
記事作成日:2026年5月20日
最終更新日:2026年5月20日
この記事の結論
主婦年金と呼ばれる第3号被保険者制度は、記事作成時点で「すぐに全面廃止される」と決まっているわけではありません。
ただし、短時間労働者への社会保険適用拡大が進むことで、これまで配偶者の扶養内で働いていたパート・アルバイトの一部は、厚生年金・健康保険に加入するケースが増えていきます。
つまり、今回のポイントは「第3号被保険者制度の即時廃止」ではなく、社会保険適用拡大による実質的な対象縮小です。
手取りが一時的に減る人がいる一方で、将来の厚生年金が増えたり、傷病手当金・出産手当金などの保障が広がったりする面もあります。
主婦年金とは何か
いわゆる「主婦年金」とは、国民年金の第3号被保険者制度を指す通称です。
第3号被保険者とは、厚生年金に加入している会社員・公務員などに扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者のことです。専業主婦だけでなく、条件を満たせば専業主夫も対象になります。
国民年金には、主に次の3つの区分があります。
| 区分 | 主な対象者 | 保険料の扱い |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 自営業者、フリーランス、学生、無職の人など | 自分で国民年金保険料を納める |
| 第2号被保険者 | 会社員、公務員など | 厚生年金保険料として給与から天引きされる |
| 第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養される配偶者 | 本人が直接保険料を納めなくても、保険料納付済期間として扱われる |
この仕組みは、専業主婦世帯が多かった時代に、配偶者の年金権を守る役割を果たしてきました。一方で、現在は共働き世帯や単身世帯が増え、「保険料を直接負担しない第3号」と「自分で保険料を負担する人」との公平性が論点になっています。
なぜ見直しが議論されているのか
第3号被保険者制度の見直しが議論される背景には、いくつかの理由があります。
第一に、働き方の変化です。かつては夫が会社員、妻が専業主婦という世帯モデルが一般的でした。しかし現在は、共働き世帯が増え、単身者も増えています。制度が前提としていた家族像と、実際の社会の姿にズレが出ています。
第二に、「年収の壁」による働き控えです。扶養から外れないように、年収や勤務時間を調整する人は少なくありません。企業にとっても、人手不足の中でシフトを増やしたくても増やせないという問題につながります。
第三に、社会保険財政の観点です。高齢化が進む中で、年金や医療保険の支え手を広げる必要があります。短時間労働者にも厚生年金・健康保険の適用を広げることは、働く人本人の保障を厚くすると同時に、制度を支える人を増やす意味もあります。
ただし、育児・介護・病気などで働きたくても働けない人への配慮も必要です。そのため、「第3号をすぐ廃止すればよい」という単純な話ではありません。
2025年以降の制度改正で何が変わるのか
大きな流れは、短時間労働者への社会保険適用拡大です。
これまで、パート・アルバイトが厚生年金・健康保険に加入するには、勤務時間や賃金、企業規模などの要件がありました。今後は、このうち企業規模要件や賃金要件が段階的に見直され、社会保険に加入する短時間労働者が増える方向です。
特に重要なのは、次の3点です。
1つ目は、週20時間以上働く人の社会保険加入がより重要になることです。年収だけでなく、勤務時間も判断材料になります。
2つ目は、106万円の壁と呼ばれてきた賃金要件が見直される方向であることです。これにより、「月額賃金が一定額未満なら社会保険に入らなくてよい」という考え方は、今後通用しにくくなります。
3つ目は、企業規模要件が段階的に縮小・撤廃される方向であることです。これまで大企業中心だった社会保険適用拡大が、中小企業にも広がっていきます。
変わること・変わらないこと
| 項目 | 現在の考え方 | 今後の方向性 | 読者への影響 |
|---|---|---|---|
| 第3号被保険者制度そのもの | 存在している | 直ちに全面廃止ではなく、今後も議論対象 | 「廃止決定」と誤解しないことが重要 |
| 扶養内パート | 条件を満たせば第3号のまま | 社会保険加入対象が広がる | 働き方の再検討が必要 |
| 週20時間以上勤務 | 社会保険加入の重要要件 | 引き続き重要 | 年収だけでなく勤務時間確認が必要 |
| 106万円の壁 | 短時間労働者の賃金要件として意識されてきた | 見直し・撤廃方向 | 「106万円未満なら安心」とは言いにくくなる |
| 130万円の壁 | 扶養認定に関わる基準 | 引き続き注意が必要 | 130万円未満でも社会保険加入になる場合がある |
| 厚生年金加入 | 加入すれば保険料負担あり | 加入対象者が増える | 手取り減と将来年金増をセットで見る |
| 健康保険加入 | 加入すれば保険料負担あり | 対象者が増える | 傷病手当金・出産手当金の対象になる可能性 |
| 企業負担 | 対象者分の会社負担あり | 中小企業にも広がる | 人件費・労務管理への影響 |
| 専業主婦・主夫 | 第3号の対象になり得る | 直ちに一律負担化ではない | 将来の議論には注意 |
| 育児・介護で働けない人 | 第3号制度が支えになっている面がある | 配慮が必要 | 単純な廃止論では整理できない |
106万円の壁・130万円の壁・週20時間の壁の違い
「年収の壁」と一言でまとめられがちですが、制度上は別物です。
| 壁 | 主に関係する制度 | 税金か社会保険か | 超えた場合に起きること | 誤解されやすい点 |
|---|---|---|---|---|
| 106万円の壁 | 短時間労働者の社会保険加入要件 | 社会保険 | 厚生年金・健康保険加入の対象になり得る | 税金の壁ではない |
