、欧州の都市は道路が狭く複雑であることや、社会的合意形成に時間がかかる傾向があるため、大規模なロボタクシー展開は2026年以降と予想されています。欧州の自動車メーカーも独自のモビリティサービス戦略を持っており、メルセデス・ベンツは2023年に独自のレベル3システムを投入(ただし運転手付きの高速限定)しましたが、タクシー業への直接参入は慎重です。そのため、当面は米中企業が欧州市場に参入して試験運行し、欧州各国規制当局がそれを検証するフェーズが続くでしょう。
中東その他
中東では、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイとアブダビがロボタクシー導入に熱心です。ドバイ首長国は2021年にGM Cruiseと提携し、2030年までに4000台のCruiseロボタクシー(Origin車)を市内展開すると発表していました25。2023年にはまず市内で数台の試験サービスを開始する予定でしたが、Cruiseの本国での停滞により計画の再調整が予想されます。一方、アブダビ首長国では2022年末からBayanat社の主導で「TXAI」と呼ばれるロボタクシー試験サービスを実施しました16。このプロジェクトには中国WeRideも技術協力し、市民が一部地域で乗車体験できました。湾岸産油国は「脱石油」政策の一環でスマートシティ・AI技術に投資しており、ロボタクシーもその象徴的存在として期待されています。サウジアラビアでも建設中の未来都市NEOMで自動運転交通網を敷設する構想があります。
その他の地域では、シンガポールが早くから自動運転車の公道実験を許可してきました。nuTonomy社(後にMotionalに吸収)が2016年に世界初のロボタクシーテストをシンガポールで行ったことで知られています。現在も一部地域で実証が続いており、公共交通機関と連携したサービスモデルが検討されています。韓国もソウル市内でロボタクシー実証を実施中で、漢江沿いの特定エリアで一般客が乗車可能です。このように、中東・アジアの各国が自国事情に合わせて限定的な導入を進めています。総括すれば、「米中が商用競争中、欧州は規制準備段階、その他地域は実証段階」というのが2025年現在の大まかな地域別状況と言えるでしょう。
規制と認可の最新状況
ロボタクシーの社会実装には各国・地域の法制度整備が不可欠です。ここでは日本、米国、中国、英国、EUを中心に、最新の規制動向と認可要件を概観します。
日本:特定自動運行とレベル4解禁
日本では2023年4月1日に道路交通法と道路運送車両法の改正が施行され、レベル4自動運転サービスが合法化されました。改正道交法で新設された「特定自動運行」は、限定区域内で自動運転装置により運行を行うもので、公安委員会の許可が必要です。許可を受けるには、運行区域があらかじめ定められたODD内であること、遠隔監視体制が整っていること、緊急時に即座に停止できる措置があることなど厳格な基準を満たす必要があります。例えば永平寺町のケースでは、2023年5月に国内初の特定自動運行許可を福井県公安委員会から取得しています。この許可取得には、中部運輸局からの車両認可(道路運送車両法に基づく無人運転装置の型式認可)や、運行計画の国交省登録(道路運送法に基づく有償運送の許可)が前提となっています。要するに、日本でレベル4サービスを始めるには(1)車両の技術認可、(2)運送事業の登録、(3)公安委の運行許可という三段階のハードルを越える必要があり、各関係省庁の審査を経る必要があります。
実際の運用に関するガイドラインも整備されました。警察庁は「遠隔型自動運行補助者」の配置や、通信途絶時の対処、異常時記録の保存など具体的運行基準を示しています。国交省も「自動運転移動サービス実装ガイド」を策定し、自治体・事業者向けに申請手順や安全管理のチェックリストを公開しました。これによりロボタクシー導入希望主体は必要な設備・人員・書類を把握しやすくなっています。2024年度からは補助金要件も見直され、一定の事業性が見込めるプロジェクトには支援を行う一方、実証の成果が上がらない自治体には補助金縮小も示唆されています。国としては、いつまでも税金頼みの実験に留まらず、持続可能なビジネスとして自立していくことを期待していると言えるでしょう。
今後の焦点は、都市部でのレベル4適用です。現行制度では歩行者や他車両の多いエリアでも理論上は特定自動運行を許可できますが、安全性の確保が大前提です。警察庁は2023年に「道路交通法の解釈の整理」を発表し、人間に課される安全運転義務規定等をAIにどう教えるかといった論点について整理を始めました。これはロボタクシーのAIが日本の交通ルールを正しく理解し守れるようにする取り組みで、「徐行」の概念や「あいまいな優先関係」の対処などを明文化・モデル化する作業です。東京など大都市で実際に営業するには、これら法解釈の明確化と運用実績を積んでいくことが求められます。
米国:州規制(DMV/CPUC)と連邦動向
米国では連邦レベルの包括的な自動運転法がまだ無く、州ごとに異なる規制が適用されています。特にカリフォルニア州は最先端の実証が集中するため、独自の許認可制度を築いています。カリフォルニア州では自動車局(DMV)がテスト許可・商用許可を担当し、公共サービス委員会(CPUC)が乗客から料金を取るための追加許可を担当する二本立てです。2023年8月、CPUCはサンフランシスコで初めてWaymoとCruiseに一般乗客から運賃を取る無人タクシー営業を認可しました。しかしその後の事故等を受け、2024年11月、CPUCはデータ報告要件を大幅に強化し、衝突だけでなく停止事案・警察対応等も含めた詳細報告を“CPUCへ”24時間以内に提出することを義務化しました(NHTSAへの報告は別制度で運用)。これは透明性を高め安全性を検証するためで、当局は収集データを分析して必要なら追加の規制策を講じる構えです。
カリフォルニアDMVも、前述のように2023年10月にCruiseの許可を停止するなど厳格に対応しています。DMV規則では「車両の安全性に懸念がある」「安全関連情報の隠蔽や虚偽」があれば即時に許可停止可能と定められており、Cruiseには両方の理由が適用されました。現在Cruiseは有効な無人運行許可を持たず、再開するにはDMVが納得する改善策を示す必要があります。一方Waymoは安全データの公開や当局との情報共有に努めており、今のところカリフォルニアでの営業を順調に続けています。CPUCは将来的に走行距離データの提出も義務化したい意向で、安全性能の客観比較を進めたい考えです。
州レベルでは他にも、アリゾナ州は早くから自動運転実験を歓迎しWaymoがフェニックスで商用化できる下地となりました。テキサス州も2023年にCruiseがオースティンで実証を開始するなど進展がありましたが、Cruiseの件で州司法当局が調査に乗り出すなど波紋も広がっています。一方、ニューヨーク州のように公道での自動運転テスト自体を厳しく制限している州もあります。今後は各州の規制が徐々に収斂していく可能性がありますが、当面は規制サンドボックス的に進んでいる州から順に商用展開が広がるでしょう。
連邦政府レベルでは、NHTSA(米運輸省 道路交通安全局)が自動運転車の安全基準整備に乗り出しています。現行の連邦自動車安全基準(FMVSS)は人間の運転を前提とした項目が多く、ハンドル無し車両(例:Cruise OriginやZoox車)が基準を満たせない問題があります。2022年にはNHTSAが一部基準の例外申請を受理し、手動操作装置無しでも要件を満たせるよう規則改正に動いています。またNHTSAは2021年よりStanding General Order(一般命令)を発出し、全ての自動運転車やADAS(高度運転支援)の関与する事故を翌日までに報告させる制度を導入しました。WaymoやCruiseはこれに基づき事故報告を行っており、Waymoの安全分析もそのデータを利用しています。NHTSAは現在、報告義務の恒久ルール化と走行距離データ提出の義務化を検討中で、産業全体の安全評価を進めたい意向です。さらに2023年には連邦司法省や証券取引委員会(SEC)もCruise問題について調査を開始し、安全性を偽った情報開示は法的責任を問われ得る状況となっています。
総合すると、米国は「州規制の先行・競争+連邦規制の追い上げ」という局面です。カリフォルニア州の動きは他州や連邦にも影響しやすく、CPUCの報告強化策は全国的な標準になる可能性があります。今後、大統領や議会の主導で包括的な連邦自動運転法が制定される可能性も取り沙汰されています。
中国:各市の許可制度
中国では国家レベルでも自動運転振興策がありますが、実質的な許可は各地方政府が握っています。北京・上海・深圳など一部の主要都市は独自のルールやガイドラインを定め、テスト許可→有人同乗営業→無人営業という段階を踏ませる運用です。例えば北京市は2021年に「自動走行車両テスト管理実施細則」を制定し、一定の試験走行距離を積んだ企業に対して安全員同乗での乗客輸送を認め、さらに実績に応じて完全無人運行も許可する枠組みです。2023年にBaiduとPony.aiがこの最終段階の許可を取得したのがその成果です。
深圳市は2022年に全国初の包括条例「経済特区智能網聯汽車管理条例」を施行し、有人/無人を問わず自動運転車の走行や事故責任について定めました。この条例ではレベル4車両の登録制度や、事故時の責任主体(所有者や管理者に負わせる)などを規定しています。深圳では条例に基づき、2022年7月にBaiduと自動運転スタートアップのDeepRoute.aiへ無人運行許可証を交付しました。
他の都市でも、重慶市は「西部自動運転開放テスト基地」を設け、武漢市や長沙市も指定区域での実証を管理するガイドラインを出しています。こうした都市政府の積極性に加え、国家工業情報化部(MIIT)など中央官庁も技術標準や保険制度整備を推進中です。2023年には無人運転車向け保険商品も登場し、乗客や第三者への賠償スキームが整いつつあります63。
中国の規制は全般に柔軟かつ実験重視と言えます。米国のように独立機関が厳しく介入する場面は少なく、まず走らせてみて問題が起きれば改善させるという姿勢です。ただし安全軽視ではなく、例えばPony.aiの火災事故後に当局が迅速にヒアリングを行い公表させたように、透明性確保には動きます。また雇用問題への配慮から、政府系シンクタンクがロボタクシー拡大の経済影響を分析するなどしており、必要なら調整策を講じる可能性もあります。今後、自動運転関連の国家標準や法律が制定される可能性もありますが、中国ではトップダウンよりも特区・モデル都市で実績を出し、それを横展開する手法が多いため、当面は都市ごとの「競争」が続くでしょう。
英国:Automated Vehicles Act 2024
前述のように、英国は2024年5月に世界で類を見ない包括的な自動運転法を制定しました。Automated Vehicles Act 2024(通称:AV法)は、「自動運転モード中の車両=運転主体はシステム」と明確に位置づけた点が画期的です。これにより、ドライバーがハンズオフ(手放し)で移動中にシステムが違反や事故を起こしても、責任は車両メーカーやシステム提供者・保険会社が負うことになります。これは自動車保険制度にも大きな影響を与えるため、英政府は保険業界とも連携しつつ施行を進める予定です。
