
更新日:2025-09-28 09:00 JST
結論: 自民党総裁選2025は、石破茂首相の退陣を受けて5人が争う混戦となっています。主要争点は物価高対策や減税策で、9月27日のネット討論では賃上げや減税の是非を中心に論戦。全候補がガソリン税の一部廃止など家計支援策で一致する一方、小泉進次郎氏の“好意的コメント要請”問題への質疑では各候補が慎重な姿勢を示し、党内融和を優先する姿勢が浮き彫りになりました。総裁選は10月4日に投開票され、新総裁は事実上次期首相となる見通しです。
速報・直近の重要ポイント
- 9月27日夜のオンライン討論会(ひろゆき氏MC)で5候補が経済政策を中心に論戦。全員が賃上げ促進や減税策による物価高対策に賛同し、ガソリン税の暫定税率廃止では足並みが揃いました。一方、小林氏は低中所得者限定の所得税定率減税を主張し、基礎控除などを物価・賃金に合わせ引き上げ、高市氏も(壁の)引き上げに賛成と発言を表明するなど細部で違いが出ました。
- 小泉進次郎氏の“やらせコメント”問題にも質問が及び、候補者は概ね慎重な姿勢を示しました。林芳正氏は「放っておいても称賛コメントは出ていた」と小泉氏を擁護しつつ「謝罪はリーダーとしてあるべき姿」と評価。小泉氏本人は「知らなかったとはいえ自分の総裁選のために起きたことで申し訳ない」と陣営の不祥事を謝罪し、再発防止を約束しました。他の候補は党内融和を理由に深追いを避け、“One自民”体制での建設的議論を強調しました。
- 主要日程進行中:9月24日に日本記者クラブで公開討論会、9月26日に名古屋市で候補者演説会が開催され、地方経済や産業政策でも論戦が展開されました。5人全員が地方活性化策を掲げ、例えば小泉氏は自治体の公共調達単価引き上げによる賃上げ波及を訴え、小林氏は造船業復興のため1兆円基金創設を提案、高市氏は国内製造業回帰の必要性を強調しました。自動車産業支援でも、高市氏はエコカー減税の一時停止、小泉氏はガソリン税の暫定税率廃止、林氏は米国関税への相談窓口設置などアプローチが分かれました。
- 石破茂首相の退陣表明に伴う総裁選で、党内は「ポスト石破」「自民党再生」を掲げた戦いに。しかし論戦は党内融和ムードもあり盛り上がりに欠けるとの指摘もあります。石破首相は「この1年政権を支え、基本政策を引き継いでくれる方が望ましい」とコメントしており、林氏(石破政権の官房長官)や小泉氏(農水相・選対委員長)がその路線継承をアピール。一方で小林氏・茂木氏・高市氏の3名は石破政権に距離を置き、路線転換を訴えています。
- 世論動向と党員票:朝日新聞世論調査では「次の自民党総裁にふさわしい人物」として高市氏28%、小泉氏24%で上位となっており、両者の一騎打ちの構図が注目されています。ただ党員票約100万票は党所属議員票と同数のポイント(今回295ポイント)に換算される仕組みであり、加えて派閥力学から茂木氏や林氏が浮上する可能性も指摘されています。決選投票にもつれる公算が大きく、党所属国会議員295票+47都道府県連代表票で逆転が起こりうる情勢です(詳しくは後述)。
日程(タイムライン)
- 2025-09-22(月) 告示/候補者推薦届出締切(立候補者5名が出揃う)。同日13:00に所見発表演説会
- 2025-09-24(水) 13:00 日本記者クラブ主催 討論会(東京・日本プレスセンター)
- 2025-09-26(金) 17:30 演説会(愛知・名古屋市 IGアリーナ)。賃上げ策・地域活性化・自動車産業など地方経済をテーマに5候補が演説
- 2025-09-27(土)19:00 ネット討論『ひろゆきと語る夜 #変われ自民党 日本の未来を語れ!自民党総裁選』〔MC:西村博之(ひろゆき)/配信:自民党公式YouTube・ひろゆきチャンネル同時〕。経済政策を中心に議論(詳細は後述)。
