
神奈川県に暮らす人々の多くは、「自分の街の将来はどうなるのだろう」「人口減少や高齢化の影響で生活は大丈夫だろうか」といった不安を抱きがちです。神奈川県全体ではこれまで人口増加が続いてきましたが、近年は少子高齢化の波が押し寄せ、県内でも地域ごとに人口の増減や課題の差が顕著になっています。本記事では、神奈川県全体および各市区町村の最新データをもとに現状と課題を整理し、人口減少・高齢化、地域経済、インフラ・防災など複数の分野にわたる問題点と解決の方向性をわかりやすく解説します。県内在住の子育て世代や高齢者、自治体職員、地元企業関係者、あるいは神奈川への移住を検討している方まで、神奈川県の「今」と「これから」を俯瞰し、自分たちにできることを考えるヒントを提供します。記事の内容は公的統計や自治体の公式資料に基づいており、中立的な視点でまとめています。
第1章 神奈川県全体の現状
神奈川県の人口は戦後一貫して増加してきましたが、2020年(令和2年)に約923万7千人でピークに達し、2021年から減少に転じています。2025年9月時点の推計人口は約921万8千人で、男性約456.7万人・女性約465.1万人という構成です。人口密度は1平方キロメートル当たり3,800人超と全国でも上位の高さで、東京に次ぐ国内第2位の人口規模を維持しています。しかし、その増加率は鈍化しており、2015年から2025年の10年間で人口は約5万人減少しました。将来について県の推計では、総人口は今後ゆるやかに減少し、2050年には約35%が高齢者となる見通しです。これは全国平均の高齢化率上昇と軌を一にします。
年齢構成に目を向けると、神奈川県は比較的若い世代の比率が高いものの、高齢化は着実に進行しています。2020年時点で県全体の老年人口(65歳以上)は約230万人と総人口の25%を占め、年少人口(15歳未満)は約13%にとどまりました。全国平均の高齢化率よりは低いものの(全国約29%、神奈川約26%)、高齢者の割合はこの20年で倍増しており、生産年齢人口(15~64歳)の減少も続いています。特に75歳以上の後期高齢者人口が増加しており、医療・介護需要の拡大が懸念されます。一方で、子どもの数は減り続け、少子化による将来世代の縮小も避けられない状況です。
神奈川県は地域によって人口動向や都市特性に大きな差があります。大きく分けると、県東部の政令指定都市エリア(横浜市・川崎市・相模原市)、県央地域(厚木市・海老名市・大和市・座間市・綾瀬市・愛川町・清川村など)、湘南地域(藤沢市・茅ヶ崎市・平塚市・鎌倉市・逗子市・葉山町・寒川町・大磯町・二宮町)、県西地域(小田原市・南足柄市・足柄上郡・足柄下郡の町村)、三浦半島地域(横須賀市・三浦市)に分けられます。人口は横浜市(約377万人)と川崎市(約154万人)に集中し、両市だけで県人口の過半数を占めます。これら都市部は都心に近く若年層の流入も続いており、比較的高齢化率が低めです(川崎市20.6%、横浜市25.5%)。一方、県央や湘南の一部、県西山間部、三浦半島南部では人口減少・高齢化が著しく、地域によって様相が大きく異なります。
各地域ブロックの特徴を整理すると、東部の政令市(横浜・川崎)は都市インフラが整い産業や雇用が集中する一方、ベッドタウン的性格も強く、通勤者が多い都市です。例えば横浜市では市内就業者の約26%が東京など県外に通勤しており、青葉区では通勤・通学者の半数以上が市外(主に東京都)に向かっています。川崎市も東京都心への近さから若い働き世代の流入が続き、県内で最も高齢化率が低い都市となっています。県央地域(相模原市を除く厚木・大和・海老名・座間・綾瀬等)は、昭和後期に住宅開発が進んだ郊外住宅地が多く、東京・横浜のベッドタウンとして発展しました。湘南地域は藤沢・茅ヶ崎・平塚など太平洋沿いの市町を含み、観光地やリゾートの顔も持ちながら、都心通勤圏でもあるため沿線部に人口が集中しています。県西地域(小田原・箱根・秦野・南足柄など)は東京圏からやや離れ、人口規模が小さく自然も多い地域です。伝統産業や観光資源がある一方で、過疎化が懸念される山間部も抱えます。三浦半島地域は横須賀市と三浦市、および三浦郡(葉山町)からなり、米軍基地のある横須賀市以外は人口減が著しいエリアです。例えば三浦市の人口は2020年時点で約4.2万人まで減少、高齢化率は約41%と県内市で最も高くなっています。このように県内でも都市部と周辺地域で人口動態や課題が大きく異なり、地域特性に応じた対応が求められているのが現状です。
第2章 市区町村別にみる主な課題
神奈川県内の市区町村が直面する課題は、その地域の性格や人口動向によって様々です。ここでは特徴ごとに市区町村をグループ分けし、それぞれ代表的な例とデータを挙げながら主な問題を見てみましょう。
2-1 大都市部(横浜市・川崎市・相模原市など)
横浜市・川崎市・相模原市の3つの政令指定都市は、いずれも人口が多く(横浜市約377万人、川崎市約155万人、相模原市約72万人)、県経済の中枢を担う都市です。人口規模が大きい分、他地域に比べて若年層も多く残っていますが、高齢化も着実に進んでいます。横浜市は平均高齢化率24~25%台ですが、市内郊外部では高齢化率50%に達する地区もあります。例えば横浜市栄区の「上郷ネオポリス」というニュータウンは、1970年代に開発された住宅団地で現在約50%が65歳以上となっており、商店の閉店や小学校の廃校など生活インフラの維持が難しくなる問題が実際に起きています。川崎市は全国でも有数の人口増加都市で、近年も武蔵小杉駅周辺の超高層マンション開発などで人口流入が続いています。高齢化率は2025年時点で20.6%と県内最少ですが、今後は高齢者数そのものは増える見込みであり、介護や医療サービスの需要増に対応する必要があります。相模原市は政令市としては人口増加が緩やかで、2025年前後に約72.8万人でピークを迎えた後減少に転じる推計です。相模原市では郊外部の高齢化や公共交通空白の課題があり、市の想定より早く人口減少が進む可能性も指摘されています。