AV法はまた、安全基準の厳格化も定めています。具体的には「慎重で有能な人間ドライバーと同等以上」の安全性能を自動運転車に要求し、公道に出る前に独立機関が技術審査を行う仕組みです。さらに、運行中のデータ記録・事故調査の独立性確保なども規定され、航空業界のような原因究明と継続的改善を促す文化醸成を目指しています。英運輸省はこの法制度を受け、2026年に最初の商用自動運転サービスを開始すべく官民パートナーシップを加速させると発表しました43。2023年現在でもロンドンではイギリス企業Wayveが自動運転タクシーをテスト中であり、1億ドル以上の大型投資も集めています。またOxbotica(オックスボティカ)というスタートアップはオックスフォード市で自動運転車両の試験を行っています。AV法はこうした国内企業にも明確なルールの下で開発を進める恩恵を与えるでしょう。
英国の取り組みは、EU離脱後も英国基準を世界標準にしていく意気込みが感じられます。日本の政策立案者もこのAV法には注目しており、特に「システムが主体」という考え方や事故時の企業責任明確化などは日本でも将来的に議論が必要になると見られます。英国では法整備が完了したことで、あとは産業界が2026年までに安全実証を完了させることが課題です。
欧州連合(EU):AI規則等の対応
EU全体では、AI Act(AI規則)が2023年に制定され2025年頃施行予定です。これは汎用AIから自動運転AIまでカバーする包括規制で、自動運転車のAIは「高リスクAIシステム」に分類される見込みです。高リスクAIには透明性や説明責任、人的監視の確保など多くの要求が課されます。具体的な技術要件は今後詳細化されますが、例えばロボタクシーAIが差別的行動をしないことや、判断理由を事後に説明できることなどが期待されます。またEUはGDPR(データ保護規則)が厳しいため、乗客のプライバシーに配慮したデータ処理も義務となります。
車両の物理的な安全基準については、EUの自動車型式認可で徐々に自動運転対応が図られています。2022年7月、EU加盟国と日本などは国連WP.29でレベル3自動運転システム(特定条件下でハンズオフ運転可)に関する国際基準に合意しました。これによりメルセデス・ベンツのレベル3システムがドイツや日本で承認され、市販化されています。レベル4以上については国際基準が未整備ですが、欧州委員会は2024年までに一部基準案を提示予定です。
欧州では各国の保守的な姿勢もあり、ロボタクシー普及は遅れ気味です。しかし安全文化が根付いているため、いざ始まれば手堅く進むとの見方もあります。EUは公共交通との融合にも関心が高く、将来は都市のバス路線を無人シャトルに置き換えるなどの構想もあります。そのため、タクシー業界だけでなく鉄道・バス事業者との調整も必要で、一層のステークホルダー対話が求められます。
自動運転タクシーの安全性と事故データ
ロボタクシーの安全性は利用者や社会の関心事であり、人間の運転と比べてどの程度安全なのかがしばしば議論されます。ただ安全を数字で評価するには注意も必要です。ここでは安全性の指標や公開データ、実際の事故事例、人間との比較ポイントなどを解説します。
安全性を測る指標(Mileあたり事故率など)
自動運転車の安全性評価によく用いられる指標に、「走行距離あたりの事故発生率」があります。例えば「100万マイル(約160万km)あたりの事故件数」や「10万kmあたりの人身事故件数」などです。従来、人間ドライバーの平均的な事故率は致死事故で1億マイルに1回程度、負傷事故なら数百万マイルに1回と言われてきました。ロボタクシーもこれに倣い、一定の走行距離あたり何件の事故(またはディスエンゲージメント:人間介入やシステムオフが必要になった事象)が発生したかを指標としています。
ただし単純比較はできません。事故の定義が異なる場合があるからです。自動運転車関連では、たとえ過失が相手方にあっても(追突されたなど)「事故件数」に数えるケースが多く、逆に人間の統計では警察に届け出なかった軽微な物損事故は含まれないことがあります。そこでWaymoなどは事故を重篤度で層別し、公平な比較を試みています。例えば「警察報告あり」「エアバッグ展開あり」「負傷者あり」といった基準です。エアバッグ展開は衝突の激しさを示す指標になり、負傷者の有無は医療介入が必要だったかを意味します。こうした分類で、人間対自動運転の事故率を比べるわけです。
もう一つの指標は「ディスエンゲージメント率」です。これはテスト中に安全ドライバーがどれだけ運転を引き継いだかを表す値で、かつてはカリフォルニアDMVが企業ごとの値を毎年公表していました。しかし運転手を完全に下ろした現在の商用段階では、ディスエンゲージメントはもはや指標にできません。代わって「遠隔オペレーター呼び出し件数」や「スタック(立ち往生)発生率」などが注目されています。CPUCが2024年に報告義務化した「停車事案」などはまさに後者で、自動運転車が動けなくなり交通を妨げたケースを把握しようというものです。安全は「事故を起こさない」だけでなく「道路を不当に占有しない」も重要との考えです。
公開データ:Waymoの事例分析
安全データの公開に最も積極的なのはWaymoです。Waymoは2020年にまずフェニックスでの全自動運転走行の詳細レポートを発表しました72。その際、650万マイル走行で18件の物損事故と少数の軽傷事故があったが、重傷や死亡事故は0だったと報告しています72。その多くは他車から追突されたり、一方通行を逆走してきた車に衝突されたケースで、Waymo車が主因となった事故はごく少なかったと分析されました。
続いて2023年にはサンフランシスコでの700万マイル走行データを分析し、Waymo車が人間平均と比べて事故率が低いことを示す論文を発表しています。そして2024年9月には前述のSafety Impact Data Hubを立ち上げ、フェニックス・SF・LA・オースティン計2200万マイルでの事故率比較を公表しました。その結果は前述の通り、エアバッグ展開事故は84%減、負傷事故は73%減、警察報告事故は48%減というものです。注釈として、この分析には過失の有無に関わらずWaymo車が関与した全事故が含まれることも示されています。つまり自車に過失ゼロであっても、事故としてカウントしているため、ある意味人間側に不利な比較と言えます。それでもなお大幅に少ないという結果は注目に値します。ただしこのデータはまだ走行エリアが限られていることも留意が必要です。郊外や住宅街中心のフェニックスでは事故率が低く出やすく、SF中心部では相対的に上昇する可能性があります。Waymoは都市別の比較もデータハブで提供しており、例えばフェニックスでは警察報告事故率が人間の半分以下だったのに対し、SFでは人間の約7割程度に留まったようです。この差異も公正に示した上で、Waymoは「都市ごとに改善に取り組む」と述べています。
Waymo以外では、Cruiseも2023年までに約300万マイルの無人走行実績を積んでいました。Cruiseは詳細データを広く公開していませんが、2023年初めにNHTSAへ報告した事故では軽傷事故が1件、物損のみが数件程度だったと伝えられています。しかし上述の2023年10月の重傷事故でクローズアップされ、安全性議論に一石を投じました。この事故は「直前に別の車が歩行者をはね、それにCruise車が対応しきれず轢いた」という特殊な状況でしたが、「想定外の事態でAIは適切判断できるか」という課題を示しました。
これまでの事故・トラブル事例
ロボタクシー関連の重大事故として語られるものに、2018年のUber車による歩行者死亡事故があります。これはアリゾナ州テンピで夜間、試験走行中のUber自動運転車(安全ドライバー搭乗)が道路横断中の歩行者を検知できず衝突し、歩行者が死亡したものです。この事故によりUberは自動運転部門を売却し撤退、業界全体も一時慎重姿勢となりました。このケースは安全員の前方不注意も原因で、人間とシステム双方の問題でした。
それ以降、幸いロボタクシーで死亡事故は起きていませんが、Cruiseの歩行者重傷事故(2023年SF)や、Waymo車がハロウィンの群衆内に迷い込み暴徒に車体を破壊される事件(2022年SF)、Baidu車の工事溝転落(2025年重慶)などが発生しています。前者のWaymo車炎上事件では、ハロウィンの雑踏でコーンが車に載せられ動けなくなったところを、悪乗りした人混みに車体が跳ねられ火がつけられました。これは悪意ある人間への対処という新たな課題を示し、以後Waymoはソフトウェアでコーン載せ妨害に対応するとともに、地元警察と協力を深めました。
軽微なトラブルとしては、緊急車両への対応が挙げられます。2022年にSFでCruise車が火災現場に遭遇し、消防ホースの上に停止して消防隊の邪魔をした件や78、2023年にも緊急車両に進路を譲らなかったと批判された件があります79。これらはソフト改良で徐々に改善されていますが、人間が即座に空気を読むようにはいかず、完全解決にはいたっていません。
また大規模通信障害も懸念材料です。もし通信ネットワークがダウンすると遠隔監視や地図更新ができなくなり、多数のロボタクシーが足止めになる可能性があります。2022年には一時サンフランシスコで数台のCruise車が同時に停止し道路を塞ぐ騒ぎがありました。これはクラウドサーバのバグでしたが、停電やネット遮断などもシナリオとしては想定すべきです。各社は一定時間通信が途絶しても安全に走行継続・停止できるモードを備えていますが、長時間復旧しない場合は路肩待避等が必要です。
人間の運転との公平な比較ポイント
ロボタクシーの安全性を人間と比べる際には、走行環境の違いに注意が必要です。自動運転車が事故率で優れていても、それが郊外の閑静なエリアだけ走っているからなのか、都心の複雑な場所でも同等なのかで意味が変わります。Waymoは都市別公表でこの点透明化しましたが、他社も含め統一条件での比較研究が望まれます。米国運輸当局も、NHTSAのデータ収集に走行距離情報を加えれば業界横断比較が可能になると述べています。
また事故の質も重要です。人間運転は飲酒・居眠り・スマホ操作などで重大事故を起こしますが、自動運転車はそれらを一切しません。その代わり、人間ならしないような勘違い(例:ポリ袋を歩行者と誤認して急停止など)を起こす可能性があります。これはミスの傾向が異なるということです。統計的に平均すればロボタクシーの方が安全でも、残るリスクがどういうタイプか理解する必要があります。Waymoらのデータでは、ロボタクシーは右直事故(対向右折車との衝突)や追突事故を大幅に減らせるが、場面によっては過剰防衛的ブレーキで軽微な追突をもらうことがあると示唆されています。つまり「避けられる事故は大幅に減らすが、新種の小トラブルは起こし得る」という像が浮かびます。
公平比較には走行当たりの事故コストを見る方法もあります。怪我の重さや物的損害額を点数化して総和を比較するアプローチで、Waymoと保険大手Swiss Reの共同研究では、Waymo車は人間より物的損害保険の請求額が88%少なかったという結果が出ています。これは事故全体の社会コストを減らせることを示す一例です。
最後に、社会心理的要因も無視できません。人間は自分がコントロールできないものに対して、リスクを過大評価しがちです。飛行機事故が珍しいのに恐れられる一方、日常の自動車事故は身近すぎて許容されているように、ロボタクシーの事故も一般にはセンセーショナルに報道されます。そのため、仮に統計上人間より10倍安全でも、一件のニュースが信頼を揺るがす可能性があります。運営企業は透明性と誠実な情報開示によって信頼構築を図ることが肝要でしょう。
リコールとソフトウェア更新対応
自動運転車の不具合はハードよりソフトウェア起因が多いとされ、致命的バグ発覚時にはリコールやOTA(Over-The-Air)アップデートで対処します。2023年初め、Cruiseは前述の歩行者挟み込み事故を受け、NHTSAによりソフト不具合の改善リコールを要求されました。Cruiseは直ちに全車のソフトを更新し、特定条件下で人を検知した際のブレーキ挙動を改善するパッチを適用しています。このように、重大インシデント後は当局の監督下でソフト修正→走行再開というプロセスが敷かれます。2023年末にCruiseが連邦司法省と暫定合意した際も、虚偽報告の罰金支払いとともに安全改善プログラムの実施が求められました。