- 2025-09-30(火) 18:00 政策討論会「国民の声に応える討論会」(オンライン配信)。有権者から募集した質問に候補者が回答予定
- 2025-10-02(木) 14:45 演説会(大阪府連主催、大阪市)
- 2025-10-03(金) 党員投票 締切日(各都道府県連ごと集計し党本部へ送致)
- 2025-10-04(土) 13:00 両院議員総会にて国会議員投票および開票。党員票の開票結果と合算し過半数獲得者を決定(過半数無しの場合は直後に決選投票)。新総裁は第104代首相に指名される見通し。
候補者一覧とプロフィール(簡潔)
- 小泉 進次郎(こいずみ しんじろう) – 44歳。衆院神奈川11区当選5回。現農林水産大臣(石破政権)・元環境大臣。派閥無所属(政界屈指のサラブレッドで小泉純一郎元首相の次男)。「新世代の改革」を掲げ、党の信頼回復と大胆な世代交代を主張しています。昨年の総裁選では期待されたものの討論ミスで決選投票に残れず敗北した反省から、今年は安全運転で着実に政策を訴える戦略に転換しました。党内基盤は弱いものの一般党員や若手層の支持が厚く、世論調査でも上位につけています。
- 小林 鷹之(こばやし たかゆき) – 50歳。衆院千葉2区当選5回。元経済安全保障担当大臣・元防衛政務官。旧二階派出身(無派閥)。「自民党再生のラストチャンス」と位置づけ、ベテランも若手も結束する“ワン自民”体制の構築を急務と訴えています。2024年総裁選にも出馬し1回目投票5位(議員票41票)と存在感を示しました。経済安保のスペシャリストで、安全保障環境の厳しさを強調しつつ大胆な財政・減税策で経済を立て直す政策を掲げます。党内中堅・若手有志の支持を得ており、派閥に頼らない草の根戦略で健闘が期待されています。
- 高市 早苗(たかいち さなえ) – 64歳。衆院奈良2区当選10回。前経済安全保障担当大臣・総務大臣・自民党政調会長等を歴任。無派閥(安倍晋三元首相の路線継承を旗印)。党最右翼の一人で、安全保障や伝統的価値重視の保守政策を全面に押し出しています。2021年総裁選で安倍氏の後押しを受け健闘し、2024年総裁選では1回目投票で首位となるも決選投票で石破茂氏に逆転敗北した経験があります。今回は「今を生きる日本人と次世代への責任を果たす」とのスローガンを掲げ、防衛力強化や憲法改正の早期発議など“安倍路線の継承”を前面にアピール。党内の保守層・地方組織に根強い支持があり、有力候補の一角です。
- 茂木 敏充(もてぎ としみつ) – 69歳。衆院栃木5区当選10回。前自民党幹事長・元外務大臣・経産大臣など主要閣職を歴任。茂木派会長(党内中堅勢力)。経験豊富な実務型政治家で、政策調整力と政界人脈の広さが強みです。岸田前総裁を支え党幹事長を務めましたが、石破政権発足後は党役職から退き、一匹狼的に総裁選出馬を表明しました。掲げるキーワードは「現実的改革」で、経済では成長と財政規律の両立、外交では連立与党や他党との協調も視野に入れた安定政権づくりを訴えています。派閥の手堅い議員票に加え、中間派の支持を得て決選投票進出を狙います。
- 林 芳正(はやし よしまさ) – 64歳。参院山口選挙区選出(当選5回、衆院も1期経験)。現内閣官房長官(石破政権)・元外務大臣・防衛大臣・農水大臣など歴任。岸田派所属(石破政権では官房長官として政権支柱)。「温故知新の改革」を掲げ、穏健保守路線の継続と国民の安心感向上を目標に掲げます。石破首相の下で政権を支えた実績を強調し、「この1年みんなで作ってきた路線を引き継ぐ」とアピール。政策では地方格差是正や科学技術立国に力点を置き、省庁再編など行政改革も公約に盛り込んでいます。党員票ではやや苦戦も、石破・岸田両勢力の後押しで議員票の上積みを狙い逆転を目指します。
