
※この記事は2026年8月3日時点の制度・情報に基づいています。
親の介護が突然始まったら、まず一人で抱え込まず、親が住む市区町村の「地域包括支援センター」に相談してください。入院がきっかけの場合は、病院の医療ソーシャルワーカー(相談室・地域連携室)が最初の窓口になります。そのうえで、市区町村に要介護認定を申請すると、介護保険サービスを使う入り口に立てます。最初の1か月の目標は、家族だけで介護をやり切ることではなく、専門職と一緒に「介護の体制」をつくることです。この記事では、緊急時から1か月後までにやることを時系列で整理します。
この記事の要点
- 最初の相談先は「地域包括支援センター」。入院中なら病院の「医療ソーシャルワーカー」。どちらも無料で相談できます。
- 介護保険サービスの利用には「要介護認定」の申請が必要です。申請先は親が住む市区町村で、結果は原則30日以内に通知されます(厚生労働省・介護保険制度)。
- 認定結果を待たずに、申請日にさかのぼって暫定的にサービスを使い始められる場合があります。
- 介護休業(通算93日)は「介護に専念する期間」ではなく「仕事を続けながら介護できる体制を整える期間」です。
- お金は原則として親のお金でまかなうのが基本です。最初に親の収入・預貯金・保険を確認します。
目次
- まず押さえたい基本用語
- 最初に知るべき結論:介護は「体制づくり」から始める
- 時系列ロードマップ:最初の3日・1週間・1か月
- 入院から始まる場合と、自宅で異変に気付く場合の違い
- 相談先の役割比較:どこに何を相談するか
- 要介護認定の申請からサービス利用までの流れ
- 介護のお金:自己負担の仕組みと最初に確認すること
- 仕事はどうする?介護休業の正しい使い方
- よくある誤解と正しい理解
- 今日からできる:家族が最初に確認する情報チェックリスト
- 相談先一覧
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
- 参考資料・出典
まず押さえたい基本用語
- 地域包括支援センター:市区町村が設置する高齢者の総合相談窓口。保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャー等が、介護・医療・生活の相談に無料で応じます。
- 要介護認定:介護保険サービスを使うために、どのくらい介護が必要かを市区町村が審査・判定する仕組み。非該当・要支援1〜2・要介護1〜5の8区分があります。
- 介護保険:40歳以上の人が保険料を納め、原則65歳以上で介護が必要になったときにサービス費用の給付を受けられる公的保険制度です。
- ケアマネジャー(介護支援専門員):本人・家族の希望を聞き、ケアプラン(サービス利用計画)を作成し、事業者との調整を担う専門職です。
- 医療ソーシャルワーカー(MSW):病院で、退院後の生活・介護・費用の相談に応じる福祉の専門職。「患者相談室」「地域連携室」などに在籍しています。
最初に知るべき結論:介護は「体制づくり」から始める
親の介護が始まったら、家族が介護技術を身につけることよりも先に、「相談先とつながる」「要介護認定を申請する」「使える制度とお金を確認する」の3つを進めることが重要です。
日本では65歳以上人口の割合が29.4%に達し(内閣府「令和8年版高齢社会白書」・2025年10月1日現在)、介護は多くの家庭が経験する出来事になっています。介護保険制度は、家族がすべてを担うのではなく、専門職のサービスと組み合わせて支える前提で設計されています。突然の事態でも、順番さえ間違えなければ、体制は1か月程度で形になっていきます。以下の時系列表から始めてください。
時系列ロードマップ:最初の3日・1週間・1か月
最初の3日は「安全と情報の確保」、1週間で「相談と申請」、1か月で「サービス開始と役割分担」まで進めるのが目安です。
【編集部の整理】時系列ロードマップ
| 時期 | やること | 相談先・窓口 |
|---|---|---|
| 当日〜3日 | 本人の安全確保・受診/入院時は病院と連絡体制をつくる/健康保険証・介護保険被保険者証・かかりつけ医・服薬情報を確認/きょうだい・親族に状況共有/職場に第一報 | 病院(入院時)、かかりつけ医、家族間 |
| 〜1週間 | 地域包括支援センターに相談/要介護認定を申請(窓口は市区町村。地域包括支援センター等による申請支援も可)/入院中は医療ソーシャルワーカーに退院の見通しを相談/親の収入・預貯金・保険の概要を確認 | 地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口、病院の相談室 |