ソフト更新は頻繁に行われており、Waymoなどは週単位で走行ログを分析しアルゴリズムの改良を重ねています。OTAで即時反映されるため、ある意味ロボタクシーは日々進化する存在とも言えます。ただ、これも両刃の剣で、システムが変わるたびに挙動が変わるため、規制当局は最新版の安全性を追認し続ける形になります。現在は各社が自主的に変更内容を報告していますが、将来はOTAアップデートにも認証プロセスを入れるべきとの議論もあります。
またハッキングなどによる悪意あるソフト改変リスクも想定されます。車両のサイバーセキュリティ基準も整備されつつあり、日本や米国では新型車販売時にサイバー対策実施を義務化しました。万一リコール対象となる脆弱性が見つかった場合、OTAでの一斉修正か車両入庫でのアップデート対応が取られます。ロボタクシーの場合、自社でフリート運用しているためOTA適用状況も容易に把握できますが、将来的に一般販売車でロボタクシー化するようなケース(テスラ想定)は、ユーザー任せの更新では不十分との指摘があります。
ビジネスモデルと収支の現状
ロボタクシー事業は巨額の開発費を要する一方、運賃収入で投資を回収できるのか疑問視されています。ここでは料金体系やコスト構造、運用効率、提携戦略などビジネス面の課題と模索を整理します。
料金体系と収益性
現在運行中のロボタクシーサービスの多くは、既存のタクシー・ライドシェアに近い料金設定となっています。例えばフェニックスのWaymoでは、走行距離と時間に応じた従量制で、UberやLyftと同等かやや安価になるよう調整されています。具体的には初乗り料金に加え、1分あたり○ドル+1マイルあたり○ドルという体系です(距離単価はエリアにより異なるが人件費が不要な分若干割安にできる)。Cruiseもサンフランシスコでの営業時はUberXと同程度の価格帯でした。利用者獲得のため、当初は無料クーポンや割引を配布するケースも多く、WaymoやBaiduは初回乗車無料キャンペーンを頻繁に行っています。Zooxのように現在無料で提供し、許可取得後に有料化する戦略もあります。
収益性の観点では、現状1台あたり収入 < コストとなっており、大半のプロジェクトが赤字です。Baidu Apolloの試算では、武漢での1台あたり収入が年間約1.5万ドルに対しコストが2.6万ドル程度で、1.1万ドルの赤字とされます。ただし、車両価格を安くし(現行は1台あたり$150k以上かかるとも)、稼働率を高めれば黒字化が見えると分析されています。Waymoも事業全体では莫大な投資を続けていますが、2025年には年間売上が推定数億ドル規模に成長するとも報じられています。料金設定自体は人間タクシーと同水準であっても、乗車回転率を上げて台数を増やせば売上は比例します。鍵はコスト側の削減で、特にLiDARなど高価だった部品が量産効果で下がるとともに、遠隔監視人件費などもスケールメリットで抑えられる見込みです。
需要喚起策としては、深夜料金割増なし・渋滞時の時間料金割引など人間には難しい柔軟料金も可能です。さらに定額サブスクリプション(乗り放題月額プラン)の実験も考えられます。Waymoは一部ヘビーユーザーに割安プリペイドプランを提供し始めています。収益源は運賃以外にもあり得ます。車内広告や、EC連携(乗車中に注文すると割引など)、データ提供ビジネス(交通流データの販売)などです。現時点では各社とも運賃収入に集中していますが、将来的にはMaaSプラットフォーム化し多角収益を狙う可能性もあります。
稼働率とオペレーション効率
タクシービジネスの肝は稼働率(1台あたり1日何時間客を乗せているか)です。人間運転のタクシーはドライバーの勤務制約から1日あたり稼働はせいぜい12時間程度、実車率(客を乗せている時間/走行時間)は30~50%が普通です。ロボタクシーは人間の疲労を気にせず24時間走行可能ですが、現状は整備充電時間や需要ピーク・オフピークを考慮すると、1日16~20時間程度の稼働が目安とされています。Waymoはフェニックスでサービス初期に1台当たり1日5~10回の乗車を捌いていましたが、最近は都市拡大により台当たり1日20~40回程度に増えていると推定されます。需要が伸びるにつれ、単位時間あたりの乗車回数(回転率)も上がっているようです。実車率向上には効率的な配車・ルーティングAIが重要で、需要予測に基づき車を待機配分したり、乗合サービス(相乗り)で1回の走行に複数客を載せたりといった工夫も可能です。特に相乗り(プール)はUberやLyftが人間ドライバーでも導入しましたが、ロボタクシーでもコスト削減と利用者運賃低減に寄与するため実装が進むでしょう。
オペレーション効率では、1人の遠隔監視員が何台を見るかがコストに響きます。永平寺町では1人で3台を同時監視しましたが、WaymoやCruiseは公表していないもののより多く(おそらく10台以上)を1人でモニターしていると推測されます。技術の成熟で人間の介入が減れば、この比率を上げられ、人件費あたり台数効果が増します。将来完全無人監視が理想ですが、当面は1人対複数台の遠隔体制で効率化を図ります。
また稼働率には車両ダウンタイム(充電・清掃・整備時間)も影響します。電気自動車の場合、急速充電でも1回のフル充電に30~60分かかり、その間は営業できません。これを補うためCruiseはロボタクシー車両に急速充電ネットワークを構築したり、Waymoは独自の自動充電ロボットアームを開発したりしています。清掃・点検は人手が必要ですが、例えばZooxは「自動で1日の終わりに車庫に戻りセルフクリーニングを受けるシステム」を検討しています。こうした裏方プロセスの効率化も稼働率向上には欠かせません。
運用コストの内訳と規模効果
ロボタクシーの運用コスト主要項目は、車両減価償却費、通信費、管制センター人件費、メンテナンス費、保険料などです。車両はLiDAR等搭載で高価なため、1台数千万円レベルの初期費用を何年で償却するかがポイントになります。Waymoは自社開発センサでコスト削減を図りつつ、近年Jaguar I-PACEなど市販車ベースから専用車開発(Geely系のZeekrとの協業)に移行してコストダウンを狙っています。中国勢は廉価なEVを改造する方向で、BaiduのRT6は約37,000ドルと従来比1/2以下にコストカットしたとされます。大量生産できれば1台あたりコストは飛躍的に下がるため、規模の経済が効く部分です。
通信費は膨大なセンサーデータをクラウド送信する場合に嵩みます。Waymo車は1日あたりTB単位のデータを収集しますが、全てをリアルタイム送信はしておらず、必要な情報のみ逐次送っています。将来5G/6Gが普及し通信単価が下がれば、遠隔モニタリングの高解像度映像伝送なども安価になるでしょう。
管制センター人件費は前述の監視員数と直結し、少人数で多数を回せるほど効率化されます。またソフトウェアの成熟でヒヤリハットが減り、オペレーター介入頻度が低下すればコスト減となります。Cruiseは2023年初、サンフランシスコで月にわずか数回しか遠隔オペレーター介入がなかったと発言していましたが、実際には事故時の複雑対応など課題が残りました。とはいえ基本挙動で介入不要なレベルまで改善が進めば、人件費比率は大幅に下がります。
メンテナンス費は車両清掃・消毒、タイヤ・ブレーキ交換、センサーキャリブレーション、ソフト更新検証など多岐に渡ります。現状は専任チームが毎日点検していますが、徐々に間隔を延ばしコスト削減が可能でしょう。ただLiDARクリーニングなど新しい作業も発生しており、自動クリーニング装置の導入が取り沙汰されています。
保険料も重要です。事故率が下がれば保険料率も下がるはずで、Swiss Reの試算ではロボタクシーの保険請求額は従来車の1/10以下になり得るとのこと。現在は開発段階ゆえ保険料も高めですが、将来広く商用展開され統計が揃えば、事故率低いことが証明され保険料低減につながるでしょう。これも規模効果の一つです。
概して、ロボタクシー事業は量産による車両コスト低減と走行データによる安全性向上→オペレーション効率化の両輪でコスト構造が改善されます。前述のGM Cruise撤退は、そこに至る投資負担に耐えられなかった面がありますが、Waymoや中国勢は先行投資を乗り越えつつある段階です。Apollo Goが世界初の黒字化を目指すように、数年以内に1拠点単位では採算ライン達成との声もあります。ただ大きな利益を出すには地理拡大が必要で、その際HDマップ作成等に再びコスト増となるジレンマもあります(課題と論点で後述)。
フリート運用とメンテナンス拠点
ロボタクシー事業者は、車両を自社保有して一括管理するフリート運用形態が一般的です。WaymoやCruiseはいわばタクシー会社そのもので、車庫での車両整備・充電、車内清掃、ソフト更新をまとめて行っています。例えばWaymoはフェニックス郊外に大規模デポ(運行拠点)を構え、数百台の車両を収容可能です。そこではスタッフが車体洗浄や内装清掃、タイヤ交換など日常整備を行い、また遠隔監視センターも併設され24時間車両をモニタしています。Cruiseもサンフランシスコ市内に複数のハブを持ち、夜間に車両を集約していました。
このように物理拠点が重要なため、都市展開時には自治体との用地交渉や電力インフラの確保が課題になります。サンフランシスコでは都市中心部に大量のEVを充電する必要があり、電力会社との調整が必要でした。一方フェニックスのように郊外に広大な土地を確保できれば比較的容易です。日本の都市部では車庫用地確保が困難なので、既存のタクシー車庫やバス車庫を転用する連携も考えられます。東京都は2023年に民間事業者から都心部の拠点候補の公募を行いました。
またフリート運用では運行管理システムも重要です。全車のバッテリー残量や整備スケジュール、乗客からのフィードバックを一元管理し、配車アルゴリズムと組み合わせて最適化します。これは物流の車両管理システムに似ています。AmazonのZoox参入は、このロジスティクス管理のノウハウを活用できるメリットも大きいでしょう。
なお将来的には、個人が所有する自家用車をロボタクシー網に組み込むシナリオも想定されています。テスラが描くのはまさに自家用テスラ車が空いている時間にUber的に他人を乗せ収益化するモデルですが、その場合フリートという概念が崩れ、分散管理となります。現状では技術・法制度ともそこまで成熟しておらず、まずは事業者が管理するフリートモデルで事業性を確立する段階です。UberやLyftも自社では車を持たずドライバーが車両を用意するプラットフォーム型でしたが、ロボタクシー時代にはWaymoなど車両保有側が主導する形に回帰しており、興味深い構図です。
提携戦略(配車アプリ・交通連携)
ロボタクシー事業者は、他社との提携にも力を入れています。特に配車プラットフォームとの連携は、乗客獲得と運行効率向上の両面でメリットがあります。例えばCruiseは2023年10月、Uberとの提携を発表し、2025年からUberのアプリ上でCruise車を呼べるようにする計画でした。Waymoも2020年にLyftとの連携でフェニックスで一部車両をLyft利用者に開放した実績があり、2025年にはLyft経由でナッシュビル(テネシー州)にも展開予定です。配車アプリ側は車両を持たずにサービスを提供でき、ロボタクシー側は膨大なユーザーベースにリーチできるWin-Winです。