大都市部共通の課題として、都市基盤の老朽化と再生の問題があります。横浜市や川崎市の都心部では戦後築の住宅やビルが老朽化し、防災上の危険や住環境の悪化が懸念されています。一方で都心・駅周辺では再開発が活発で人口流入が続くため、保育所や学校、医療施設の需要が高まり、待機児童ゼロに向けた施設整備や医師の確保が課題です。実際、横浜市は2010年代に待機児童問題が深刻化し、市を挙げて保育所増設を進めてきた経緯があります。また、川崎市や横浜市の一部地域では通勤ラッシュ時の交通混雑も引き続き問題です。鉄道や道路は東京方面への通勤者で朝夕に極めて混雑し、都市住民の生活ストレスや安全面で課題があります。加えて、単身世帯の増加も大都市に共通する傾向です。若者や働く世代の流入により単身赴任・単身生活者が多く、地域のつながり希薄化や将来的な高齢単身者の増加が懸念されます。大都市部ではこうした「都市ならでは」の課題(密集市街地の防災、公共サービスの需給ギャップ、コミュニティ希薄化など)に対し、都市計画の見直しや行政サービスの機動的な拡充が求められています。
2-2 郊外住宅地・ベッドタウン(県央地域・湘南地域の一部など)
神奈川県の県央部や湘南エリアには、高度経済成長期以降に開発された大規模住宅団地やニュータウンが数多く存在します。これらの地域は、1960~70年代に東京・横浜のベッドタウンとして人口が急増しましたが、開発当時に若かった住民が高齢期を迎え、現在は住民の高齢化と人口減少が進んでいます。典型例として、大和市・座間市・綾瀬市・相模原市南区など小田急線沿線や相鉄線沿線の郊外住宅地が挙げられます。これらの地域では一斉入居世代の高齢化により、子どもが独立して空き家となる住宅が増加し、大規模団地では空き住戸率の上昇や商店街の衰退が目立ちます。例えば座間市や綾瀬市には大規模な住宅団地が複数あり、高齢化率が市平均を上回る団地コミュニティが生まれています。買い物や通院の足だった路線バスが利用者減で減便・廃止され、車を運転できない高齢者にとって「移動難民」問題が生じている地区もあります。また、生活利便施設(スーパー・病院・金融機関など)の閉鎖が相次ぎ、日常の買い物すら困難な「買い物弱者」も生まれています。
湘南地域でも、平塚市郊外や茅ヶ崎市北部などに高度成長期造成の住宅地があり、同様の課題に直面しています。例えば二宮町の「二宮団地」は町内有数の住宅団地ですが、住民の約半数が65歳以上となり、空き家も増えてきました。行政は空き家対策としてリノベーションによる入居促進策(空き家を改修して新住民に安価で提供する、あるいはDIY希望者にセルフ改修を認める等)を講じています。しかし若年世代にとって、古い間取りや郊外立地の家は魅力に乏しく、子育て環境や働く場として都市部を選ぶ傾向が強いため、十分な移住者確保には課題が残ります。さらに、郊外地域では地域コミュニティの衰退も問題です。現役世代が都市部へ日中不在となる一方、高齢単身世帯が増え、従来の自治会や隣組による見守り活動が難しくなっています。この結果、安否確認が遅れる独居高齢者の事故や、地域の治安悪化(空き家への不法侵入やごみの不法投棄)といった二次的な問題も指摘されています。
郊外住宅地・ニュータウンの課題をまとめると、(1) 住民高齢化と人口減少による地域活力低下、(2) 老朽住宅・空き家の増加による景観悪化や安全性低下、(3) 生活サービス(交通・商業・医療等)の維持困難、(4) 地域コミュニティの希薄化が挙げられます。一斉造成・一斉入居というニュータウンの成り立ちから、これらの問題が同時多発的に押し寄せており、自治体も従来の延長線上ではない総合的な対策を迫られています。
2-3 人口減少と高齢化が特に進む地域(県西地域・三浦半島など)
県西部の山間地域や三浦半島南部の市町村では、県内でも最も早いペースで人口減少と高齢化が進行しています。小田原市を除く県西地域(足柄上郡・足柄下郡の町村や南足柄市)や、三浦市・真鶴町・湯河原町などがこれに当たります。例えば三浦市の高齢化率は2023年に41.6%となり、市では2人に1人近くが高齢者という超高齢社会です。三浦市では1990年代に5万人近くいた人口が現在4万人強まで減少し、2060年には2万人台まで減る推計もあります。こうした地域では若年層の域外流出が続き、産業の後継者不足や地域経済の縮小が深刻です。基幹産業の縮小という課題も顕著で、三浦市や真鶴町では主力だった漁業・農業の就業者が大幅に減り、生産高も低迷しています。観光客頼みの経済構造もリスクです。三浦半島は観光地(三崎港や城ヶ島など)として首都圏から人を集めますが、繁忙期以外の来訪者減少やコロナ禍での観光需要蒸発により、観光収入に依存した地域ほど景気変動の影響を強く受けました。
県西の山間部(松田町・山北町・開成町など)でも、人口減と高齢化率30~35%超が当たり前になっています。箱根町は観光で賑わう一方で地元定住者の高齢化が進み、2020年の高齢化率は約38%に達しました。山間部では農林業の担い手不足から耕作放棄地や荒廃林が広がり、景観悪化や土砂災害リスクの増大といった問題も出ています。過疎化によって自治体の財政基盤も脆弱化し、住民一人あたりの行政コストが増加するため、公共施設やインフラの維持管理にも支障が生じています。例えば小規模町村では上下水道管路や道路の老朽化修繕費を捻出できず、県の補助に頼らざるを得ないケースがみられます。
さらに、医療・福祉サービスの確保も大きな課題です。横須賀市・三浦市など三浦半島エリアでは、高齢者人口に対して医師・看護師などの数が十分ではなく、急性期の入院受け入れが限られるなど地域医療体制が脆弱です。救急医療や介護人材も不足しており、「病院が遠い」「介護施設の空き待ちが長い」といった声が住民から上がっています。過疎地では唯一の病院が経営難で閉鎖する恐れもあり、行政は広域連携や遠隔医療などで対応を模索しています。