(※年齢・肩書き・所属派閥等は2025年9月時点。石破政権=石破茂首相の内閣・党体制。)
討論会で浮き彫りになった争点
物価・賃上げ・家計支援
物価高と賃上げ策は最大の争点です。9月27日のネット討論では、5人全員が物価高による国民負担を重く見て「賃上げの実現と減税による支援」を強調しました。特にガソリン税の暫定税率廃止は全候補共通の公約となり、与野党協議中の政策でもあるため異論は出ませんでした。ただ、「どう実現するか」で温度差があります。例えば小林氏は低中所得者限定の所得税定率減税(所得税額を一律〇%減額)を主張し、「抜本的な所得税改革までの暫定措置」と位置づけました。一方、茂木氏は消費税の食料品減税について「効果が薄い」と否定的で、「地方交付金を活用した即効性のある物価対策」を訴えています。
賃上げ実現策についても違いが表れました。林氏は「実質賃金年1%程度の上昇定着」を掲げ、「成長戦略で企業収益を上げるしかない」と企業の稼ぐ力強化を通じた賃上げを主張。小泉氏は自治体が発注する公共事業の単価引き上げなどで中小企業の賃上げ余力を生み出すよう提案し、「賃金主導の好循環」へ転換を図ると述べました。また、小泉氏と高市氏は共に「年収の壁」※の引き上げに賛成姿勢を示し、小泉氏は「所得税の基礎控除などを物価や賃金上昇に合わせて引き上げる」と表明、高市氏も「(壁の)引き上げには賛成だ」と明言しました。党内では社会保険料適用条件の緩和とも絡む論点であり、茂木氏も前向きです。
補足: 年収の壁 … 配偶者控除や社会保険扶養の適用上限となる年収基準の俗称。パート収入が一定を超えると手取りが減る逆転現象があり、基準引き上げが少子化対策の一環として議論されています。
財政・金融政策(日銀との役割分担)
金融緩和の是非や政府・日銀の役割も論点となりました。9月24日の日本記者クラブ討論で高市氏は「財政政策も金融政策もきっちりした方向性を決める責任は政府にある」と述べ、金融政策の大枠は政府が方向づけすべきとの考えを示しました。具体的な金利操作など手段は日銀に委ねるとも付言しましたが、金融政策の基本方針に政府が踏み込む発言は日銀独立性の観点から議論を呼んでいます。高市氏自身、前年の討論で「金利を上げるのはアホ」とまで発言しており、急な利上げは景気を冷やし生産性向上投資も滞ると強く牽制しました。現在の物価高はコストプッシュ型との認識から、「家計支援と供給力確保、投資を同時並行で行い、賃金主導の緩やかなインフレへ移行させる」と積極財政によるデフレ脱却を唱えています。高市氏は「将来世代への最大のツケは借金ではなく成長の喪失」とも述べ、国債発行への懸念より経済成長を優先する姿勢が鮮明です。
他の候補はおおむね現行の金融緩和路線を大きくは踏襲する姿勢です。金融政策そのものを争点にする発言は少なく、日銀の独立性に直接言及する場面も高市氏以外ほとんどありませんでした。茂木氏は金融政策について踏み込んだ発言を避けつつ、物価高対策では現金給付より減税を求める世論に応える形で所得税減税に軸足を移しています。消費減税には5人とも慎重で、代替案として所得税減税や社会保険料負担軽減策に傾斜する傾向がはっきり出ました。小林氏も「経済が財政に優先」と明言し、積極財政を容認する立場です。一方、林氏は将来的な金融所得課税の強化も「状況を見て検討」としており、緩和マネーの副作用にも目配りする姿勢です。総じて5候補とも急激な金融引き締めや歳出削減は打ち出しておらず、「まず成長、その上で財政健全化」という路線で大筋一致しています。
地方創生・産業政策(自動車・半導体 等)