また中国では、配車最大手DiDi(滴滴出行)が独自にロボタクシー技術開発しつつ、Baiduなどの車両もDiDiアプリ上で利用可能にしています。Baidu自身もApollo Go専用アプリだけでなく、AliPayなど生活アプリから呼べる連携を進めています。今後はプラットフォーマー同士の競争もあり、ひとつのロボタクシー会社が複数プラットフォームに乗るケース(CruiseがUberとLyft両方に車両提供など)も考えられます。
公共交通との連携も模索されています。米フェニックスではWaymoが鉄道駅と目的地を繋ぐファーストマイル/ラストマイルサービスとして市交通局と協力しました。日本でもMaaS施策の中で、無人運転車をバス路線の補完に使う検討が各地で行われています。ロボタクシーが空港と都心を結ぶシャトルになったり、夜間の終電後輸送を担ったりすれば、公共交通の利便性が向上します。ただタクシー業界や公共交通事業者との競合も生じるため、調整が必要です。中国では北京でタクシー会社がBaidu Apollo車を導入するなど、既存事業者が新技術を受け入れる動きもあります。
自動車メーカーとの提携も重要です。上述のように、トヨタは出資を通じてPony.aiと関係を築き、将来の車両供給や日本市場進出に備えています。GMとCruiseの蜜月は破局しましたが、ホンダはCruiseに出資を続けており、日本導入を模索していました。今後、技術会社+完成車メーカー+交通事業者の三位一体で地域サービスを展開するモデルも出てくるでしょう。その際、どの主体が主導権を握るかで収益配分も変わります。
最後に付け加えると、データ提携も盛んです。保険会社とのデータ共有、都市交通プランナーへの走行データ提供など、ロボタクシーが集めたビッグデータを他分野で活かす取り組みです。Waymoは事故データを研究者に提供し、論文共著するなど開かれた姿勢を見せています。こうしたコラボレーションにより、安全規制やインフラ整備がより科学的根拠に基づいて進むことが期待されます。
ユースケース別の展望
ロボタクシーは単なる「タクシー代替」以上の多様なユースケースが考えられます。ここでは空港アクセス、深夜移動、過疎地、観光、MaaS統合といった切り口で、そのメリットと展望を述べます。
空港アクセスの高速移動
空港と市内を結ぶ交通はロボタクシーの有望なユースケースです。多くの都市で空港は郊外に位置し、タクシーやライドシェアの利用率が高い区間です。ロボタクシーであればドライバーの労働時間制限なく24時間運行できるため、深夜早朝便への対応にも強みがあります。また空港では乗降場所が限定され整備されているので、ピックアップ・ドロップオフのオペレーションも比較的容易です。実際、Waymoはフェニックスのスカイハーバー空港で2022年より旅客ターミナルへの乗り入れを開始し、空港送迎サービスを展開しています。利用者はターミナル前の専用乗降場でWaymo車を呼び、市中心部まで移動できます。これにより、到着便で遅く着いた旅行者でも無人タクシーで安全にホテルまで行けるようになりました。
サンフランシスコやロサンゼルスでも、今後ロボタクシーの空港乗り入れが計画されています。空港当局との調整が必要ですが、駐車場や送迎レーンの一部をロボタクシー用に割り当てる動きがあります。乗客にとっても、重い荷物があってもドアツードアで移動でき、なおかつ料金が定額(渋滞でも変わらない)なら大きな利便性です。空港と主要ホテルを結ぶシャトルバス代替としても期待できます。日本でも成田・羽田空港で実証が行われれば、訪日観光客やビジネス客の移動が便利になるでしょう。
もっとも課題もあります。現状ロボタクシーは高速道路走行が未対応なケースが多く、空港~都心間に高速道路が絡むと難易度が上がります。WaymoやCruiseは一部高速走行もできますが、合流や料金所で人間がモニターすることもあります。将来的に高速道路上の自動運転が法整備されれば、空港リムジンバスの代わりとして複数乗客を乗せた無人シャトルが高速を飛ばす未来も考えられます。英国では高速道での無人貨物シャトル計画もあり、旅客にも応用できるでしょう。
深夜移動や飲酒後の帰宅手段
深夜帯の交通はロボタクシーの強みを発揮する領域です。多くの都市では深夜に公共交通が減便・終電となり、タクシー需要が集中します。しかし同時に運転手の負担が大きく、人手不足も相まって供給が限られます。ロボタクシーであれば、人間の睡眠時間に左右されず24時間サービス提供が可能です。例えばサンフランシスコでは深夜2時の飲食店閉店後にタクシー・Uberが捕まりにくい問題がありましたが、CruiseやWaymoが無人車を走らせたことで一部解消しました。特に週末の深夜は酔客の帰宅需要が高く、ロボタクシーが飲酒運転の抑止にも役立つと期待されています。実際、Waymoはフェニックスで飲酒イベント会場周辺に車両を集中配車するなど、飲酒後移動の安全提供に積極的です。
日本でも深夜の交通難民が課題です。終電後にタクシー待ちの長蛇の列といった光景が各都市で見られます。ロボタクシーが実用化すれば、深夜でも定額で確実に帰宅できる手段としてニーズが高いでしょう。また地方都市では飲み会後の代行運転に頼るケースが多いですが、無人タクシーがあれば代行不要になり、飲食産業にもプラスかもしれません。警察庁も、飲酒運転撲滅の観点から自動運転車の普及に期待を寄せています。
ただ深夜ならではの課題もあります。治安・マナーの問題です。泥酔客が乗り込んで嘔吐したり、車内で暴れたりしても運転手がいないため抑止力が弱い恐れがあります。Waymoなどは車内カメラと双方向通信で、遠隔オペレーターが必要時に警告したり警察と連携できる体制を敷いています。また万一乗客が居眠りして目的地に着いても降りない場合などの対応も課題です。この点は有人タクシーでも経験ある問題ですが、無人では自動ロック解除して外部救援を呼ぶなどシステム対応が必要でしょう。
過疎地モビリティと高齢者支援
高齢化と人口減少が進む地域では、公共交通の維持が困難になり「交通弱者」の増加が懸念されています。ロボタクシー(自動運転移動サービス)は、そうした過疎地の移動手段を確保するソリューションとして期待されています。実際、日本で最初にレベル4運行した永平寺町も過疎地域でした。住民の移動足を早期に確保するため、あえてローテクな誘導線方式を採用してまで実現した経緯があります。一見極端な例ですが、このように鉄道や路線バスが維持できないエリアで小型自動運転シャトルを走らせる動きは世界各国にあります。フランスのNavya社製シャトルは欧州各地の村で運行され、住民や観光客を輸送しています。ドイツでも地方のバス路線を自動運転ミニバスに置き換える実証が行われました。
ロボタクシーを過疎地で使うメリットは、人件費節減で赤字運行をカバーできる点と、運転手確保難の解決です。高齢ドライバーばかりで後継がいない自治体でも、遠隔監視員は都市から配置できればいいので人材確保策の幅が広がります。地域の高齢者は免許返納後も無人車で買い物や通院に行けるようになるかもしれません。実際、永平寺町では冬季以外の土日に運行していますが、本来は平日の日常足への応用が望まれています。現在はまだ技術の安定性から週末限定にしていますが、将来的に信頼度が上がれば常設運行も検討されるでしょう。
課題は、過疎地特有の環境です。山間部ではGPS受信が不安定になりやすく、トンネルや林間道路などセンサーに厳しい条件があります。また冬季の降雪・凍結路はセンサーと走行制御双方に大きな負荷です。永平寺町モデルも冬季は休止しています。このため、過疎地で通年運行するには四駆の専用車や道路インフラ側の改良(除雪体制強化や路面マーカー設置)が必要でしょう。
もう一点、過疎地では利用者数が少なく、採算ラインに届きにくい問題があります。行政の補助や地域住民の合意(利用頻度を確保する協力)が不可欠です。日本政府はデジタル田園都市国家構想の一環でこうした自動運転サービスに予算を付けています。地域住民の移動権確保という公共的意義を重視し、採算度外視でも支援する政策です。最終的には、都市部で稼いだロボタクシー事業者の利益が過疎地サービスの補填に回るようなクロスサブシディもあり得ます。例えば、同一企業が東京と地方両方で運行し、都市で利益・地方でトントンのビジネスモデルです。
観光分野での活用と自動ガイド
観光地におけるロボタクシーの活用も注目されています。観光客向けにはタクシーが重要な移動手段ですが、土地勘が無かったり言語の問題があったりでハードルがあります。ロボタクシーなら言語対応やルート案内もシステムで多言語化でき、自動ガイドとしての役割も果たせます。例えば観光名所を巡る周遊コースをプリセットし、車両が走行中に各スポットの音声ガイド(多言語)を流すといった演出も可能です。既に一部では自動運転カートでの観光ツアー実証が行われており、フランスのリヨンでは旧市街を無人シャトルが巡回しガイド放送を流した例があります。
またテーマパークやリゾート施設内の移動にも無人カートが使われ始めています。日本でも、2025年大阪万博の会場輸送に自動運転車を投入する計画が進行中で、広大な会場内をAI運転車が来場者を運ぶ見通しです。万博では各国要人も多数訪れるため、安全かつシームレスな移動手段として国内技術のショーケースになるでしょう。
観光は季節・時間で需要変動が大きい分野です。ロボタクシーなら閑散期は台数を減らし、繁忙期だけ増車するといった柔軟対応ができます。人間なら繁忙期だけの雇用は難しいですが、車なら遊休コストこそかかるもののスケジューリングは自由です。さらに海外観光客にとっては「最先端技術体験」としてロボタクシーに乗ること自体がアトラクションとなります。例えばドバイでは観光客誘致の一環でCruiseロボタクシー導入をアピールしていました。
しかし課題もあります。観光客はしばしば大きな荷物を持っていますが、現在のロボタクシー車両はトランク積み降ろしを自分でできません。運転手がいれば手助けできますが、無人では乗客自ら行う必要があり、高齢観光客などには負担です。これを解決するには、荷物収納を支援する係員を乗降場に配置する、あるいはロボタクシー車両にロボティックアームを付けて自動で荷物を載せるなど未来的な対応が考えられます。
MaaS統合による公共交通連携
MaaS(Mobility as a Service)は、複数の交通手段を一つのサービスとして統合提供する概念です。ロボタクシーはこのMaaSの強力な構成要素になり得ます。例えば、スマホアプリで出発地から目的地を入力すると、徒歩→ロボタクシー→鉄道→ロボタクシーで到着といった経路が一本の予約で確定し、一括決済されるような未来像です。ロボタクシーがファーストマイル/ラストマイルを担うことで、公共交通のカバー範囲が実質的に広がります。特に夜間や郊外、バスが本数少ない地域ではタクシー代わりに役立ちます。すでにエストニアのタリンやフィンランドのヘルシンキでは、MaaSアプリでタクシーと公共交通を組み合わせたサービスが提供されています。ロボタクシーもこれに組み込まれる日は近いでしょう。
またMaaS統合により、定期券やサブスクモデルへの組み込みも可能です。例えば毎日の通勤定期に自宅~駅のロボタクシー送迎が含まれるプランなどです。企業が従業員の通勤手段としてロボタクシーを契約することも考えられます。米国では特に都市郊外のオフィスへのラストマイルでシャトルバスを運行する企業がありますが、無人車に置き換わるかもしれません。
公共交通連携では運賃制度の工夫も求められます。今は別々に支払う鉄道・バス・タクシー運賃を、MaaSでは一括の運賃パッケージにできる利点があります。ロボタクシーだけ乗ると高くても、鉄道とセット割にすれば手頃になるといったイメージです。これによって乗客誘導も可能で、渋滞の起きやすい中心部へは鉄道利用を促し、ロボタクシーはそこまでの支援役に徹するなど、交通全体を最適化できます。