このように人口減少と高齢化が特に進む地域では、(1)地域社会の維持そのものが難しくなるリスクがあります。学校統廃合や商店ゼロ集落の出現など、生活圏が成り立たなくなる懸念が現実味を帯びています。(2)財政力の低下と行政サービス維持のジレンマも深刻です。人口減で税収が落ち込む一方、高齢者支援やインフラ維持の費用負担は増すという悪循環にあり、将来的に行政サービスの縮小を検討せざるを得ない自治体もあります。(3)防災面の脆弱性も看過できません。過疎高齢地域では自主防災組織の担い手が不足し、避難行動要支援者も多いため、大規模災害時に人的被害が拡大しやすいと懸念されています。実際、2019年の台風19号では相模原市緑区の藤野・津久井地域で土砂崩れや河川氾濫が発生し、高齢世帯の被害が集中しました。この章で挙げた地域では、もはや現状維持では立ち行かず、思い切った構造改革や広域支援策が求められています。
2-4 子育て世代・若年層の流入が続く地域
神奈川県内には一部に依然として若年人口の流入・定着が続いている自治体や地区があります。主な傾向としては、(1) 鉄道新線の開業や大規模再開発によって新たな住宅供給があったエリア、(2) 都心へのアクセスが良く地価が比較的手頃なベッドタウン、(3) 商業施設や公園など生活環境が整備され「住みやすい街」として人気のエリア、などが挙げられます。
具体的には、川崎市全域や横浜市の一部地域は引き続き人口が増加しています。川崎市は再開発で高層マンションが林立する武蔵小杉地区や、臨海部の工場跡地開発が進む幸区・川崎区などで若いファミリー層が増え、高齢化率は全国大都市でも最低水準です。海老名市も近年人口が増えた自治体の代表例で、1990年代以降の小田急線・相鉄線海老名駅周辺の開発によって若い世代の転入が相次ぎました。海老名市の高齢化率は24.6%と県平均より低く、現在人口約14万人でまだ増加傾向にあります。同様に、藤沢市も都心通勤圏かつ湘南の魅力ある街として人気が高く、人口約44.5万人(2025年)まで増え、高齢化率も24.6%で抑えられています。藤沢市では辻堂駅前の再開発(テラスモール湘南開業など)が若年層を惹きつけ、保育所や学校の需要増に対応するため市が待機児童対策に力を入れています。
また、県央地域では大和市や座間市、秦野市などで比較的若年層の流入が見られます(※秦野市では人口減少が続いており、若年層の流入は顕著ではありません)。大和市は東京都心・横浜への通勤利便性が高く、子育て世帯への医療費助成(高校3年生まで無料)や産後ケア事業の充実など独自施策もあって子育て世代に選ばれています。座間市も米軍基地返還地の開発や小田急沿線の宅地開発で人口が微増し、高齢化率はまだ24%台です。鎌倉市・逗子市といった湘南エリアの都市も、絶対的には高齢化が進んでいるものの、近年はテレワーク普及などを背景に若い世代の移住が報じられています。特に鎌倉市は歴史文化と自然環境が人気で、コロナ禍以降「都内から鎌倉へ」の転入が増えたとも言われます。ただし観光地ゆえ住宅価格や地価が高く、誰もが容易に移り住める状況ではありません。
子育て世代・若年層流入が続く地域に共通する課題として、(1)住宅価格・家賃の高騰があります。人気エリアでは需要超過で中古住宅も含め価格上昇が著しく、例えば川崎市武蔵小杉周辺ではファミリー向け分譲マンションが1戸1億円超となるケースも見られます。これにより所得によって居住地が制約される問題や、無理な住宅ローンによる家計圧迫などの懸念があります。(2)公共サービスの需給バランスも課題です。新住民が増える地域では保育園・小学校の増設、公園や図書館といった生活インフラ整備が後手に回ると、待機児童や過大規模校の発生、休日の公園混雑など生活環境悪化につながります。自治体はこうした急成長地域への機敏な対応が求められます。(3)将来的な人口構造変化への備えも重要です。今は若い街でも、いずれ数十年後には住民の高齢化が訪れます。現在増えているこれら地域でも、先述の郊外団地と同様の課題(高齢単身者増、地域コミュニティ希薄化)が将来起こり得るため、長期的視点でまちづくりを進める必要があります。
第3章 分野別にみた共通課題
以上、市区町村の状況を地域類型ごとに見てきましたが、神奈川県内の多くの自治体に共通する課題もあります。ここでは分野ごとに現状と問題点を整理し、県民生活や自治体運営にどのような影響があるか解説します。
人口減少・少子高齢化の進行
人口が減り高齢者が増える現象は、程度の差こそあれ神奈川県内全域で避けられない課題です。県全体では2020年に総人口がピークを迎え、その後減少に転じています。特に15歳未満の年少人口は毎年確実に減り続け、生産年齢人口(15~64歳)も減少傾向にあります。一方で老年人口(65歳以上)は2025年時点で約239万人と増え続け、全県の高齢化率は約26%に達しました(2010年は21%未満だった)。この少子高齢化の進行は県民生活や地域社会に様々な影響を及ぼします。
まず、労働力人口の減少による地域経済の縮小が懸念されます。働き手となる生産年齢人口が減ることで、企業の人手不足や生産活動の停滞が起こり得ます。特に中小企業や地場産業では深刻で、後継者難から廃業する商店や工場も出ています。また、税収の減少は自治体財政を直撃し、社会保障費が膨らむ中で財政運営を圧迫します。社会保障負担の増大も重要な問題です。高齢者が増え医療・介護サービスへの需要が高まる一方、支える現役世代が相対的に減るため、一人当たりの負担が重くなります。「現役世代1人で高齢者1人を支える」といった状況になれば、年金・医療制度の維持も難しくなりかねません。
少子化の進行は地域コミュニティの将来にも影を落とします。子どもの数が減ることで学校統廃合が進み、地域から学校が消えると親世代の交流機会も減ります。子どもが少ない地域では祭りやイベントの担い手も不足し、地域の活力が損なわれます。また、若年層の減少は将来の地域担い手(消防団員や自治会役員など)の不足につながり、防災力や地域福祉力の低下を招きます。
なぜ問題なのか?