| 〜1か月 | 認定調査・主治医意見書への対応/ケアマネジャーを決めて契約/ケアプラン作成・サービス開始(暫定利用を含む)/家族の役割分担と連絡ルールを決める/仕事との両立方法を会社に相談 | ケアマネジャー(居宅介護支援事業所)、勤務先 |
※手続きの所要期間は地域・状況により異なります(2026年8月3日時点の一般的な流れ)。
ポイントは、完璧を目指さないことです。3日目までに全部できなくても、1週間以内に「地域包括支援センターへの相談」と「要介護認定の申請」の2つに着手できれば、その後の流れはつながっていきます。
入院から始まる場合と、自宅で異変に気付く場合の違い
入院がきっかけなら病院の退院支援を軸に、在宅で気付いた場合は地域包括支援センターを軸に動きます。入り口は違っても、要介護認定の申請という合流点は同じです。
入院から介護が始まる場合
脳卒中や骨折などで入院し、「退院後は今までどおりの生活が難しい」と言われるケースです。この場合の相談相手は、まず病院の医療ソーシャルワーカーです。退院までに次を進めます。
- 退院の時期と、退院時に想定される体の状態を医師・看護師に確認する
- 入院中に要介護認定を申請する(認定調査は入院先で受けられる場合があります)
- 自宅に戻るか、リハビリのための転院や施設を検討するかを、医療ソーシャルワーカーと相談する
- 自宅に戻る場合は、手すり・ベッドなど住環境の準備をケアマネジャーと相談する
入院期間は思っているより短いことが多く、「退院日が決まってから慌てる」のが典型的なつまずきです。入院から数日以内に、相談室の窓口を確認しておきましょう。
自宅で異変に気付く場合
帰省したら冷蔵庫に期限切れの食品が増えていた、同じ話を繰り返す、転びやすくなった、といった変化から始まるケースです。この場合は次の順で進めます。
- 地域包括支援センターに電話し、状況を伝えて助言を受ける(本人が同席しなくても家族だけで相談できます)
- かかりつけ医の受診につなげ、体調や認知機能の変化の原因を確認する
- 必要に応じて要介護認定を申請する。非該当(自立)でも、市区町村の「総合事業」など介護保険外の支援を使える場合があります
在宅で気付くケースは緊急度が読みにくいのが特徴です。「まだ大丈夫」と先送りせず、軽いうちに相談ルートをつくっておくと、急変時の対応が格段に楽になります。
相談先の役割比較:どこに何を相談するか
迷ったら地域包括支援センターで構いません。そのうえで、各窓口の得意分野を知っておくと、話が早く進みます。
【編集部の整理】相談先の使い分け表
| 相談先 | 主な役割 | 相談するタイミング | 費用 |
|---|---|---|---|
| 地域包括支援センター | 高齢者の総合相談。制度案内、要介護認定の申請支援、要支援の人のケアプラン | 最初の相談全般。どこに聞けばよいか分からないとき | 無料 |
| 市区町村の介護保険窓口 | 要介護認定の申請受付、被保険者証、負担割合の証明 | 認定申請・書類手続きのとき | 無料 |
| 病院の医療ソーシャルワーカー | 退院支援、転院・施設の情報、医療費の制度案内 | 入院中〜退院前 | 無料 |
| ケアマネジャー(居宅介護支援事業所) | ケアプラン作成、サービス事業者との調整、継続的な伴走 | 要介護認定の申請後〜サービス利用中 | ケアプラン作成の自己負担なし(介護保険から給付) |
出典:厚生労働省の介護保険制度の解説等を基に編集部作成(2026年8月3日確認)
ケアマネジャーは、市区町村や地域包括支援センターでもらえる居宅介護支援事業所の一覧から家族が選べます。相性が合わないと感じたら、事業所やケアマネジャーの変更も可能です。
要介護認定の申請からサービス利用までの流れ
申請から結果通知までは原則30日以内です。流れは全国共通で、次の5段階です。
- 申請:親が住む市区町村の窓口に申請します。本人のほか家族も申請でき、地域包括支援センター等が申請を支援する仕組みもあります。
- 認定調査:調査員が自宅や入院先を訪問し、全国共通の基本調査74項目と特記事項の聞き取りを行います。ふだんの様子をメモにして渡すと、実態が伝わりやすくなります。
- 主治医意見書:市区町村がかかりつけ医に作成を依頼します。かかりつけ医がいない場合は、市区町村に相談してください。
- 判定:調査結果をコンピュータで一次判定し、保健・医療・福祉の専門家による介護認定審査会が二次判定します。