日本では国土交通省がMaaS実証を多数支援しており、自動運転車を組み込んだ地域MaaSも生まれています。課題はデータ標準化や事業者間の収益配分調整です。ICT面ではAPI連携で解決できますが、タクシー事業者と公共交通事業者間の運賃収入配分などはセンシティブです。ロボタクシーが普及しタクシー業の在り方が変わる中、MaaS統合のビジネスモデルも模索が必要でしょう。
自動運転タクシーの課題と論点
ここまで技術や展開を見てきましたが、ロボタクシー普及には様々な課題も残ります。以下、主な論点を整理します。
大規模展開のハードル(スケーラビリティ)
ロボタクシーを一部地域から他地域へ拡大する際のハードルを指摘する声があります。例えばWaymoはフェニックスでは成功しましたが、サンフランシスコの複雑な道路環境には苦労し、学習に時間を要しました。一つの都市で上手くいったAIでも、別の都市では道路標識の形や交通ルールの慣習が異なり対応を調整する必要があります。HDマップも都市ごとに作成が必要で、拡大する度に初期コストがかかります。GMはCruiseについて「事業をスケールさせるには相当な時間と資源が必要」と述べて撤退を決めました。完全な普遍運転AIが登場しない限り、都市ごとに地道な適応作業がつきまといます。
また規模が大きくなると、運営も煩雑になります。数百台規模ではちょっとしたソフト不具合で同時多発的に車両がストップするリスクも増えます。Cruiseは2023年8月に通信不具合で10数台が一斉停止し、全米メディアに報じられました。数が少ないうちはリカバリー可能でも、千台規模で同じことが起きたら都市交通が麻痺しかねません。つまり規模効果でリスクもスケールするのです。これに対処するには、より堅牢なシステム設計やフォールバック策、そして当局との緊急連携計画が必要です。例えば「大量の無人車が停止した場合、警察が交通整理をどう行うか」など事前策定が求められます。
社会受容性と住民合意形成
技術が整っても、市民が安心して受け入れることが不可欠です。サンフランシスコでは一部住民がCruiseやWaymo車に不満を募らせ、2023年にはフロントに交通コーンを載せて無力化する“抗議”まで発生しました。これは無人車が深夜に騒音を立てたり道路を塞いだりしたことへの反発でした。日本でも、過疎地に導入する際に「本当に安全なのか」という高齢住民の不安を丁寧に取り除く努力が必要でしょう。試乗会や説明会を開き、遠隔監視体制や緊急時の保障(万一事故が起きたらどうするか)などを説明することが大切です。永平寺町ではサービス開始前に住民参加のワークショップを重ね、理解醸成に努めました。
またタクシー業界など既存職業への影響も課題です。中国では「無人車がタクシー運転手の飯の種を奪う」とSNSで議論が噴出しました。日本でも将来的に都市部まで広がれば、タクシー運転手の雇用が縮小する可能性があります。ただ一方で、ロボタクシーの運行管理や遠隔監視、新車整備など新たな職種も生まれます。Apollo Goは「運行データ分析や監視スタッフ等、新たな雇用を生み出している」と説明しています。社会全体で見れば、人間ドライバーは不足傾向なのでむしろ良い転換との見方もありますが、移行期には摩擦が起きるでしょう。労働移行支援や職業訓練が政策的に必要になるかもしれません。
法令適合と倫理・責任問題
前述の規制整備に関連しますが、法律上のグレーゾーンや倫理判断の問題があります。例えばロボタクシーが走行中、避けきれない事故で「どちらの障害物に衝突するか」という究極の選択(いわゆるトロッコ問題的状況)に直面したら、誰がそのアルゴリズムを決めるのかという議論があります。人間ならとっさの判断で責任は問われにくいですが、AIは事前プログラムなので設計者の倫理観が問われかねません。現実にはそこまで明確なプログラムは組まれず、安全優先の汎用戦略に留めると思われますが、事故時の責任所在は依然重要です。英国は法律でシステム側の責任としましたが、日本を含め多くの国では今のところドライバー不在時の責任の取り方が明確でない面があります。日本の特定自動運行では、許可を受けた事業者(自治体や会社)が運行管理者として責任を負う形ですが、事故時に刑事責任を問われる主体などはケースバイケースです。保険スキームでカバーするにしても、遺族感情など社会的合意を得るため明確な責任ルールが必要でしょう。
またハッキングによる意図的な事故の懸念もあります。自動運転車がサイバー攻撃で暴走させられた場合、テロ等に悪用される恐れがあります。これについては各国法で不正アクセス禁止やテロ対策法など既存法で対応可能ですが、未然防止の技術措置と法整備の両面で強化が必要です。Tesla車をハッキングしてリモート操作できた例もあり、自動運転車はネット接続を前提とするだけに常に狙われるリスクを伴います。
安全上の限界と想定外シナリオ
AIには限界があり、必ず想定外のシナリオが起こり得ます。例えば2023年、サンフランシスコで濃霧により多数のCruise車が誤動作して停止する事例がありました。霧はセンサーにとって難敵で、カメラ視界を遮りLiDARのレーザーも散乱させます。深い霧や豪雨、大雪などでは人間運転でも危険ですが、AIも同様に苦手です。このため各社「一定以上の悪天候ではサービス停止」という基準を設けています。しかし天候変化は急で、走行中に状況悪化する場合もあります。そういう想定外シナリオでは、結局人間のレスキューが必要になるでしょう。遠隔から誘導したり、最悪は有人車で迎えに行くかもしれません。今後、どのレベルまで安全保証するかが議論されます。完全無欠を目指しても不可能なので、合理的に「ここまでリスク低減したら社会的に受容する」という線引きが必要です。それは規制当局と社会が決めることで、技術側だけでは決められません。
また人間との混在期間の問題もあります。ロボタクシーが増える過程では、人間運転車と混在して走ります。人間ドライバーは往々にして無人車を見かけると煽ったり割り込んだりする傾向が報告されています。無人車はおとなしい運転をするのでカモにされやすいのです。こうした人間側のモラル課題もあり、完全自動運転社会になるまで長い移行期の安全確保は簡単ではありません。
HDマップ依存と環境変化への対応
HDマップはロボタクシーの命綱ですが、その更新の手間とコストも課題です。道一本工事するだけで地図を書き換えなければならず、大規模な都市再開発や新規道路開通があると対応が大変です。人間は看板の「迂回案内」を見て即座に判断できますが、AIは地図が無いと苦手です。HDマップに頼らずオンボードセンサーだけで走る「自律型」も研究されていますが、現状都市環境ではまだ地図が不可欠です。地図更新頻度が上がるとランニングコストがかかり、ビジネスモデルを圧迫します。Baiduなどは自動マッピング技術を開発して、車両が自ら地図を作り更新できるように取り組んでいます。また高精度衛星写真やドローンでの自動地図生成も検討されています。ただ完全にリアルタイム地図反映するには、通信インフラや標準フォーマットなどハードルが高いです。したがって地図への過度な依存を減らすべく、車両側AIをより賢くして地図にない状況でも安全に対処できる能力向上が望まれます。
天候・工事・緊急時の対処
上記とも関連しますが、悪天候(大雨、大雪、濃霧、台風)や道路工事、事故現場といった非日常環境への対応は難題です。カメラやLiDARが効かないほどの視界不良時は、自動運転車は走行継続を諦め安全な場所に停止するのが基本戦略です。しかし例えば高速道路上でそれをやられると危険です。現状、高速道路での突然の濃霧等の場合、自動運転モードはドライバーに即座に運転を戻す設計(DTA: Driver Takeover Request)が使われています。無人車ではそれができないため、遠隔からの誘導か、後続車への自動アラート発信など、新たな安全策が求められます。
道路工事については、地図外の仮設車線や作業員の旗振りに対応しなければなりません。WaymoやCruiseは工事現場に近づくと低速で慎重に進むようプログラムされていますが、それでも誘導員の人間の意図を読み違える可能性があります。最近、Waymo車が工事現場手前で停まってしまい、作業員が困惑する映像が話題になりました。こうした場合、遠隔オペレーターが映像で確認し代わりに判断する手はありますが、瞬時の対応は難しいです。これは完全には除去できないリスクとして残るでしょう。解決策としては、路側機に工事情報を搭載しV2Xで車に伝える、作業員が持つ標識にQRコードや電子タグを付け車に認識させる等が考えられます。
緊急時(救急車が後ろから来た、警官が停止を命じた等)も懸念です。WaymoやCruiseはサイレン音を検知すると安全に路肩寄せする機能を持っていますが、100%完璧ではありません。警官が拡声器で呼びかけても理解できない場合があります。現時点では、車両が停車せず対応に困った警官が窓を割った例さえあります。今後、警察車両からロボタクシーに停止コマンドを送れるシステムや、登録警官が遠隔センターに直接繋げるホットライン整備などが検討されています。こうした法執行機関との連携プロトコル構築も課題です。
サイバーセキュリティとプライバシー
ロボタクシーは走るコンピューターであり、そのサイバーセキュリティは死活問題です。もし悪意ある第三者にハッキングされ遠隔操作されたり、ウイルスでシステムダウンしたら大事故につながります。2015年にジェープ車を外部から操縦不能にされた事件をきっかけに、自動車業界はセキュリティ対策を強化してきました。ロボタクシーでも、通信の暗号化、多層防御、異常検知システムの搭載などが標準装備です。しかし攻撃者も日々高度化しており、常にゼロデイ脆弱性が狙われます。特に完全無人車は乗員が異常に気づいてブレーキ踏むこともできないため、すべてを電子的セキュリティに委ねる怖さがあります。各国規制当局はメーカーにサイバー対策計画の提出と年次報告を義務づけ始めました。業界横断の情報共有も進んでおり、脅威インテリジェンスを共有する自動車ISACも活動しています153。攻撃を完全になくすことは困難なので、侵入されても被害最小化(フェールセーフ停止やバックアップ系への切替)が重要です。
プライバシーの問題もあります。ロボタクシーには多数のカメラが付いており、走行中に街ゆく人々の姿や会話を記録する可能性があります。米国ではカメラ映像を訓練データに活用していますが、EUなどではGDPR的に厳しい目があります。日本でも個人映り込みへの配慮が必要でしょう。各社は映像を匿名化(顔やナンバーを自動マスキング)したり、必要部分のみクラウド送信するなど工夫しています。車内プライバシーも問題です。乗客の会話や行動が常時カメラで記録され遠隔オペレーターに見られることに抵抗感を示す人もいます。Waymo等は映像を安全確認目的に使い、本人確認や不正防止以外に使わないと約束しています。しかし将来的に広告ビジネス等でデータを活用しようとする誘惑もあり得ます。利用者が自分の乗車データの使われ方をコントロールできる仕組みが求められます。
いつ・どこで乗れる?(2025年時点)
それでは結局、「今この瞬間にロボタクシーに乗れる場所」はどこでしょうか。2025年9月現在の状況を整理します。
- 日本: 一般の人が無人タクシー(乗用ロボタクシー)に有償で乗れる常設サービスは未導入。一方、レベル4の有償サービスは永平寺町(低速カート)とひたちBRT(バス・乗務員乗車型)で実装済みです。ここでは土日祝の10~15時に2km区間を走る無人カートに100円で乗車できます。その他の地域では、有料ではない実証実験(無料または協力金程度)がほとんどです。東京都内や福岡市などでのタクシー実証は安全ドライバーが乗車する形でした。2025年に向け、東京や大阪で無人の乗客サービスを開始する計画もありますが、まだ限定的な試みです。つまり日本では一般商用サービスは黎明期で、誰もが手軽に乗れる状況にはありません。2023年以降に国交省が認可したレベル4車両が各地で準備中なので、2025~2026年にかけて過疎地を中心に数件の新サービス登場が期待されます。都市部では2025年の東京・大阪で限定試乗、2030年前後の商用化が一つの目安と見られます。
