
※この記事は2026年8月3日時点の制度・情報に基づいています。
介護離職を防ぐ第一歩は、辞める前に「使える制度を知り、会社とケアマネジャーの両方に相談する」ことです。法律上、介護休業(通算93日・給付金あり)、介護休暇(年5日等)、残業免除、短時間勤務、テレワークなど複数の両立支援制度があり、パート・契約社員も要件を満たせば利用できます。2025年4月からは、介護に直面したことを会社に伝えた労働者へ、会社が制度を個別に説明し利用の意向を確認することが義務になりました。この記事では、制度の違い・給付金の計算・会社への伝え方・退職を決める前の確認事項を整理します。
この記事の要点
- 介護や看護を理由に離職する人は年間10.6万人。一方、働きながら介護をしている人は365万人います(総務省「令和4年就業構造基本調査」)。両立は例外ではなく多数派です。
- 介護休業は通算93日・3回まで分割でき、雇用保険から賃金の67%相当の介護休業給付金を受けられる場合があります。
- 「介護休業」「介護休暇」「年次有給休暇」は別の制度です。混同すると損をしたり、申請期限を逃したりします。
- 2025年4月施行の改正で、介護離職防止の措置(個別の周知・意向確認、40歳前後での情報提供など)が会社の義務になりました。
- 退職はいつでもできますが、両立支援制度は在職中しか使えません。「制度を使い切ってから判断する」が原則です。
目次
- まず押さえたい基本用語
- 最初に知るべき結論:辞める前に「2つの相談」をする
- 仕事と介護の両立を支える7つの制度【比較表】
- 介護休業給付金:対象条件と概算のしかた
- 2025年4月施行の改正で何が変わったか(2026年8月時点の確認)
- 正社員以外(パート・契約社員・派遣)は使えるのか
- 会社への相談方法:伝える事項と文例
- ケアマネジャーに確認する事項
- 退職を決める前のチェックリスト
- よくある誤解と正しい理解
- 相談先一覧
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
- 参考資料・出典
まず押さえたい基本用語
- 介護休業:要介護状態の家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できる長期の休業。育児・介護休業法に基づく労働者の権利です。
- 介護休暇:通院の付き添いや手続きなどのための短期の休暇。対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日で、時間単位でも取得できます。
- 介護休業給付金:雇用保険の被保険者が介護休業を取得したとき、休業開始時賃金日額の67%相当が支給される給付。申請は原則として勤務先経由でハローワークに行います。
- 要介護状態(育児・介護休業法上):負傷・疾病・障害により2週間以上常時介護を必要とする状態。介護保険の要介護2以上、または厚生労働省の判断基準に該当する場合が対象です。
- 対象家族:配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫。同居・扶養は要件ではありません。
最初に知るべき結論:辞める前に「2つの相談」をする
介護離職を防ぐ実務の核心は、会社(上司・人事)とケアマネジャーの両方に、早い段階で相談することです。
会社への相談で「使える制度と働き方の選択肢」が分かり、ケアマネジャーへの相談で「介護サービス側で減らせる負担」が分かります。どちらか一方だけだと、「会社の制度は知ったが介護の負担が変わらない」「サービスは増えたが働き方が変わらない」という片肺状態になりがちです。2025年4月からは、労働者が家族の介護に直面したことを会社に申し出た場合、会社には両立支援制度を個別に説明し、利用の意向を確認する義務があります(厚生労働省・育児・介護休業法)。つまり「介護が始まったと伝えること」自体が、制度への入り口になっています。
仕事と介護の両立を支える7つの制度【比較表】
法律で定められた主な制度は次の7つです。目的別に使い分けます。
【編集部の整理】両立支援制度の比較表
| 制度 | 休める日数・内容 | 賃金・給付 | 主な利用目的 | 申出先 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日・3回まで分割 | 会社の賃金は原則なし(無給が一般的)。雇用保険から介護休業給付金67%相当の場合あり | 介護体制づくり(認定申請・サービス契約・住環境整備・家族会議) | 会社(原則、開始予定日の2週間前までに書面等で申出) | 「介護に専念する期間」ではない。分割を前提に計画する |