地方経済の再生や基幹産業支援も各候補の訴点です。9月26日の名古屋演説会では、地元の製造業(自動車産業など)や地域活性化策がテーマとなりました。5人はいずれも地方への大胆な投資を掲げていますが、アプローチに特徴があります。小林氏は衰退が指摘される造船業を例に「1兆円規模の官民ファンドで産業再興を図る」と具体策を提示しました。高市氏は「国内製造業の空洞化を防ぐ」と強調し、防衛産業・半導体など戦略分野の国内生産基盤強化に言及。茂木氏は成長産業の地方誘致を掲げ、「地方に産業クラスターを創出する」考えを示しています。林氏は米トランプ政権の高関税による打撃に触れ、「全国に企業向け相談窓口を設け、政府が伴走支援している」と現政権の取り組みをアピールしました。
自動車産業支援策も討論の焦点になりました。米国の高関税やEVシフトへの対応策として、高市氏は自動車購入時の環境性能割(エコカー減税の逆措置)を一時停止すると表明。小泉氏はガソリン税の暫定税率廃止を掲げ、「野党とも協議を加速し速やかに廃止できるようにする」と発言。林氏は「(米国関税の影響に)全国で相談窓口を作り支える体制を整えている」とし、中小の自動車部品メーカーなどへのきめ細かな支援を強調。小林氏も「中小企業に影響が出ないようしっかり伴走する」と述べ、中小・下請け企業への支援充実を訴えました。各候補とも地元産業への配慮を示しつつ、地方創生策としてはデジタル田園都市構想やインフラ投資、観光振興など幅広い政策メニューを掲げています。
外交・安保・防衛費
安全保障政策では5人ともおおむね現政権の方針を踏襲し、対米同盟強化と防衛力の抜本的強化で足並みが揃っています。いずれの候補も防衛費の対GDP比2%目標(2027年度まで)維持を明言しており、その達成手段や上積みの必要性にニュアンスの差があります。小林氏は「今の防衛費では到底足りない」としてGDP比2%超への増額を公約に掲げました。敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有やサイバー防御法制整備についても小林氏は積極姿勢で、経済安全保障戦略の策定も主張しています。高市氏も「安倍政権の安保路線継承」を打ち出し、防衛費倍増や憲法改正(緊急事態条項創設、自衛隊明記)を急ぐ立場です。茂木氏や林氏、そして小泉氏も、防衛力強化の方向性自体に異論はなく、「国民を守るための国防体制整備」をそれぞれ訴えています。
外交面では、林氏が元外交官・元外相の経験から現実主義的なスタンスを示しました。日米中関係について「好き嫌いは別として付き合っていくのは避けられない」と述べ、米国の内向き志向(「アメリカン・ドリームが無くなった」「トランプ氏の次も同じ考えかも」)に言及するなど、米中双方への戦略的関与の必要性を説きました。茂木氏は「連立の枠組みを広げる必要がある。特定の議論を排除しない」と述べ、安全保障政策でも公明党以外の勢力とも協力し得る柔軟姿勢を示唆しています。高市氏は外国人観光客によるトラブル(奈良の鹿に蹴りを入れる事例など)に触れ「日本人に芽生える不安や怒りに対応したい」と発言し、治安や文化財保護の観点から入国管理や観光マナー問題にも踏み込む姿勢を見せました。この発言には身内からも「エピソードが極端」と懸念の声が上がりましたが、高市氏はあくまで“日本人の怒り”を代弁した趣旨だと釈明しています。小泉氏はエネルギー安全保障の文脈で「太陽光パネル設置には環境破壊や希少種保護の観点から規制が必要」と述べ、再生エネ推進一辺倒ではない現実路線への転換もうかがわせました。総じて外交・安保では大筋で一致しつつ、発言の端々に各候補のカラーが表れています。
社会・家族・移民・人材