- 米国: 一般客が利用できるロボタクシーサービスが存在する都市はアリゾナ州フェニックス近郊(Waymo)、カリフォルニア州サンフランシスコ(Waymo)、ロサンゼルスの一部(Waymo)、ネバダ州ラスベガス(Zoox試験無料ライド、Motional+Lyft)、テキサス州オースティン(Waymo限定展開中)などです。特にフェニックスとサンフランシスコでは、スマホでアプリ(Waymo One)をダウンロードすればすぐに配車を呼び出し、無人車に乗って目的地まで行けます。料金はUber等と同等でクレジットカード決済可能です。サンフランシスコは2024年以降Cruiseが撤退したため現在Waymoのみですが、24時間市内を走っています。ロサンゼルスはハリウッド地区など限定ながらサービスあり。ラスベガスはZooxが無料でストリップエリアを運行中なので、現地に行けばAmazonのロボタクシー体験ができます。モーショナル車はLyftアプリで「自動運転車」を選べますが、まだ安全員が乗る場合もあります。米国ではこれら都市にいれば、もはやロボタクシーは現実的な交通手段になりつつあります。
- 中国: 一般市民が利用できる都市は複数あります。北京市(経済技術開発区)ではApollo GoやPony.aiのアプリで無人タクシーが呼べます。上海市は嘉定区など郊外で試乗可能です(安全員同乗の場合あり)。広州市や深圳市も一部エリアでWeRideやAutoXのロボタクシーが営業しています。武漢市・重慶市は百度Apolloの無人車がよく走っています。運賃は通常のタクシー並みかそれ以下に設定され、プロモーションで無料券が配られることも多いです。アプリは各社専用または提携スーパーアプリ(如支付宝など)で簡単に呼べます。ただエリアは限定され、例えば北京中心部や上海外灘など観光エリアで乗れるわけではありません。郊外の新区や開発区が中心です。中国では2025年現在、10都市以上で一般客がロボタクシー体験可能といえますが、全土で誰もが乗れる状況ではまだありません。都市住民数からすると利用者はごく一部です。今後上海や北京中心部への拡大が一つのマイルストーンになるでしょう。
- 欧州: 2025年時点で、欧州には一般向けロボタクシーサービスは存在しません。ノルウェーやフランスで住民限定のシャトル実証があった程度です。英国も法整備が終わったばかりで、まだ乗れません。したがって旅行者目線では、欧州では当面体験機会は少ないでしょう(例外的にエストニア・タリンでBolt社が自動運転タクシーを一部提供との情報もありますが極限定的です)。
- 中東・その他: UAEのアブダビで期間限定のTXAIサービスがあったものの、今は終了しています。ドバイは試験段階で一般サービスはまだです。シンガポールは一部テストに参加すれば乗れる機会がありますが、一般開放はされていません。韓国ソウル市では市が運営する自動運転タクシー実証に申し込めば乗れます。総じて、北米と中国が突出し、それ以外はまだ体験イベントレベルと言えます。
まとめると、2025年9月時点でロボタクシーに“普通に”乗れる国は米国と中国が中心です。日本はごく限られ、欧州は無し。今後2~3年でイギリスやUAE、日本でも徐々に一般サービスが始まると予測されますが、それでも都市限定になるでしょう。広範囲で自由に乗れるのは2030年代前半以降と見込まれます。とはいえ、一部地域では既に現実の交通機関である点を踏まえると、「ロボタクシーはいつ乗れる?」の答えは「もう乗れます(場所によります)」となります。
導入の手引き(自治体・事業者向け)
最後に、自治体担当者や交通事業者がロボタクシー導入を検討する際のチェックリストを提示します。技術任せではなく、地域事情に合わせた計画策定が重要です。
事前準備:法制度と許可取得
まずは自国・自治体の法制度確認が第一です。日本なら特定自動運行許可の要件を熟読し、公安委員会との事前協議を開始します。無人運行には警察・運輸局双方の認可が要るため、両者と並行で相談しましょう。地域公共交通会議の議題に載せ、住民説明の場を設けることも大切です。海外でも州・市の許認可が必要で、カリフォルニアならDMV・CPUCのプロセス、欧州なら試験走行許可の取得方法を確認します。法令遵守と行政協調なしには一歩も進めません。
運行エリア設定とインフラ整備
次に運行エリア(ODD)の選定です。地理的範囲・走行ルート・サービス時間帯・最高速度など制約を明確にします。交通量や歩行者動線を調べ、危険箇所(学校周辺、複雑交差点など)には速度制限や別ルート検討が必要です。必要なら道路管理者と連携して標識追加や路面整備を行います。V2Xインフラ導入もオプションです。例えば見通しの悪い交差点にセンサーを設置し、車両に情報提供すれば安全性向上につながります。また通信環境も確認し、4G/5G電波の届かないエリアが無いか調べます。トンネルなどでは中継器設置が要るかもしれません。インフラ前提を整えることで、車両側の負荷を下げ安全マージンを稼ぐことができます。
技術パートナー選定と車両調達
自前で技術を持たない自治体・事業者は、パートナー企業選定が鍵です。WaymoやBaiduのような大手に参画を打診するか、国内の自動運転キット提供企業(Tier IVなど)に協力を仰ぐか、海外スタートアップと組むかなど選択肢があります。各社実績や対応可能条件が異なるため、入念な市場調査を行いましょう。レベル4認可取得済みの車両があるなら優先的に候補になります。例えば日本ではヤマハ発動機のカートベース車両が既に永平寺町で認可された実績があるため、安全策として同系統を採用するのも一案です。車両サイズ・定員も検討し、必要な輸送力を満たすか確認します。調達費用・ランニング費用の見積もりも取り、ビジネスモデルを描きます(行政支援も想定した収支シミュレーション必須)。
遠隔監視センターと要員訓練
運行に不可欠なのが遠隔監視オペレーションセンターです。通信回線の確保された場所にモニタリング室を設け、訓練を受けた遠隔オペレーター(レベル4自動運行主任者)を配置します。センター設置には24時間電源・ネット環境と、複数台分の映像表示設備、緊急停止ボタン等のインターフェースが必要です。要員は自動車の知識と緊急対処能力が求められるため、運行会社の中から適性者を選び、技術企業の研修プログラムを受ける形になるでしょう。警察OBやタクシードライバー経験者なども適任かもしれません。何か起きた時に冷静に対処できる人材を揃え、定期訓練でスキル維持します。また24時間運行ならシフト体制も組み、夜勤手当等を考慮した人件費計画を立てます。
住民説明・合意形成と地域連携
地域で実装する場合、住民理解を得ることが成否を分けます。特に地方では顔の見える関係を大事にし、自治会や町内会を通じて説明会を実施しましょう。試乗体験会を事前に開き、不安を払拭するのも有効です。「高齢者でも乗りやすいか」「子供だけでも安全か」など地元目線の疑問に丁寧に答えます。利用ルール(乗車方法、料金、緊急時の連絡先など)も周知します。並行して、地元タクシー会社やバス会社との調整も必要です。競合関係になる場合、共存策(深夜はロボタクシー、昼は従来交通など棲み分け)を話し合います。可能なら既存事業者を運行委託先にして、地域全体のメリットを追求するのが理想です。地域行政トップの理解と支援も重要で、広報誌やイベントで前向きな発信をしてもらうと雰囲気が良くなります。
データ管理とプライバシー対応
運行が始まると、大量の走行データ・映像データが蓄積されます。それを適切に管理し、個人情報保護に配慮する体制を整えます。具体的には、収集データの用途を限定し目的外利用しない、保存期間を定め一定期間後は削除する、アクセス権限を限定し外部漏洩防止措置を取る等です。乗客に対してもプライバシーポリシーを明示し、同意を取得します。日本なら個人情報保護法、EUならGDPRなどに準拠した運用をしましょう。顔や車両ナンバー等は可能な限り自動マスキングを行い、研究目的でデータ提供する際も匿名加工します。サイバーセキュリティ面でも、センターや車両のシステムに対しペネトレーションテストを実施し脆弱性を潰しておきます。信頼担保は技術だけでなく情報管理の信頼も含まれることを肝に銘じるべきです。
プロジェクト評価と段階的拡大
導入後は、定期的な評価を欠かさないようにします。KPIとして、利用者数、1日あたり乗車回数、走行距離あたりの介入件数・トラブル件数、利用者満足度アンケート結果、収支状況などをトラッキングします。特に安全面は最重要で、ヒヤリハット報告が上がったら原因分析してソフト改良や運用修正に反映させます。小さく始めて問題なければ徐々に拡大する「スモールスタート」が望ましく、例えば最初は限定ルート・限定時間で運行→需要に応じてエリアや時間を拡大、台数を増加、といったステップを踏みます。いきなりフルスケール投入せず、PDCAサイクルで無理なく進めることが成功のコツです。行政への報告書作成や補助金実績報告も怠らず、次年度以降の継続支援につなげます。
以上、自治体・事業者がチェックすべきポイントを挙げました。ロボタクシー導入はハードルが多い一方、地域課題解決や新産業創出のチャンスでもあります。準備を周到に行い、安全第一でプロジェクトを進めてください。
まとめ
自動運転タクシー(ロボタクシー)は、技術進化と規制整備によりいよいよ実用段階に入りつつあると言えます。WaymoやZooxが走る米国の都市、中国各地のApollo Go、それに遅れながらも法改正に踏み切った日本――世界は着実にロボタクシー時代に近づいています。
一方で、安全性の証明と社会からの信頼獲得が引き続き最重要課題です。現状のデータでは人間より相当安全な可能性が示唆されながらも、ゼロリスクではなく、新たな課題も浮上しています。規制当局は慎重な監督を続け、事業者も透明性ある情報開示で応える必要があります。事故ゼロの神話を振りまくのではなく、「人より安全だが完璧ではない。その上で社会全体のリスク低減に寄与する」という正直なスタンスで進めることが肝要でしょう。
ビジネス面では、巨額投資に対する収益化の難しさから撤退する企業も出ましたが、それでも残ったプレイヤーは長期視点で規模の経済を追求しています。都市圏での利用拡大と地方での活用という二面性を持ち、MaaSや公共交通との融合も視野に、ロボタクシーは単独ビジネスから社会インフラの一部へと進化する可能性があります。
利用者にとっては、近い将来、深夜に安心して帰れる手段、高齢になっても移動の自由を保つ手段、観光先で言葉の壁なく移動できる手段として、ロボタクシーが当たり前になるかもしれません。それは私たちの生活様式や都市の風景を変える潜在力を秘めています。もちろん課題の克服なくしてその未来は来ないでしょう。安全を最優先に据え、技術者・行政・社会が対話と協力を重ねていくことが不可欠です。
「自動運転タクシーがいつどこでも利用できる世界」はまだもう少し先ですが、局所的には既に始まっています。その現状と課題を本記事で網羅しました。これからのアップデートにも注目しつつ、読者の皆様にもぜひ機会があればロボタクシーに実際に乗って体感していただきたいと思います。それは未来のモビリティへの理解を深め、社会の受け入れを促進する一歩になるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自動運転タクシーと普通のタクシーの違いは何ですか?
A. 最大の違いは運転席に人間の運転手がいないことです。自動運転タクシー(ロボタクシー)はAIとセンサーで自動走行します。呼び方や利用方法は配車アプリ経由など通常のタクシーに近いですが、乗車中の運転操作はすべてシステムが行います。また料金支払いも自動化されている場合が多いです。
Q2. ロボタクシーは安全ですか?事故は起きませんか?
A. 完全に事故が起きないとは言えませんが、統計上は人間より事故率が低いというデータがあります。例えばWaymo車は走行距離あたりの負傷事故が人間より7割以上少ないと報告されています。ただゼロではなく、実際に軽微な接触事故やトラブルは発生しています。重要なのは事故の深刻度を減らせる点で、死亡や重傷事故を大幅に減らせる可能性が示唆されています。
Q3. いつになったら日本でロボタクシーに乗れますか?
A. 日本でも2023年に福井県永平寺町で国内初のロボタクシーサービスが始まりました。ただ都市部ではまだ実証段階です。政府は2025年頃までにいくつかの地域で本格サービスを目指しています。東京ではWaymoと日本交通が2025年にテストを開始予定で、順調なら2020年代後半に都心でも乗れる可能性があります。つまり一部では既に乗れ、一般普及にはあと数年といった状況です。
Q4. 雨や雪の日も走れますか?
A. 小雨程度なら問題なく走行しますが、豪雨・豪雪・濃霧など極端な気象条件では運休や一時停止することがあります。センサーが視界を失う恐れがあるためです。各サービスとも天候に応じて走行可否を判断する仕組みを持っています。将来的にはセンサー性能向上やインフラ連携で対応範囲が広がるでしょう。
Q5. 乗車中に急病になったりトラブルが起きたらどうすれば?
A. 多くのロボタクシー車両には緊急ボタンやインターホンが設置されています。押すと遠隔監視センターのオペレーターと通話でき、必要なら車両を安全に停止させ救援を呼ぶことができます。また事故時は自動で通報される仕組みもあります。乗客は落ち着いて指示に従えば安全が確保されるよう設計されています。
Q6. ロボタクシーはどのように呼んで乗るのですか?
A. 基本的にはスマートフォンの専用アプリでタクシーを呼びます。乗車地点を地図で選択すると近くの無人車が配車されてきます。車が到着したら予約者にだけ分かる識別コードや表示で確認し、ドアを開けて乗車します。降車後は自動で決済されます。アプリがない場合に電話で呼ぶオプション等は現時点では少ないです。
Q7. 料金は普通のタクシーより高いですか?
A. 現状では人間のタクシーと同程度か、やや安い程度に設定されることが多いです35。例えば米国ではUber等とほぼ同じ料金体系で競争しています。長期的には運転手コストが無い分、もう少し安く提供できる可能性があります。ただ初期投資回収のため、急激に安くなることはないでしょう。
Q8. プライバシーが心配です。車内の様子は録画されていますか?
A. 車内外のカメラ映像は安全確認のため記録されています。ただ、それらは運行会社が厳重に管理し、基本的に公開されることはありません。遠隔オペレーターがモニタリングする場合もありますが、データは匿名化・暗号化され、プライバシー保護に配慮されています。利用規約でどう扱われるか確認できます。
Q9. ロボタクシーはハッキングされたり暴走したりしませんか?
A. サイバー攻撃対策は万全を期しており、車両とサーバー間通信の暗号化や不正アクセス検知など多層防御を敷いています86。また制御系は二重化され、仮に異常があれば安全停止するフェイルセーフ設計です。過去に深刻なハッキング事例は報告されていませんが、完全にゼロリスクとは言えないため業界全体で最新対策を講じ続けています。
Q10. ロボタクシーと人間タクシーはどちらが仕事を奪われますか?
A. 長い目で見れば、人間ドライバーの需要は徐々に減る可能性があります。しかしロボタクシーの普及には時間がかかり、当面は共存期間が続くでしょう。人手不足の解消策にもなり得るため、一概に雇用を奪うとは言えません。またロボタクシーの運行管理やメンテナンスなど新たな雇用も生まれます。業界も既存タクシーとの協調を模索しており、ゆるやかな転換になると考えられます。
Q11. 自家用車がロボタクシーになることはありますか?
A. 将来的には自家用車でもソフトをアップデートすれば無人で客を拾いに行ける可能性をTeslaなどが示唆しています。ただ2025年現在、そのような仕組みは実現していません。法制度面でも自家用車による有償運送は難しい国が多いです。まずは事業者が保有する専用車でサービス提供が進み、次の段階で個人車両のネットワーク参加が検討されるでしょう。
Q12. ロボタクシーは環境に優しいですか?
A. 多くのロボタクシー車両は電気自動車(EV)であり、走行中にCO2や大気汚染物質を排出しません。最適なルート走行で無駄も減らします。ただ電力の発電方法によっては間接的にCO2が出ます。カープール(相乗り)が普及すれば1台で複数人を運べるので交通総量削減になり、環境メリットが高まります。総合するとEVタクシー化+効率運行で環境負荷軽減が期待できます。
Q13. 乗車前に運転手と会話できないので不安です…
A. 確かに運転手とのコミュニケーションはありませんが、その代わりに車両が音声案内をしてくれます。乗車時に行先を再確認したり、降車場所に近づくと知らせてくれたりします。また疑問があれば乗車中にインターホンで遠隔スタッフと話せます。必要最低限の案内・対話手段は用意されていますので、大きな不便はないよう設計されています。
Q14. ロボタクシーはどの会社が作っているのですか?
A. 代表的なのは米国のWaymo(Google系)、Cruise(GM系)、Zoox(Amazon系)、中国のBaidu Apollo、Pony.ai、WeRide、AutoXなどです。日本ではソフトバンク系のBOLDLYやトヨタ系Wovenが開発に関与しています。車両は専用開発のもの(Zooxなど)と市販車改造(WaymoはJaguar車ベースなど)があります。技術面ではLiDARメーカーのVelodyne、ソフト開発のMobileye(Intel系)なども重要プレイヤーです。
Q15. 利用するとき何か注意することはありますか?
A. 基本的にはシートベルト着用など通常のタクシーと同じです。強いて言えば、緊急ボタンをいたずらで押さないこと、車内で大声を出したり立ち上がったりしないことなどが安全上大切です。また車内カメラは乗客の安全を守るため作動しているので、プライバシーを守りたい行為(着替え等)は避けましょう。降車時はドアを開ける前に後方確認する点も人間タクシーと同じです。
用語集(A–Z)
- ADS(自動運転システム) – Automated Driving Systemの略。車両を制御する統合ソフトウェアとハードウェア一式を指す。センサーから得た情報で操舵・加減速を行う頭脳部分。
- AI Act(AI規則) – 欧州連合で2024年成立の人工知能規則法。自動運転AIを高リスクAIとして管理し、安全性・透明性などの要件を課す。2025年以降施行予定。
- AVL(自動運転車法) – Automated Vehicles Act 2024の略称。本稿では英国が制定した自動運転車に関する包括的法律を指す。2026年までの自動運転車実装を見据え、走行許可や責任主体などを定めた。
- Cruise(クルーズ) – GM子会社だった米国の自動運転車企業。サンフランシスコなどで無人タクシーサービスを提供していたが、2024年にGMが開発投資停止を決定。
- DMV(車両局) – Department of Motor Vehiclesの略。米国の州政府機関で、車両登録や運転免許を管轄。カリフォルニアDMVは自動運転車テスト許可も管理し、Cruiseの許可停止を行った。
- FSD(フルセルフドライビング) – Tesla社が開発する自動運転機能の名称。実際には完全自動運転ではなく、高度運転支援システム(レベル2相当)だが、将来的にロボタクシー化も視野に入れている。
- HDマップ(高精度地図) – High Definition Map。通常の地図より詳細な3D地図で、自動運転車が位置特定や経路判断に使う。道路形状・標識・車線幅など精密情報を含む。頻繁な更新が必要。
- L4(レベル4) – 自動運転のレベル4。特定条件下でシステムが全ての運転操作を行う状態。ドライバーは不要だが、対応範囲(ODD)が限定される。本稿でのロボタクシーはほとんどこのレベル4を指す。
- LiDAR(ライダー) – Light Detection and Ranging。レーザー光で周囲の距離を測るセンサー。自動運転車では不可欠なセンサで、360度回転型などを搭載し周囲環境を3Dマップ化する。
- ODD(運行設計領域) – Operational Design Domain。自動運転システムが機能する条件や領域の定義。例:「東京23区内の晴天昼間・最高速度60km/hまで」といった制限を指す。レベル4ではODD外では運行不可。
- Pony.ai(ポニーエーアイ) – 中国発の自動運転スタートアップ企業。トヨタなど出資。北京・広州などでロボタクシーテストを実施。日本進出も視野。
- RoAD to the L4 – 日本の官民プロジェクト名(自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト)。福井県永平寺町などでレベル4実装を支援。
- Robotaxi(ロボタクシー) – 自動運転タクシーの俗称。ロボット(自動)+タクシーの合成語。無人のタクシーサービス全般を指す。日本語では「自動運転タクシー」とも表記。
- Safety Driver(セーフティドライバー) – 安全ドライバー。テスト時に念のため運転席に乗り、緊急時に操作介入する人間ドライバー。商用運行では乗らない完全無人が目標。
- 特定自動運行 – 日本の道路交通法で新設されたレベル4無人運行の制度用語。限定区域で無人運転サービスを行うこと。公安委員会の許可制。これに基づき永平寺町で国内初のサービスが始まった。
- V2X – Vehicle-to-Everythingの略。車車間(V2V)、車インフラ間(V2I)など車両が通信で周囲と情報交換する技術総称。ロボタクシーでは路側センサー連携や信号情報受信などで活用される。
- Waymo(ウェイモ) – Alphabet(Google親会社)傘下の自動運転会社。ロボタクシー商用化で世界をリードし、フェニックスやサンフランシスコで一般サービス展開。2016年Google自動運転部門から独立。
参考文献・出典
- Waymo公式ブログ (2024年9月5日) 「New Data Hub Shows How Waymo Improves Road Safety」waymo.comwaymo.com ↩ ↩2 ↩3
- 国土交通省「公道での自動運転の申請に関する手引き (レベル4解禁関連)」mlit.go.jpmlit.go.jp ↩
- 警察庁ウェブサイト「自動運転 (特定自動運行) に関するQ&A」※2023年法改正内容の解説 ↩
- 国土交通省 報道発表 (2023年5月12日) 「国内初!運転者を配置しないレベル4での自動運転移動サービスの開始について」mlit.go.jpmlit.go.jp ↩ ↩2
- Reuters (2024年12月11日), "GM to exit loss-making Cruise robotaxi business"reuters.comreuters.com ↩
- Waymo公式ブログ (2017年10月) 「オンデマンド自動運転車による初の完全無人走行試乗 (in Phoenix)」 ↩
- Reuters (2023年8月11日), "Cruise and Waymo get approval to charge for 24/7 driverless rides in San Francisco" (CPUC許可関連記事) ↩
- California Public Utilities Commission Press Release (2023年8月10日) 「CPUC Permits Waymo and Cruise Autonomous Vehicle Passenger Service Expansion in San Francisco」 ↩ ↩2 ↩3
- Reuters (2024年12月10日), "GM gives up on loss-making Cruise robotaxi business"reuters.com ↩
- Reuters (2024年8月8日), "China's drivers fret as robotaxis pick up pace"reuters.comreuters.com ↩
- Reuters (2022年3月) 「トヨタ・Pony.ai、SPAC上場計画に向け協議中」 (Pony.ai関連報道) ↩