| 介護休暇 | 年5日(対象家族2人以上は10日)・時間単位可 | 法律上は無給でよい(有給にするかは会社の定めによる) | 通院付き添い、ケアマネとの面談、手続き | 会社(当日申出も可の運用が一般的) | 年次有給休暇とは別枠。2025年4月から勤続6か月未満でも取得可能に |
| 短時間勤務等の措置 | 利用開始から3年以上の間で2回以上利用できる措置(短時間勤務・フレックス・時差出勤・介護費用の助成のいずれかを会社が用意) | 短縮した時間分は減額されるのが一般的 | 日常的な介護と仕事の両立 | 会社 | どの措置があるかは会社により異なる。就業規則を確認 |
| 所定外労働の制限(残業免除) | 請求すれば所定労働時間を超える労働が免除(1回1か月以上1年以内・回数制限なし) | 残業代がなくなる分収入は減る | 夕方以降の介護時間の確保 | 会社 | 事業の正常な運営を妨げる場合の例外あり |
| 時間外労働の制限 | 月24時間・年150時間を超える時間外労働の制限 | ― | 長時間残業の抑制 | 会社 | 36協定上の残業自体は可能な範囲が残る |
| 深夜業の制限 | 午後10時〜午前5時の労働の制限 | ― | 夜間の介護・見守り | 会社 | 交替制勤務などで重要 |
| テレワーク | 介護中の労働者が選択できるよう措置することが会社の努力義務(2025年4月〜) | 通常勤務と同じ | 通勤時間の削減・急な呼び出し対応 | 会社 | 義務ではなく努力義務。導入状況は会社による |
出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」ほか同法の解説資料を基に編集部作成(2026年8月3日確認)
なお、年次有給休暇は理由を問わず使える別制度です。緊急対応には有給休暇、細かな付き添いには介護休暇、体制づくりの集中期間には介護休業、と役割で使い分けるのが基本形です。
介護休業給付金:対象条件と概算のしかた
介護休業給付金は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で計算され、対象家族1人につき通算93日・3回まで支給されます。
主な支給条件は次のとおりです(雇用保険法・厚生労働省/ハローワーク資料)。
- 雇用保険の被保険者であること(自営業・フリーランスは対象外)
- 原則として、介護休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上(または就業時間数80時間以上)の月が12か月以上あること
- 休業期間中、休業開始前の賃金の80%以上が支払われていないこと(80%以上だと不支給。13%を超えると減額調整)
- 休業終了後に、原則として勤務先経由でハローワークに申請すること(申請期限は休業終了日の翌日から2か月後の月末まで)
概算の例(仮の想定ケース):休業開始前6か月の賃金合計が180万円の場合、賃金日額は180万円÷180日=1万円。30日休業すると、1万円×30日×67%=約20万1,000円が目安です。 ※前提:賃金に上限・下限があるため高収入の場合は上限で頭打ちになります。支給単位期間ごとの上限額は毎年8月1日に改定されるため、最新額はハローワークで確認してください。端数処理・実際の支給額は個別の賃金実績により異なります。
給付金は休業「終了後」の申請・支給が原則のため、休業中は手元資金が必要になる点に注意してください。
2025年4月施行の改正で何が変わったか(2026年8月時点の確認)
介護離職防止を目的とした次の措置が、2025年4月1日にすべて施行済みです(厚生労働省・改正育児・介護休業法)。
- 個別の周知・意向確認の義務化:労働者が家族の介護に直面した旨を申し出たとき、会社は両立支援制度等を個別に周知し、利用の意向を確認しなければなりません。
- 早期の情報提供の義務化:介護に直面する前の段階(40歳等の節目)で、会社は両立支援制度等の情報を労働者に提供しなければなりません。
- 雇用環境整備の義務化:研修の実施や相談窓口の設置など、介護休業等を取得しやすい環境の整備が義務になりました。
- 介護休暇の要件緩和:労使協定による「勤続6か月未満の労働者の除外」ができなくなり、入社直後でも介護休暇を取得できるようになりました(週の所定労働日数が2日以下の労働者の除外は残ります)。
- テレワークの努力義務:要介護状態の家族を介護する労働者がテレワークを選択できるようにすることが、会社の努力義務になりました。
2026年8月3日時点で、これらを変更する新たな法改正は施行されていません。「うちの会社には制度がない」と思っていても、法律上の制度は就業規則に書かれていなくても行使できます。まずは人事に確認してください。
正社員以外(パート・契約社員・派遣)は使えるのか