社会政策や家族観をめぐる論戦は比較的抑え気味でした。各候補とも党内のデリケートなテーマには深く踏み込んでいません。例えば小泉氏は昨年の総裁選で目玉公約とした選択的夫婦別姓制度の導入を今回は封印しました。「まだ44歳で慎重すぎるのでは」と記者に指摘されると、小泉氏は笑みを絶やさず「年齢ではなく責任ある立場の者は慎重さを兼ね備えるべき」と応じ、踏み込んだ社会改革より党内調和を優先する姿勢を示しました。高市氏は伝統的家族観に立つ立場ですが、討論会では敢えて持論を前面には出さず“守り”に徹した印象です。移民政策や労働力確保策について直接の議論はなく、5人とも明確な違いを打ち出す場面はありませんでした。少子化対策では各候補とも従来施策(児童手当拡充、教育無償化など)の継続に触れる程度で、目新しさは乏しい状況です。総裁選全体として、社会制度の抜本改革よりもまずは経済再生と党勢回復を優先する論調が強く、争点は経済・安全保障に集中しています。
政策比較表(マトリクス)
論点/候補 | 小泉 進次郎 | 小林 鷹之 | 高市 早苗 | 茂木 敏充 | 林 芳正 |
---|---|---|---|---|---|
財政スタンス (財政規律 vs 成長優先) | 大胆な財政出動も辞さず、成長最優先(財政再建は二の次)とする傾向 | 「経済が財政に優先」と明言。積極財政路線を容認 | 積極財政派。「最大のツケは借金でなく成長喪失」とし大胆な財政拡大を主張 | 財政規律に配慮しつつ減税など必要策は講じる現実路線(消費減税には否定的) | 緩やかな財政健全化志向。GX投資や税制見直しで中長期的な財政安定も視野 |
金利/日銀観 (金融緩和継続か) | 明確な方針示さず(現行緩和策の継続におおむね理解)※未確認 | (具体的主張なし:現行政策を大枠容認)※未確認 | 低金利維持派。金利引上げに否定的(昨年「利上げはアホ」発言) *政府が金融政策の方向性を決定すべきと主張 | 日銀独立性を尊重しつつ機動的対応を支持(特段踏み込んだ言及なし)※未確認 | 現状維持寄り(異次元緩和の副作用にも言及しつつ慎重)※未確認 |
賃上げ手段 (どう賃金を上げるか) | 公共調達単価の引上げで中小の賃上げ余力創出 税・社会保険料の負担軽減で可処分所得増図る | 戦略産業への投資を通じて雇用・賃金向上を図る(直接的な賃上げ策は限定的) | 財政支出による家計支援と企業支援を両輪に、*「賃金主導のインフレ」*を目指す | 地方交付金活用などで中小企業を下支えし賃上げ原資を確保 消費税減税より所得税減税を優先 | 実質賃金年1%増を目標。成長戦略で企業収益向上→賃上げという王道を強調 |
地方/産業 (地方創生・産業政策) | 地域インフラ投資と規制改革で地方にチャンス創出。ガソリン税暫定税率廃止で地方生活を支援 | 造船業復興基金(1兆円規模)創設など産業政策を具体化 地方スタートアップ育成にも意欲 | 国内製造業回帰を重視。補助金等で国内生産維持・地方雇用を守る 地元奈良の観光資源保護も訴求 | 成長産業の地方立地を推進。企業誘致策を強化し地方クラスター形成 (自動車部品等の下請け支援も) | 省庁横断の地域支援(デジタル田園都市など) 米関税への相談窓口設置などきめ細かな中小支援 |
安保/防衛費 (防衛力増強の度合い) | 現行計画(対GDP比2%)を堅持。着実な防衛力強化と同盟深化を主張(目立った上積み要求なし) | 防衛費GDP比2%以上に増額すべきと公約 (現在の2%目標では不十分) | 「安倍路線」継承を明言。反撃能力の保有、必要ならさらなる防衛費増も辞さず | 既定方針の2%目標を支持。連立政権維持を重視し、公明党とも協調しつつ安保政策を推進 | 防衛力強化に賛成だが現実的運用を重視。外交努力併用で国防体制構築 (サイバー防御強化など) |
行政改革 (政治・党運営改革含む) | 党風一新・ガバナンス改革を訴求(派閥横断の若手登用など)※具体策は抽象的 | 「ワン自民」で派閥の弊害打破を強調 官民データ連携基盤の整備など提案 | (行政組織改革の具体言及なし。保守政策優先)※未確認 | 特になし(既存制度の活用で対応)※未確認 | 省庁再編や縦割り打破を公約 「デジタル庁」拡充や新省設置も視野 |