- Bloomberg (2021年12月) "Pony.ai’s Driverless Testing Permit Suspended by California DMV" (Pony.ai米国での許可停止ニュース) ↩
- AutoX公式発表 (2021年1月) "AutoX launches fully driverless RoboTaxi in Shenzhen and Shanghai" ↩
- China Daily (2023年) 「AutoX faces tough competition in China's robotaxi race」 ↩
- 日本経済新聞 (2018年8月13日) 「ZMPと中国AutoX、新宿で自動運転タクシー実証」 ↩
- The National (UAE) (2022年12月) 「Abu Dhabi’s first driverless taxis begin trials」 (TXAIプロジェクト) ↩ ↩2 ↩3
- WeRide公式ブログ (2022年) 「広州での無人ミニバスサービス開始」 ↩
- 新華社 (2022年2月) 「広州で自動運転ミニバス深夜運行開始」 ↩
- Motional Press Kit (2023年) 「Las Vegas fully driverless operations」 ↩ ↩2
- TechCrunch (2023年2月) 「Motional begins fully driverless rides in Los Angeles with safety operator removed」 ↩ ↩2
- Reuters (2023年10月) 「Uber to partner with Cruise and Waymo for robotaxi rides」reuters.com ↩
- 自動運転ラボ (2023年10月) 「日本の自動運転、なんちゃってレベル4で出遅れ鮮明」 (Tier IVやSBドライブの状況) ↩
- トヨタ自動車 ニュースリリース (2019年7月) 「DiDiと共同で中国北京で自動運転試験」 ↩
- Financial Times (2023年) 「欧州都市、ロボタクシー導入に慎重」 ↩
- Bloomberg (2021年4月) 「Dubai to Deploy Cruise Robotaxis by 2023」 ↩ ↩2 ↩3
- SOMPOインスティテュート・プラス (2025年5月22日) 新添麻衣 「日本の自動運転レベル4はどこまで進んだか(2)」sompo-ri.co.jpsompo-ri.co.jp ↩
- 同上sompo-ri.co.jpsompo-ri.co.jp ↩
- 北陸信越運輸局 報道発表 (2023年) 「小松市で運行する自動運転車(レベル4)の認可を行いました」 ↩
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- 茨城県 報道資料 (2024年9月) 「ひたちBRTで国内初のレベル4無人バス運行」 ↩
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- 深圳経済特区智能網聯汽車管理条例 (2022年) ↩ ↩2
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- 中国工業情報化部 (2022年) 「智能網聯汽車技術路線図2.0」 ↩
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- Waymo Blog (2021年) 「Zeekrとの次世代ロボタクシー車両開発発表」 ↩
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- Navyaニュース (2018年) 「Navyaシャトル、フランス観光地で自動ガイド運行」 ↩
- ドイツ連邦交通省 (2021年) 「SMO project: Autonomous rural bus trial」 ↩
- Lyon Métropoleニュース (2019年) 「Vieux Lyon自動運転シャトル試行」 ↩
- Orlando Sentinel (2023年) 「Universal Studios resort tests autonomous shuttle」 ↩
- 産経新聞 (2023年8月31日) 「大阪万博、会場内移動に自動運転車100台計画」 ↩
- Hyundai MOBIS (2022年) 「ロボットアーム付き自動運転車コンセプト発表」 ↩
- MaaS Alliance (2020年) ホワイトペーパー「MaaS and autonomous vehicles integration」 ↩
- Whim (MaaS Global) 事例 (2018年) 「ヘルシンキMaaSにタクシー組込み」 ↩
- Reuters (2019年) 「シリコンバレー企業シャトルの自動運転化動向」 ↩
- 国交省 (2022年) 「令和3年度MaaS実証一覧、自動運転サービス連携例」 ↩
- WIRED (2021年) 「Why self-driving cars keep failing in SF’s chaos」 ↩
- SF交通局 (SFMTA) (2023年) 「Mass robotaxi stoppage emergency protocol draft」 ↩
- New York Times (2023年) 「Activists immobilize Waymo cars with traffic cones in SF protest」 ↩
- 永平寺町広報 (2022年) 「住民参加型ワークショップでの意見と対応」 ↩
- Nature (2018年) 「The trolley problem in automated vehicles ethics research」 ↩
- 日本政府 自動運転に関する懇談会 (2018年) 報告書 – 無人運行時の刑事責任整理 ↩
- WIRED (2015年7月) 「Jeep Cherokeeハッキング事件の詳細」 ↩ ↩2
- SF Standard (2023年) 「Karl the Fog halts multiple Cruise cars」 ↩
- Waymo車 マニュアル (2022年) 「悪天候時の自動停止ポリシー」 ↩
- The Atlantic (2023年) 「Why do human drivers bully driverless cars?」 ↩
- TechNode (2021年) 「Baidu’s self-supervised HD map generation tech」 ↩
- MIT CSAIL (2020年) 「航空写真から自動高精度地図生成する技術開発」 ↩
- IEEE IV Conference (2021年) 論文「Automated driving under fog conditions – strategies」 ↩
- Mercedes-Benz説明資料 (2022年) 「ALKSシステムにおけるDTAの要件」 ↩
- Cruise Blog (2022年) 「Construction zone handling improvements」 ↩
- SF StreetsBlog (2023年) 「Waymo stuck at construction site video analysis」 ↩
- USDOT FHWA (2022年) 「Work Zone Data Exchange and AV integration report」 ↩
- Waymo Safety Report (2020年) 「Emergency vehicle detection and yielding」 ↩
- NBC BayArea (2022年) 「SFPD stops Cruise car, cannot turn off headlights – officer frustrated」 ↩
- NACTO (全米都市交通局連合) 提言 (2023年) 「Revocation of Cruise’s permit demonstrates need for better AV-Police protocols」nacto.org ↩
- Auto-ISAC (Automotive Information Sharing & Analysis Center) – サイバー脅威情報共有組織 ↩
- 東京さくらトラム 自動運転タクシー実証 (2020年) – 安全ドライバー付きレベル3相当 ↩
- 大阪府モビリティ戦略 (2023年) – 2025年万博での自動運転タクシー構想記述 ↩
- 政府未来投資会議 (2020年) – 2030年までの自動運転タクシー普及見通し資料 ↩
- Waymo公式サイト (2023年) – Waymo One対応エリア一覧(フェニックス・SFなど) ↩
- 百度Apollo Goサービスページ (2024年) – 提供エリア一覧(北京経開区・重慶等) ↩
- Navya導入実績リスト (2023年) – 欧州各国での自動運転シャトル実証地域 ↩
- Bolt社プレス (2023年8月) – Bolt begins limited autonomous ride-hail service in Tallinn ↩
自動運転タクシー完全ガイド:WaymoやZoox、国内外の最新動向を徹底解説
自動運転タクシー(ロボタクシー)の仕組みから最新動向、安全性の実績、各国の規制と主要企業の展開状況まで、2025年9月21日現在の一次情報に基づき徹底解説します。最新のサービス提供エリアや今後の課題にも触れ、導入を検討する自治体・事業者が押さえるべきポイントを網羅しました。 要点(TL;DR) 自動運転タクシーとは何か? 自動運転タクシー(ロボタクシー)は、運転者が乗車せずに走行する完全自動運転(SAEレベル4以上)のタクシーサービスです。2023年に日本でも限定条件下で初の商用レベル4運行が実現しました ...
アンモニア燃料とは何か?次世代エネルギーの本命候補を解説する
燃料アンモニア / Fuel Ammoniaとは、水素(H₂)エネルギーを貯蔵・輸送するキャリアであり、またそれ自体が燃焼してもCO₂を排出しない次世代燃料です。アンモニア(NH₃)は元来、肥料原料や化学品の素材として世界で年間約2億トン生産されていますが、その8〜9割が肥料用途で消費され、燃料利用は従来ほとんど例がありません。しかし近年、脱炭素社会に向けて発電所や船舶の燃料としてアンモニアを活用する動きが本格化しました。燃焼時にCO₂を出さないメリットから「カーボンフリー燃料」として注目されていますが、 ...
レーザー核融合(ICF)とは?仕組み・利点と課題、2025年最新動向を専門解説
レーザー核融合とは? レーザー核融合(慣性閉じ込め核融合, ICF)とは、強力なレーザー光を燃料ペレットに集中して当て、超高圧・高温状態を一瞬作り出すことで核融合反応を起こす方式です。2022年12月に米国ローレンスリバモア国立研究所のNIF(National Ignition Facility)で実施された実験では、投入したレーザーエネルギー2.05MJに対し核融合反応で3.15MJのエネルギーを発生させ、実験室規模で初めてターゲットゲイン(核融合出力/入力エネルギー)>1、いわゆる「科学的ブレークイー ...
選挙におけるネット投票の制度・技術・課題を徹底解説
選挙のネット投票(インターネット投票)は、自宅や海外からオンラインで投票できる仕組みとして注目されています。利便性向上や投票率アップへの期待がある一方で、セキュリティ確保や法律上の課題も議論されています。 近年、エストニアなど一部の国ではネット投票が本格運用され、スイスでも一度中断した電子投票の試行が2023年に再開されました。日本でもコロナ禍を契機にネット投票実現を望む声が高まり、政府や有識者による検討が進められています。本記事では、世界の導入事例、技術アーキテクチャ、セキュリティと法規制、ユーザビリテ ...
【2025年最新版】AGI政策完全ガイド ─ EU AI Act/G7行動規範/日本戦略を徹底解説
2023年から2025年にかけて、汎用人工知能(AGI)政策が世界各地で急速に具体化しています。各国・国際機関はリスクに応じた法規制、国際的な行動規範、倫理・安全の標準、そしてフロンティアAI研究投資という多層的なアプローチでAGIガバナンスを進めつつあります。本記事では、EU AI ActやG7広島AIプロセスなど最新の動向を踏まえ、世界と日本のAGI政策を総合解説します。専門的な内容をできるだけ平易に、エビデンスに基づき解説します。 AGI規制の国際枠組み EUの包括的AI規則とリスク階層型規制 (E ...