雇用形態を問わず、要件を満たせば介護休業・介護休暇などは利用できます。「正社員だけの制度」ではありません。
- 有期契約(契約社員・パート等)の介護休業:申出時点で「取得予定日から起算して93日を経過する日からさらに6か月を経過する日までに、労働契約(更新される場合は更新後の契約)の期間が満了することが明らかでない」ことが要件です。日々雇用の人は対象外です。
- 労使協定による除外:勤続1年未満の労働者などは、労使協定がある場合に介護休業の対象外とされることがあります。自社の労使協定の有無を人事に確認してください。
- 派遣社員:雇用主である派遣元に申し出ます。給付金の手続きも派遣元経由です。
- 介護休業給付金:雇用形態ではなく、雇用保険の被保険者期間などの要件で判断されます。パートでも被保険者であれば対象になり得ます。
判断に迷う場合は、会社の回答だけで諦めず、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。
会社への相談方法:伝える事項と文例
会社への相談では、「介護の状況」「利用したい制度」「働き方の希望」「当面の見通し」の4点を簡潔に伝えます。
詳細な病状やプライバシーまで開示する義務はありません。次の要素があれば、会社側は制度の説明義務(個別周知・意向確認)に基づいて動けます。
- 家族の介護に直面したこと(誰の介護かは「父」「母」程度で可)
- 当面の勤務への影響(急な休みが増える可能性、残業が難しい など)
- 利用を検討したい制度(介護休暇・残業免除・テレワークなど、分かる範囲で)
- 現時点の見通し(要介護認定の申請中、〇月頃に体制が固まる予定 など)
上司へ最初に伝えるときの文例(メール・チャット想定)
お疲れさまです。私事ですが、父の介護が必要な状況になりました。当面、通院付き添い等で急なお休みをいただく可能性があります。介護休暇や残業免除などの制度の利用も検討したいので、人事への確認も含め、一度お時間をいただけないでしょうか。業務への影響は最小限にできるよう調整します。
人事へ制度を確認するときの文例
家族の介護に直面したため、両立支援制度についてご相談です。①介護休暇・介護休業の申請方法と様式、②短時間勤務等の措置として当社にある制度、③テレワークの可否、④介護休業給付金の手続きの流れ、を教えてください。あわせて、就業規則の該当箇所をご共有いただけると助かります。
ケアマネジャーに確認する事項
会社側の調整と並行して、ケアマネジャーには「働き続けるために介護サービス側で何を増やせるか」を相談します。
- 自分が仕事を続けたいこと、勤務時間・出張の有無などの働き方の前提
- 平日日中の見守り・支援を増やせるか(訪問介護・デイサービスの回数など)
- 出張や繁忙期に使えるショートステイ(短期入所)の選択肢
- 「家族がやるべきこと」と「サービスに任せられること」の切り分け
- 緊急時(急な発熱・転倒)の連絡体制と対応手順
ケアマネジャーに遠慮して働き方の事情を伝えないと、家族の負担を前提にしたプランになりがちです。「仕事を辞めない前提でプランを組んでほしい」と最初に明言することが、介護離職防止の実務上のポイントです。
退職を決める前のチェックリスト
退職を考え始めたら、決断の前に次を確認してください。
- 介護休業(93日・3回分割)をまだ使い切っていないか
- 介護休暇・残業免除・短時間勤務・テレワークなど、退職以外の選択肢を会社に確認したか
- ケアマネジャーに「働き続ける前提」でサービスの組み直しを相談したか
- 退職した場合の収入減(給与・賞与・厚生年金・退職金への影響)を試算したか
- 介護は年単位で続く可能性があることを織り込んだか
- 再就職の難しさ(ブランク・年齢)と、介護終了後の生活設計を検討したか
- 会社独自の支援制度(法定を上回る休業・積立休暇・介護支援金など)の有無を確認したか
- 転職(介護と両立しやすい職場への移籍)や休職など、退職と離職以外の中間の選択肢を比較したか
そのうえで退職を選ぶことも、もちろん正当な選択です。ただし、両立支援制度は在職中にしか使えないため、「制度を確認し尽くしてから決める」順番だけは守ることをおすすめします。
よくある誤解と正しい理解
【編集部の整理】介護と仕事の制度で混同しやすい点
| よくある誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 介護休暇と有給休暇は同じもの | 別制度です。介護休暇(年5日等)は有給休暇とは別枠で、法律上は無給でも適法です(有給にするかは会社の定めによります)。 |
| 介護休業は1回しか取れない | 対象家族1人につき3回まで分割できます。初動・容体変化時・看取り期など、局面ごとに使えます。 |
| 給付金は休業中に自動で振り込まれる | 原則、休業終了後に勤務先経由で申請し、その後に支給されます。休業中の生活資金は別途確保が必要です。 |
| パートだから制度は関係ない | 雇用形態を問わず、要件を満たせば介護休業・介護休暇等を利用できます。 |
| 介護のことを会社に言うと不利になる | 介護休業等の申出・取得を理由とする解雇その他不利益な取扱いは法律で禁止されています。ハラスメント防止措置も会社の義務です。 |
相談先一覧
- 勤務先の人事・労務担当:制度の内容・申請様式・就業規則の確認。
- ケアマネジャー・地域包括支援センター:介護サービス側の調整(介護の始め方は関連記事参照)。
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):制度を使わせてもらえない、不利益な扱いを受けた等の相談。
- ハローワーク:介護休業給付金の要件・申請の確認。
よくある質問(FAQ)
Q1. 介護休業中に、少しだけ仕事をしてもよいですか。 A. 会社と合意した臨時・一時的な就労が行われる場合がありますが、働いた日数・賃金によっては介護休業給付金が減額・不支給になることがあります。就労を検討する場合は、事前に会社とハローワークに確認してください。
Q2. 同じ親の介護で、過去に93日使い切りました。もう休業できませんか。 A. 同じ対象家族については通算93日が上限です。ただし、別の対象家族(例:父で取得済みでも母は別枠)については、改めて93日の介護休業を取得できます。介護休暇や残業免除などは引き続き利用できます。
Q3. 兄弟姉妹で分担すれば、それぞれ介護休業を取れますか。 A. 取れます。介護休業は労働者ごとの権利のため、同じ親について、働いているきょうだいがそれぞれ通算93日まで取得できます。時期をずらして交代で取る方法も有効です。
Q4. 要介護認定がまだ出ていなくても、介護休業を申請できますか。 A. できます。法律上の要件は「2週間以上常時介護を必要とする状態」であり、要介護認定の取得は必須ではありません(要介護2以上であれば該当、それ以外は厚生労働省の判断基準で確認します)。会社が診断書等の提出を求める場合があるため、必要書類は人事に確認してください。
Q5. 会社に相談しても「前例がない」と言われました。 A. 介護休業・介護休暇等は法律上の権利であり、就業規則に規定がなくても行使できます。人事に法定制度である旨を確認し、それでも進まない場合は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談してください。
Q6. 介護休業中の社会保険料はどうなりますか。 A. 育児休業と異なり、介護休業には社会保険料(健康保険・厚生年金)の免除制度はありません。無給の場合でも保険料の本人負担分は発生するため、支払い方法(会社への振込等)を事前に確認しておきましょう。
まとめ
介護離職を防ぐ鍵は、「制度を知ること」と「会社・ケアマネジャーの双方に早く相談すること」です。介護休業は体制づくりの93日、介護休暇は日々の対応、残業免除や短時間勤務・テレワークは日常の両立、と役割で使い分けます。2025年4月の改正で、会社には介護に直面した従業員への個別の説明・意向確認が義務付けられました。声を上げることが制度の入り口です。介護そのものの始め方・相談先は、柱記事もあわせてご覧ください。
参考資料・出典
- 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」(2023年7月公表)https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/index.html
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」(改正ポイント・あらまし等の資料掲載ページ)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
- 厚生労働省・ハローワーク「介護休業給付の内容及び支給申請手続について」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/kaigokyuugyou.pdf /「Q&A〜介護休業給付〜」
- 厚生労働省 介護休業制度 特設サイト「法改正のポイント」(2025年4月施行の改正)https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度の適用可否や給付額は個別の雇用条件・賃金実績により異なります。具体的な判断は、勤務先・ハローワーク・都道府県労働局・社会保険労務士等にご確認ください。
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