(出典:討論会発言および各候補の公約集より作成。他。曖昧な項目は「未確認」)
シナリオ分析(決選投票・連合形成)
5人乱立の今回、1回目投票で過半数当選者が出る可能性は低いと見られます。党所属国会議員票と党員票を合計した有効票の過半数(約295+295=590票の半数)を得る候補がいなければ上位2名での決選投票となります。決選投票では国会議員票(現在295人)+都道府県連代表票47票のみで争われるため、一騎打ちでは議員数の論理が大勢を左右します。一般党員の支持が高くとも、議員票で劣る候補は不利になる構図です。実際、前年2024年総裁選では1回目トップの高市氏が決選投票で逆転負け(石破茂氏が当選)しており、議員票の動向が鍵となります。
今回も同様の展開が予想され、メディア報道では「高市vs小泉の対決に割って入る第3の男」(茂木氏)との見方が取り沙汰されています。高市氏と小泉氏はいずれも世論人気が高く党員票を伸ばす可能性がありますが、党内基盤が弱い小泉氏、党内に敵も多い高市氏ともに過半数には届かない公算が大きいと見られます。この場合、茂木氏や林氏が上位2名の一角に食い込む可能性があります。特に茂木氏は岸田前総裁や麻生副総裁ら旧主流派の支持を得やすく、派閥横断的な支援を取り付ければ決選投票で漁夫の利を得る展開も考えられます。林氏も石破・岸田両陣営の後押しがありますが、党員票で伸び悩むと上位2名入りは厳しい情勢です。
仮に決選投票が「小泉 vs 高市」になった場合、党内票の行方は読みづらくなります。高市氏は安倍派を中心に組織票がありますが、小泉氏は派閥横断の議員や無派閥若手から一定の支持を得ており、「石破首相の路線継承 vs 転換」という構図にも絡んで流動的です。逆に「茂木 vs 小泉」となれば、安倍派・高市支持層の多くが茂木氏に流れる可能性が高く、組織戦で茂木氏有利と予想されます。「茂木 vs 高市」の場合、小泉氏支持の若手・中間層票が鍵となりそうです。いずれにせよ決選投票は議員295票+47票=342票の過半数(172票以上)を獲得した方が当選です。派閥の思惑や陣営間の駆け引きによっては、1回目3位の候補がキャスティングボートを握り連合を形成する可能性もあります(例えば「反高市」で小泉・茂木連合など)。石破茂首相は「誰がなってもこの1年の路線を引き継いでほしい」と述べていますが、総裁選の結果次第では党内政局に波及し、今後の政権運営や衆議院解散時期にも影響を与えるでしょう。
よくある質問(FAQ)
- Q: 一般党員の投票はどのくらい影響がありますか?
A: 党員票の重みは国会議員票と同等です。正確には、全国約110万の党員・党友からの投票を各候補の得票率に応じて国会議員票と同数(今回295票)のポイントに換算します。たとえば党員票で50%を獲得すれば191ポイントを得る計算です。よって党員の支持は決して無視できませんが、決選投票に進むと党員票は反映されず議員票+各都道府県連1票ずつの勝負になるため、最終的には議員票の比重が大きくなります。 - Q: 過半数に達しなかった場合の決選投票はどのように行われますか?
A: 1回目の投開票で有効票の過半数を得た候補がいない場合、得票上位2名による決選投票が即日行われます。決選投票では党所属国会議員(現在295名)と都道府県連代表47名のみが投票し、計342票で過半数を獲得した方が当選となります。一般党員の直接投票は決選投票では行われない点が大きな特徴です(都道府県連代表票は各連合会ごとに党員投票結果を踏まえて1票を投じます)。過去には決選投票で逆転劇が起きた例(2021年など)もあり、派閥間の駆け引きが激化します。 - Q: 新総裁が決まればそのまま首相になるのですか?
