
はじめに
千葉県印旛郡酒々井町(しすいまち)は、豊かな自然と歴史を有する一方で、成田国際空港近郊のベッドタウン・商業拠点として発展してきた人口約2万人の町です。近年は少子高齢化と人口減少が進み、高齢化率は3人に1人が高齢者という状況に達しました。一方、在留外国人も増え、2023年末時点で町人口の約4.6%(約926人)を占めています。町財政は小規模自治体として堅実に運営されていますが、今後は職員高齢化に伴う人件費増や老朽インフラ更新への対応が課題となっています。また治安面では年間100~150件ほどの刑法犯認知件数があり、自転車盗や車上ねらい等の窃盗犯が多くを占めます。こうした現状を踏まえ、本記事では酒々井町の最新データや住民の声をもとに課題を整理し、防犯・高齢福祉・子育て・産業振興・都市基盤・コミュニティなど各分野で具体的かつ実現可能な政策オプションを提示します。行政職員と町民がともに読み、町づくり議論の叩き台とできるよう、冷静で分析的かつ明快な語り口で提案をまとめます。最後に、横断的な優先課題トップ5についてロードマップとKPI(重要指標)を示し、酒々井町が掲げる将来像「人・自然・歴史・文化が調和した活力あふれるまち 酒々井」の実現に向けた道筋を提案します。
酒々井町のプロフィールと現状
基本情報(地勢・交通・歴史)
酒々井町は千葉県北部、印旛沼に近い台地上に位置し、面積は約19.0km²とコンパクトです。北西に佐倉市、北東に成田市、南に八街市・富里市、西に印西市と接しています。地勢は平坦な台地と低地が混在し、町西端は湿地帯を含みます。交通面ではJR成田線(酒々井駅・南酒々井駅)と京成本線(京成酒々井駅・宗吾参道駅)が通り、東京方面や成田空港方面へ約1時間圏内でアクセス可能です。特に成田空港へは酒々井駅から電車で約20分(15km)と近く、さらに2013年には東関東自動車道・酒々井ICが開通したことで都心・空港双方への交通利便性が高まりました。現在、町内には酒々井PA(パーキングエリア)も整備され、多くの観光バスが立ち寄っています。歴史的に見ると、戦国時代には千葉氏の居城・本佐倉城が置かれ北総地域の中心として栄え、江戸時代には成田山参詣道の宿場町(酒々井宿)として発展するなど、豊かな歴史と文化を有します。町名の由来は「酒の湧く井戸」の伝説によるとされ、現在も老舗酒蔵「飯沼本家」が地酒を醸し特産品となっています。主な観光資源には、酒々井プレミアム・アウトレット(2013年開業、年間来訪者約700万人)や国史跡の本佐倉城跡、酒々井温泉、ハーブガーデン等があり、毎年11月には新酒祭などの文化イベントも開催されています。行政区画としては1889年の町村制施行以来一度も合併しておらず、全国でも有数の「日本一古い町」の一つとして独立を保ってきました。空港近接と高速ICという地の利、そして豊かな歴史文化資源を併せ持つ小さな町です。
人口動態と少子高齢化
酒々井町の人口は、2005年の21,385人をピークに緩やかな減少傾向にあります。直近の国勢調査(2020年)では20,745人、さらに住民基本台帳によれば2025年11月1日時点で20,057人となっています。1990年代に2万人を超えて以降、2010年21,234人→2015年20,955人→2020年20,745人と微減が続いており、令和に入りついに2万人を割り込む状況です。世帯数は2020年で9,375世帯、平均世帯人員は2.21人と小世帯化が進んでいます。年齢構成を見ると少子高齢化が鮮明で、年少人口(0~14歳)は2010年の2,706人から2020年には2,015人へ減少、生産年齢人口(15~64歳)も13,851人から11,858人へ減少しました。一方、老年人口(65歳以上)は2010年4,618人→2020年6,872人と増加し、高齢化率は21.8%(2010年)から33.1%(2020年)へ大幅に上昇しました。現在では町民の3人に1人が高齢者という状況です。今後も高齢化は進み、千葉県の推計では2040年頃に高齢化率約40%でピークに達する見込みです。同様に総人口も2040年に約1.7万人、2050年には約1.53万人まで減少すると予測されています。高齢者の内訳では「後期高齢者(75歳以上)」が2025年前後から急増し、2030年代には75歳以上人口が65~74歳人口を逆転する見通しです。これに伴い、医療・介護のニーズが一層高まることが予想されます。
高齢者世帯も増加傾向にあり、独り暮らしの高齢者は2020年に983人と2010年(576人)の約1.7倍に増えました。全世帯に占める高齢単身世帯・高齢夫婦のみ世帯の割合も年々上昇し、2020年時点で高齢者を含む世帯が全世帯の過半(約54%)を占めています。つまり、地域で見守りや生活支援を必要とする高齢世帯が今後ますます増えることを意味します。一方、出生数は近年年間80~90人程度と低迷し、合計特殊出生率(推計)は1.3前後に留まっています。現役子育て世代(20~40代)の町外流出も課題で、2015~2020年には特に20代女性の転出超過が見られました(進学・就職で都市部へ流出し、そのまま定住するケースが多いと分析されています)。コロナ禍以降、東京都心からの子育て世代の移住が若干見られ、2021年度には転入が転出をわずかに上回る社会増も記録しましたが、長期的な人口維持には至っていません。総じて酒々井町は人口減少と急速な高齢化のただ中にあり、子育て世代の定住促進と高齢者支援が喫緊の課題となっています。
産業構造と財政状況
産業構造: 酒々井町の産業は第三次産業(サービス業・商業)が中心です。2020年国勢調査によれば、町内就業者数約9,170人のうち約80%が第三次産業に従事し、第二次産業(製造業・建設業等)は約15%、第一次産業(農林業)はわずか2~3%に過ぎません。町民の就業先は町外が多く、町内に通勤している人は全就業者の26%ほど(約2,380人)に留まり、残り約3/4は佐倉市や成田市など周辺自治体へ通勤しています。逆に町外から酒々井町へ通勤する人も約4,020人おり、周辺市町との間で広域的な労働力交流がある状況です。町内の主要な雇用先としては、大規模商業施設の酒々井プレミアム・アウトレット(約218店舗)が最大級で、近隣市からの従業員も多数働いています。また町南部には酒々井南部新産業団地が整備され、運送・倉庫業など物流系企業がいくつか立地しています。農業分野ではコメを中心とした近郊農業が営まれていますが、農家数は減少傾向で担い手不足が課題です。2015年の農林業センサスによれば農家数は286戸(うち販売農家116戸)で、農業就業者の65歳以上率は6割以上に達しています。耕作放棄地や高齢農家の増加が懸念され、都市近郊の農地を保全しつつ新規就農者を確保する取り組みが求められます。商業サービスでは、町内に大型スーパー(2017年にスーパーセンター・トライアル)やホームセンター(2019年にコメリ)等が新規出店し買い物環境は充実しましたが、個人商店は減少傾向で旧来の商店街はシャッター通り化が進んでいます。地域経済規模は近隣市に比べ小さく、消費や雇用面で周辺都市との相互依存関係が強いのが現状です。今後、成田空港の更なる機能強化(第3滑走路計画等)や高速ICの利便性を活かした企業誘致・観光振興が地域経済活性化のカギとなるでしょう。
財政状況: 酒々井町の一般会計規模は毎年度概ね75~80億円前後(令和5年度当初予算で歳入歳出約75億円)と、小規模自治体としては標準的です。直近の財政力指数は0.71で、自主財源(町税等)が標準財政規模の約7割、残りを地方交付税に一定程度依存しています。ただし町域が小さくインフラ維持コストが比較的低いことから、一人当たり歳出入は県内でも低い水準にあります。実質公債費比率や将来負担比率も良好で、総じて財政は健全性を保っています。しかし近年は高齢化に伴う扶助費(社会保障関係経費)や職員人件費の増加により、令和4年度の経常収支比率は94.7%とやや硬直化してきました。財政調整基金(いわゆる町の貯金)は令和5年度末見込みで約5.9億円と標準財政規模(約52億円)の11%程度を確保していますが、コロナ禍で一時取り崩しも行われました。町債残高は令和4年度末で約50億円台となっており、将来的なインフラ更新需要を控え慎重な運営が必要です。歳入の内訳を見ると、町税収入が全体の約40~45%(個人町民税が主)、地方交付税交付金が約15%、国県支出金が20%前後、残りを地方債等で賄う構造です(令和7年度当初予算ベース)。歳出面では民生費(社会保障関係費)が最大で全体の3割超を占め、ついで教育費・総務費・土木費がそれぞれ約15~17%前後で並びます。近年は子育て支援や高齢者福祉への支出比重が高まる一方、投資的経費は抑制気味で、公共施設の老朽化対策が今後の課題となっています。実際、町内には高度経済成長期前後に整備された上下水道・道路橋梁・公園施設が多く存在し、今後5~10年で更新需要が本格化すると試算されています。町は既に橋梁37橋について長寿命化修繕計画(令和6年度策定)をまとめ、予防保全による計画的な補修でコスト平準化と安全確保を図る方針です。また道路照明や標識などの道路附属物、上下水道管路、公園遊具等についても個別の長寿命化計画を立て、計画的な更新・維持管理に着手しています。財政面では、これらインフラ更新に備えつつ将来世代に過度な負担を残さない持続可能な運営が求められます。総じて酒々井町の財政は現時点で健全といえますが、歳出増への対応(業務効率化・広域連携等)や積極的な歳入確保策(企業誘致、ふるさと納税拡充など)が今後の重要なテーマとなっています。
酒々井町の主要計画と将来ビジョン
第6次酒々井町総合計画(2023~2032年)
酒々井町では町政の最上位計画として約10年スパンの総合計画を策定しています。現行の第6次総合計画は2023年9月に策定され、令和5年度から令和14年度までの基本構想および前期基本計画(5か年)を示すものです。将来都市像(目指す町の姿)として掲げられたのが「人・自然・歴史・文化が調和した活力あふれるまち 酒々井」というキャッチフレーズです。これは前計画までの理念に「文化」の要素を新たに加え、町の強みである豊かな自然環境と歴史・伝統文化を次世代に継承しながら、人々が希望と誇りをもって暮らせる活力ある町を目指すものとされています。第6次総合計画では町民と行政の協働によるまちづくりが強調され、「持続可能なコンパクトシティの実現」も重要なキーワードとなりました。
前期基本計画において施策は7つの分野に体系化され、各分野ごとに基本目標と施策目標が設定されています(全42施策)。例えば「生活環境・安全」分野では基本目標に「安全・安心に暮らせるまちづくり」を掲げ、防災力強化や防犯体制充実、交通安全対策などが重点施策とされています。また「保健福祉」分野では高齢者支援として「地域包括ケア体制の構築」や健康づくり推進、「子育て・教育」分野では「子育て支援の充実」や「学校教育の充実」が掲げられました。「産業・経済」分野では農業振興や企業誘致、観光振興、雇用拡大などを柱とし、「都市基盤」分野ではコンパクトな都市整備や公共交通充実、老朽インフラの計画的更新が盛り込まれています。このような重点施策にはKPI(重要業績指標)も定められ、例えば「地域包括ケア構築」であれば在宅医療・介護サービスの利用者数や高齢者サロン参加率、「子育て支援充実」では待機児童ゼロの継続や子育て支援サービス利用率、「防犯体制充実」では刑法犯認知件数の減少や防犯ボランティア参加人数の増加など、具体的な指標が明示されています。人口に関しては総合計画自体に数値目標は掲げられていませんが、後述する地方創生戦略との整合で2030年前後まで町人口2万人規模を維持することが暗黙の目標とされました。また施策の成果測定に住民意識調査での満足度指標も活用し、「住みよさ実感度」を計画期間中に向上させることを狙っています。2025年時点で第6次計画は始動したばかりですが、町はSDGs(持続可能な開発目標)の理念も取り入れつつ各施策を進めています。人口減少社会への対応として、総合計画と連動する各種個別計画(後述)が統合的に推進されることが期待されます。
酒々井町まち・ひと・しごと創生総合戦略(地方版総合戦略・第2期 2022~2026年)
酒々井町では2015年に第1期の地方創生総合戦略(まち・ひと・しごと創生総合戦略)を策定し、人口減少克服と地域活性化に取り組んできました。2022年からは第2期総合戦略(酒々井町まち・ひと・しごと創生推進計画)をスタートさせています。第2期戦略は2022~2026年度の5か年計画で、「次世代に誇れるまちづくり」を基本理念とし、4つの基本目標を設定しました。その4つとは: ①「潤う地域」をつくり安心して働ける酒々井(地元経済の活性化と雇用創出)、②地域のつながりを築き郷土への新しい人の流れをつくる酒々井(交流人口・関係人口の創出)、③結婚・出産・子育ての希望をかなえる酒々井(子育て支援充実による出生率向上)、④高齢者が元気で活躍できる酒々井(CCRC的なまちづくりとDX活用によるコンパクトシティ)です。人口ビジョンでは、2060年に町人口17,500人を目標値と定めました(何もしない場合の推計約13,000人より高めの水準で、戦略的施策により人口減少を緩和する狙い)。具体的な数値目標としては、年間40人程度の若年層転入超過を生み出すことや、町の合計特殊出生率を1.60まで引き上げることなどが掲げられています。
施策群は国の総合戦略方針に沿った4本柱で構成され、例えば①の柱(地元経済)では農商工連携による新産業創出や企業誘致支援、デジタル技術導入補助等、②の柱(人の流れ)では観光拠点(アウトレット等)を核とした情報発信や「関係人口」創出イベントの開催、UIJターン(移住・定住)促進策等、③の柱(子育て支援)では結婚相談や妊娠~子育てに切れ目ない支援(経済支援・保育充実・働き方支援)、④の柱(高齢者活躍)では高齢者サロン支援や生活サービス集積による「酒々井版CCRC」構想の検討(高齢者が移住しやすい拠点づくり)など、多岐にわたる取り組みが盛り込まれています。KPIも設定され、転入者数(年間○人増)や出生数(年間○人確保)、高齢者就業率・社会参加率の向上など数値目標が明示されています。2022年度から施策が始まり、例えば子育て支援分野では2022年に第3子以降の保育料無償化を拡充するといった成果が出ています。とはいえ2024年時点の中間評価では、期待したほど若年層の転入超過は実現せず依然人口減少が続いており、さらなる施策強化が求められる状況です。町としてはこの総合戦略を総合計画と車の両輪と位置付け、「誰もが活躍し安心して暮らせる酒々井」の実現を目指しています。