人口減少・少子高齢化は、一言で言えば「社会の縮小と偏り」を生みます。人が減ることで経済規模が縮みサービスが維持できなくなり、高齢化で需要構造が変化(医療・介護中心に)する一方、供給側の人材不足が起こります。これは住民生活の利便性低下(店がなくなる、交通がなくなる等)と直結し、地域からさらに人が出て行く負のスパイラルを起こしかねません。また、高齢者ばかりの地域では災害時の避難や見守りが困難で命に関わるリスクが高まります。つまり少子高齢化への対応を怠ると、地域社会の持続可能性そのものが揺らぐのです。
地域経済・産業構造の変化
神奈川県の産業は、戦後一貫して製造業とサービス業が牽引してきました。川崎市や横浜市臨海部には京浜工業地帯の一角として重化学工業が集積し、横須賀市・相模原市・厚木市などには自動車や電子機器などの工場が立地しています。一方、湘南や県西では観光業や農漁業も地域経済の重要な柱です。このように多様な産業構造を持つ神奈川県ですが、近年は全国的傾向と同様に産業構造の転換と地域間格差が進んでいます。
一つ目のポイントは、製造業の人手不足と空洞化の懸念です。県内製造業では高度経済成長期に整備された工場の多くで従業員の高齢化が起きています。技術を継承する若手技能者が不足し、生産拠点を県外・海外に移す動きもみられます。例えば日産自動車は横浜市に本社を置き研究開発拠点もありますが、生産工場は九州など他地域への移管が進みました。こうした動きは地域の雇用喪失につながり、関連企業や下請け企業も含め経済波及が小さくなります。また、神奈川が強みを持っていた半導体・電子部品産業も国内シェア低下や国際競争激化で苦戦しており、川崎市や厚木市の工場でリストラが行われた例もあります。今後、産業構造が一層サービス業・IT産業偏重になれば、製造業従事者の再雇用や地域経済の多角化が課題となるでしょう。
二つ目は、地域経済格差の拡大です。県内でも横浜・川崎など大都市はオフィス集積やスタートアップ企業誘致に成功し、新たな雇用や投資を呼び込んでいます。一方で、三浦半島や県西地域では若者の地元就職先が限られ、働く場の不足から人口流出に拍車がかかっています。例えば高校卒業後に地元で就職できず都市部へ出る若者が多い地域では、地元にお金が落ちず消費市場も縮小します。商店街のシャッター通り化や地元銀行の統廃合など、ローカル経済の縮退が進んでいる地域もあります。
三つ目は、観光・サービス業の課題です。神奈川は年間延べ1億人を超す観光客が訪れる観光県でもあります(コロナ前の2019年で日帰り客含め県全体1億8731万人)。特に鎌倉市は2024年に約1,594万人もの観光客を集め過去最多を更新しました。観光は地域に雇用と収入をもたらしますが、オーバーツーリズム(観光客過剰による弊害)も顕在化しています。鎌倉市では慢性的な道路渋滞や騒音・ごみ問題が深刻で、地元住民の生活への悪影響が指摘されています。また観光やレジャー産業は景気や疫病の影響を受けやすく、近年のコロナ禍では箱根・江の島などで観光客激減により旅館や飲食店の休廃業が相次ぎました。観光産業への過度な依存は地域経済のリスクにもなるのです。
なぜ問題なのか?
産業構造の変化に対応できないと、雇用の場が失われ地域経済が成り立たなくなる恐れがあります。働く場がなければ若い世代は転出し、ますます地域が高齢化・過疎化する負の循環に陥ります。また、産業が偏ると経済ショックへの耐性が弱くなります。例えば観光一本足打法の地域は、疫病や災害で観光客が来なくなると一気に疲弊します。製造業が撤退した町では税収が減りインフラ維持も困難になります。さらに経済が縮むと公共交通や商業サービスも採算が取れず撤退するため、経済と生活インフラの悪循環が起きかねません。持続可能な地域とするには、安定した雇用創出と多様な産業ポートフォリオが不可欠なのです。
交通・都市計画・インフラ老朽化と更新
神奈川県は全国屈指の人口密度を持ち、鉄道網や道路網が発達しています。しかし、都市化の進展とともに生じた交通問題やインフラ老朽化も各地で課題となっています。
まず交通面では、都心通勤に伴う混雑と郊外の交通空白という二極の課題があります。東海道線や小田急線など主要路線のラッシュ時混雑率は依然として高く、利用者の負担や安全面の問題です。同時に、人口減の郊外・山間部では路線バスが次々と減便・廃止され、高齢者を中心に移動手段を失う地域が出ています。「駅から離れた住宅地なのにバスがなくなり買い物もままならない」という声は各地で聞かれます。公共交通空白地の増加は地域住民の生活基盤を脅かし、ひいては定住を困難にする要因となります。
都市計画面では、無秩序な市街地拡大と空洞化の問題があります。戦後の人口急増期に郊外へ宅地が広がりましたが、今その一部が空き家だらけになるなど都市のスポンジ化が進む懸念があります。一方、横浜・川崎の中心部では高層化が進み人口密度が高まりすぎて、避難所や公園が不足する課題も出ています。災害リスクへの対応という観点からも、都市計画の見直しが必要です。木造住宅密集地の防火対策や、沿岸部の土地利用規制(高潮・津波対策)などは命に関わる問題ですが、再開発が進まない地区も残ります。
インフラ老朽化については、神奈川県内でも高度成長期に整備された道路・橋梁・上下水道などが更新時期を迎えています。例えば県内の道路橋の相当数が築50年以上となり、コンクリートの劣化や補修の必要性が増しています。老朽水道管からの漏水事故や、古い下水管への不明水流入も問題化しています。インフラ更新には巨額の費用がかかるため、財政力の弱い自治体ほど対応が遅れがちです。維持管理コストの捻出が難しく、延命措置でしのいでいる施設も少なくありません。特に人口減地域では利用者減で収益が悪化し、水道事業や公共交通事業の存続自体が課題です。
また、公共施設の老朽化も見逃せません。学校・公営住宅・病院・庁舎などで耐震改修や建て替えが必要なものが増えていますが、すべてを更新する財源がなく、統廃合や民営化を進めざるを得ない状況があります。
なぜ問題なのか?
交通インフラは住民の生活の足であり、これが欠如すると暮らしの質が大きく低下します。移動手段を失えば高齢者は引きこもりがちになり健康を損ねる恐れもあります。都市の交通混雑は事故リスクや時間損失となり、生産性を下げます。インフラ老朽化は安全・安心の土台を揺るがす問題です。橋や道路の崩壊事故、老朽水道管の破裂による断水などは実際に各地で起こっています。特に大地震時には古いインフラが一斉に被害を受ける可能性があり、防災上も脆弱です。さらに、老朽インフラを放置すると補修費用が増大し、将来世代にツケを回すことになります。交通・インフラ問題への対応遅れは住民の生命・財産に直結する重大課題なのです。
防災・減災・気候変動への対応
神奈川県は地震・台風・豪雨など様々な自然災害リスクに晒されています。首都直下地震や南海トラフ巨大地震では県内でも強い揺れと津波の恐れがあり、また台風シーズンには土砂災害警戒区域が多い丹沢山地周辺で注意が必要です。防災・減災と気候変動適応はこれからの自治体運営で避けて通れない課題です。
地震対策では、建物の耐震化と避難体制の強化が重要です。横浜市や川崎市の都心部には今なお耐震性の低い旧耐震基準のビルや木造住宅密集地が残り、倒壊や火災の危険があります。自治体は耐震改修補助を行っていますが、費用面で改修が進まないケースもあります。また、高層マンション住民の帰宅困難対策や、要支援者(高齢者・障害者)の避難誘導など、都市ならではの防災課題も山積しています。
台風・豪雨災害では、水害と土砂災害への備えが問われます。相模川・鶴見川・酒匂川など主要河川の氾濫想定区域には多くの住宅地があり、堤防強化や遊水地整備が進められています。2019年の台風19号では相模原市緑区で土砂崩れが発生、箱根町では観測史上最大の雨量を記録し各所で斜面崩落が起きました。こうした経験から、斜面宅地のハザード対策(擁壁改修・森林整備)や、崖地近くの高齢者世帯への個別避難支援計画づくりが急務となっています。
また、気候変動の影響も無視できません。近年の猛暑により都市部ではヒートアイランド現象で夜間も気温が下がらず、高齢者の熱中症リスクが高まっています。海面上昇や高潮の頻発化も懸念材料で、臨海工業地帯の浸水リスクや、湘南海岸の侵食(砂浜消失)など環境変化が進んでいます。気候変動に適応するため、グリーンインフラ(防風林や水辺空間整備)や都市の緑化推進も課題です。
なぜ問題なのか?