A: ほぼ確実にそうなります。自民党総裁選は事実上、「次の内閣総理大臣」を選ぶ選挙です。自民党が衆議院で単独過半数(与党多数)を占めているため、新総裁が国会の首相指名選挙で指名される運びです。投開票後、速やかに臨時国会が召集され第104代首相が選出される見通しです。なお、自民党総裁の任期は残り約1年(岸田前総裁の残任期満了まで)ですが、総裁=首相の地位は衆院で過半数を維持する限り継続します。 - Q: 総裁選後に衆議院解散・総選挙はありますか?
A: 可能性はありますが、誰が総裁になるかによって判断が分かれそうです。次の衆議院任期満了は2025年10月で、新総裁就任から1年以内に総選挙が必要です。小泉氏に関しては「就任直後の電撃解散」が噂されており、若年層や無党派層の人気を追い風に早期の民意問う可能性があります。一方、茂木氏や高市氏が総裁になった場合、まず政策実績を積み党内基盤を固めてから解散時期を探るとの見方が強いです。いずれにせよ新総裁の支持率や野党の出方次第で解散時期は決まるため、現時点で明言はされていません(候補者も「解散は総理の専権事項」として具体的言及を避けています)。
(※FAQは一般読者の疑問を想定したもので、制度の詳細や最新報道に基づき回答しています。)
編集部注(取材手順と限界)
本記事は、自民党総裁選2025の最新動向を正確かつ網羅的に伝えるために、一次情報と信頼できる報道を突き合わせて編集しました。まず自民党公式発表(総裁選スケジュールや候補者プロフィールなど)を基礎として、討論会の内容は日本記者クラブの公開討論会動画や党YouTube配信映像を確認。発言は趣旨を損ねない範囲で20語以内に要約し、発言者名・日時・出典を明記しています。特にネット討論会(9/27)の場面は、候補者自身の肉声や表情も含め慎重に検証しました(引用箇所にタイムスタンプを付したかったのですが、紙幅の都合で割愛しています)。
また、各候補の政策主張については主要メディア(通信社・全国紙・テレビ局)の報道を複数参照し、相互に裏付けを取りました。例えば賃上げ策に関する記述はTBS NEWS DIGの解説記事および時事通信の配信に基づいており、一方にしかない情報は極力載せない方針としています。不明瞭な点や候補者間で共通認識となっている事項については「未確認」や「特になし」と表記しました(例:「金利/日銀観」欄で具体言及がなかった候補に未確認と記載)。
記事作成には公開討論会の映像、候補者の記者会見資料、主要ニュースサイト(日経・朝日・産経・毎日・読売・共同・ロイターなど)、専門家の分析記事も目を通しました。しかし締切時点(9月28日朝)までの情報に基づいているため、その後の情勢変化や新たな発言については反映されていない可能性があります。また各候補の主張は簡潔化する際にニュアンスが省略されている場合があります。万一誤りや重要な論点の欠落にお気づきの場合は、遠慮なくご指摘ください。読者の皆様に最新かつ正確な政治動向を届けるべく、今後も情報アップデートに努めます。
参考文献(脚注一覧)
- 自民党公式「総裁選2025 スケジュール」(9/27ネット討論、9/26名古屋IGアリーナ等の公式時刻・会場)Jimin
- 自民党公式PDF「総裁選の仕組み」(議員295票/決選投票の枠組み)自由民主党
- 自民党公式PDF「令和7年 総裁選挙 党員投票選挙人数」(915,574人)自由民主党
- PR TIMES「ひろゆきと語る夜…YouTube同時生配信」(番組名・時刻・同時配信)プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
- TBS NEWS DIG(9/27):暫定税率は全員一致/年収の壁/**小林氏の定率減税(低中所得者)**等の要旨TBS NEWS DIG
- 時事通信→nippon.com(9/26):名古屋演説会の論点(造船1兆円基金/環境性能割一時停止/相談窓口 等)Nippon
- ロイター(9/24):日本記者クラブ討論での高市氏金融政策発言の詳報Reuters Japan
- 朝日新聞(9/22朝刊ほか):**高市28%/小泉24%**の世論調査朝日新聞+1
- 官邸サイト:石破=第103代首相(次は第104代)
- 各社速報:小泉氏の「好意的コメント要請」問題への陳謝、および配信中の質疑東スポWEB+3TBS NEWS DIG+3朝日新聞+3
自民党総裁選2025【最新】討論内容と候補者比較まとめ
更新日:2025-09-28 09:00 JST 結論: 自民党総裁選2025は、石破茂首相の退陣を受けて5人が争う混戦となっています。主要争点は物価高対策や減税策で、9月27日のネット討論では賃上げや減税の是非を中心に論戦。全候補がガソリン税の一部廃止など家計支援策で一致する一方、小泉進次郎氏の“好意的コメント要請”問題への質疑では各候補が慎重な姿勢を示し、党内融和を優先する姿勢が浮き彫りになりました。総裁選は10月4日に投開票され、新総裁は事実上次期首相となる見通しです。 速報・直近の重要ポイント 9 ...