- 結果通知:原則30日以内に、非該当・要支援1〜2・要介護1〜5のいずれかが通知されます(厚生労働省・介護保険制度)。新規認定の有効期間は原則6か月です。
急ぐ場合は、認定結果を待たずに、ケアマネジャー等と相談のうえ暫定的なケアプランでサービスを使い始められる場合があります。介護保険の給付は申請日にさかのぼって適用されるためです。ただし、想定より低い区分になった場合に一部が自己負担になるリスクがあるため、必ず専門職と相談して進めてください。
介護のお金:自己負担の仕組みと最初に確認すること
介護保険サービスの自己負担は原則1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割)です。介護費用は「親のお金でまかなう」を基本に考えます。
要介護度ごとに1か月に保険給付で使える上限(区分支給限度基準額)が決まっており、その範囲内なら自己負担は1〜3割です。自己負担が高額になった月は、所得区分に応じた上限を超えた分が払い戻される「高額介護サービス費」もあります(いずれも厚生労働省・介護保険制度)。
最初の1か月で確認したいのは、金額の計算よりも「親の家計の全体像」です。
- 年金の受給額(振込通帳・年金額改定通知書)
- 預貯金の口座と、おおよその残高
- 加入している保険(民間の介護保険・医療保険を含む)
- 住宅ローンなどの負債、毎月の固定費
子ども世帯が自分の家計から立て替え続けると、長期戦になったときに共倒れのリスクが高まります。費用の心配があるときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに率直に伝えてください。負担を抑えたプランの工夫や、利用できる軽減制度の案内を受けられます。
仕事はどうする?介護休業の正しい使い方
介護休業(対象家族1人につき通算93日・3回まで分割可)は、自分が介護を担うための期間ではなく、仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間です。
厚生労働省も、介護休業を「家族が介護に専念するため」ではなく「介護と仕事の両立体制を構築するため」の期間として活用することを勧めています。具体的には、要介護認定の申請、ケアマネジャーとの打ち合わせ、サービスや施設の見学・契約、住環境の整備、家族間の話し合いなどに充てるイメージです。
93日をすべて最初に使い切る必要はありません。「初動で2〜3週間、症状が変化したときに再度」のように3回まで分けて使えます。まずは会社に状況を伝え、年次有給休暇や介護休暇(年5日等の短期休暇)と組み合わせて初動をしのぐ方法もあります。介護休業・介護休暇・給付金・短時間勤務などの制度の詳細と会社への相談方法は、別記事で詳しく整理しています(内部リンク設置箇所は編集部指示参照)。
よくある誤解と正しい理解
【編集部の整理】初動でつまずきやすい誤解
| よくある誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 家族が介護をすべて担うべきだ | 介護保険制度は、専門職のサービスと家族の支援を組み合わせる前提の制度です。家族の役割は「介護の全部」ではなく「体制の調整役」で構いません。 |
| 認定結果が出るまで何も使えない | 申請日にさかのぼって給付されるため、専門職と相談のうえ暫定利用が可能な場合があります。 |
| 施設はすぐ入れる/絶対に入れない | 施設の種類・地域により空き状況は大きく異なります。早めに情報収集を始めれば選択肢は広がります。 |
| 介護のお金は子どもが出すもの | 原則は本人(親)の年金・預貯金でまかなう設計で考えます。足りない場合の対応は専門職に相談します。 |
| 遠距離だから何もできない | 認定申請や多くの相談は家族が電話・窓口で進められます。帰省時に認定調査やケアマネジャーとの面談を集中させる方法もあります。 |
今日からできる:家族が最初に確認する情報チェックリスト
以下は、初動で集めておくと手続き全体が速くなる情報です。すべて一度に揃わなくても構いません。
- かかりつけ医(医療機関名・連絡先)と持病・服薬の内容(お薬手帳)
- 健康保険証(後期高齢者医療含む)・介護保険被保険者証の保管場所
- 年金の受給額と振込口座
- 預貯金口座の一覧と通帳・キャッシュカードの保管場所(暗証番号を聞き出す必要はありません)
- 加入している民間保険(証券の保管場所)
- 家の権利関係(持ち家か賃貸か、名義)
- 親自身の希望(どこで、どんなふうに暮らしたいか)
- きょうだい・親族の連絡網と、当面の役割分担(連絡係・お金の管理係・帰省の頻度など)
- 自分の勤務先の両立支援制度(就業規則・人事への確認)
親の希望を聞くことは、後回しにされがちですが最も重要な項目です。「心配だから決めた」ではなく「本人がどうしたいか」を軸にすると、その後の選択で迷いが減ります。
相談先一覧
- 地域包括支援センター:親が住む市区町村のウェブサイトまたは介護保険窓口で担当センターを確認できます。
- 市区町村の介護保険担当課:要介護認定の申請、被保険者証の再発行など。
- 入院中の病院の相談室(医療ソーシャルワーカー):退院支援・転院・医療費の相談。
- かかりつけ医:体調変化の原因確認、主治医意見書。
- 勤務先の人事・上司:両立支援制度の確認(詳細は仕事と介護の両立の記事参照)。
よくある質問(FAQ)
Q1. 親が「介護は受けたくない」と拒否しています。どうすればよいですか。 A. 説得を急がず、まず家族だけで地域包括支援センターに相談してください。本人が同席しなくても相談でき、拒否があるケースへの働きかけ方について助言を受けられます。健康チェックや配食など、本人が受け入れやすい入り口から始める方法もあります。
Q2. 遠方に住んでいて頻繁に帰省できません。申請などは代わりにできますか。 A. 要介護認定の申請は家族が行えます。地域包括支援センターへの相談も電話で可能です。帰省のタイミングに認定調査やケアマネジャーとの面談を合わせると、少ない回数で手続きを進められます。
Q3. 要介護認定の結果に納得できないときは。 A. まず市区町村に判定理由の説明を求め、状態に変化があれば「区分変更申請」を検討します。処分自体に不服がある場合は、都道府県の介護保険審査会への審査請求という手続きもあります。どちらが適切かはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください。
Q4. 40〜64歳の親(または配偶者)でも介護保険は使えますか。 A. 40〜64歳の人は、末期がんや脳血管疾患など国が定める16の特定疾病が原因で介護が必要になった場合に、要介護認定を受けて介護保険サービスを利用できます(厚生労働省・介護保険制度)。
Q5. 認知症が疑われる場合も、流れは同じですか。 A. 相談先と認定申請の流れは同じです。加えて、早めの受診で原因を確認することと、本人の判断能力があるうちにお金や暮らしの希望を話し合っておくことが重要になります。認知症に備える準備は別記事で詳しく解説しています。
Q6. 介護のことで家族の意見が割れています。 A. 情報格差が対立の原因になりがちです。ケアマネジャーとの面談やサービス担当者会議に複数人で同席し、同じ説明を同じ場で聞くと、認識が揃いやすくなります。役割分担は「できる人ができることを」で決め、担い手が固定化しないよう定期的に見直してください。
まとめ
親の介護の初動は、「地域包括支援センター(入院中は医療ソーシャルワーカー)に相談する」「要介護認定を申請する」「親の情報とお金を確認する」の3つに集約されます。最初の1か月の目標は、家族が介護を完璧にこなすことではなく、専門職と一緒に続けられる体制をつくることです。介護は長期戦になり得ます。仕事・住まい・認知症への備え・もしものときの支えについては、関連記事もあわせてご覧ください。
参考資料・出典
- 内閣府「令和8年版高齢社会白書」(2026年6月12日閣議決定)https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2026/zenbun/08pdf_index.html
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」/介護サービス情報公表システム「介護保険の解説」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省・社会保障審議会介護保険部会資料「要介護認定について」(令和7年6月30日。厚生労働省サイト内・審議会資料)
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html /介護休業制度 特設サイト「法改正のポイント」(2025年4月施行分)https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医療行為・法的手続き・個別のサービス利用を勧めるものではありません。制度の適用や手続きの詳細は、お住まいの市区町村・地域包括支援センター等でご確認ください。