災害リスクへの対策が不十分だと、いざという時に大きな人的・物的被害を出し、地域社会の存続すら危うくします。特に高齢化した地域では一度被災すると復旧・復興の担い手が不足し、そのまま地域消滅につながりかねません。防災は命を守る最優先事項でありつつ、日常の延長線上で進めなければならない課題でもあります。例えばハザードエリアからの事前移転や、公共施設の高台移設などは住民合意や財政面で難航しがちですが、将来の安全には必要です。また、頻発する気象災害に対応して都市インフラを強靭化しないと、毎年のように鉄道運休や停電・断水が起き、経済活動や市民生活に大きな支障が出ます。防災・減災なくして安心して暮らせる地域づくりは実現できません。
教育・子育て支援・福祉サービスの充実
子育て世代や高齢者に対する行政サービスも、多くの自治体で共通の課題分野です。教育環境の整備、子育て支援策の充実、介護・福祉サービスの持続可能性といったテーマは、県民の暮らしに直結するため各自治体が力を入れていますが、課題も多々あります。
子育て支援の現状と課題:
神奈川県は全国的に見ても子育て支援制度が充実している方で、多くの市町村で18歳までの医療費助成や保育料の独自補助などを行っています。例えば横須賀市では所得制限なしで中学卒業まで医療費を無料とし、開成町では第3子誕生時に最大50万円の出産祝い金を支給するなどの施策があります。それでも依然として待機児童問題は一部地域で残っています。横浜市や川崎市では保育所整備が進んだものの、0~2歳児の保育ニーズが高く、希望する保護者全員が入園できる状況には至っていません。また学童保育(放課後児童クラブ)の受け皿不足や、発達障害児への支援体制強化なども課題です。教育面では、老朽校舎の改修と学校統廃合のバランスが難しい問題です。児童生徒数が減る地域では統合で適正規模校にする動きがありますが、学校が無くなることへの地域の寂しさもあり調整が必要です。一方、人口流入地域では教室不足や保育士・教員の確保が問題となります。経済格差に起因する教育機会格差も潜在的課題です。ひとり親世帯や低所得世帯が多い地域では塾代支援や学習支援ボランティアなどの取り組みが求められていますが、自治体の予算やマンパワーには限界があります。
高齢者福祉・介護の現状と課題:
高齢者が増加する中、各自治体では地域包括ケアシステム(住み慣れた地域で医療・介護等を一体的に提供する仕組み)の構築を進めています。具体策としては、高齢者見守りネットワーク(民生委員や隣人による見守り)、地域サロンやミニデイサービス(高齢者の居場所づくり)、買い物代行や移送サービスなど、多様なサービスが展開されています。例えば葉山町では「子育てコンシェルジュ」制度にならい、高齢者の生活相談やコーディネートを行う担当を配置しています。一方で、介護人材不足は深刻です。特に都市郊外や農村部では介護職員の確保が難しく、訪問介護やデイサービスが担い手不足で定員を減らす事例もあります。また、医療と介護の連携も課題です。高齢者が増えると医療ニーズも高度化しますが、病院から在宅介護へのスムーズな移行や看取りの環境整備など、医療側と介護側の情報共有・協力が不十分だと家族の負担が増えます。
さらに、高齢者の中でも低所得で身寄りのない方への支援が問題となっています。年金だけでは生活が困難な高齢者や、認知症で判断能力が低下した方を地域全体で支える仕組みがまだ不十分との指摘があります。社会福祉協議会やNPOが生活支援にあたっていますが、ケースの増加に追いつけません。地域包括ケアの財政面・人材面の持続可能性も大きな課題です。
なぜ問題なのか?
子育て支援や教育施策が十分でないと、若い世代に「この街で産み育てたい」と思ってもらえず、人口減少に拍車がかかります。待機児童が多ければ共働き世帯は転出を検討するでしょうし、医療費負担が重ければ出産をためらうかもしれません。教育格差を放置すれば将来の貧困や社会的コスト増にもつながります。一方、高齢者福祉が手薄だと、高齢者が安心して暮らせず孤独死や介護難民が増加する恐れがあります。それは地域コミュニティの崩壊や治安の悪化にもつながり、誰にとっても暮らしにくい街になってしまいます。福祉サービスの充実は住民の生活の質を支える基盤であり、子育て世代から高齢世代まで安心感を持てることが定住促進や地域活性化にも直結します。結局のところ、「人」に投資する政策を怠ると地域社会の再生産が滞り、長期的な衰退を招くのです。
デジタル化・スマートシティ・行政サービス改革
最後に、現代ならではの課題としてデジタル技術の活用と行政サービス改革があります。国のデジタル田園都市国家構想のもと、自治体もデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいます。神奈川県内でも、自治体ごとに行政手続オンライン化やオープンデータ推進、スマートシティ事業などが進行中ですが、その進捗には差があります。
一部先進事例として、藤沢市の「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン (SST)」が全国的に知られています。これはパナソニックの工場跡地に官民協働で作られたスマートシティで、約19ヘクタールの敷地に1000戸の住宅や商業施設、クリニック、保育園等を備えた最先端の街です。エネルギー自給やIoT活用の暮らし、安全・防災設備(非常用シェルター兼ベンチなど)が実装され、環境と快適性を両立したモデルケースとなっています。このような新興住宅地だけでなく、既存市街地のスマート化も模索されています。横浜市では国のスマートシティモデル事業に選ばれ、AIによる行政相談チャットボットやMaaS(スマホで完結する統合交通サービス)の実証実験を行っています。川崎市も産業分野でIoTやAIを活用し、工場のスマート化や環境モニタリングといった取り組みを進めています。
行政サービス改革の面では、多くの市町村でオンライン申請の導入やキャッシュレス決済対応が図られています。例えば住民票の写し交付申請をネットでできる自治体や、税・料金の支払いにスマホ決済を導入した自治体があります。また、SNSやアプリを活用した住民向け情報発信・相談も増えています。綾瀬市ではLINEを使った育児相談サービスを提供し、子育て中の親が手軽に専門家へ質問できるようにしています。二宮町では公式アプリで防災情報や子育て情報を配信し、住民サービスの利便性向上に努めています。
しかし課題もあります。デジタル化の恩恵を誰もが受けられるわけではないという点です。高齢者などデジタル機器に不慣れな層は、オンライン化が進むと逆に行政手続きから取り残される懸念があります。また自治体職員側も十分なITスキルを持つ人材が不足しており、システムの改修や運用に苦労している例もあります。サイバーセキュリティ対策も重要です。自治体は大量の個人情報を扱うため、サイバー攻撃で情報漏えいが起これば住民の信頼を失いかねません。DX推進とセキュリティ強化を同時に行うには相応の投資が必要ですが、限られた予算・人員の中でそれを確保するのは簡単ではありません。
なぜ問題なのか?