都市計画マスタープラン・立地適正化計画(2024年改訂)
酒々井町では、コンパクトで利便性の高いまちづくりを推進するため都市計画マスタープランと立地適正化計画を一体的に策定しています。初版は2018年に公表されましたが、最新の第6次総合計画に合わせて2024年3月に改訂版が策定されました。新プランでも将来都市像を「人・自然・歴史・文化が調和した活力あふれるまち 酒々井」と掲げつつ、現実的な施策として「持続可能なコンパクトシティづくり」が中心テーマとなっています。具体的には、町内を居住誘導区域と都市機能誘導区域に区分し、東酒々井・中央台(JR酒々井駅や京成酒々井駅周辺)を主な居住エリアと定め、公共施設や商業施設もそのエリア内に集約配置する方針です。これにより将来の人口減少下でも一定の生活サービスを維持し、高齢者等の移動負担を軽減する狙いがあります。一方で誘導区域外で大規模開発を行う場合には事前届出を義務付け、郊外への拡散抑制策もとっています。既存の郊外住宅団地や集落については、コミュニティ交通(循環バス等)の導入や生活インフラ維持策により居住環境を下支えする計画です。
改訂版では老朽インフラの計画的改修も重視されました。特に誘導区域内の都市計画道路・公園等について、都市計画法の仕組みを活用し計画的な長寿命化改修を行う方針が盛り込まれています。これにより、都市計画税などの財源を改修費に充当しやすくし、インフラ老朽化への対応力を高めています。またマスタープランでは、道路網整備や公共交通充実の目標値も設定され、例えば「コミュニティバスの増便」「鉄道駅へのアクセス改善」「主要生活施設への徒歩圏人口割合の維持」等のKPIが示されています。立地適正化計画については県内の先進自治体として2018年版を策定済みで、酒々井町はこの計画に基づき既に地域再生事業にも取り組んできました。直近の進捗として、居住誘導区域の中心であるJR酒々井駅東口に防犯ボックス(後述)や交流拠点が設置されたほか、駅前自転車駐輪場の有料化(管理人配置)により盗難防止策が強化されました。今後の課題として駅周辺の未利用地活用(空き店舗へのテナント誘致、公共施設の再配置)などが挙げられます。総じてこの都市計画マスタープランと立地適正化計画は始まったばかりですが、人口減少下での都市の持続性確保に向けた長期的指針として重要な位置付けです。町は住民説明会等を通じ理解を求めながら、20年先を見据えた市街地のグランドデザインを描いています。
インフラ老朽化対策計画(道路・橋梁・公共施設等)
酒々井町は公共インフラの包括的管理計画(アセットマネジメント計画)を策定し、個別施設ごとの長寿命化計画を進めています。道路・橋梁分野では「道路構造物長寿命化修繕計画」(令和6年度版)を策定し、町管理の橋梁37橋について今後20年間の補修計画を立てました。これにより定期点検結果に基づき優先度を付けて補強・補修工事を実施し、突発的な大規模改修コストの平準化と安全確保を図っています。また道路附属物(標識・街路灯・ガードレール等)についても2025年9月に長寿命化計画を公表し、計画的な更新に着手しました。公園施設では、2023年度に「公園施設長寿命化計画」の策定調査を実施し、老朽化した遊具や園路の段階的更新、植栽管理の計画化に取り組んでいます。公共建築物については町役場庁舎・学校施設・公民館など主要施設ごとに個別施設計画を定め、省エネ改修や耐震補強を計画的に進めています。例えば老朽化した旧図書館施設は用途転換する計画で、民間活力の導入(PFI/コンセッション方式)も視野に検討されています。
インフラ更新計画の進捗としては、橋梁では既に老朽度の高い一部橋で補修工事が始まり、令和4~5年度で2橋の補強工事が完了しました。道路照明はLED化を推進し、2025年度までに全防犯灯の約60%をLEDに更新済みです(夜間の明るさ確保と省エネ効果を両立)。しかし財政負担との兼ね合いもあり、全ての老朽施設を一度に更新することは困難で、長期的視点に立った優先順位付けが必要となっています。町では財政シミュレーションの中で、今後10年程度で投資的経費のピークが訪れることを見据え、基金積立計画の立案も進めています。インフラの長寿命化は安全・利便性維持の基盤であり、総合計画の「都市基盤」分野で掲げる目標(便利で快適に歩いて暮らせるまち)を下支えするものです。計画推進には専門技術者の確保や住民の理解も重要となるため、町は逐次情報発信を行い協力を求めています。
防災計画および環境(脱炭素)関連計画
酒々井町の地域防災計画は防災会議により策定される法定計画で、地震災害対策編・風水害対策編などから成ります。東日本大震災(2011年)や近年の大型台風被害を踏まえ、最新の改訂では風水害時の早期避難体制や在宅避難支援など減災施策が強化されました。またハザードマップも整備され、町内で想定される最大震度は首都直下地震で6弱~6強、液状化リスクは印旛沼干拓地に近い一部地域で「やや高い」といった情報が周知されています。町は防災行政無線や緊急速報メールで避難情報を発信できる体制を整えていますが、住民の避難行動率はまだ低く、2022年の台風時も自主避難者はごく僅かでした。今後は平時から住民の防災意識を高める取り組みが課題です。
環境分野では、酒々井町は2023年2月にゼロカーボンシティ宣言(2050年CO₂排出実質ゼロ宣言)を表明し、同年3月に地球温暖化対策実行計画(地域脱炭素計画)を策定しました。ここでは公共施設のみならず町域全体での温室効果ガス削減目標を掲げ、2030年までに2013年度比でCO₂排出量を46%削減、2050年に実質ゼロを達成する方針です。そのための再生可能エネルギー導入目標も設定されており、2050年に町内の総発電量の38%相当を再エネで賄う計画です。現在、町庁舎や小中学校への太陽光パネル設置が進み、全公共施設で合計約130kWの太陽光発電設備が稼働中です(年間約13万kWh発電)。また民間の太陽光発電設備も住宅や事業所に約50か所導入されています。町の年間CO₂排出量は推計で約10万トン(2015年)ですが、2030年に55%減(5.5万トン)を目指しており、その達成には家庭や事業者の省エネ協力が鍵となります。町では全家庭へのLED電球交換事業を計画するなど、住民向けの省エネ支援策も講じ始めています。環境施策のKPIとして、市内CO₂排出量、再エネ電力比率、住宅太陽光導入件数、EV充電器設置数、ごみ資源化率などが設定され、毎年度環境省によるフォローアップも受けています。今のところ住民の環境意識も徐々に高まりつつあり、小中学校での環境教育(出前授業による省エネ・節電学習)なども行われています。温暖化への適応策(酷暑対策や防災面での配慮)も含め、快適で持続可能な地域を目指し総合的な環境施策を進めているところです。このように、防災・減災と環境(脱炭素)は総合計画の横断的テーマでもあり、町行政全体で重点推進されています。
分野別の現状と課題整理
治安・防犯
現状: 酒々井町の犯罪発生件数は千葉県内でも比較的少ない部類ですが、年間100~150件前後で推移しています。2022年の刑法犯認知件数は約140件(人口1万人あたり56件)で県平均より低く、安全な地域といえます。しかし内訳の8割以上が窃盗犯で、その多くは自転車盗や車上ねらい等の非侵入窃盗、さらに住宅・倉庫への侵入盗です。例えば2025年8月末時点では、窃盗犯計95件中、自転車盗17件、自動車盗4件、オートバイ盗6件、車上ねらい2件と乗り物関連の盗難が目立ちます。また空き巣などの侵入窃盗も増加傾向がみられます。一方、凶悪犯(殺人・強盗など)はほとんど発生せず、粗暴犯(傷害・暴行等)も年数件程度に留まります。特殊詐欺(いわゆる「電話de詐欺」オレオレ詐欺等)は高齢者を中心に毎年被害が報告されており、2023年には町内で5件・被害総額約1,165万円の振り込め詐欺が確認されています。手口はオレオレ詐欺や還付金詐欺が多く、千葉県警が緊急警戒を行う事態もありました。また県内で社会問題となっている自動車盗難と違法解体ヤードについて、酒々井町も無関係ではありません。印旛地域には過去、盗難車両を違法分解・海外輸出するヤードが点在し、千葉県は2015年に全国初の「ヤード対策条例」を施行して規制を強化しました。その効果もあって県内の車両盗難件数は減少傾向ですが、依然として酒々井町周辺でもトラックや高級車の盗難事件が散発しています。実際2023年には酒々井町内で夜間に高級SUV車が盗まれる事件が起き、犯人グループが摘発されました。
住民の体感治安については、2021年の町民アンケートで「治安に不安を感じる」と答えた人は約20%で、残りの多くは「どちらかといえば安心」「安心」と答えています。安心と感じる理由として「地域の見守り活動がある」「隣近所の目がある」が挙がり、防犯パトロール等の地域活動が一定の信頼を得ている様子です。一方、不安の声としては「街灯が少なく夜道が暗い」「空き家が増えていて心配」「外国人の集団を見かけると不安」といった意見も少数ながらありました。特に夜間の街灯不足は具体的な指摘が多く、通学路など暗い道の明るさ改善が求められています。
課題: 第一に、身近な窃盗犯罪の多さです。アウトレットや大型店の駐輪場での自転車盗難、無施錠車両からの車上荒らしが後を絶たず、住民や来訪者の防犯意識向上と物的対策の強化が課題となっています。第二に、高齢者を狙う特殊詐欺です。被害額が年々増加傾向にあり、高齢世帯の多い酒々井町では深刻な問題となっています。第三に、空き巣被害も増加の兆候が見られるため、住宅の施錠徹底や地域ぐるみの見守り強化が必要です。また、違法滞在者への懸念も指摘されています。成田空港近隣で外国人労働者が増える中、ごく一部に不法滞在の疑い事案があるとの不安の声がありました。町内で外国人コミュニティが固まって居住するケースは多くありませんが、文化の違いからゴミ出しルールを巡る誤解や、複数世帯の同居による騒音など、生活上の摩擦が発生する懸念はあります。これらは犯罪というより生活習慣の違いによる摩擦であり、「外国人だから危険」という短絡的な見方は禁物ですが、課題としては多文化共生支援の不足が背景にあります。防犯情報や地域ルールの周知が言葉の壁で外国人住民に届きにくい現状があり、結果的に相互理解不足から不安や誤解を生みやすくなっています。
さらに、防犯ボランティアの高齢化と人手不足も課題です。現在、町内では「しすい防犯パトロール隊(ブルドックス)」という住民ボランティア団体が精力的に活動していますが、メンバーは主に60~70代で、新規参加者の確保が課題となっています。同様に自治会による見守り活動も担い手不足が懸念され、将来的な持続性が不透明です。また防犯カメラの設置台数不足も指摘されています。町内の公共施設や主要交差点には十数台が設置されていますが、カバーできていないエリアも多く、犯罪抑止と捜査支援のためには増設の要望があります。最後に、子どもや女性の安全安心への配慮も引き続き必要です。幸い大きな事件は近年ありませんが、暗い通りへの街灯増設、子どもへの不審者情報提供、通学路の安全点検など、未然防止策を継続することが求められます。
高齢化・福祉・医療
現状: 酒々井町の高齢化率(65歳以上人口割合)は2020年で33.1%、2025年には34%超に達すると推計されています。75歳以上の「後期高齢者」比率も上昇しており、2025年時点で町人口の約21%が75歳以上と見込まれます。高齢者人口は今後もしばらく6千人台後半で推移し、2030年代に75歳以上人口が65~74歳人口を上回る超高齢社会へ突入します。このような中、町の介護・医療サービス需要は増加が避けられません。
町内には診療所や介護施設はありますが、入院対応の病院が1つも無いという構造的な医療提供体制の弱みがあります。隣接する佐倉市には基幹病院がありますが、酒々井町単独での病院誘致・経営は難しく、民間病院の誘致もうまくいっていません。夜間救急も近隣市に頼らざるを得ない状況で、「急病の際が心配」「夜間に具合が悪くなったら不安」といった声が町民アンケートでも上位に挙がっています。人口減少で地方の病院経営環境が厳しさを増す中、この病院不在問題は町の抱える大きな課題です。
高齢者の生活状況を見ると、独り暮らしや高齢夫婦のみ世帯が増えています。家族と同居しない高齢者が増えることで、日常的な声かけや見守り、急病時対応などでカバーしきれない部分が生じています。他自治体では「最近顔を見ない高齢者が自宅で倒れていた」という事案も起きており、酒々井町でも潜在的なリスクがあります。特に高齢者が運転免許を返納した後の移動手段確保や、認知症高齢者への地域見守り体制づくりは重要な課題です。公共交通が不便な地域であることから、免許返納をためらう高齢者もおり、移動支援策は喫緊のニーズと言えます。
介護サービス基盤については、要介護高齢者の増加に対し特別養護老人ホーム等の入所定員が将来的に逼迫する懸念があります。既に町内の特養は満床で、空き待ち状態との声もあります。やむなく町外の施設に入所せざるを得ないケースもあり、いわゆる「介護難民」を生まない取り組みが必要です。また在宅介護を支える訪問介護員や看護師など介護人材の確保も課題で、人手不足からサービス利用の制限が生じる恐れも指摘されています。介護職の担い手は全国的に不足していますが、特に地方の小規模自治体では待遇面などで人材確保が難しく、将来のサービス維持に不安があります。
さらに、フレイル(虚弱)や閉じこもりへの対策も課題です。コロナ禍で高齢者の外出機会が減った影響もあり、「筋力が落ちた」「物忘れが増えた」といった相談が地域包括支援センターに寄せられています。サロン活動など高齢者の社会参加がコロナで一時途絶えたことで、心身機能の低下が進んだとの指摘もあります。健康寿命の延伸には、継続的な介護予防・健康づくりの取り組みを拡大する必要があります。
高齢者の安全安心面では、前述の特殊詐欺被害に加え、悪質訪問販売などの被害も懸念されます。判断力が衰え孤独感のある高齢者は詐欺に遭いやすく、今後も手口の巧妙化が予想されるため、見守りと啓発を強化しなければなりません。また高齢ドライバーの交通安全も課題です。75歳以上の免許更新時に認知機能検査が強化され、多くの高齢者が返納を選ぶようになりましたが、一方で運転を続ける高齢者もおり、実際に物損事故等が時折発生しています。高齢運転者自身の安全確保と、返納後の移動支援という両面で対策が必要です。
最後に、地域包括ケアシステム構築は道半ばです。住み慣れた地域で最後まで暮らすには医療・介護・生活支援が一体となった包括ケア体制が欠かせませんが、現状は医療資源が町外に頼っていることもあり、理想の体制には達していません。多職種連携(医師会・介護事業者・行政など)の場はあるものの、たとえば在宅で最期を迎える際の支援体制など課題が残ります。以上より、高齢者が「住み慣れた地域で安心して暮らし続ける」ためには多面的な対策が不可欠であることが分かります。
子育て・教育・若年層定住
現状: 酒々井町の年間出生数は近年80~90人程度で推移し、合計特殊出生率(TFR)は推定1.3前後と低迷しています。少子化により、2020年時点で0~4歳人口は町全体で約600人、5~9歳も約800人と若年層が細る傾向です(10年前より各100~200人規模で減少)。町内の教育施設は、小学校が3校(酒々井小・大室台小・東酒々井小)、中学校は1校(酒々井中学校)のみです。児童生徒数は減少中で、2023年度は小学校3校合計で約700人、中学校約250人となっており、30年前と比べると半数以下の規模です。保育環境を見ると、町内には認可保育園が2園(公立1・私立1、定員計180名)と認定こども園1園(私立、定員120名)、小規模保育施設が2か所あります。待機児童は2023年4月現在で0名となっており、一応受け皿は足りています。ただし1~2歳児クラスは定員が逼迫する年度もあり、今後も注意が必要です。学童保育(放課後児童クラブ)は町内に3クラブあり、小学生の約4割が利用しています。子育て支援拠点として中央公民館内に「子育て支援センター」があり、未就園児親子の交流や育児相談を実施しています。2019年には一時預かり保育施設「すくすくルーム」も開設し、親のリフレッシュ保育を行っています。
酒々井町の子育て支援策は財政規模の割に充実している面があります。例えば、医療費助成は中学校卒業まで子どもの医療費自己負担を無料化(所得制限なし)しており、これは県内町村でも手厚い水準です。さらに2022年度から第3子以降の保育料・幼稚園利用料を全額無償化しました(千葉県内の町村では先進的な取り組みです)。学校教育環境では、小中学校の普通教室にエアコンを完備し、1人1台のタブレット端末配備(GIGAスクール構想)も達成されるなど学習環境整備が進んでいます。学力面では全国学力テスト結果は県平均並みで推移し、大きな課題はありませんが、中学数学の正答率がやや低めで町教育委員会が対策を検討中です。部活動では中学校で野球・サッカー・吹奏楽部などが活動しており、近年吹奏楽部が県大会上位入賞する成果も上がっています。
若者の定住動向: 酒々井町の20~30代人口は減少傾向が続いています。特に高校卒業後に市外へ出る若者が多く、そのまま都市圏で就職・定住してしまうケースが目立ちます。20代後半女性の社会増減率は長らくマイナスが続き、いわゆる「若年女性の流出」が課題となっています。これは進学先・就職先が都会に集中しているためですが、地元に戻ってくる人を増やす方策が必要です。一方で近年はコロナ禍を機に千葉県郊外へ移住する30代夫婦が増え、酒々井町にも数十世帯が転入しました。前述のとおり2021年度には久々に社会増(転入超過)を記録しています。定住促進策として町は空き家バンク制度を運用し、移住希望者への情報提供や住宅改修補助(金額上限50万円)を行っています。しかし空き家の利活用成約件数は年1~2件にとどまり、本格的な成果には至っていません。
住民アンケートでは「子育て環境は概ね満足」という声が半数以上を占めていますが、一方で「高校・大学が町内になく、進学時に子どもが町を離れるのが寂しい」「娯楽施設が少なく若者にとって魅力が足りない」といった意見もあります。実際、買い物や遊びの場は隣接する佐倉市・成田市に出る家庭も多く、特に中高生~若い世代にとって「町に娯楽が少ない」点は定住意欲を削ぐ要因となっています。総じて子育て世帯は酒々井町の暮らしやすさ自体には一定の満足を感じつつも、子どもの成長に伴い都市部へ転出するケースが少なくない状況です。
課題: 第一に、出生数の減少に歯止めをかけることです。現状の合計特殊出生率1.3程度では世代再生産に遠く及ばず、このままでは将来的に町の人口縮小が避けられません。若年女性の流出が続く限り出生数も減り続けるため、結婚・出産適齢期の若者が地元に定着し安心して子どもを産み育てられる環境整備が喫緊の課題です。第二に、子育て支援サービスの更なる充実と周知徹底です。酒々井町は全国的に見れば支援策が手厚いほうですが、それを十分活用できていない家庭もあります。例えば第2子以降の保育料軽減策などを知らない保護者もおり、情報発信の強化が必要です。また学童保育について、希望者は概ね受け入れられているものの長期休暇中の居場所づくりや障がい児の受け入れ体制など改善点が指摘されています。
第三に、中高生年代の環境整備です。町内に高校が無いため中学生は卒業後ほぼ町外へ通学しますが、その際の朝夕の交通利便性や防犯面のサポートが課題となります(特に女子生徒の夜間帰宅時の不安など)。また放課後に気軽に集える場所(カフェや娯楽施設)が町内に少なく、若者の居場所不足が課題です。これが「町は退屈」と感じられて若者流出の一因ともなっています。第四に、教育面の課題です。小中学校でICT環境は整ったものの、それを活かす教員研修やカリキュラム整備が十分でなく、例えばプログラミング教育など新しい分野で指導体制強化が必要です。また不登校児童生徒は2023年度で小中合わせ10名程度いますが、町内に適応指導教室(不登校支援のフリースペース)が無く、佐倉市の施設を借りている状況で、自前の教育支援の受け皿を持てていない課題もあります。
第五に、若年層の住宅・雇用の場の不足です。結婚や子育てを機に町外から転入する世帯はあるものの、地元出身の若者がUターンしない要因として「町内に魅力ある仕事が少ない」「希望する新築住宅用地が少ない」ことが挙げられます。せっかく育った若者が地元で働きたくても適当な求人がなく、結果として都会に定住してしまう問題です。このままでは若年人口減に拍車がかかる懸念があります。最後に子育て世代のネットワークの希薄化です。コロナ禍で親同士の交流機会が減り、孤立育児への不安が指摘されています。子育て支援センターへの参加率も低下傾向にあり、再び親世代同士が気軽につながるコミュニティを作っていく必要があります。親世代のつながりが弱いと、いざというとき互いに頼れず育児不安が高まる要因となるため、地域ぐるみのサポート体制づくりが求められています。
産業・雇用・観光
現状: 前述のとおり酒々井町は就業者の大多数がサービス業など第三次産業従事であり、農工両面で産業基盤が小さい「ベッドタウン兼近郊農村」という性格です。町民所得水準は近隣市より低めで、特に若年層では町外就労による「出稼ぎ型」が多くなっています。町内に高付加価値の産業が育っておらず、地元経済に落ちるお金が限られている点が課題です。製造業の事業所数・従業者数が少ないこと、農業も個人経営中心で市場競争力が高くないことが、稼ぐ力の弱さにつながっています。
農業では高齢化に伴う廃業や耕作放棄地増加が進みつつあり、特産品である酒造業(飯沼本家など)も従事者の高齢化は否めず、伝統産業の存続が懸念されます。商業も同様で、個人商店で後継者がいないまま閉店する例が相次いでおり、地域サービス維持と雇用の観点で問題です。
町は空港に近いという強みを持ちながら、それを活かした産業(例えば物流ハブや空港関連ビジネス)の誘致は今のところ限定的です。酒々井IC近くに整備された南部新産業団地は区画分譲済みですが、当初想定されていた大規模商業施設計画が白紙になるなど十分な成果は出ていません。空港関連産業(物流倉庫や機内食工場など)の誘致でも、近隣の成田市や富里市に比べて目立った進出がありません。結果として地の利が宝の持ち腐れになっている側面があります。
観光面ではアウトレットが突出した集客力(年間700万人)を誇りますが、町内で完結する滞在観光の仕組みは弱いです。アウトレット来訪者の多くは買い物だけして帰ってしまい、町内に滞留させるコンテンツ不足が指摘されます。本佐倉城跡や酒蔵見学など誘客策はあるもののアクセス手段が乏しく、自家用車以外では周遊しにくいのが現状です。また町内に宿泊施設が無いため、観光消費が限定的に留まっています。
商業の中心市街地の空洞化も課題です。東酒々井地区など旧来の商店街は大型店の郊外立地に押され客足が減り、空き店舗が目立ちます。近年、銀行支店の撤退もあり地域コミュニティの場が失われつつあります。これに伴い、高齢者の買い物弱者(買い物難民)問題が一部で見られます。自家用車を運転できないお年寄りにとって、近所に商店が無くなると日常の買い物にも支障が出るため、地域の商業機能衰退は生活課題にも直結します。
さらに、労働力不足が複数の産業分野で顕在化しています。介護、運輸、建設などの分野で人手不足が深刻で、事業継続に支障を来す恐れがあります。特に地場の中小企業は人材確保が難しく、技能継承も危ういとの声があります。このままでは地域産業基盤そのものが弱体化しかねません。最後に、新たな産業への対応不足も挙げられます。デジタル産業やカーボンニュートラル関連など成長分野への参入に町としてほとんど手を付けられておらず、時代の潮流に乗り遅れる懸念があります。地元企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援や再生可能エネルギー事業の創出など、未着手のテーマが多く残されています。
課題: 以上を整理すると、産業分野の課題は(1)地域産業の稼ぐ力の弱さ、(2)後継者不足による伝統・基幹産業の衰退リスク、(3)空港・高速ICといった地の利を活かした産業誘致の遅れ、(4)観光が買い物中心の通過型に留まり滞在・消費が伸びないこと、(5)旧商店街の衰退と商業機能の縮小、(6)慢性的な労働力不足、そして(7)デジタル・脱炭素等の新産業分野への対応遅れとまとめられます。
都市基盤・交通・防災・環境
現状: 酒々井町は1970年代以降に開発された住宅団地が多く、道路や上下水道などインフラ設備もその頃に集中的に整備されたものが中心です。町道総延長は約150kmあり舗装率は約95%ですが、築数十年を経て老朽化が進む区間も散見されます。橋梁は前述のとおり37橋あり、2021年度の定期点検で約20%の橋に修繕が必要と判定されました。上下水道管路も老朽化が進み、漏水リスクや機能低下が懸念されています。公園施設では老朽遊具の安全性低下が問題となり、段階的な更新が求められます。公共施設全般で今後更新需要が高まる中、財政制約下でどう優先順位を付け計画的に改修していくかが課題です。一部の老朽橋梁では重量制限を検討せざるを得ない状況に至っており、早期の補修が必要です。
公共交通は町民の長年の悩みで、不便さが顕著な課題です。平日昼間ですら路線バスは1時間に1本程度かそれ以下、夜間や休日となるとほとんど公共交通が無い状態です。このため高齢者や学生から「移動が大変」という声が強くあります。特に鉄道駅や病院へのアクセス改善、車を持たない交通弱者の移動権確保が課題です。町はコミュニティバス「すいすい号」を運行して一定の交通空白域をカバーしています。すいすい号は運賃100円で誰でも利用でき、利用者から概ね好評ですが、ルート・本数ともに限定的で「もっと増便してほしい」「別の地区にも路線が欲しい」との要望があります。今後、高齢運転者の免許返納が増えれば、こうした交通空白地帯の解消は待ったなしとなります。また、デマンド型乗合タクシーなど新サービス導入も検討されていますが、財政負担との兼ね合いで実現に至っていません。
防災面では、町民の防災意識向上と実効性ある避難行動促進が課題です。ハザードマップは全戸配布されていますが、実際には「見ていない」という住民も多く、例えば洪水想定区域に住む人でも「自分の家は大丈夫」と油断しているケースがあります。自主防災組織は全20自治会中18で結成済みですが、活動が形式化している地区もあり、いざ災害時に高齢者や障がい者をどう避難支援するかなど具体策が十分練られていない部分があります。防災士など人材育成や、若い世代の地域防災参加も不十分です。
環境面では、ごみ減量とリサイクルの推進が課題です。町民1人1日あたりのごみ排出量は約870g(2022年度)で、可燃ごみに生ごみ等資源化可能なものが多く含まれています。資源回収率向上の余地があり、生ごみ処理機購入補助などを行っていますが、可燃ごみの有料化は実施しておらず強力な動機付けには至っていません。また、空き地等への不法投棄が年に数件発生しており、防犯カメラ設置など抑止策が求められます。脱炭素については、前述の計画があるものの一般家庭や事業者からどこまで協力を得られるか不透明で、施策の裾野拡大が課題です。省エネ設備導入補助を出しても利用件数が伸び悩んでいる現状から、さらなる働きかけが必要と言えます。EV充電インフラも町内にはごく数基しかなく、民間任せでは進まないため行政の主導が求められます。
課題: この分野の課題は、(1)インフラ老朽化への計画的対応と財源確保、(2)公共交通不便の解消と交通弱者支援、(3)住民の防災意識と地域防災力の向上、(4)環境負荷軽減(ごみ減量・脱炭素)への住民参加促進と整理できます。酒々井町の場合、「将来への投資」と「目先の暮らしやすさ」のバランスが常に問われる分野であり、住民理解を得ながら長期視点で対策を進める難しさがあります。
地域コミュニティ・多文化共生
現状: 酒々井町には20の自治会(町内会)が組織されており、2020年時点の加入率は約85%と比較的高水準です。各自治会は夏祭りや防災訓練、地域清掃などの行事を継続して開催しており、参加者は減りつつも一定数存在します。自治会連合会が機能しており、地区の課題を町に要望する仕組みもあります。行政も自治会を通じた広報配布や協働事業(クリーン作戦など)を行っており、コミュニティと行政のパイプは比較的良好です。
一方で、地域コミュニティの担い手不足が徐々に表面化しています。自治会役員や行事運営を担う人々が高齢化し、若い世代の参加が少ないため世代間の断絶が生じつつあります。伝統ある夏祭り等も年々規模縮小傾向で、継続できるか危ぶまれる地域もあります。共働き世帯の増加やライフスタイル多様化で、かつてのように地域活動に時間を割けない住民が増えています。自治会未加入の若年世帯も散見され、今後コミュニティ活動を維持していく上で世代交代が大きな課題です。