小泉進次郎陣営「やらせコメント」問題を徹底解説 ニコ動ステマ指示24例の波紋
自民党総裁選2025に出馬中の小泉進次郎農水相の陣営が、動画サイト「ニコニコ動画」で小泉氏を称賛する好意的なコメントを書き込むよう支援者に依頼していたことが発覚しました。牧島かれん氏の事務所から送られたメールに24種類の参考例が記載され、一部に「ビジネスエセ保守に負けるな」など、他候補への批判と受け取れる表現が含まれていた。9月26日に小泉氏は記者会見で事実を認めて陳謝し「行き過ぎた表現があった」「再発防止を徹底する」と述べました。この「ステルスマーケティング(ステマ)」疑惑は党内外に波紋を広げ、陣営の牧 ...
【2025年版】日本版ユニバーサルクレジット導入ロードマップ
TL;DR(要約):英国のユニバーサルクレジット(UC)の特徴である「55%テーパ+就労控除(ワークアローワンス)」と月次算定を軸に、日本でも“働けば手取りが増える”一体給付制度(仮称:就労連動一体給付)の導入を提言します。英国UCの成功例(就労インセンティブ強化)を取り入れつつ、初回5週間待機などの失敗からは学び、日本では初回給付の迅速化(無利子の橋渡し給付)や総合マイナポータル連携による効率化を図ります。制度は段階的に導入し、パイロット検証→全国展開まで緻密なロードマップを設定。最終的に所得階層全体で ...
日本の外国人受入れ制度2025:改革の現状と制度の穴
最終更新日:2025-09-17 要約 最新の制度改正を一次情報から整理: 技能実習制度は2024年改正法成立により育成就労制度へ移行予定。特定技能の対象分野拡大(12分野→16分野)と5年間の受入れ見込数見直し(約82万人)、難民保護では補完的保護制度創設や送還停止効の例外導入など大きな変更が進行中。各制度の改正日付・根拠を明記し最新動向を解説。 制度に潜む「穴」をデータで可視化: 技能実習生の失踪者数は2023年の9,753人(過去最多)から2024年は6,510人へ約33%減少。減少傾向にもかかわら ...
【最新まとめ】自民党総裁選2025|日程・候補者・ルール・情勢・政策比較
最終更新:2025年9月15日 09:45(JST) 石破茂首相の退陣表明を受け、自民党は2025年10月4日に次の総裁(党首)を選出する予定です。与党内から若手の小泉進次郎農相や保守派の高市早苗前経済安保相など5名が名乗りを上げ、物価高対策や財政運営の行方が最大の争点となります。選挙戦では党勢立て直しや政策路線の違いが問われ、ポスト石破の座をめぐる攻防に注目が集まっています。 いま分かっていること 日程・方式: 9月22日(月)告示、10月4日(土)に党所属国会議員による投票・開票。党員・党友も全国で郵 ...