デジタル化やスマートシティは今後の地域発展の鍵となる一方で、対応を誤ると新たな格差や危機を生みます。行政サービスのDXが進まなければ、住民はいつまでも窓口で長時間待たされる不便を強いられ、生産年齢世代にとって魅力的な地域とは言えなくなるでしょう。逆にDXが進みすぎて高齢者が置いてきぼりになれば、「行政に相談できない」「必要な情報を得られない」高齢者が増え福祉にも影響します。スマートシティの取り組みも、住民参加や理解がなければ絵に描いた餅に終わります。行政と住民の信頼関係を維持しつつ技術を活用することが不可欠です。また、デジタル技術は効率化をもたらす反面、サイバー攻撃やシステム障害というリスクも伴います。それらに備えないと、自治体機能が停止するような最悪の事態も起こりえます。総じて、デジタル社会への円滑な移行を実現しないと、将来的に他地域との競争にも負け、住民サービスの質が低下して地域魅力を損なう恐れがあります。
以上、主要な共通課題を分野別に見てきました。次章では、これら課題に対して神奈川県内外で実施されている先進的な取り組みや解決策を紹介し、未来への展望を考えます。
第4章 神奈川県内外の先進事例と解決策
神奈川県内の各自治体では、上記の課題に対応すべく様々な工夫を凝らした取り組みが行われています。また、日本国内の他地域や海外にも参考になる先進事例が存在します。ここでは分野別にいくつかの事例を紹介し、解決策の方向性を示します。また、短期的に効果が見込める施策と中長期的な構造改革に分けて論じ、実現上のハードルにも触れます。さらに、行政だけでなく住民・企業・NPO・大学など多様な主体の役割についても考えてみましょう。
暮らし・福祉分野の取り組み(子育て支援・高齢者ケアなど)
子育て支援の先進事例: 神奈川県内では、各自治体が競って独自の子育て支援策を展開しています。その中でもユニークなのは開成町の出産祝い金制度です。開成町は人口増を目指し、第1子5万円、第2子10万円、第3子以降はなんと最大50万円を支給する制度を設けました。住宅取得補助なども組み合わせ、若い世代の移住・定住を促しています。同様に、海老名市は子育て応援クーポンを配布し、子育て関連商品の購入補助などに充てています。また横須賀市は「子育てファミリー応援住宅バンク」という仕組みで、空き家のリフォーム費用補助と子育て世帯向けマイホーム取得助成を連動させ、移住子育て世帯を呼び込んでいます。これらは自治体の努力で出生率向上や若年層流入を図る短期的施策と言えます。効果として、海老名市などは子ども医療費助成の充実と合わせて「子育てしやすい街」として評価が高まり、実際に子育て世帯の転入増加につながっています。
高齢者の見守り・居住支援の先進事例: 川崎市は「見守り新生銀行」とあだ名される独自のネットワークを構築しています。これは市内の郵便局や銀行、コンビニ店員などと連携し、高齢者が普段と違う様子で来店した際に地域包括支援センターへ情報提供する仕組みです。認知症の方の行方不明防止や特殊詐欺被害の未然防止に効果を上げています。また横浜市のいくつかの区では、空き家を活用した高齢者シェアハウスの試みがあります。地域のNPOが空き一軒家を改修し、独居高齢者数人で住んでもらい、互いに助け合いながら生活する形です。行政は家賃補助や改修費補助で後押ししています。地域包括ケアのモデルとしては厚木市が進める「高齢者あんしん暮らしネット」があります。民生委員・ケアマネ・医師会等が定期的に情報共有会議を開き、高齢者一人ひとりの見守りプランを作成するものです。これにより在宅医療と介護サービス、見守りボランティアが一体となって支援にあたり、重度要介護者でも住み慣れた自宅で暮らし続けられるよう支えています。
医療・福祉サービス改革: 三浦半島地区では医療資源不足に対応するため、横須賀市と三浦市が病院機能の再編に乗り出しています。具体的には横須賀市内の救急病院に集約して人員や設備を重点投入し、三浦市立病院は療養・リハビリ中心に機能転換する案などが検討されています。こうした広域連携・役割分担は中長期的な構造改革ですが、高齢化が進むエリアでは避けて通れないでしょう。また、ICTを活用した医療・介護の効率化も進んでいます。県は「ME-BYOプラットフォーム」というアプリで県民の健康管理データを集積し、予防医療や介護予防に役立てる取組を始めました。これも中長期的には医療費適正化に資する施策です。
解決策の方向性: 子育て支援については短期的には経済的インセンティブ(祝い金・補助金)で効果を上げられますが、長期的には働き方改革や教育環境整備など総合政策が必要です。高齢者支援は地域の人的ネットワークづくりが鍵で、行政だけでは人手が足りない中、住民ボランティアや民間サービスとの協働が重要です。例えば生協やコンビニの宅配員が見守りを兼ねる「配送見守りサービス」は費用も抑えられ有効です。医療・介護の構造改革は地域住民の理解を得るのに時間がかかりますが、地域全体で持続可能な体制を構築する中長期戦略が求められます。
実現上のハードル: こうした福祉系の施策は財源確保が最大の課題です。子育て支援充実には予算がかかりますし、介護人材確保には待遇改善が必要です。財政が厳しい自治体ほど、優先順位をつけ選択と集中を迫られます。また、施策を講じても効果がすぐに数値に現れにくいため、政治的には評価されづらく継続が困難な場合もあります。ここは住民の理解と支え合いが鍵で、「お互い様」の精神で行政と住民が協力する体制づくりが不可欠です。
交通・まちづくり分野の取り組み(公共交通・空き家対策・DXなど)
公共交通維持・モビリティサービス: 過疎化する地域での公共交通確保策として、神奈川県内ではデマンド型乗合交通の導入事例があります。松田町では「デマンドバス・マツゾー」という予約制乗合バスを運行し、過疎集落と中心部を結んでいます。さらに2023年からはAIを活用した乗合タクシー「のるーと足柄」を実証運行し、スマホで呼び出せる柔軟なサービスを試みています。藤沢市でも六会日大前駅周辺でAIオンデマンドバスの実験を行うなど、新技術による効率運行が期待されています。短期的には既存路線バスへの補助金投入やコミュニティバス新設で急場をしのぎつつ、中長期的にはこうしたデマンド交通や自動運転シャトルが解決策になり得ます。また、防災面からスクールバスや福祉車両を平時に地域交通に活用する取り組みも始まっています。例えば二宮町では小学校のスクールバスを住民も利用できるよう開放し、高齢者の通院に役立てています。
空き家対策・移住促進: 空き家問題への取り組みとしては、各自治体の空き家バンク制度が挙げられます。横須賀市の空き家バンクは子育て支援制度と連携して物件情報を充実させ、移住希望者に好評です。また、相模原市はリニア中央新幹線開業を見据えて、空き家バンクを将来の移住促進策と結びつけています。空き家バンクは全国で広がっていますが、神奈川県では空き家数自体は減少傾向にあるものの質の高い空き家を掘り起こすことで移住ニーズに応えようとしています。成功のポイントは、移住希望者とのマッチング支援やお試し移住体験です。二拠点居住やリモートワーク移住を促すために、葉山町や清川村ではお試し住宅に数日~数週間滞在できる制度を設けています。また、移住者への経済支援として、国の交付金と自治体独自補助を組み合わせて最大100万円の移住支援金を出すケースもあります。南足柄市や中井町は空き家改修補助や三世代同居促進補助を用意し、移住者の住環境整備を支援しています。海外の例では、ポルトガルなどが空き家再生に補助金を投入し若者の地方移住を促進した例があります。解決策の方向性としては、日本全体で人が減る中、地域間でいかに人を呼び込むかが鍵となるため、神奈川らしい魅力(温暖な気候・都市と自然の近接等)を発信し、多様な暮らし方を提案することが重要です。
デジタル技術活用・スマートシティ: 藤沢市のFujisawa SSTに代表されるように、神奈川はスマートシティの先行事例があります。短期的には、防犯カメラネットワークで街の安全を高めたり、スマホアプリで行政手続きを簡素化したりといった施策が効果を出しています。例えば綾瀬市のLINE子育て相談は利用者から「気軽に相談できて心強い」と好評です。中長期的には、都市OS(オペレーティングシステム)を整備して都市インフラ情報を一元管理するような大きな構想も検討されています。横浜市や東京都心では、人流データや交通データをリアルタイム解析して信号制御やバス運行に反映させる実験もあります。海外ではバルセロナ市がセンサーや市民参加型アプリで行政サービスを革新した例や、エストニアが国民IDで全行政手続オンライン完結を実現した例などが有名です。解決策の方向性として、神奈川でもオープンデータを促進しイノベーションを呼び込むこと、そしてデジタルを活用して行政の効率化と市民主導のまちづくりを両立させることが目指されています。
短期施策 vs. 中長期施策: 短期的に取り組めるのは、例えばデマンド交通実証運行や空き家バンク周知キャンペーン、既存ツールを使った情報発信(SNS活用)など、すぐに始められて効果検証もしやすい施策です。これらはコストも比較的低く、成功すればすぐ水平展開できます。一方、中長期的には、公共交通網の再編(鉄道延伸やBRT導入など)や都市計画の見直し(居住誘導区域設定等)、大規模インフラ更新(耐震化や立体交差化)など、腰を据えて取り組むべき構造改革があります。これらは時間もお金もかかりますが、将来世代への投資と捉えて進める必要があります。
多様な主体の役割: 交通やまちづくりは行政だけでは進みません。民間企業のノウハウ・資金を活用するPPP/PFIが有効です。例えばバス会社やIT企業と連携してMaaSアプリを開発するといった協働が考えられます。空き家活用では地元工務店や不動産会社、金融機関が移住者支援に協力するスキームを横須賀市などが構築しています。NPOや大学も、地域課題の調査研究や実証実験で貢献できます。住民自身も、「地域の宝である空き家をDIYで再生する」「コミュニティバスをみんなで利用して守る」といった参加が必要です。結局、まちづくりは地域住民が主役であり、行政はその背中を押すサポート役として環境整備や制度設計をするのが望ましいでしょう。
短期で着手できる施策 vs. 中長期で必要な構造改革
各分野の解決策をまとめると、短期施策としては以下のようなものがあります。
- 子育て・福祉: 経済的支援拡充(祝い金、補助金)、既存施設・サービスのフル活用(空き家を一時保育所に転用など)、ICT活用(オンライン相談、見守りセンサー)。
- 交通: デマンド交通・乗合タクシー実証、既存路線への補助、コミュニティ交通の運行時間延長など弾力的運用。
- 空き家: 空き家実態調査の迅速実施、バンク登録促進キャンペーン、マッチングイベント開催、お試し移住体験の受け入れ。
- デジタル行政: 申請書オンライン化、キャッシュレス決済導入、SNS活用した広報・相談受付、既存データのオープン化。
これらは比較的すぐ始められ、効果も検証しやすいものです。メリットは即効性や費用対効果の高さ、課題に応じて柔軟に変更できる点です。デメリットは一時的な効果に留まりがちで、根本解決にならない場合もあることです(例えば祝い金で一時的に出生数が増えても、長期的出生率向上には繋がらないかもしれない等)。
中長期施策・構造改革としては、
- 社会システム: コンパクトシティ化(公共施設集約と居住誘導)、広域連携でのインフラ共用(上下水道や病院の統合再編)、労働政策(シニア人材や女性の活躍促進で担い手確保)。
- 経済構造: 新産業育成(スタートアップ支援、企業誘致)、観光と定住の両立(ワーケーション推進等で観光客→定住者誘導)、農林漁業の高付加価値化(6次産業化や直販支援)。
- インフラ: 大規模改修計画の策定と実行(インフラ長寿命化)、公共交通ネットワーク再編(鉄道・バス一体経営の模索、BRT導入検討)。
- 行政組織: 人口減に備えた役所組織・事業のスリム化、AI・RPA導入で職員業務効率UP、人材育成で住民との協働力向上。
メリットは抜本的な課題解決に繋がり、将来世代に持続可能な社会を引き継げることです。デメリットは費用・時間がかかり、痛みを伴う改革になるケースもあることです。例えば病院統合や学校統廃合は住民の反対も起こり得ます。しかし、これを避けては通れない局面が来る可能性が高く、今から議論と準備を始めることが大切です。
日本国内の他地域では、富山市が公共交通軸にコンパクトなまちづくりへ転換し高齢化に対応している例や、秋田県のある村がAIオンデマンドバスで日本一高齢の村ながら移動確保に成功している例などがあります。海外では北欧諸国が手厚い福祉と住民参加型の地域運営を実現しており、学ぶべき点が多いです。
多様な主体の役割: 行政は計画策定・制度整備という舵取り役です。住民は当事者として声を上げ参加することが重要です。企業は技術や資金を提供し、事業を通じ課題解決に寄与できます(例えば移動サービスを事業化すると同時に社会課題解決に貢献するなど)。NPOや大学は行政・企業では届かない草の根ネットワークや専門知見を持っています。それぞれの強みを発揮し、オールかながわ体制で臨むことが解決への近道でしょう。
第5章 住民・企業・自治体は何をすべきか(まとめ)
神奈川県の市区町村が抱える現状と課題、そして解決策の方向性を見てきました。最後に、本記事の要点をまとめるとともに、住民・企業・自治体それぞれの立場で何ができるかを提案します。将来への危機感を前向きな行動につなげ、持続可能な地域社会を築いていくために、次のポイントが重要です。
- 地域の魅力を守り、高めていくこと
- 住民: 自分の街の良さを再発見し、積極的に発信しましょう。地域イベントへの参加やボランティア活動を通じてコミュニティを盛り上げることが、結果的に移住者や観光客を呼び込みます。
- 企業: 地元の歴史や文化・自然を活かした商品開発やサービス提供で地域ブランドを高めることができます。例えば地場産品を使った新商品開発や、観光資源を活かす着地型旅行商品の企画などです。
- 自治体: 各地域の強み(都市的魅力でも田園風景でも)を伸ばす政策を打ち出し、地域資源の保全と磨き上げを支援してください。シティプロモーションを戦略的に行い、UIJターン希望者に情報提供することも重要です。
- 人口減少・高齢化への地域ぐるみの対応
- 住民: お互いに支え合う意識を持ち、「困ったときはお互い様」で高齢者や子育て世帯を見守りましょう。具体的には、地域の見守りネットワークに参加したり、買い物弱者のお手伝いをするなど、小さなことから始められます。
- 企業: 従業員の高齢家族の介護支援や育児支援に取り組み、働きやすい環境を提供してください。テレワーク制度やフレックスタイム制の導入は、社員が仕事と家庭を両立できるだけでなく、地域社会への関与の余裕も生み出します。
- 自治体: 子育て支援と高齢者福祉にメリハリをつけ、限られた財源を効果的に配分しましょう。待機児童ゼロや介護難民ゼロを目標に掲げ、制度の谷間に落ちる人がいないようサービスを総点検・改革してください。また、社会全体で支え合う仕組みづくり(企業やNPOとの協働、地域包括ケアの強化)を推進しましょう。
- インフラ・暮らしの安心を次世代につなぐこと
- 住民: 老朽化した自宅の耐震改修や、防災備蓄の準備など、一人ひとりができる備えをしましょう。地域の防災訓練にも参加し、いざという時に互いに助け合える関係を築いてください。
- 企業: インフラ企業は安全第一で設備投資を行い、事故を未然防止してください。また自社の設備やノウハウを地域防災に提供する(スーパーが駐車場を避難所に提供する等)など、BCP(事業継続計画)を地域貢献と両立させる工夫もできます。
- 自治体: 老朽インフラ更新は待ったなしです。国の補助金や広域連携をフル活用し、計画的に進めてください。同時に、防災情報の伝達や避難体制の整備などソフト面も強化し、住民の安心感を高めましょう。気候変動に備えたハザードマップの周知徹底や土地利用規制も検討が必要です。
- 新しい技術・発想を取り入れた地域づくり
- 住民: デジタル技術に苦手意識を持たず、行政のオンラインサービスや地域SNSなどを積極的に使ってみましょう。特に若い世代はデジタル技術で地域課題を解決するアイデアをどんどん提案してください。
- 企業: 持てる技術やアイデアを地域課題の解決に向けても応用してください。モビリティやICT、再生可能エネルギーなど、自社の強みでスマートシティや環境問題に貢献することが、新たなビジネスチャンスにもなります。スタートアップ企業は行政と協定を結び実証実験を行うなど、地域をフィールドにイノベーションを起こしてください。
- 自治体: 縦割りを排し、柔軟に新しい取り組みを試してください。例えばオープンデータコンテストを開催し、民間から地域アプリのアイデアを募集する等、行政がプラットフォームを提供し民間が創意工夫する場を作りましょう。また、職員のデジタル研修強化や専門人材の登用などDX推進の体制整備も急務です。
- 多様な主体の協働による持続可能な社会の構築
- 住民: 行政任せにせず、自分たちの街を自分たちで良くしていく意識を持ちましょう。地域の課題を洗い出し、自治会や市民団体で話し合い、提案をまとめて行政や企業に働きかけることも大切です。
- 企業: CSV(共有価値の創造)の視点で、地域と共に発展する経営を心がけてください。地元の学校と連携した人材育成や、NPOへの社員派遣ボランティア制度など、企業の強みを社会に還元する仕組みを作れます。
- 自治体: 「協働」の旗を掲げ、住民・企業・団体の声を聞いて計画策定に活かしてください。市民会議やタウンミーティングを定期開催し、行政だけでは解決できない課題にみんなで取り組む場を設けましょう。自治体は調整役・支援役に徹し、主体は多様な民間側であるとの姿勢が大切です。
以上のように、神奈川県の各地域が抱える課題は決して簡単に解決できるものではありません。しかし、危機感を共有し前向きに協力し合えば、必ず道は開けます。神奈川県は都市と自然が調和し、多様な人々が暮らす魅力的な土地です。この強みを活かし、人口減少や高齢化という波にのみ込まれず、むしろ新しい発想で活力ある地域社会へ転換していくチャンスでもあります。住民・企業・自治体がそれぞれの役割を果たし、オール神奈川で知恵と力を出し合って、誰もが安心して暮らし続けられる未来を一緒に築いていきましょう。
参考文献
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はじめに 千葉県印旛郡酒々井町(しすいまち)は、豊かな自然と歴史を有する一方で、成田国際空港近郊のベッドタウン・商業拠点として発展してきた人口約2万人の町です。近年は少子高齢化と人口減少が進み、高齢化率は3人に1人が高齢者という状況に達しました。一方、在留外国人も増え、2023年末時点で町人口の約4.6%(約926人)を占めています。町財政は小規模自治体として堅実に運営されていますが、今後は職員高齢化に伴う人件費増や老朽インフラ更新への対応が課題となっています。また治安面では年間100~150件ほどの刑法 ...
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