| 130万円の壁 | 健康保険の被扶養者、第3号被保険者 | 社会保険 | 扶養から外れる可能性がある | 130万円未満でも、別要件で社会保険加入になる場合がある |
| 週20時間の壁 | 短時間労働者の社会保険加入要件 | 社会保険 | 社会保険加入の判断材料になる | 年収だけ見ていると判断を誤る |
| 103万円・配偶者控除など | 所得税 | 税金 | 所得税や配偶者控除に影響 | 社会保険の扶養とは別制度 |
特に大事なのは、税金の扶養と社会保険の扶養は別制度という点です。税金上の配偶者控除に該当するかどうかと、健康保険・年金の扶養に入れるかどうかは、同じ基準ではありません。
専業主婦・主夫にはどんな影響があるか
就労していない専業主婦・主夫が、記事作成時点で直ちに第3号から外れるわけではありません。
ただし、第3号被保険者制度のあり方そのものは、今後も議論される可能性があります。共働き世帯や単身者との公平性、社会保険財政、女性の就業促進といった論点があるためです。
老後資金の観点では、基礎年金だけで十分かどうかを考える必要があります。第3号のままでいる場合、老齢基礎年金の対象にはなりますが、厚生年金の上乗せはありません。世帯全体では、配偶者の年金、退職金、NISA、iDeCo、預貯金なども含めて考える必要があります。
扶養内パートにはどんな影響があるか
最も影響を受けやすいのは、扶養内で働いてきたパート・アルバイト層です。
これまで年収や勤務時間を調整してきた人は、今後、勤務先の規模や週の労働時間によって、厚生年金・健康保険に加入するケースが増える可能性があります。
社会保険に加入すると、保険料負担が発生するため、短期的には手取りが減ることがあります。しかし、そこで判断を止めると損得を見誤ります。
厚生年金に入れば、将来受け取る年金が増える可能性があります。また、健康保険に加入すれば、病気やけがで働けないときの傷病手当金、出産で休むときの出産手当金など、国民健康保険や扶養のままでは受けられない給付が得られる場合があります。
つまり、「手取りが減るから損」と単純に見るのではなく、短期の手取り、将来の年金、休業時の保障を分けて考えることが大切です。
配偶者を扶養している会社員にはどんな影響があるか
配偶者が扶養から外れて社会保険に加入すると、世帯の手取りに影響する可能性があります。
たとえば、配偶者本人の給与から社会保険料が引かれるようになります。また、勤務先によっては、配偶者が扶養から外れることで家族手当・配偶者手当が支給されなくなる場合があります。
一方で、配偶者本人の厚生年金が増え、健康保険の保障も広がります。長期的には、世帯単位で「扶養に入るかどうか」だけを見るのではなく、夫婦それぞれが自分の年金と保障を持つという考え方が重要になります。
企業にはどんな影響があるか
企業側には、保険料負担と事務負担が発生します。
パート・アルバイトが社会保険に加入すると、会社は厚生年金保険料・健康保険料の事業主負担分を負担します。対象者が多い企業ほど、人件費への影響は大きくなります。
また、加入対象者の確認、従業員説明、資格取得届の提出、給与計算の変更など、労務管理の負担も増えます。特に中小企業では、事前準備が重要です。
一方で、社会保険に加入できる職場であることは、採用や定着にプラスに働く可能性もあります。福利厚生の充実を打ち出せるため、人材確保の面ではメリットもあります。
企業は、対象者のリストアップ、保険料負担の試算、従業員説明の準備を早めに進める必要があります。
メリットとデメリット
メリット
- 将来の厚生年金が増える可能性がある
- 傷病手当金・出産手当金など健康保険の保障が広がる
- 年収の壁を意識した働き控えが減る可能性がある
- 共働き世帯や単身者との公平性が高まる
- 企業にとっては人材確保・定着につながる可能性がある
デメリット・懸念
- 短期的に手取りが減る場合がある
- 中小企業の保険料負担が増える
- 労務管理や従業員説明の負担が増える
- 制度が複雑で、読者が誤解しやすい
- 育児・介護などで働けない人への配慮が必要
ケース別に見る影響
| ケース | 今後の影響 | 注意点 |
|---|---|---|
| 年収90万円のパート | 勤務時間や勤務先規模によっては将来影響を受ける可能性 | 年収だけでなく週20時間以上かを確認 |
| 年収106万円前後のパート | 賃金要件見直しの影響を受けやすい | 106万円未満なら必ず安全とは言えない |
| 年収130万円前後のパート | 扶養から外れる可能性が高まる | 税と社会保険を分けて確認 |
| 週20時間以上働くパート | 社会保険加入対象になりやすい | 勤務先の企業規模も確認 |
| 専業主婦・主夫 | 直ちに第3号から外れるわけではない | 将来の制度議論と老後資金に注意 |
| 夫婦ともに会社員 | すでに第2号同士のため直接影響は限定的 | 制度全体の公平性議論には関係 |
| パートを多く雇う中小企業 | 保険料負担・事務負担が増える可能性 | 早めの試算と説明が必要 |
よくある誤解
「第3号被保険者制度はもう廃止された」は誤り
記事作成時点で、第3号被保険者制度がすでに廃止されたわけではありません。今後のあり方は議論されていますが、即時廃止と断定するのは不正確です。
「扶養内なら絶対に社会保険に入らなくてよい」は誤り
年収130万円未満でも、勤務時間や勤務先の条件によっては、厚生年金・健康保険に加入する場合があります。
「社会保険に入ると必ず損」は誤り
短期的には手取りが減ることがありますが、将来の厚生年金や健康保険給付が増える可能性があります。
「税金の扶養」と「社会保険の扶養」は別物
配偶者控除などの税制と、健康保険・年金の扶養は別制度です。同じ「扶養」という言葉でも、判断基準は異なります。
「106万円の壁」と「130万円の壁」は同じではない
106万円の壁は主に社会保険の加入要件、130万円の壁は扶養認定に関わる基準です。混同しないようにしましょう。
FAQ
Q1. 主婦年金は廃止されるのですか?