また、多文化共生の取り組みの遅れも指摘されています。酒々井町では在留外国人住民が2020年代に入って増加しましたが、行政サービスや情報提供は日本人向け中心で、外国語対応や生活相談の充実が遅れている面があります。外国人住民は地域に少数ずつ分散して住む傾向ですが、言葉や習慣の違いから孤立しやすく、困ったとき相談できずに問題が深刻化する恐れがあります。例えば、外国にルーツを持つ児童が学校生活で言葉の壁にぶつかり不登校になりかけた事例が報告されていますが、通訳支援員の確保が難航するなど支援体制が追いついていません。
一部の住民には外国人に対する偏見や誤解も残っています。「外国人が増えると治安が悪くなるのでは」といった根拠のない不安を持つ人も少数ですが存在し、そうした言動があれば地域内に分断を生む可能性があります。現在大きなトラブルは起きていませんが、相互理解が不十分なまま外国人住民が増えると摩擦が生じるリスクがあります。
課題: 地域コミュニティ分野の課題は、(1)自治会・ボランティア活動の担い手高齢化と若年層の参加促進、(2)外国人住民への言語・生活サポート体制の充実、(3)日本人住民との相互理解醸成による偏見解消、(4)増加する空き家への対策とコミュニティ再生などが挙げられます。特に空き家は防犯・防災面でも不安材料であり、地域の景観悪化や治安不安にもつながるため、単に除却するだけでなく地域資源として活用しコミュニティの拠点に転用するなどの発想も必要です。全体として、従来からの地域力を維持・再生しつつ、多様な住民(若者・高齢者・外国人など)が協働できる新しい地域コミュニティを作っていくことが重要なテーマとなっています。
分野別の具体的な政策オプション
以下では、上記の各分野について現行施策の評価を踏まえながら、実現可能性と効果を意識した具体的な政策オプションを提示します。各オプションでは「ねらい・効果」「対象・実施主体」「粗いコスト感」「実現上のハードルと副作用への配慮」を盛り込み、小規模町でも現実的に検討可能な施策を提案します。理想論に留まらず、町民と行政が協力して実行に移せる実践的な案を重視しています。
治安・防犯分野
1. 防犯カメラ設置支援とAI見守りシステム導入
〈ねらい・効果〉 町内の犯罪抑止と早期検挙のため、公共空間への防犯カメラ設置を抜本的に拡充します。具体的には、主要交差点や通学路、商業施設駐輪場など計50か所程度に町が防犯カメラを新規設置し、録画データを警察と共有できる仕組みを構築します。さらに、AI画像解析によるリアルタイム異常検知システムを試験導入し、夜間の不審者徘徊などを自動検知して警察や防犯ボックス(後述)へ通知することで、迅速な対応を可能にします。これらにより、空き巣等の犯罪抑止と犯人検挙率向上が期待できます。
〈対象と実施主体〉 町民全体の安全が対象ですが、特に子ども・女性・高齢者が安心できる環境整備を意識します。行政が主導して企画し、警察や防犯ボックス職員と協議して設置場所を選定します。施工・機器保守は地元の防犯設備業者と提携して行い、自治会や企業にも協力を呼びかけ必要箇所への設置を進めます。
〈コスト感〉 カメラ50台の整備費は1台あたり約50万円として初期費用約2,500万円、維持費は通信電気代やサーバ管理費等で年間250万円程度を見込みます。国の防犯対策交付金や県補助金を活用して財源確保します。町職員1名がシステム管理を兼務し、警察とのホットライン連携体制を敷きます。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 監視カメラ増設に対するプライバシー懸念が考えられますが、設置場所は公共性の高い道路・公園等に限定し、住宅内部など私的領域は映さないよう配慮します。また、ある地域だけ安全になるといった不公平感が出ないよう、設置場所を町内全域でバランスよく選定します。副作用として維持費負担がありますが、犯罪被害が減ることで安心感が高まり、被害による経済損失減も期待できるため、投資効果は十分見込めます。
2. 「電話de詐欺」ゼロ作戦:見守りICTと訪問支援
〈ねらい・効果〉 高齢者を特殊詐欺から守るため、町ぐるみで「電話de詐欺ゼロ作戦」を展開します。具体的には、希望する高齢世帯に自動通話録音機能付き電話を無償配布し、詐欺電話を自動録音・遮断します。同時に、金融機関やATMで高齢者が高額現金を引き出そうとした際に町役場へ警報が通知される見守りICTシステムを千葉県警と連携して導入します(本人同意の上でキャッシュカードにICタグを付与し異常引き出しを検知する仕組み)。さらに、民生委員や自治会による高齢者定期訪問を強化し、一人暮らし高齢者とは月1回以上の対面または電話で安否確認と詐欺注意喚起を行います。
〈対象と実施主体〉 一次対象は高齢者(特に75歳以上の独居世帯:約1,000世帯)です。行政(くらし安全担当課と社会福祉課)が主体となり、警察・民生委員・金融機関と協力して実施します。金融機関とは協定を結び、異常引き出し時の通報協力を依頼します。町内のケーブルテレビ会社やシルバー人材センターとも連携し、録音機の設置サポートや機器説明に当たってもらいます。
〈コスト感〉 自動通話録音機は1台1万円程度で調達可能なため、1,000世帯分で約1,000万円の初期費用を想定します。見守りICTシステム導入については警察の既存枠組みを活用するため町の負担はごく軽微です。民生委員活動費の増額(必要に応じ1名あたり年10万円程度)や訪問強化に伴う交通費等を含めても年間数百万円規模で済みます。町職員2名程度が電話相談窓口を兼務し、定期コールや警報受信時の対応に当たります。被害額抑制による高齢者の財産保護効果を考えれば費用対効果は高い施策です。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 高齢者宅への見守り介入がプライバシー侵害と受け取られないよう、本人の同意を得た上で実施し、取得情報は警察や関係者以外に漏らさない体制を徹底します。また録音機の普及により犯人が直接押し込み強盗等に手口を変える懸念もあります。その場合は次の施策(A3の地域見守り強化)と組み合わせ、対面での見守りを強化して対処します。
3. ブルーライト見守り隊の結成と多文化防犯ネットワーク
〈ねらい・効果〉 地域の防犯パトロールを持続・拡充するため、既存の「ブルドックス」隊に若手住民や外国人住民も加わった新たな見守り隊を結成します。パトロール車には青色回転灯(ブルーライト)を装備し、警察の許可を得て夜間巡回を増強します。外国人住民にも参加を呼びかけ、多言語で防犯啓発しながら巡回することで相互理解も促進します。これにより防犯と多文化共生を両立させ、地域の一体感・協調を高めます。
〈対象と実施主体〉 地域住民全員が安全の恩恵を受けます。行政はコーディネーター役としてボランティア募集・研修を企画し、既存パトロール隊メンバー(高齢者中心)に加え、PTAや消防団、町内企業の従業員にも声掛けして多様な人材の参加を募ります。外国人コミュニティには町国際交流協会等を通じて協力を呼びかけ、例えば日系ブラジル人の若者など数名にパトロール参加してもらいます。警察からは巡回ノウハウや安全確保面でのサポートを受けます。
〈コスト感〉 パトロール車両は既存の自治体公用車または民間車両を活用し、青色回転灯の設置費は1台10万円程度です。巡回時の燃料代・保険料等で年間30万円ほど、ボランティア保険加入や謝礼(年1万円程度×10人=10万円)などを含め、総額50万円程度/年で運営可能です。町職員1名が防犯ボックス担当と連携し、スケジュール調整や広報を行います。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 新規参加者に過度な負担がかからないよう、パトロール頻度は月1回程度から始め、無理なく継続できる体制にします。また外国人参加者が誤解や偏見を受けないよう、事前研修で地域マナーや活動ルールを共有し、巡回時は身分証明を携行するなど警察とも連携して信頼性を確保します。防犯活動中に万一トラブルが発生しないよう、二人一組で巡回し無理な介入はしないガイドラインを設け、安全確保に努めます。この施策により地域の抑止力アップと外国人との協調促進という二重の効果が期待できます。
4. スマート街路灯設置と「セーフティステーション」展開
〈ねらい・効果〉 夜間の犯罪抑止と住民の不安解消策として、町内の暗がりになっている箇所に人感センサー付きLED街灯(スマート街路灯)を新設します。人の通行を感知して自動で明るく照らし、普段は省エネモードで控えめに点灯することで効率的に暗部を減らします。特に通学路や公園周辺、空き家が点在する路地などに重点的に設置し、「暗いから怖い」という場所を解消します。加えて、夜間に誰でも駆け込める安全スポットとして、「セーフティステーション」を町内のコンビニ等と協定で設置します(店舗にステッカーを掲示し、子どもや女性が何かあれば助けを求められる場所であることを示す)。
〈対象と実施主体〉 夜間外出する住民や通学児童、生徒、女性、高齢者など広く安心感が提供されます。行政が予算措置し、街灯の設置工事は電気工事業者に委託します。設置箇所選定にあたっては自治会や学校と協議して要望を集めます。セーフティステーションについては、防犯協会とコンビニ各社(またはガソリンスタンド等深夜営業施設)との間で協定を結び実施します。
〈コスト感〉 スマート街路灯1基あたり20万円程度(LED灯具と人感センサ含む)として、まず優先30か所に設置すると600万円。電気代はLED化により従来比50%減の省エネ効果を見込みます。セーフティステーションは店舗の善意協力が基本でコストはほぼかかりませんが、協力店への小さな謝礼やステッカー作成費等で数万円規模です。街灯設置費は国の防犯灯整備補助等を活用できます。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 街路灯設置場所近隣の住民には事前に説明し、住宅に光が差し込まないよう角度調整や遮光板設置で配慮します。センサー感知型のため不要時は減光されますが、頻繁に点滅することで近隣に迷惑にならないよう感度設定に留意します。また、セーフティステーションは店舗側の負担にならないよう、緊急時は110番通報を基本とし店員は過度に介入しないルールを徹底します。これら施策により、街全体の夜間の安心感が向上し、犯罪の起きにくい環境づくりにつながります。
高齢化・福祉・医療分野
1. 地域包括ケア拠点「すこやかステーション」の設置
〈ねらい・効果〉 高齢者が住み慣れた地域で包括的支援を受けられるよう、公民館等の既存施設を活用して「すこやかステーション」と称する地域ケア拠点を開設します。ここに看護師・介護福祉士・生活支援コーディネーター等の専門職を配置し、健康相談、介護予防教室、サロン運営、認知症見守りまでワンストップで対応します。既存の地域包括支援センター(役場内)は主にケアマネジメント業務を担っていますが、すこやかステーションはより身近な地域の場で気軽に相談や交流ができる拠点として位置づけます。これにより、高齢者のフレイル予防や孤立防止に効果が期待できます。
〈対象と実施主体〉 主に75歳以上の高齢者とその家族が主対象です。行政(福祉担当課)が主体となり、医師会・社会福祉協議会・民生委員・NPOなどと協働運営します。例えば地域の元看護師や管理栄養士など経験豊富な人材にも協力いただき、多職種チームで対応します。自治会等には場所提供や利用呼びかけを依頼し、地域ぐるみで支える体制とします。
〈コスト感〉 空き教室や公民館の一室など既存施設を改装利用するため初期費用は看板や備品購入程度で済みます。人件費は非常勤スタッフ3名分として年間500万円程度を想定しますが、これは国の「地域支え合い体制づくり事業」等の補助金を活用可能です。町の地域包括支援センター職員が週数回巡回勤務することで質の担保と行政サービスとの連携を図ります。高齢者の介護予防による要介護認定者の増加抑制や介護給付費の節減効果も期待され、費用以上のメリットがあります。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 拠点に配置する専門職の確保が課題ですが、近隣医療機関のOB人材や退職介護士を募集し、働きやすい柔軟な勤務形態でお願いするなど工夫します。相談スペースではプライバシー確保のためパーテーションや個別相談室を設け、個人情報の管理を徹底します。また既存の包括支援センターとの役割が重複しないよう棲み分けを明確にし(センターはケアプラン作成中心、ステーションは予防・交流支援中心)、お互い連携しながら地域包括ケア体制を強化します。
2. おでかけ支援:「のりあいタクシー」導入によるデマンド交通
〈ねらい・効果〉 運転が困難になった高齢者等の移動手段を確保するため、予約式のデマンド交通「のりあいタクシー」サービスを導入します。町内をいくつかのエリアに分け、利用者が電話やスマホで予約すると、小型乗合タクシーが自宅近くまで迎えに来て指定の目的地へ送る仕組みです。買い物難民・通院難民ゼロを目標に、平日の日中や週末に運行し、最寄りのスーパー・病院・公共施設へ安価に移動できるようにします。これにより高齢者の外出頻度が増え、閉じこもり防止や健康維持(歩行機会増による足腰の衰え防止)にもつながります。
〈対象と実施主体〉 主な対象は高齢者(免許返納者や足腰が弱った方)ですが、妊婦や障がい者など他の交通弱者も利用可能とします。行政が制度設計を行い、地元タクシー事業者またはNPOに運行を委託します。予約受付は委託先でコールセンターを設置するか、町職員が兼務で対応します。近隣の佐倉市や栄町でデマンド交通の先行事例があるため、ノウハウを参考にするとともに病院など町外主要施設への広域連携運行も視野に入れます。
〈コスト感〉 ワンボックス車2台を運行すると仮定し、委託費は年間800万円程度(燃料・人件費込み)を見込みます。利用者は1回あたり200円程度負担(残りを町が補助)とし、財源は生活交通確保対策の国庫補助や地方創生交付金を組み合わせます。町職員1名が交通対策担当として事業者との調整や利用促進策(民生委員等と連携した周知活動)を担います。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 需要不足による赤字のリスクがあります。事前に高齢者宅アンケート等でニーズ調査を行い、まずモデル地区で試行運行して需要を把握します。また既存のコミュニティバス(すいすい号)との重複を避けるため、棲み分け(バスは定時定路線、タクシーは補完的オンデマンド)を図ります。運行中の交通事故リスクについては委託事業者が保険に加入し備えます。デマンド交通は移動支援に留まらず高齢者の社会参加を促す効果も大きく、地域包括ケアの観点からも投資する価値があります。
3. 介護人材シェアリングと外国人介護士の活用促進
〈ねらい・効果〉 増大する介護需要に対応するため、地域で介護人材を融通し合う「人材シェアリング」の仕組みを構築します。町内の複数の介護事業所・施設が連携し、スタッフの空き時間に他所のヘルプに入るなど柔軟に人材をシェアします。町が調整役となり、スマホアプリ等のマッチングシステムを導入してリアルタイムで人手不足情報を共有します。また、外国人介護士(EPA介護福祉士候補者等)の受け入れ促進を図り、町内施設への配置を支援します。具体的には語学研修補助や住居紹介等を行い、外国人が働きやすい環境を整えます。これらにより介護現場の人手不足緩和とサービス維持向上を図ります。
〈対象と実施主体〉 対象は町内の介護サービス事業者(デイサービス、訪問介護、入所施設等)およびその利用者です。行政が音頭を取り、事業者間で協定を結び共同出資で人材シェア用の簡易システムを作ります。場合によっては成田市など近隣市の事業者とも協力し、広域で人材融通を行います。外国人介護士の受入に関しては、県国際交流協会や介護施設協議会等と連携し、受入可能な施設を募ってマッチング支援します。
〈コスト感〉 システム開発・運用費は簡易なマッチングアプリ導入で年間200万円程度、外国人受入支援費(語学研修・通訳・生活支援)に1人当たり50万円を5人分=250万円ほどを補助するとして、合計年間450万円程度を想定します。財源は国の介護人材確保交付金等を充当します。町の福祉担当者1名がコーディネーターとして各事業所との調整や外国人介護士のサポート窓口を担います。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 事業者間で待遇差などデリケートな問題が出る可能性がありますが、あくまで緊急時の応援派遣という位置づけにし、派遣元スタッフの賃金相当額を保証するなどルールを明確化します。外国人介護士の受入では、文化や言葉の違いによる利用者側の不安に配慮し、事前に介護施設側・利用者側双方への説明や研修を行います。また外国人側にも日本の介護現場の慣習・マナーを学んでもらい、相互理解を深めるよう支援します。これにより介護現場の人材不足を補いサービス低下を防ぐとともに、多様な人材活用による新たな視点が現場にもたらされる効果が期待できます。
4. 生きがい就労「高齢者お助け隊」と地域ポイント制度
〈ねらい・効果〉 元気な高齢者が地域で役割を持ち活躍できるよう、「高齢者お助け隊」を組織します。65歳以上の希望者が登録し、買い物代行、草むしり、子守り、簡単な大工修繕など、ご近所の困り事を有償でお手伝いする仕組みです。報酬は現金ではなく地域ポイントとして支給し、そのポイントは地元商店や公共施設利用券と交換できるようにします。これにより、高齢者の社会参加・生きがいづくりとともに収入補完になり、さらに地域内経済循環を促します。お助け隊は既存のシルバー人材センターの拡充版のような位置づけですが、よりカジュアルに隣人助け合いができる仕組みとして地域に浸透させます。
〈対象と実施主体〉 対象は活動意欲のある高齢者(65歳以上)および日常生活でちょっとした支援を必要とする住民(高齢者・子育て家庭など)です。行政(社会福祉課)が事務局となり、シルバー人材センターや社会福祉協議会と連携して運営します。地域包括支援センターや民生委員とも協力し、支援が必要な人とお助け隊をマッチングします。ポイントの交換先として地元商工会にも協力を仰ぎ、加盟店を募集します。
〈コスト感〉 登録者への研修費やマッチングシステム整備に年間100万円程度、コーディネーター職員1名の配置(既存人員の範囲で兼務)を行う想定です。ポイント運用にあたって町が商工会に補助金を出す形で費用負担する場合、年間50万円分のポイントを準備すれば100件程度の支援活動に対応できます。財源は地域支え合い事業などで一部賄い、地域貢献度の高い事業として企業協賛を募ることも検討します。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 高齢ボランティアに無理な負担がかからないよう、1人あたり月数回までの活動に留めるなどマッチング調整します。また、支援内容が専門的な介護や危険作業に及ばないよう範囲を限定し、必要に応じ保険加入(ボランティア保険)で事故に備えます。ポイント制度は運用管理をしっかり行い、不正利用が無いようシステム化します。お助け隊の活動を通じて、地域の中で「お互いさま」の助け合い文化が醸成され、高齢者が役立つ喜びと社会参加の機会を得られるとともに、地域全体の支え合い力向上につながります。
子育て・教育分野
1. 病児・病後児保育施設の開設とファミリーサポート充実
〈ねらい・効果〉 子どもが急な病気になっても保護者が安心して預けられる仕組みを作り、共働き世帯の仕事と育児の両立を支援します。具体的には町内に病児・病後児保育室を開設します。小児科クリニックの一室等を活用し、看護師を配置のうえ軽症の病児を日中一時預かりできるようにします。また既存のファミリーサポートセンター(有償ボランティアによる送迎・一時預かり支援)を拡充し、病児保育室までの送迎や、病状が軽微な場合にはサポーター宅での預かりもできるようにします。これらを一括案内する「子育て安心パック」制度として整備し、保護者が利用しやすい形にまとめます。これにより、「子どもが熱を出したらどうしよう」という親の不安が軽減され、キャリアを諦めずに子育てと仕事を両立しやすくなります。
〈対象と実施主体〉 町内在住のおおむね生後6か月~小学校低学年ぐらいまでの子どもを持つ保護者が対象です。行政(子育て支援担当課)が施設整備・運営補助を行い、地域の小児科医院や民間保育所と連携して実施します。ファミリーサポートの協力会員(預かり手)には主婦層やシニア層など地域人材を新規開拓して登録してもらいます。必要に応じ近隣自治体(例:佐倉市)とも提携し、相互に病児保育室の空きを融通できる広域ネットワークを構築します。
〈コスト感〉 病児保育室の設置改修費に200万円、年間運営費(看護師等人件費)500万円程度が見込まれますが、国の病児保育事業補助で半額程度は賄えます。利用者には1日2,000円程度を負担いただきます。ファミサポ拡充には会員募集・研修費100万円、コーディネーター増員1名分の人件費300万円などが必要です。総計で年900万円ほどの事業ですが、共働き世帯の転出防止や税収増(就労継続による収入維持)効果を考えれば投資価値は大きいと言えます。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 病児保育では感染症の院内感染リスクに留意が必要です。感染症別に受け入れ基準を厳格に定め、看護師が健康観察を徹底することでリスクを低減します。ファミサポで預かり中に病状悪化した場合に備え、協定病院への速やかな搬送体制を整えます。また、家庭での預かりでは保護者とサポーター間のミスマッチによるトラブルを防ぐため、事前にマッチング面談を実施し信頼関係を築きます。この施策により、子育て世帯が安心して働き続けられる環境が整い、若い世代の定住促進にもつながります。
2. “学び支援NEXT”:小中一貫教育カリキュラムと不登校ゼロプロジェクト
〈ねらい・効果〉 教育の質を高めて若い世代に「選ばれる町」にするため、学校教育の改革に取り組みます。具体的には小中一貫カリキュラムを導入し、特色ある教育プログラムを展開します。また不登校ゼロを目指し、町独自の適応指導教室(フリースペース)を開設して学びのセーフティネットを整備します。小中一貫教育では、小中学校教員が協働で英語・プログラミング・郷土学習など12年間の系統だったプログラムを編成し、小学校高学年で中学校教員が出前授業を行ったり、中学1年時にリーダーシップ研修を実施したりするなど、学習の連続性を高めます。これにより児童生徒の学力・意欲向上や、中学進学時の学習面・生活面での断絶を防ぎます。
適応指導教室については、小中学校の空き教室を利用して「すいすい学びルーム」を設置し、不登校や特別な支援が必要な子が自由に来て自習したりカウンセリングを受けたりできる場を提供します。専門スタッフ(臨床心理士等)を配置し、学校に行きづらい子も社会的に孤立しないよう支えます。これらにより教育環境の魅力度を上げ、ファミリー層の転入促進にもつながることが期待されます。
〈対象と実施主体〉 町内の児童生徒とその保護者が直接の対象ですが、町全体の教育水準向上による波及効果があります。教育委員会が主導し、小中学校の教職員、スクールカウンセラー、地域の有識者(退職教員や大学教授OB等)と連携してプログラムを設計します。千葉県教育委員会とも協議し、一貫教育のモデル地区指定を受けて財政支援を仰ぐことも検討します。適応教室の運営については近隣市での経験者を非常勤指導員に招き、児童相談所等とも連携して子どもたちを支援します。
〈コスト感〉 教員研修費・教材開発費に100万円、非常勤スタッフ2名分の謝礼(年150万円)、空き教室のリフォーム費50万円等で、年間300万円程度を想定します。文部科学省の「学びの先進地域」補助金等を活用し負担軽減を図ります。学校現場の負担増を避けるため、県教育委員会に対し業務調整加配教員の派遣など人的支援も要望します。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 教職員の意識改革が必要です。小中一貫教育には教員間の連携が不可欠で、当初は抵抗感も予想されますが、意欲ある若手教員を中心にプロジェクトチームを作り、先進自治体の成功事例を研修で学ぶことでモチベーションを高めます。保護者には改革の趣旨を丁寧に説明し、高校進学実績の向上などメリットを示します。不登校児支援については「手厚い支援が甘やかしになるのでは」という誤解がないよう、長期的に自立につなげるための目標設定を明確にします。これら教育改革により、「酒々井町の教育は先進的で子どもに優しい」という評価を得られれば、町のブランド力が増し若年層の定住・転入につながるでしょう。
3. 若者定住促進:「Uターン就職ナビ」と「結婚・新生活応援パック」
〈ねらい・効果〉 地元を離れた若者が酒々井町に戻ってきやすくするための就職支援策と、結婚・出産期の経済支援策をセットで講じます。一つ目は「Uターン就職ナビ」です。大学進学や就職で町外にいる若者向けに、地元企業の求人情報やインターンシップ情報をオンラインで提供します。年末年始には地元で合同企業説明会を開催し、Uターン希望者と企業をマッチングします。これにより、地元就職という選択肢を示し、若者の帰郷を促します。
二つ目は「結婚・新生活応援パック」です。結婚したカップルや第1子を出産した世帯に対し、新生活準備金として10万円相当の地元商品券を贈呈します。また、新婚・子育て世帯が住宅を取得する際の奨励金(例:住宅ローン利子補給やリフォーム補助の上乗せ)もセットにします。これらにより、生活立ち上げ期の経済的負担を軽減し、愛着を持って町に住み続けてもらう狙いです。
〈対象と実施主体〉 Uターンナビの対象は町出身の大学生・若手社会人です。町役場がウェブサイトやSNSで情報発信し、商工会・ハローワーク・近隣自治体と連携して企業情報を収集します。企業側は町内および近隣市の中小企業等にも声をかけ、参加してもらいます。結婚応援策は婚姻届提出から1年以内の新婚世帯と、第1子誕生の世帯が対象です。行政と商工会が協定を結び、商品券は地元加盟店で使えるようにして地域経済にも波及させます。
〈コスト感〉 Uターンナビのサイト開設・運営費に100万円程度、企業説明会開催費50万円程度で実施できます。商品券支給は例えば年間50組(結婚+出産合計)を想定し1組10万円で500万円、住宅取得補助は実績に応じ数百万円規模です。総額で年間1,000万円弱の事業ですが、若者夫婦が町に定住し将来的に納税者となる効果、出生数増への寄与など長期的メリットを考えれば有意義な投資です。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 商品券や奨励金のバラマキ批判を避けるため、使途を町内限定とし地域経済循環につなげること、一定の要件(例:数年以上定住する意志の確認等)を設け真に定住促進につながる世帯を対象にすることが大切です。Uターンナビについては、地元にそもそも希望する職種が無いケースもあり得ますが、その場合は近隣都市の企業とも連携して紹介幅を広げます(勤務地は町外でも町に戻って暮らせるようにする)。これら支援策により、酒々井町で結婚・出産・子育てしようという意欲を後押しし、将来的な人口維持に貢献します。
産業・経済分野
1. 酒々井IC周辺「産業誘致エリア」の整備と企業プロモーション
〈ねらい・効果〉 東関東道酒々井ICという交通利便性の強みを活かし、その周辺に新たな企業立地を促進します。具体的には、IC近接の未利用地や農地を洗い出して用途変更・造成により「産業誘致エリア」を設定します。その上で、物流・製造拠点を求める企業に対し積極的な誘致プロモーションを行います。例えば「羽田・成田ダブルアクセス30分圏」というキャッチフレーズを掲げ、都心の企業に対し酒々井町にサテライト工場や物流センターを構えるメリットを訴求します。町独自に企業誘致助成制度も用意し(補助金というより許認可やインフラ整備面でスピード支援を提供)、企業が進出しやすい土壌を整えます。これにより雇用の場の創出と税収増を図り、若者の地元就業機会拡大にもつなげます。
〈対象と実施主体〉 対象は製造業・物流業・IT拠点など立地を検討する企業です。行政(企画産業課)が中心となり、千葉県の企業立地課や企業誘致協議会と連携して企業情報を収集します。不動産デベロッパーや土地所有者とも協議し、土地利用転換を進めます。地元地主には説明会を開き、土地を貸す・売ることで得られる収益性向上を説得材料に合意形成を図ります。
〈コスト感〉 まず用地調査や測量に500万円、ゾーニング計画策定に300万円程度を見込みます。必要に応じ土地区画整理事業等で用地取得・造成を行う場合は別途多額の事業費が発生しますが、可能な限り民間資本の力を借りる形で進めます。町職員1名を専任の企業誘致担当に配置し、県やJETRO(日本貿易振興機構)等と連携してPR活動を展開します(企業説明会や誘致動画制作等に100万円程度)。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 工業系施設の立地に対し周辺住民から環境悪化の懸念(騒音や交通量増加など)が予想されます。事前に緑地帯の設置や進入路整備など環境対策案を示し、丁寧に説明して理解を得ます。また農地転用には県農業会議の許可が必要で、食料生産への影響も考慮しなければなりません。そこで遊休農地を優先対象とし、生産性の低下を最小限にします。企業誘致が思うように進まないリスクもありますが、魅力発信を徹底し、少なくとも3年以内に1~2社誘致することを目標にします。この施策は中長期的に町の稼ぐ力を高め、多角的な雇用創出につながる重要なチャレンジとなります。
2. 酒々井ブランド農産品創出:「しすいスマート農業団地」構想
〈ねらい・効果〉 農業分野の担い手確保と高付加価値化を目指し、町有地や大規模農地を活用して「しすいスマート農業団地」を整備します。具体的には、遊休農地約5~10haを集約し、そこで先端技術(ICT、ロボット、植物工場など)を導入した農業を展開します。全国から新規就農者やアグリベンチャー企業を公募し、低廉な貸付条件で入植してもらいます。町は農業研修用住宅の提供や機械リース補助を行い、新規参入者が定着・起業しやすい環境を整備します。栽培作物は付加価値の高いイチゴやトマトなどの施設園芸やハーブ等を想定し、「酒々井ブランド」として観光とも連動させます(例:収穫体験や直売所を設置し、アウトレット客にもPR)。これにより衰退しつつある農業に若い力を呼び込み、儲かる農業への転換を図ります。
〈対象と実施主体〉 対象は農業参入を希望する全国の若者(20~40代中心)や農業系スタートアップ企業です。行政と農業委員会が共同で企画し、千葉県農林課や県立農業大学校と連携して人材募集・研修を行います。地元農家やJAとも協議し、技術指導役として参画してもらいます。必要であれば町と民間が出資する第3セクター「酒々井アグリ株式会社」を設立し、収益事業としてリスクを民間とシェアする形も検討します。
〈コスト感〉 用地取得・造成費に1億円、ビニールハウス等設備補助5,000万円、研修住宅建設3,000万円など初期投資約1.8億円を想定します。ただし国の強靭化農地整備事業や地方創生交付金等を組み合わせて、町負担を圧縮します。運営面では新規就農者10名程度+技術指導員2名でスタートし、町はアドバイザー的立場で関与します。5年程度で事業収支の黒字化を目指し、その後町への収益還元(配当)も視野に入れます。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 多額の初期投資が必要な点と、参入者が定着しなかった場合のリスクがあります。しかし近年、全国的にスマート農業やアグリビジネスに関心を持つ若者も増えており、県内外の農業ベンチャーの興味を引く魅力的な計画を練ることで応募を募ります。また、複数の参入者に区画を分散貸与してリスクをヘッジします。地元農家との軋轢を避けるため、協業や請負の形で共存関係を築きます。例えば地元の高齢農家から農地を預かり賃料を支払いつつ管理する仕組みにし、地元にも利益が落ちるようにします。成功すれば酒々井発の新たな農産ブランドが誕生し、観光資源化やふるさと納税額増にもつながります。
3. 歴史文化×アウトレット周遊観光パッケージと宿泊誘致
〈ねらい・効果〉 酒々井町での観光滞在時間と消費額を増やすため、町内の観光コンテンツを結ぶ周遊型観光パッケージを造成します。具体的には、酒々井プレミアム・アウトレットと本佐倉城跡・酒蔵(飯沼本家)・ハーブガーデン等を結ぶシャトルバスツアーを設定し、買い物客を町内の他スポットに誘導します。専門ガイドを配置し、酒々井の歴史や文化を紹介しながら巡るミニツアーです。さらに、アウトレット隣接地などにビジネスホテルやゲストハウスの誘致を図り宿泊客を呼び込みます。東京や成田空港から近い利点を活かし、「初日はアウトレットと城跡観光・地酒試飲、酒々井に一泊、翌日成田山へ」というモデルコースをプロモーションします。これにより日帰り中心だった観光客を宿泊観光に転換し、観光消費アップと町の知名度向上を狙います。
〈対象と実施主体〉 ターゲットは主に首都圏からの観光客や訪日外国人です。行政(観光商工担当課)が企画し、観光協会・アウトレット運営会社・旅行会社と連携してツアー商品化します。酒々井町単独では観光資源が限られるため、隣の佐倉市・成田市とも広域連携してルート設定し、お互いの観光資源を補完する形にします。宿泊誘致については、デベロッパーやホテルチェーンに働きかけます。特にLCC(格安航空)の夜便・早朝便を利用する外国人旅行者向けに「空港前泊需要」を取り込めるとアピールします。
〈コスト感〉 シャトルバス運行は1日2便を200日運行するとして、年間委託費500万円程度です(参加者から利用料を徴収し一部回収)。ガイドは観光協会員等を研修して対応し、実費程度の謝礼を支払います。ホテル誘致は民間投資が基本のため町直接の費用負担はありませんが、用地手当や許認可の迅速化支援に人件費がかかる程度です。観光プロモーション費用としてパンフレット・ウェブサイト多言語化、SNS発信強化等に年間100万円程度計上します。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 ツアーを成立させるには一定の集客が必要ですが、最初はモニターツアーを実施してニーズを探り、参加者のフィードバックを踏まえ改善します。宿泊施設誘致は、そもそも民間事業者が採算に魅力を感じるかが課題です。酒々井は観光地としての知名度が低いため、成田空港・成田山観光とのセットで宿泊需要を喚起する戦略が必要です。誘致が実現した際には、近隣住民への説明会を開きホテル建設に伴う景観・騒音への配慮など環境対策も行います。この施策によって、アウトレット依存から脱却し町全体を観光資源として活性化する第一歩となります。
4. 商店街リノベーションとテレワーク拠点化支援
〈ねらい・効果〉 空き店舗が目立つ旧商店街(東酒々井地区など)を再生するため、リノベーション補助とテレワーク拠点誘致を組み合わせて進めます。具体的には、空き店舗の外装・内装改修に対し大幅補助(費用の2/3補助、上限200万円など)を提供し、新業態のカフェや雑貨店等の出店を促します。同時に、都市部企業のサテライトオフィスやコワーキングスペースとして活用してもらえるようPRします。高速ネット回線整備や家具購入にも補助を出し、「静かで家賃の安いテレワークの町」として売り込みます。コロナ禍で在宅勤務が普及した流れを捉え、酒々井に週末移住・多拠点生活するテレワーカーを増やす狙いです。
〈対象と実施主体〉 対象は空き店舗物件の所有者、新規開業希望者、都市部企業などです。行政(商工担当課)が補助制度を設計し、商工会と協力して物件情報を発信します。物件オーナーには改装後の賃貸活用で収益向上するメリットを説明し協力を得ます。千葉県が進める「ローカルワーケーション」施策とも連動させ、東京の企業に対しサテライトオフィス設置を働きかけます。
〈コスト感〉 リノベ補助は年間5件実施として1件あたり最大200万円補助×5件=1,000万円、テレワーク環境整備補助に100万円、広報費等で50万円、合計年間約1,150万円です。これは国の商店街活性化補助金や県のテレワーク促進交付金を活用しつつ、町単独費用を抑えます。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 新規出店者が続かない可能性がありますが、単なる店舗賃貸ではなくテレワーク需要との複合で収益性を高める工夫をします。具体的には、平日日中は企業のサテライトオフィスとして貸し出し、夕方以降や週末は地域カフェとして営業するなど二毛作的なモデルも検討します。テレワーカーの流入により地域コミュニティが希薄化する懸念については、地域イベント(ワークショップ等)を開催して地元住民と交流する仕掛けを組み込みます。この施策で商店街に人の出入りが増えれば、防犯面も向上し、高齢者の買い物支援にもつながります。最終的には、東酒々井地区など旧市街地が「新旧住民の交流拠点」として再生し、地域コミュニティ再活性化にも寄与するでしょう。
都市基盤・環境分野
1. インフラファンドと官民連携による老朽インフラ更新
〈ねらい・効果〉 老朽化した道路・上下水道・橋梁などの改修資金を確保し計画的に更新を進めるため、インフラファンドの活用やPPP(官民パートナーシップ)スキームを導入します。具体的には、町債発行による資金調達だけでなく、民間投資家から資金を募るインフラファンドを設定し、橋梁や下水管の改修事業に充当します。投資家には安全資産として地方公共団体保証付き債券を提供し、超長期の資金を確保します。同時に、上下水道や道路補修等の業務に包括民間委託やコンセッション(公共施設等運営権)方式を検討し、民間の技術と効率性を活かします。例えば下水道管路更新をPPP事業として実施し、民間の高度技術を導入しながらコスト縮減と期間短縮を図ります。これらにより従来にない資金源と手法でインフラ更新を加速させ、安全・安心な生活基盤を維持します。
〈対象と実施主体〉 インフラ事業全般が対象で、町民全員が恩恵を受けます。行政(財政課・建設課等)が主導し、金融機関・証券会社と連携してファンド商品を設計します。県内外の機関投資家に呼びかけ需要を探ります。PPP導入については民間建設会社・水道事業者等と対話を重ね、事業可能性を検討します。
〈コスト感〉 インフラファンドは元本償還・利払いを伴うため実質的には将来負担ですが、超低金利を活かして数十年スパンで返済計画を立てれば年次負担を平準化できます。例えば10億円規模のファンドを金利年1%・20年償還で組めば、毎年約0.5億円の返済負担となり現実的です。PPP導入は事業ごとの精査が必要ですが、包括委託により職員の負担軽減や技術向上も期待できます。初期費用としてPPP導入可能性調査に300万円程度計上します。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 地方自治体として前例が少ない手法のため、議会や住民の理解を得ることが重要です。ファンドは借金と同義なので慎重な運用が必要ですが、既存借入(町債)と比較し金利・償還条件が有利になる場合のみ活用する方針とします。PPP導入では民営化への不安(料金値上げ等)もあり得ますが、運営権を一部委ねるだけであくまで町が最終責任を負うことを丁寧に説明します。適切な契約管理を行い、サービス水準の維持とコスト縮減のバランスを取ります。この施策により将来世代へ先送りせず今必要な改修投資を進められれば、長期的に安全安心を確保し財政負担も平準化できます。
2. スマートコミュニティバス導入とMaaS統合交通サービス
〈ねらい・効果〉 交通弱者の利便性向上と公共交通の効率化を両立するため、MaaS(Mobility as a Service)の概念を取り入れ、コミュニティバスとデマンドタクシーを統合運用します。具体的には、スマホアプリや電話予約に応じてコミュニティバス(すいすい号)のルートや運行台数を柔軟に調整し、小型乗合タクシーが補完するシステムを導入します。AIが需要に応じ運行経路・車両を最適化し、空気輸送(乗客ゼロの運行)を減らします。これにより現在の固定ルートではカバーできなかった地区にもサービス提供が可能となり、ドアtoドアに近い移動が実現します。高齢者の通院や学生の塾通いなどニーズに応じたスマート公共交通で、移動の不便解消と運行効率化を図ります。
〈対象と実施主体〉 高齢者・学生・主婦など車を運転しない町民全般が対象です。行政がシステム導入に向け補助事業を活用し、現在のコミュニティバス運行委託先やタクシー事業者と協議して仕組みを作ります。アプリ開発は専門企業に委託しますが、操作が難しい人向けには電話予約も継続します。隣接自治体とも調整し、病院や商業施設など町外への乗り入れも含めサービス圏域を検討します。
〈コスト感〉 専用アプリ開発とサーバ運用に初期費用1,000万円程度、AI運行システムの年間利用料300万円程度を想定しますが、国の地域新交通システム実証補助等で賄います。従来バス路線の一部見直しにより、無駄な運行を減らし経費を削減できる可能性があります(乗合タクシー活用に移行する分、燃料費・人件費削減)。利用者は現行同様1回100円~200円程度の負担で済むよう調整します。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 高齢者にはスマホアプリ利用が難しい場合があるため、電話予約と併用して誰でも利用しやすくします。システムへの過度な依存で従来型のバス路線が削減されすぎると、アプリ操作に不慣れな人が困る可能性があります。過渡期は固定ルートとデマンドのハイブリッドで運行し、徐々に完全デマンド型に移行するなど慎重に進めます。また、オンデマンド運行により乗車時間が長くなりすぎないようAIで適切に配車間隔を調整します。この施策は実証運行を経て改良を重ねる必要がありますが、成功すれば低コストで広範囲をカバーする先進的な交通モデルとなり、酒々井町の弱点であった公共交通不便の解消につながります。
3. “防災オープンハウス”の開催と若手防災リーダー育成
〈ねらい・効果〉 防災意識を高め地域の防災力を次世代につなぐため、住民参加型の新しい防災訓練イベント「防災オープンハウス」を開催し、合わせて40~50代の若手を中心にコミュニティ防災リーダーを育成します。防災オープンハウスでは、役場庁舎や学校施設を開放し、楽しみながら防災を学べるブースを多数設置します。非常食の試食会、起震車(地震体験車)体験、VR防災避難シミュレーション、消防団の放水体験など家族で参加できるコンテンツとし、年1回開催します。従来マンネリ化しがちだった防災訓練をエンターテイメント性のあるイベントに刷新することで、若い世代や女性の参加を促します。
並行して各自治会から比較的若い世代(40~50代)を対象に防災リーダー養成講座を実施し、基礎知識や地域のハザード理解、避難誘導のポイント等を学んでもらいます。修了者には「地域防災士」として認定し、自主防災組織の中核メンバーとして活躍してもらいます。これにより高齢化する自主防災組織に若い力を入れ、組織の活性化と継続性を確保します。
〈対象と実施主体〉 防災オープンハウスは町民全員が対象で、特に子育て世代の家族層を意識します。行政(防災担当課)が企画し、消防署・消防団・自衛隊・警察など防災関係機関の協力を得てブースを設置します。防災リーダー講座は各自治会推薦の住民が対象で、行政と消防本部が講師役となり年1回開催します。
〈コスト感〉 オープンハウス開催費は、起震車レンタルや備品手配などで年間100万円程度、リーダー講座開催費(教材・講師謝礼等)に20万円程度です。いずれも国の防災啓発補助金等で賄える範囲です。防災士資格取得を支援する場合は別途資格試験費用補助など検討しますが、町独自認定の地域防災士とすることでコストを抑えます。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 参加者確保が鍵となります。オープンハウスはイベント色を強めることで楽しみながら学べる場にし、広報や学校通じて積極的に参加を呼びかけます。防災リーダー講座は仕事世代に配慮し夜間開催やオンライン活用も検討します。リーダーに任命された住民に過度な負担がかからないよう、役割はあくまで自主防災組織内での知識提供や若手メンバーのまとめ役とし、日常的な活動は無理なくできる範囲に留めます。この施策で地域防災活動に新風を吹き込み、防災文化を次世代へ継承していくことが期待されます。
4. ゼロカーボン・コミュニティプロジェクトの展開
〈ねらい・効果〉 脱炭素目標の達成に向け、地域ぐるみで再生可能エネルギーの地産地消と省エネ活動を推進します。具体的には、町内にメガソーラーやバイオマス発電設備を民設で誘致し、その発電電力を町内の公共施設や企業に優先供給する仕組みを構築します(PPAモデル等で町が用地提供し、民間が発電設備を設置・運営)。また、自治会単位で「省エネコミュニティ」組織を立ち上げ、各家庭の電力使用量見える化や、エコライフポイント制度を導入します。例えば前年より電力使用量を削減できた世帯にはポイントを付与し、町内商品券と交換できるようにする等の仕組みです。これにより住民の省エネ意識を高め、楽しみながらCO₂削減に参加できるようにします。
〈対象と実施主体〉 町内の全住民・事業者が対象です。行政が主導し、再エネ設備誘致では民間事業者との協定を結んでプロジェクトを進めます。省エネコミュニティ活動では自治会や環境ボランティア団体と協働し、町の環境担当部署が支援します。電力データの収集には電力会社の協力を仰ぎ、個人情報に配慮しつつフィードバックします。
〈コスト感〉 メガソーラー等の設備は基本民間資本で設置するため町の負担は用地提供(町有地活用や低廉貸付)程度です。省エネコミュニティの運営費として各自治会に年10万円程度補助、ポイント還元費用に年100万円程度を見込みます。総額でも年間300万円以下で展開可能で、これは環境省の地域脱炭素移行推進交付金等を活用します。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 再エネ設備誘致では候補地周辺の景観影響や電磁波・騒音への懸念が出る場合があります。立地選定時に環境影響評価を実施し、問題が少ない場所を選ぶ(例えば工業団地内や日当たりの良い遊休地)ようにします。省エネコミュニティでは、プライバシーに関わる各家庭の電力使用データを扱うため、個別の数値は本人にのみ通知し、自治会などには平均値や達成状況のみ共有する仕組みとします。またポイント制度は不正防止策を講じ、行き渡りを公平にします。EV充電器の増設も公共施設や商業施設に働きかけ進めます。こうした草の根の取り組みにより、住民誰もが脱炭素に貢献できるムーブメントを醸成し、町全体で2050年ゼロカーボンという壮大な目標に挑戦していきます。
コミュニティ・多文化共生分野
1. 「コミュニティ・リビングラボ」の創設(世代・国籍交流拠点づくり)
〈ねらい・効果〉 地域住民が気軽に集い交流できる空間を作り、多世代・多文化の交流を促進します。具体的には、公民館の一部や空き店舗を改装して、カフェ機能やキッズスペースを備えた「コミュニティ・リビングラボ」を創設します。そこに地域ボランティアスタッフ(主婦、高齢者、外国人住民など)を配置し、お茶を飲みながらおしゃべりしたり、子育てや介護のちょっとした相談ができる場とします。イベントスペースも併設し、日本文化の紹介や外国料理教室などのワークショップ、趣味のミニ講座を頻繁に開催します。世代間・異文化間のカジュアルな交流を日常的に生み出す拠点となり、地域の絆づくりや外国人の地域参加促進に効果があります。
〈対象と実施主体〉 子育て中の親子、高齢者、外国人住民など地域の誰もが対象です。行政(生涯学習課など)が場所を提供・改装し、NPOや自治会有志が運営に当たります。ボランティアスタッフには主婦や退職者、留学生など多様な人材を募り、シフトで常駐してもらいます。運営にあたっては社会福祉協議会や国際交流協会と連携し、活動内容の企画にも関わってもらいます。
〈コスト感〉 既存施設を活用するため初期費用は内装改修や備品購入に200万円程度、ランニングコストは光熱水費や消耗品で年50万円程度です。スタッフはボランティアベースとし、必要に応じ交通費程度の謝礼を支給します。運営費は地域づくり支援交付金や民間助成金の活用を検討します。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 継続運営にはスタッフ確保と利用者数の維持が課題です。スタッフの負担にならないよう無理のない運営日(例:週3日、昼間のみ)から始めます。イベント開催時は地域おこし協力隊や大学の地域連携事業なども活用し、多彩なプログラムを提供します。治安面ではオープンスペースゆえに誰でも立ち寄れますが、常駐スタッフが目配りし、問題行動があれば注意・必要時は警察連絡する体制を取ります。コミュニティ・リビングラボを通じて、生涯学習や趣味活動のサークルが生まれたり、日本人と外国人がお互いの文化を知る交流が生まれることで、地域の活力と寛容性が高まります。
2. デジタル自治会(e-自治会)の導入とSNS行政サービス強化
〈ねらい・効果〉 若者や多様な住民が地域活動に参加しやすくするため、自治会運営や行政情報提供にデジタル技術を導入します。具体的には、各自治会にLINE公式アカウントや専用アプリを開設し、回覧板の情報や会議日程、地域ニュースなどをプッシュ配信します。加入者(地域住民)はチャット機能で意見や質問を投稿でき、自治会内の双方向コミュニケーションを促します。また行政もTwitterやInstagram等のSNSで防犯・防災・イベント情報を多言語で発信し、外国人や若者にも届くようにします。これにより紙の回覧板を回す手間が省け、若い世代や共働き世帯も自治会情報にアクセスしやすくなります。さらに自治会未加入者にも情報が届きやすくなり、地域参加へのハードルを下げる効果があります。
〈対象と実施主体〉 自治会加入者および未加入の地域住民全般が対象です。行政(情報政策課)が自治会連合会と協議し、試験的に数地区でe-自治会を導入します。LINE導入支援などは民間IT企業に委託し、自治会役員向けの操作研修会を開催します。SNSでの行政情報発信は役場広報担当が所管し、必要に応じ英語・中国語などへの翻訳ボランティアを募ります。
〈コスト感〉 LINE公式アカウント利用料や簡易アプリ開発に年間50万円程度、研修会開催や広報費に20万円程度です。SNS発信は既存人員で対応できますが、多言語化に月数万円の外注費を見込みます。総額でも年間100万円程度で実施可能です。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 高齢者の中にはスマホ非利用者もいるため、紙の回覧板と併用期間を設け、徐々に移行します。デジタルに疎い自治会役員もいることから、サポート役として若手住民に協力を依頼し、世代間交流を図る機会にもします。オンライン上の誹謗中傷などを防ぐため、ガイドラインを設け不適切投稿は管理者が削除できるようにします。プライバシー情報の取り扱いにも注意し、個人情報を含む内容は従来通り紙または限定配信とするルールを定めます。これらを踏まえつつe-自治会を展開できれば、地域情報の伝達力が飛躍的に向上し、若い人も自治会活動に興味を持つきっかけになるでしょう。
3. 多文化共生サポートデスク設置と異文化交流プログラム
〈ねらい・効果〉 増加する外国人住民が安心して暮らせ、日本人住民との相互理解が深まるよう、専門の相談窓口と交流機会を設けます。具体的には役場庁舎内に「多文化共生サポートデスク」を新設し、英語・中国語などに対応可能な相談員を週3日程度配置します。ここで在留手続き、生活ルール、子育て・教育相談などについてワンストップで助言します(必要に応じ専門部署や機関へつなぐ)。また日本人住民向けにも異文化理解の研修会や語学講座を開催し、お互いの文化を知る場を作ります。さらに町主催で国際交流イベント(外国料理の持ち寄りパーティー、スポーツ交流など)を年数回開催し、日常的に顔を合わせる機会を増やします。これらにより外国人が困ったとき気軽に頼れる環境を整え、外国人への偏見や孤立を防ぎ、多文化が調和した地域社会を目指します。
〈対象と実施主体〉 対象は外国人住民(主に中国・フィリピン・ブラジル等出身者)および一般町民です。行政(市民課など)が窓口設置し、語学堪能な非常勤職員や移住経験者を相談員として採用します。国際交流協会やNPOとも連携し、交流イベントの企画運営に協力してもらいます。学校現場とも情報共有し、外国にルーツを持つ児童生徒の支援も連動させます。
〈コスト感〉 相談員の謝金として週3日×非常勤1名で年間250万円程度、イベント開催費1回あたり10万円×年3回で30万円、研修講師謝礼等で20万円、合計300万円程度です。国の多文化共生推進交付金や県の国際交流助成を活用します。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 適任の相談員確保が課題です。幸いにも近隣には成田空港があり、語学人材や国際業務経験者が存在するため、経験者OBや地域在住のバイリンガル人材を積極的に登用します。相談内容の秘密保持を徹底し、信頼される窓口運営に努めます。交流イベントでは文化の違いによる誤解が生じないよう、事前にスタッフが留意点を説明し、互いを尊重する雰囲気づくりをします。一部で出ている「外国人増加への不安」についても、こうした場で直接交流し理解を深めることで払拭していくことが期待できます。
4. 空き家再生プロジェクトと地域拠点化(「おたがいさまハウス」構想)
〈ねらい・効果〉 増加する空き家を放置せず地域資源として活用しつつ、防災・防犯上の不安を解消します。具体的には、自治体から空き家所有者に働きかけ意向調査(除却か活用か)を行います。町は空き家の解体費用に対する補助(例:費用の1/2、上限50万円など)を創設し、危険な老朽空き家の除却を促進します。同時に、活用可能な空き家については改修費補助(上限100万円)を出し、例えば高齢者のシェアハウス、子育てサロン、地域見守り拠点「おたがいさまハウス」などへの転用を図ります。おたがいさまハウスとは、地区のボランティアが交代で常駐し、お茶のみ場兼高齢者・子どもの見守り拠点にするアイデアです。空き家をコミュニティスペースに再生することで地域の交流拠点が増え、見守りの目も行き届きやすくなります。
〈対象と実施主体〉 対象は町内の空き家所有者および地域住民です。行政(住宅担当課)が補助制度を運用し、自治会等と協力して空き家所有者への働きかけを行います。改修後の活用については社会福祉協議会やNPOと連携し、運営を委ねます。おたがいさまハウスのボランティアは、民生委員や自主サロンの世話人、地域の主婦層などから募ります。
〈コスト感〉 除却補助は1件あたり50万円×年間5件=250万円、改修補助は1件100万円×年間3件=300万円を想定します。合計年間550万円で、これは国の空き家対策交付金等を活用します。おたがいさまハウスの運営費はボランティアベースで、空調電気代等を年間10万円ほど町が負担します。
〈実現上のハードルと副作用への配慮〉 空き家所有者の理解を得るのが最大のハードルですが、税制優遇(例えば解体後も住宅用地特例の固定資産税軽減を一定期間維持等)も含めインセンティブを提示し、丁寧に説得します。改修して地域施設に転用する場合、管理責任の所在を明確にする必要があります。地元自治会等に運営主体となってもらい、町も指導・支援します。大規模改修が必要な空き家は無理せず除却に回し、本当に活用価値のある物件に絞ることで効率的に進めます。空き家問題は全国的にも深刻で、放置すれば景観悪化や安全面の危険があります。早めに手を打つことで地域の美観と安全が保たれ、新たなコミュニティ拠点が生まれる副次効果も期待できます。
横断的な優先課題トップ5とロードマップ・KPI提案
酒々井町が持続可能なまちづくりを進める上で、特に緊急性・影響範囲の大きい横断的な優先課題として次の5点を抽出できます。
(1) 地域の安全安心(治安・防災・交通)
窃盗犯罪や特殊詐欺から住民を守り、高齢者も安心して暮らせる治安・交通環境を整えることです。犯罪抑止策、防犯コミュニティの維持、公共交通の確保、防災力向上が含まれ、町の暮らしの基盤となる課題です。
(2) 人口減少・少子化対策(若年定住・子育て支援)
若者・子育て世代の定住促進と出生数の底上げがテーマです。住宅・雇用・子育て環境の整備により、町の将来を支える人材を呼び込み育てることが求められます。
(3) 高齢者支援と地域包括ケア
単身高齢者の増加に対応し、介護・医療・生活支援を充実させることです。フレイル予防や見守りを強化し健康寿命を延ばすとともに、高齢者が地域で役割を持てる仕組みを作ることが目標です。
(4) 産業活性化と雇用創出
地域経済の持続力を高めるための企業誘致・農業振興・観光推進が課題です。町内に働く場を増やし、町内で働き稼げる環境を整えることは、財政基盤強化にも直結します。
(5) 地域コミュニティ再生と多文化共生
希薄化する地域のつながりを再構築し、多様な住民が協働できる社会を作ることです。自治会の活性化や外国人支援を通じて、住民誰もが町に溶け込めるようにする取り組みが重要です。
以上5項目はいずれも緊急性・重要性が高く、今後の町の持続可能性に直結する最優先課題です。この節では、それぞれの課題に対し前述の政策オプションから特に優先度の高い施策を組み合わせ、短期(今後1~3年)、中期(4~10年)、長期(10年以上)の時間軸でロードマップと達成目標(KPI案)を提案します。
1. 地域の安全安心(治安・防災・交通)
- 短期(1~3年): 防犯カメラ設置拡充策(提案A1)により町内50台の防犯カメラ増設を完了し重点エリアの監視網を強化。電話詐欺ゼロ作戦(A2)で高齢者宅1,000世帯への自動録音機配布を達成し、特殊詐欺被害額を前年比半減。コミュニティバスのMaaS試行導入(提案E2)を開始し、1路線でAIオンデマンド運行の社会実験を実施。防災オープンハウス開催と若手防災リーダー育成(E3)で20人の新防災リーダーを認定、地域防災訓練参加率の向上(全町で+5%)を図ります。
- 中期(4~10年): ブルーライト見守り隊の全地区展開(A3)により、夜間パトロールを週3回以上実施。スマート街路灯(A4)を暗所30か所に設置し、重点地域での夜間犯罪ゼロを3年以上継続。デマンド交通サービス(E2)を本格運行に拡大し、交通弱者(免許返納高齢者等)の外出機会を現在の年2回程度から月1回以上に増加(アンケートで確認)。自主防災組織の若返り(E3)で、各自治会に40~50代の防災リーダーが複数配置され、住民防災訓練参加率を現状5%程度から15%以上に上昇させます。
- 長期(10年以上): 刑法犯認知件数を現在の年間113件(人口換算)から80件以下に減少させ、安全な状態を維持。高齢者の特殊詐欺被害をゼロに抑え、3年以上連続被害ゼロを達成。公共交通の利用者数を町全体で20%増加させ、65歳以上の運転免許保有率を5ポイント低下(返納促進)させます。震度6以上が想定される地区の要支援者全員に個別避難計画を策定し(現状0から100%)、災害時の避難完遂率向上を実現します。
2. 人口減少・少子化対策(若年定住・子育て支援)
- 短期(1~3年): 結婚・新生活応援パック(提案C3)を開始し、新婚世帯へ地元商品券10万円分支給を定着化(利用者アンケート満足度80%以上)。病児保育施設開設(C1)を完了し、年間延べ100人の利用実績を達成(共働き世帯の安心確保)。Uターン就職ナビ(C3)を運用開始し、対象学生・若手社会人50名以上を登録。
- 中期(4~10年): 保育園待機児童ゼロを継続(常に0名)、保育士充足率100%維持。第3子出生率の向上策により、3人以上の子を持つ世帯割合を現行5%から8%へ上昇。20代の年間転出超過数を半減(現在年間-50人→-25人程度に縮小)。20~39歳若年女性人口の社会増減を±0に近づけ、若年女性の流出を止める。毎年地元企業へのUターン新卒就職者を10人以上確保します。
- 長期(10年以上): 総人口を2万人規模で維持(現状2.0万人を下限に下げ止まり)。年間出生数を80人台から100人程度に回復させ、合計特殊出生率を1.3から1.6へ引き上げます。年間婚姻件数を人口1,000人あたり4.5件から6.0件に増加させます(婚姻率向上)。子育て環境満足度調査で「満足」と答える割合を70%以上(現状約53%)に高め、子育てするなら酒々井町が良いという評価を確立します。
3. 高齢者支援と地域包括ケア
- 短期(1~3年): すこやかステーション(提案B1)を2か所設置し、年間延べ300件の相談対応を実施。のりあいタクシー試行導入(B2)で月利用件数100件を達成し、高齢者の外出支援を軌道に乗せます。介護人材シェアリング協定締結(B3)により、緊急ヘルプ派遣を年間20回実現(各事業所の人手不足時に迅速対応)。高齢者お助け隊(B4)立ち上げで登録高齢者30人、延べ50件の助け合い依頼に対応します。
- 中期(4~10年): 一人暮らし高齢者983人(2020年時点)への見守り訪問頻度を平均年4回に倍増(現状年2回程度)。地域包括ケア会議(多職種協議)を全地区で年4回開催し、ケアプランへの地域資源活用率を50%以上に引き上げます。65歳以上の要介護認定率を現状18.5%から17%台へ改善(介護予防効果)。のりあいタクシー(B2)を本格導入し、移動困難者の外出回数を導入前比20%増加させます。地域支え合い活動に参加する高齢者数を現状200人から300人へ増加させ、生きがいと社会参加を促進します。
- 長期(10年以上): 健康寿命を延伸し、男性72.5歳→75歳、女性75.5歳→78歳(いずれも県平均を上回る水準)を達成。75歳以上独居高齢者への生活満足度アンケートで「困っていない」と回答する割合を80%以上に向上(現在より大幅改善)。介護離職(家族が介護のため離職)ゼロを目指し、該当事例をなくします。高齢者虐待の発生件数もゼロを継続し、高齢者が安心して暮らせる地域環境を維持します。
4. 産業活性化と雇用創出
- 短期(1~3年): 企業誘致専任窓口の設置(提案D1)と積極的営業活動により、3年以内に町内進出企業1社決定(従業員50人規模の物流センター等)。スマート農業団地構想(D2)の計画立案を完了し、国の補助内示を獲得。周遊観光バスツアー(D3)の社会実験運行を開始し、アウトレット来訪客の1.4%(年間1万人)が乗車する実績を作る。商店街リノベ補助(D4)で空き店舗3件の活用を支援し、前年より人通り10%増(商工会調査)を達成。
- 中期(4~10年): 酒々井IC周辺に南部新産業団地第2期(仮称)を造成し、5haの用地に新規事業所5社が立地、計250人の雇用創出、年間法人町民税収+2,000万円を実現(D1関連)。スマート農業団地(D2)が稼働し、若手農業者5組が就農、新規生産額年間1億円を達成。観光宿泊誘致(D3)でビジネスホテル1棟開業、年間延べ宿泊客1万人を誘致(外国人客含む)。ふるさと納税額を3,000万円(2022年度)から1億円規模に増額(酒々井ブランド品開発やPR効果)。旧商店街の空き店舗率を20%から10%へ改善し、高齢者の買い物弱者ゼロを目指します。
- 長期(10年以上): 町内就業者数を現在の9,170人から10,000人超に増やし、町内就業率を26%→35%へ向上(より多くの町民が町内で働けるようになる)。製造業就業者比率を5%→10%に倍増(工場誘致に成功)。観光入り込み客数を年間700万人→750万人に増やし、観光消費額を+10%アップ。農地面積の減少に歯止めをかけ、現在年-1%の農地減少率を±0%に維持(耕作放棄地ゼロへ)。町税収を総合的に拡大し、将来的に町税収入5%アップを実現します。
5. 地域コミュニティ再生と多文化共生
- 短期(1~3年): コミュニティ・リビングラボ(提案F1)を1か所開設し、月間来場者数200人を達成(世代横断の交流促進)。e-自治会システム(F2)を全20自治会で導入し、回覧板情報のオンライン閲覧率50%を実現。多文化サポートデスク(F3)を週3日開設し、年間100件の外国人相談を処理。異文化交流イベントを年2回開催し、各回延べ200人以上参加(日本人・外国人混合)。空き家除却・改修補助(F4)を計8件実施し、危険空き家解消率30%(把握件数の約1/3を除却)を達成。
- 中期(4~10年): 自治会加入率を現行85%→90%に改善(特に新興住宅地での加入促進により上昇)。自治会役員の平均年齢を5歳若返らせ(70歳→65歳程度)、世代交代を部分的に実現。外国人住民アンケートで「地域に溶け込めている」と感じる人の割合を70%以上に向上(現状不明瞭なため調査を実施し、以降改善を測定)。空き家総数の増加を止め、2020年時点180戸に対し2027年時点も180戸±0で横ばいに抑制(売却・活用が増え増加を相殺)。各地区に「おたがいさまハウス」(F4)を3か所設置し、見守り拠点として各地区で年間延べ500人の高齢者・子どもが利用。
- 長期(10年以上): 地域行事(祭り・清掃など)への町民参加率を向上させ、町民の70%以上が年1回以上何らかの地域活動に参加(現状50%程度と推定)。外国人住民数が1,000人を超えてもトラブル件数ゼロを維持し、住民意識調査で「外国人との共生に不安はない」と答える人を80%以上に高める。空き家利活用率を50%に引き上げ(バンク成約等を増加させ半数の空き家が活用される状態)、地域の景観と防犯安全に寄与。コミュニティ見守り体制の充実で孤独死件数ゼロを継続し、高齢者も子育て世代も孤立しない地域を維持します。
将来像への貢献と進捗管理KPI案
(将来像への接続)
酒々井町が掲げる将来都市像「人・自然・歴史・文化が調和した活力あふれるまち 酒々井」に対し、上記の施策群は次のように貢献します。①安全安心施策は、人々が安心して暮らせる基盤を整え、活力の前提条件を作ります。地域の協働による防犯・防災活動は「人々の調和」を促し、町に活気をもたらします。②少子化対策・若者定住策は将来の人口構成を安定させ、経済・文化の担い手を確保することで活力の源泉となります。子育て環境の充実は若い世代の心にゆとりと絆を生み、次代への文化継承にもつながります。③高齢者支援は歴史を築いてきた世代を大切にし、その知恵や経験を地域で活かすことで世代間の調和を実現します。健康長寿社会は自然とも調和的(医療資源の節約等)で持続可能な町づくりにつながります。④産業振興策は経済基盤を強化し、働く場があることで人が集まり町に賑わいと活気を生みます。地場農産品ブランドや観光活性化は酒々井の歴史文化を全国・世界に発信し、「自然・歴史・文化の調和」を具体化します。⑤コミュニティ・多文化施策は多様な背景の人々が互いを認め合い協力する土壌を育て、「人と人の調和」が醸成されます。それぞれの施策が将来像キーワードである「人・自然・歴史・文化の調和」の各要素に響き合い、相乗効果で町の魅力と活力を高めます。例えば防犯パトロールに外国人も参加する(人と文化の調和)施策は、安全安心と多文化共生を同時に叶え、町全体の調和に寄与します。すべての施策は最終的に「酒々井に住んで良かった」「ずっと住み続けたい」と住民に思ってもらえる町の実現に資するものです。
(進捗管理とKPI設定)
各施策の進捗を継続的に管理し、必要に応じ強化や見直しを図るため、以下のようなKPI(重要指標)を提案します。
- 行政サービス指標: 町施策の成果を示す客観指標として、(a)刑法犯認知件数・特殊詐欺被害額、(b)年間出生数・20代転出超過数、(c)要介護認定率・高齢単身世帯数、(d)町内就業者数・有効求人倍率・観光消費額、(e)自治会加入率・外国人相談件数、といった指標を設定し毎年データをモニタリングします。各KPIに上述の中期目標値等を割り当て、達成度合いを毎年度点検します。
- 住民満足度指標: 数値だけでなく住民の実感も重視するため、2年ごとに町民意識アンケートを実施し、「治安に満足」「子育てしやすい」「高齢になっても暮らせる」「町内に働き口がある」「地域に愛着がある」「外国人との共生に不安はない」といった項目についてポジティブ回答率の向上をKPIとします。例えば治安満足度を現状60%→80%、地域愛着度を70%→90%など具体目標を掲げます。
- プロジェクト進捗指標: 提案した各施策ごとに、実施状況をチェックする指標を設けます。例:防犯カメラ○台設置完了、コミュニティバスAI化実施エリア数、子育て新規施策の利用者数、誘致企業件数、交流イベント参加者数などです。PDCAサイクルに則り進捗が遅れれば原因を分析し、計画修正やリソース再配分を行います。
これらKPIは町民にも公開し、毎年の町広報や議会で達成状況を報告することで説明責任を果たします。数値目標の達成と住民満足度の向上という両面から進捗を管理し、軌道修正を図りつつ施策を推進します。最終的にこれらKPIの達成が将来像実現のチェックポイントとなり、町行政と住民が一体となって目標に向かう指針となるでしょう。
おわりに:酒々井町の将来像に向けて
以上、酒々井町の現状分析に基づき各分野の課題と具体策、そして横断的な優先課題へのロードマップと指標を示しました。本提案記事は行政職員と町民が一緒に読み、まちづくりの議論の出発点となることを目的としています。冷静で分析的な視点で課題を洗い出し、他方で小規模町でも実行可能な現実解を提示するよう努めました。提案した施策はいずれも町民生活に密着したものであり、行政だけでなく地域住民や企業、団体との協働が成功の鍵となります。
酒々井町は古くからの共同体意識と歴史文化を大切にしつつ、新たな時代の波(人口減少・多文化共生・脱炭素など)に向き合わねばなりません。幸いにも、適度な規模で住民同士の顔が見える関係が残る本町では、行政と町民が力を合わせれば大都市には真似できないきめ細やかなまちづくりが可能です。重要なのは、課題を先送りせず一つ一つ対策に着手する行動力と、データに基づいて進捗をチェックし続ける持続力です。
「人・自然・歴史・文化が調和した活力あふれるまち」は決して絵空事ではありません。本記事で挙げたような多方面の取り組みを着実に積み重ねていけば、10年後、20年後に「あのとき皆で議論して始めた施策が実を結び、酒々井町は元気になった」と振り返る日が来るでしょう。行政・町民・関係者が垣根を越え一丸となって取り組むことで、酒々井町の未来像はきっと現実のものとなります。町の将来を担う次世代に胸を張って誇れる酒々井を手渡すため、今こそ知恵と力を出し合い、ともに行動を起こしていきましょう。
参考文献
- 酒々井町「第6次酒々井町総合計画(基本構想・前期基本計画)」酒々井町、2023年
- 酒々井町「酒々井町まち・ひと・しごと創生総合戦略(第2期)」酒々井町、2022年
- 酒々井町「酒々井町都市計画マスタープラン(令和6年改訂版)」酒々井町、2024年
- 酒々井町「道路構造物長寿命化修繕計画」酒々井町、2024年
- 酒々井町「酒々井町地域防災計画」(防災会議策定、2021年改訂版)酒々井町、2021年
- 酒々井町「酒々井町地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」酒々井町、2023年
- 総務省統計局「令和2年国勢調査結果(基本集計)」総務省、2021年公表
- 千葉県「日本の市町村別将来推計人口(2023年推計)」千葉県企画財政部統計課、2023年
- 酒々井町「酒々井町の人口と世帯(住民基本台帳)」酒々井町税務住民課、2025年
- 千葉県警察「令和4年 千葉県刑法犯認知状況(酒々井町)」千葉県警察本部、2023年
酒々井町の現在地と未来への政策提案
はじめに 千葉県印旛郡酒々井町(しすいまち)は、豊かな自然と歴史を有する一方で、成田国際空港近郊のベッドタウン・商業拠点として発展してきた人口約2万人の町です。近年は少子高齢化と人口減少が進み、高齢化率は3人に1人が高齢者という状況に達しました。一方、在留外国人も増え、2023年末時点で町人口の約4.6%(約926人)を占めています。町財政は小規模自治体として堅実に運営されていますが、今後は職員高齢化に伴う人件費増や老朽インフラ更新への対応が課題となっています。また治安面では年間100~150件ほどの刑法 ...
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