現時点で、主婦年金と呼ばれる第3号被保険者制度が直ちに全面廃止されると決まっているわけではありません。ただし、社会保険適用拡大により、対象者は段階的に減っていく可能性があります。
Q2. 専業主婦は今すぐ保険料を払う必要がありますか?
記事作成時点では、就労していない専業主婦・主夫が直ちに第3号から外れ、保険料を自分で払う制度になったわけではありません。
Q3. パートで週20時間以上働くと扶養から外れますか?
週20時間以上は社会保険加入の重要な要件です。ただし、実際に加入対象になるかは、勤務先の規模や雇用条件なども含めて判断されます。
Q4. 年収130万円未満なら第3号のままでいられますか?
必ずしもそうとは言えません。年収130万円未満でも、厚生年金・健康保険の加入要件に当てはまる場合は、第3号ではなく社会保険に加入することがあります。
Q5. 106万円の壁はなくなるのですか?
短時間労働者の社会保険加入に関する賃金要件は、見直し・撤廃の方向です。そのため、今後は106万円だけを基準に働き方を決めるのは危険です。
Q6. 社会保険に入ると手取りは減りますか?
保険料負担が発生するため、短期的には手取りが減る場合があります。ただし、将来の厚生年金や健康保険給付が増える可能性もあります。
Q7. 厚生年金に入るメリットはありますか?
あります。基礎年金に加えて厚生年金が上乗せされるため、将来の年金額が増える可能性があります。
Q8. 夫の扶養から外れると税金も増えますか?
税金の扶養と社会保険の扶養は別制度です。税金への影響は、配偶者控除・配偶者特別控除の要件を別途確認する必要があります。
Q9. 企業にはどんな負担がありますか?
対象者が増えると、会社負担分の社会保険料が増えます。また、従業員説明、加入手続き、給与計算などの事務負担も増えます。
Q10. 今から何を準備すればよいですか?
個人は、勤務時間、年収見込み、勤務先の企業規模、家族手当の条件を確認しましょう。企業は、対象者の把握、保険料負担の試算、従業員説明の準備を進めることが重要です。
読者への実務的アドバイス
まず、自分が第1号・第2号・第3号のどれに該当するか確認しましょう。
次に、勤務時間、年収見込み、勤務先の規模を確認します。特に、週20時間以上働いているかどうかは重要です。
そのうえで、税金の扶養と社会保険の扶養を分けて考えます。「扶養」という言葉だけで判断すると、制度を誤解しやすくなります。
最後に、手取りだけでなく、将来の年金額と健康保険給付も見て判断しましょう。短期的な手取り減だけを見ると不利に見える場合でも、長期的には保障が厚くなることがあります。
この記事の要点
- 主婦年金は、第3号被保険者制度の通称
- 第3号被保険者制度は、現時点で直ちに全面廃止されるわけではない
- ただし、社会保険適用拡大により、対象者は実質的に縮小する方向
- 扶養内パートは、勤務時間・年収・勤務先規模の確認が必要
- 106万円の壁、130万円の壁、週20時間の壁は別物
- 社会保険加入で手取りが減る場合がある一方、将来の年金や健康保険給付は増える可能性がある
- 税金の扶養と社会保険の扶養は混同しない
- 企業は保険料負担と労務管理への影響を早めに試算する必要がある
参考にした一次情報・確認先
-
厚生労働省:年金制度改正法の概要
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html -
厚生労働省:社会保険の加入対象の拡大について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html -
厚生労働省:社会保険適用拡大特設サイト
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/ -
日本年金機構:第3号被保険者の説明
https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kokunen/seido/kanyu/seidosetsumei/20140602-01.html -
国税庁:配偶者控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm -
国税庁:配偶者特別控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm