
家が浸水すると、気が動転して何から始めればよいか分からなくなるのは自然なことです。筆者も自宅の浸水を経験し、同じ状態になりました。最初に優先するのは掃除ではなく、安全確認と被害記録です。本記事では、清掃・乾燥・消毒・手続きの順番を、筆者の体験と公的資料を分けて整理します。
家が浸水したら、今すぐ確認する4つ
- 危険なら戻らない:水が残る、建物が傾く、電線が切れているなどの危険があれば、家へ入らない。
- 電気・家電を使わない:浸水した分電盤、コンセント、電気設備、家電に触れず、電源を入れない。
- 水没車のエンジンをかけない:見た目が乾いても始動せず、販売店、整備工場、保険会社、ロードサービスへ連絡する。
- 片付ける前に撮影する:安全を確認できた後、外観、浸水の高さ、各部屋、家財、家電、車を写真と動画で記録する。
30秒で分かる行動順序
時刻は目安です。立入規制、安全状態、人手、汚染や建物の構造によって前後します。
| 時点 | 最優先で行うこと | やってはいけないこと |
|---|---|---|
| 浸水中・水が残っている | 避難し、安全な場所で自治体・気象情報を確認 | 家へ戻る、冠水路へ入る |
| 水が引いた直後 | 安全確認、写真・動画 | 浸水設備への通電、水没車の始動、記録前の廃棄 |
| 当日~3日程度 | 必要先へ連絡、家財搬出、排水、汚泥除去、洗浄 | 防護具なしの作業、薬剤の混合 |
| 数日~数週間 | 床下・壁内・断熱材を確認し、換気・送風・除湿 | 表面や臭いだけで乾燥完了と判断 |
| 清掃・乾燥後 | 必要な場所だけ適切に消毒 | 消毒剤を広範囲に噴霧 |
| 並行して行う | 罹災証明、保険、修理、車、災害ごみの手続き | 写真、領収書、見積書、契約書を捨てる |
やってはいけないこと
- 危険が残る家へ入る
- 濡れた分電盤、コンセント、家電に触れる
- 水没車のエンジンをかける、バッテリー端子を自己判断で触る
- 記録を残す前に家財を捨てる
- 防護具なしで泥や汚水に触れる
- 洗剤や消毒剤を混ぜる
- 塩素系消毒剤を広範囲に噴霧する
- 床下や壁内部が乾いたと目視だけで判断する
- 保険会社へ連絡する前に高額な修理契約を結ぶ
本記事は、2026年8月24日時点で確認できる国・自治体・関係機関の資料をもとに作成しています。自治体の申請期限、災害ごみ、支援制度、保険の補償条件は更新されるため、必ず当事者へ確認してください。
家が浸水したら、掃除より先に安全を確認する
水が残る、建物が不安定、電気・ガス・薬品の危険があるときは入りません。 写真も片付けも、命を危険にさらして行うものではありません。
冠水道路では水面下の側溝、段差、開いたマンホールが見えず、流れで足を取られます。避難指示や立入規制が続く間は戻らず、自治体、消防、警察などの案内に従ってください。
水が引いた後も、外から次を確認します。
- 建物の傾き、基礎・柱・壁の大きなひび、外壁や塀の崩れ
- 天井の垂れ、床の沈み・たわみ、ガラスや釘などの飛散物
- 切れた電線、火花、浸水した分電盤・コンセント・設備
- ガス臭、燃料臭、薬品臭、煙、異常な熱や音
- 下水、油、農薬・工業薬品、動物の死骸が混じった形跡
異常があれば離れ、火災・救助の緊急時は119番、切れた電線は電力会社、ガス臭は火気や電気スイッチを使わずガス会社へ連絡します。入れる状態でも1人で作業せず、家族や第三者へ場所と終了予定を伝えます。子ども、高齢者、ペットは作業区域へ入れないでください。
片付ける前に写真と動画を撮る
安全を確認できたら、物を動かす前に被害の全体と細部を記録します。 写真は罹災証明、保険、修理見積りで被害を説明する材料になりますが、撮影のため危険な場所へ入ってはいけません。政府広報と日本建築士会連合会の技術資料も、片付け前の撮影を案内しています。
撮影チェックリスト
- 家の外観を、安全な範囲で正面・背面・左右から
- 玄関、外壁、塀、柱などに残った水位跡
- メジャーや物差しを添えた浸水高さ。床面との位置関係も写す
- 各部屋の全景と、床、壁、畳、建具、収納内部の寄り写真
- 家具、衣類などの家財。廃棄品は一つずつ、または種類別に並べて
- 家電の全体、メーカー名、型番。通電して表示を出そうとしない
- 分電盤、給湯器、エアコンの室内機・室外機
- 車の外観、車内、水位跡、ナンバー。走行距離は通電せず確認できる場合だけ
- 作業前、作業中、作業後の変化
- 修理見積書、処分費、清掃用品、宿泊費などの領収書
動画では、玄関から各部屋をゆっくり一周し、「台所の床から約何センチ」「この棚まで」などと声で補足すると位置関係が残ります。原本を編集せず、日時が分かる形でクラウドや別端末にも複製してください。
最初にどこへ連絡するか
安全確保と撮影の後は、保険会社、自治体、設備・住宅・車の専門先へ連絡します。 全国共通でない電話番号や申請期限は、住んでいる市区町村と契約先の公式案内で確認してください。
| 連絡先 | 連絡する目的 | 伝える内容・確認事項 |
| 保険会社・代理店 | 補償範囲、必要写真、現物確認、修理・廃棄前の手続き | 浸水日時、水位、建物・家財・車の被害、応急処置 |
| 市区町村 | 罹災証明、災害ごみ、支援制度、衛生相談 | 住所、被害状況、申請先・期限・必要書類 |
| 電力会社・登録電気工事業者 | 引込線、屋内配線、分電盤、コンセントの安全 | どこまで浸水したか、火花・異臭の有無 |
| ガス会社・販売店 | ガス設備、給湯器、LPガス容器の点検 | 浸水範囲、ガス臭、機器の移動・転倒 |
| 工務店・建築士 | 床、壁、断熱材、構造、乾燥方法の確認 | 浸水高さ、時間、建物構造、写真 |
| 販売店・整備工場・ロードサービス | 水没車の安全な搬送と点検 | 車種、水位、エンジン未始動か、HV・EVか |
| 災害ごみ窓口 | 家財・建材・危険物の処分 | 分別、搬出場所、受付期間、家電の扱い |
市区町村の災害ごみは、通常ごみと異なる臨時ルールになることがあります。道路や通常の集積所へ自己判断で置かず、電池、薬品、燃料、家電、石こうボードなどを自治体の区分どおりに分けます。
清掃を始める前の服装と健康上の注意
泥水は下水や鋭利物を含む可能性があるため、素手・素足で作業しません。 厚生労働省の清掃作業向け資料は、丈夫な手袋、厚底の靴、長袖、ゴーグル、マスク、手洗いを案内しています。
- 踏み抜きにくい丈夫な長靴・安全靴。靴底が薄い長靴だけなら踏み抜き防止中敷きを検討
- 厚手で耐水性のある手袋、長袖、長ズボン
- 飛まつ・粉じんに備えるゴーグルまたは保護眼鏡
- 泥・粉じん・カビの程度に合うマスク。持病がある人は医療機関へ相談
- 落下物や頭上作業がある場所ではヘルメット
傷ができたら作業を止め、流水と石けんでよく洗います。深い刺し傷、汚れが残る傷、動物にかまれた傷、破傷風ワクチン歴が不明なときは、早めに医療機関へ相談してください。発熱、下痢、傷の赤み・腫れ・痛み、目の充血、息苦しさが出た場合も受診・相談が必要です。診断は自己判断しません。
暑い時期は短時間でも熱中症になります。2人以上で作業し、水分・塩分、休憩、作業時間を管理します。喘息、強いアレルギー、免疫機能の低下がある人、妊娠中の人などは、粉じん・カビ・薬剤の多い作業を避け、代替要員や専門業者を検討してください。
床下浸水と床上浸水では、見る場所が違う
床下浸水は見えない基礎・床組み・断熱材、床上浸水は生活空間の建材・家財・電気設備まで確認します。 「床下だから軽い」「床上だから全部廃棄」とは一律に決められません。
| 項目 | 床下浸水 | 床上浸水 |
| 主な確認場所 | 床下、基礎、配管、床組み、断熱材 | 床、壁、家具、家電、収納 |
| 主な問題 | 残水、汚泥、木材・断熱材の湿潤 | 建材・家財の吸水、電気、衛生 |
| 見落としやすい場所 | 点検口から見えない奥、壁との接合部 | 壁内部、床材下、収納奥、水位跡より上の吸い上げ |
| 自分でできる範囲 | 安全に見える範囲の記録・搬出など。構造と汚染で変わる | 小範囲の搬出・清掃など。電気・構造・広範囲汚染は除く |
| 専門家が必要な例 | 配線、濡れた断熱材・床組み、床下へ入れない、排水不能 | 壁内浸水、構造損傷、石こうボード軟化、広範囲汚染 |
床下が土・石なら、泥の除去と排水方法、地盤を掘りすぎない配慮が要ります。べた基礎のコンクリートはくぼみに水が残りやすく、木の床組み・合板・断熱材がある住宅は追加の水で被害を広げることがあります。プレハブ、歴史的建造物、特殊な断熱・空調構造は、メーカーや建築士へ確認してください。
浸水住宅の片付けは「清掃・洗浄・乾燥・消毒」を分ける
原則は、安全確認と記録→連絡→搬出→排水・泥出し→洗浄→内部確認→乾燥→必要な消毒→修理です。 消毒剤を先にまいても、泥や有機物が残っていれば十分な効果を期待できません。厚生労働省も、まず土砂撤去、十分な清掃・乾燥を行うよう案内しています。
- 安全確認と被害記録
- 保険会社・自治体・設備業者などへの連絡
- 濡れた家財・交換が必要な建材の分別と搬出
- たまった水と汚泥の除去
- 固い面を水・洗剤で洗浄し、汚れた水を回収
- 残水をポンプ、吸水材、雑巾などで除く
- 床下、床材下、壁内、断熱材、配線を確認
- 換気、送風、除湿
- 木材・壁内などを含む乾燥状態を確認
- 下水汚染などで必要な場所だけ適切に消毒し、再び乾燥
- 乾燥を確認して修理・仕上げ
ここでいう清掃は家財や泥を取り除くこと、洗浄は水・洗剤で汚れを物理的に落とすこと、乾燥は建材内部の水分を減らすこと、消毒は対象を限定して微生物を減らすことです。
ホースや大量の水を使う前に確認する
ホースで洗い流せるかは、排水できる構造か、木・合板・断熱材・配線へ水を広げないかで決まります。 「床下は水で流せばよい」と一律には勧められません。
排水経路、床下が土・石・コンクリート・木のどれか、木製床組みや合板、断熱材、壁内へ入る隙間、配線・給湯・空調設備を確認します。下水、油、薬品が混じる場合や、追加した水を完全に回収できない場合は、自分で水を足さず、建築士、工務店、清掃業者、保健所へ相談してください。
筆者の実体験
筆者は外からホースで水を流して床下にも水をまき、食器用洗剤とワイパーのような道具で汚水をかき出しました。その家の床下は石という特殊な構造でした。
この方法は一般的な木造住宅、合板や断熱材入りの住宅へそのまま使えません。ホースの水が木材、断熱材、壁内をさらに濡らすおそれがあります。洗剤と消毒剤は別工程にし、十分に洗い流して、決して混ぜないでください。
床下・壁・断熱材は、表面だけで乾燥を判断しない
表面が乾いても、床材の下、壁内、木材、断熱材に水分が残ることがあります。 臭いが消えたことや、一定の日数が過ぎたことだけを乾燥完了の根拠にしません。
日本建築士会連合会の2026年版技術資料では、石こうボード、合板、繊維系断熱材などは乾きにくく、浸水状況によって撤去・交換が必要と説明しています。グラスウールやロックウールなど濡れた繊維系断熱材、柔らかい・膨らんだ石こうボードは、建築士や工務店に確認してください。発泡系断熱材も種類、接着、背面の汚染によって扱いが変わります。
点検口から見える部分だけでなく、部屋の端、壁との接合部、配管まわり、収納下を確認します。水位跡より上まで毛細管現象で吸い上げていることもあります。床や壁を閉じる、床材を張る、断熱材を戻す前に、専門家が含水率計などで平常部分と比較するのが安全です。
換気は湿気を外へ出し、サーキュレーター・送風機は蒸発を促し、除湿機は空気中の水分を減らします。ただし、電気設備の安全確認前は使いません。雨天や外気の湿度が高い日は、窓開けだけで湿気が増えることがあるため、電気の安全が確認できた室内で除湿と排気を組み合わせます。泥・カビを除去する前の強い送風は、粉じんや胞子を生活空間へ広げるため避けます。
筆者の実体験
筆者は床下へサーキュレーター2台を置き、約1か月動かしました。結果として気になる臭いは残りませんでした。
これは一事例であり、1か月が標準乾燥期間という意味ではありません。浸水深、建材、気温、湿度、汚泥、換気で必要期間は変わります。また、電気点検前に電動機器を使わず、家庭用機器を不安定な姿勢で床下へ置かないでください。臭いがないことも、内部まで乾いた証明にはなりません。
浸水後の消毒は、清掃・乾燥後に必要な場所だけ行う
床下、庭、屋外を一律に消毒する必要はありません。 厚生労働省の資料と、2026年8月20日更新の千葉市の衛生対策は、床下や庭は泥を除き、洗浄して十分に乾かすことを重視し、消毒は原則不要としています。
下水・汚物が入った室内、長時間浸水した場所、調理・飲食で触れる硬い面などは、清掃・洗浄・乾燥後に対象を限定して消毒することがあります。汚染範囲や素材が分からなければ、市区町村や保健所へ相談してください。
次亜塩素酸ナトリウムを使う場合の注意
次亜塩素酸ナトリウムは家庭用塩素系漂白剤などの有効成分です。「次亜塩素酸水」とは別の製品・性質で、読み替えはできません。厚生労働省の消毒手順を参考にする場合も、先に泥と汚れを落とし、製品表示の原液濃度、用途、使用上の注意を確認します。
- 酸性洗剤、アンモニア系、食器用洗剤を含む他の薬剤と混ぜない
- 手袋、ゴーグルを着け、十分に換気する
- 噴霧器で空間や広い面へまかず、布で拭くか、対象物を浸す
- 金属腐食、木材・布の変色に注意し、食品接触面や金属は表示に従って水拭き・水洗いする
- 必要量だけ作り、光や時間で濃度が下がるため作り置きしない
- 子どもやペットの手が届かない場所で扱う
厚労省資料の例では、十分に洗った食器・流し台・浴槽などに0.02%、汚染が著しい硬い床・家具などに**0.1%**の次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合があります。ただし、これは全ての場所に必要という意味ではありません。
計算は「必要な原液量=作る液の量×目標濃度÷原液濃度」です。例えば**原液5%**から最終量1リットルを作るなら、0.02%は原液4ミリリットルを量って水を加え全量1リットルに、0.1%は原液20ミリリットルを量って全量1リットルにします。原液が6%、10%などなら量は変わるため、キャップ杯数では測らず、表示・自治体の案内を優先してください。
筆者の実体験と、現在の案内の違い
筆者は当時、薄めた次亜塩素酸ナトリウムを噴霧器で床下へまきました。しかし、現在の記事で標準的な方法としては勧めません。床下は清掃と乾燥が基本であり、薬剤の広範囲噴霧は吸い込み、飛散、腐食、混合事故につながります。必要な対象へ、製品表示どおり拭き取り・浸漬で使います。
浸水した食品、食器、衣類、薬はどうするか
泥水に触れた物は「洗えて完全に乾かせるか」「口・粘膜へ触れるか」で分けます。 見た目や臭いだけで食品・薬の安全を判断しません。日本の案内で分類が不足する品目は、FDAの洪水後の食品安全情報も補助的に参照し、最終判断は自治体・保健所、薬剤師などへ確認してください。
| 品目 | 原則的な扱い | 注意点 |
| 開封済み食品、紙箱・袋・段ボール包装 | 泥水に触れたら廃棄 | 洗って中身だけ使わない |
| 缶詰・瓶詰 | 膨張、さび、へこみ、ふた損傷、泥水侵入の疑いは廃棄 | 無傷の密封缶を救済できる場合もあるが、自己流でなく保健所の指示を確認。ねじぶた容器は水が入り得る |
| 冷蔵・冷凍食品 | 泥水に触れた物、温度管理できない物は廃棄 | 味見で確認しない。停電時間・庫内温度で判断する |
| 飲料水・井戸水 | 安全が確認された水だけ使う | 浸水した井戸は、検査・洗浄・消毒など自治体の指示が済むまで飲用しない |
| 食器・金属調理器具 | 洗剤で洗い、素材に合う加熱または消毒後、十分にすすぎ乾燥 | ひび、欠け、洗えない隙間がある物は廃棄を検討 |
| 木製まな板など多孔質品 | 汚染が入り、完全に洗浄・乾燥できなければ廃棄 | 乳幼児用品も安全側で判断 |
| 衣類 | 泥を落とし、他と分けて洗濯し完全乾燥 | 洗えない物、重度汚染は専門クリーニングか廃棄 |
| 布団・マットレス | 内部を洗浄・乾燥できない場合は廃棄 | 表面が乾いても内部汚染が残る |
| 子どもの玩具 | 硬く洗える物は洗浄・適切な消毒、布・木・中空品は廃棄を検討 | 口に入れる物は特に慎重に |
| 医薬品・衛生用品・化粧品 | 泥水に触れた物は使用しない | 薬剤師・医療機関へ。命に関わる薬は廃棄前に代替を至急相談 |
| ペット用品 | 硬い食器は洗浄・消毒、汚染したフード・布・多孔質品は廃棄 | ペットが汚水を飲んだ、体調不良なら獣医師へ |
食品や薬の廃棄は、地域の災害ごみ・一般ごみルールに従います。冷蔵庫自体が浸水している場合は、次の電気設備の注意も守ってください。
浸水した家電・電気設備・ガス機器は再使用を自己判断しない
乾いたように見えても、点検前にプラグを差す、ブレーカーを上げる、試運転する行為は避けます。 内部に水分、泥、塩分が残ると、感電、短絡、発煙、火災が起こり得ます。NITEも、浸水家電と停電復旧後の通電火災に注意を呼びかけています。
| 設備・機器 | しないこと | 相談先 |
| 分電盤、コンセント、屋内配線、延長コード | 濡れた状態で触る、通電する | 電力会社、登録電気工事業者 |
| 冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ | 乾かして試運転する | メーカー、販売店、修理窓口 |
| エアコン室内機・室外機 | 室外機だけの浸水でも運転する | メーカー、空調業者 |
| 給湯器、ガスコンロ、LPガス設備 | 点火、元栓・容器を自己修理 | ガス会社、LPガス販売店、メーカー |
| 石油ストーブ・ボイラー | 点火、漏れた燃料へ火気を近づける | メーカー、販売店、消防(漏えい・危険時) |
| 太陽光発電 | パネル、配線、パワコンへ触る | 施工店・メーカー。発煙・火花は消防 |
| 蓄電池、EV充電設備 | 充電、分解、移動 | メーカー、施工店。発熱・異臭・煙は離れて消防 |
太陽光パネルは系統の電気を切っても、光が当たれば発電する可能性があります。破損したパネルやケーブルに近づかず、浸水した蓄電池・EV充電設備も専門先へ任せます。
携帯発電機は、屋内、車庫、物置、テント内では使わないでください。窓や換気口から離れた屋外の風通しがよい場所で、取扱説明書どおりに使います。一酸化炭素は無色・無臭で、扉を開けた車庫でも中毒になり得ます。家の配線へ直接つなぐ「逆潮流」も火災・感電の危険があるため、電気工事業者が設けた切替設備なしでは行いません。
車が水没・冠水したらエンジンをかけない
水が引いてもエンジンや電源を始動しないでください。 外見が乾いていても、電気系統の短絡・火災、エンジン内部への吸水、感電のおそれがあります。国土交通省とJAFも始動せず、販売店・整備工場などへ相談するよう案内しています。
水中にある車、損傷した車、車種が分からない車では、バッテリー端子も自己判断で触らないでください。ハイブリッド車、EV、PHEVは高電圧部品を備えるため、オレンジ色の配線などへ触れず、販売店やロードサービスに任せます。けん引方法も車種ごとに異なるため、勝手に引き出しません。
保険会社、販売店・整備工場、ロードサービスへ連絡し、次を記録します。
- 外観、車内、シートやドアに残る水位跡、ナンバー
- エンジンを始動していないこと、浸水のおおよその時間
- 走行距離と車検証情報。表示のために通電しない
- レッカー、保管、代車、廃車にかかった見積書・領収書
修理可能性は販売店・整備工場、保険上の全損・支払額は保険会社が契約に基づいて判断します。水没車が必ず全損になるわけではありません。 車両保険の水害補償、免責、搬送、代車・レンタカー費用、新車特約・車両新価特約などの有無を確認し、廃車・売却・修理契約の前に保険会社へ相談します。特約名、対象期間、損害基準、買替期限は商品ごとに違います。
筆者の実体験
筆者の車は2台とも水没し、結果としていずれも廃車になりました。1台には新車特約に相当する補償があり、経済的負担が軽くなりました。ただし、これは筆者の契約と損害判断の結果です。全ての水没車が廃車・全損になるわけではなく、特約の名称・条件・支払方法も保険商品で異なります。
罹災証明書は、住家の被害程度を証明する書類
罹災証明書は、市区町村が住家の被害程度を証明し、各種支援の判断に使う書類です。証明書そのものが給付金ではありません。 申請先は被災した住家のある市区町村で、期限、必要書類、調査方法、対象となる支援は自治体・災害で異なります。
内閣府の2026年6月資料では、住家の被害区分を「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「準半壊に至らない(一部損壊)」の6区分としています。床下・床上という呼び方だけで区分は決まらず、現地調査や写真による自己判定方式が用いられる場合があります。
判定に納得できないときは、説明を求め、第2次調査・再調査を申し出られる場合があります。申出方法や受付期間は自治体へ確認してください。「罹災届出証明書」「被災届出証明書」など似た名称の書類は、被害の届け出事実を示すなど目的が異なる例がありますが、名称と対象は全国一律ではありません。
申請前に自治体へ、次を確認すると迷いにくくなります。
- この災害の罹災証明書の申請先、期限、必要書類は何か
- 床下浸水でも申請対象か、写真による自己判定方式があるか
- 現地調査前に清掃・撤去してよいか、追加で必要な写真は何か
- 判定の説明、第2次調査・再調査の申出方法と期限は何か
- 証明書で利用できる税・保険料・住宅修理・融資・見舞金などは何か
- 家財、車、店舗には別の証明書があるか
床下浸水では利用できる支援が限られる場合がありますが、「申請しても意味がない」と一律には言えません。利用制度と手間を自治体へ聞いて判断します。
筆者の実体験
筆者は罹災証明書のために2回の訪問調査を受けました。その後に利用した関連支援で振り込まれたのは1万円余りで、手続きの手間に対し、正直なところ拍子抜けしました。
1万円余りは罹災証明書そのものから支払われた金額ではありません。筆者の自治体・被害区分・当時の制度で利用できた関連支援の結果であり、証明書の有用性は災害規模、自治体、被害区分、利用できる制度によって変わります。
火災保険・家財保険・車両保険で確認すること
保険証券・約款で「水災」が付いているか、建物と家財のどちらが対象かを確認します。 床下浸水・床上浸水、内水氾濫・洪水という言葉だけで支払可否や金額は決まりません。日本損害保険協会は、水災を補償する商品でも、一定の損害割合・金額を条件とするもの、少額から補償するもの、免責を設けるものなどがあると説明しています。
確認する項目は次のとおりです。
- 火災保険の水災補償、建物・家財それぞれの契約
- 洪水・高潮・土砂崩れ・内水氾濫の約款上の扱い。「水濡れ」と「水災」の違い
- 支払条件、免責金額、縮小支払、支払限度額
- 残存物片付け、臨時費用、仮住まいなどの特約・費用補償
- 写真・動画、見積書、領収書、修理前の現物確認
- 車両保険、水害、レッカー、代車、新車特約などの条件
日本損害保険協会の現行災害案内によると、損害保険の保険金等の請求では、自治体の罹災証明書は原則不要です。ただし契約先へ直接確認してください。安全・衛生上すぐ廃棄する物は、全体・品名・数量・型番・水位が分かる写真を残します。緊急の応急処置は安全を優先し、高額な本修理や契約は、保険会社が必要とする確認を聞いてから進めます。
経年劣化、施工不良、発災前からの傷みと、水害で生じた損傷は分けて説明します。同じ名称の特約でも補償は異なるため、「床上45センチ」「損害30%」など一部商品の基準を全契約へ当てはめないでください。
筆者の実体験
筆者の住宅の保険では、契約上限の30万円が支払われました。これは筆者個人の契約結果であり、水害時の一般的な支払額ではありません。建物・家財の補償対象、免責、限度額などは各自の証券と約款で確認してください。
自分で対応せず専門家を呼ぶべき状態
構造、電気、高電圧設備、ガス、化学汚染、広範囲のカビは自力作業の範囲を超えます。 「専門家」だけでなく、危険の種類に合う相談先を選びます。
| 状態 | 主な相談先 |
| 建物が傾く、基礎・柱・壁に大きなひび、床が沈む・たわむ | 自治体の建築窓口、建築士、構造に詳しい工務店。緊急危険は消防 |
| 分電盤、配線、コンセントが浸水 | 電力会社、登録電気工事業者 |
| 給湯器、ガス設備が浸水、ガス臭がする | ガス会社・LPガス販売店。ガス臭が強い、火災危険は消防 |
| 太陽光、蓄電池、EV充電設備が浸水 | 施工店、メーカー、電気工事業者。発熱・煙・火花は離れて消防 |
| 壁内・床下の断熱材が濡れた、石こうボードが柔らかい・膨らむ | 建築士、工務店、メーカー |
| 下水、油、燃料、薬品が流入 | 自治体、保健所、消防、専門清掃業者。油・薬品は発生源の管理者も |
| 床下へ入れない、排水できない | 工務店、床下・排水に対応する専門業者 |
| カビが広範囲、乾燥後も臭いが続く | 建築士、工務店、カビ除去業者、保健所 |
| 喘息、アレルギー、免疫低下のある人がいる | 医療機関、保健所。作業は別の人・専門業者へ |
| 害虫、動物の死骸がある | 自治体・保健所、害虫・清掃業者 |
| 重い家具や建材を安全に搬出できない | 災害ボランティア窓口、搬出・清掃業者 |
解体や壁を開ける作業では、古い建材にアスベストが含まれる可能性があります。疑わしい板材を割る、切る、災害ごみに混ぜる前に、自治体や有資格の調査者へ確認してください。
水害後の悪質な修理・保険金請求業者に注意する
「保険を使えば無料」と断定し、その場で契約を迫る業者とは契約しないでください。 日本損害保険協会は、高額な成功報酬・解約料を伴う保険金請求サポートや、虚偽の理由による請求を勧める業者へ注意を呼びかけています。
次の言動があれば、いったん止めます。
- 「自己負担ゼロ」「必ず保険金が出る」と断定する
- 公的機関の職員を装う、その場で署名・前金を求める
- 工事内容、総額、手数料、解約条件を文書で示さない
- 保険会社との連絡を全て任せるよう迫る
- 経年劣化を災害被害と偽るなど、虚偽申告を勧める
- 不安をあおり、不要な床下消毒・全交換を即決させる
- 見積書を出さず、他社との比較を妨げる
契約前に保険会社・代理店、自治体へ確認し、複数の見積りを取ります。国民生活センターの2026年版注意喚起も、災害便乗商法に即決しないよう呼びかけています。困ったときは、地域の消費生活センターにつながる消費者ホットライン188や、そんぽADRセンターへ相談できます。
次の大雨に備えて見直すこと
復旧後は、逃げる時刻と、家・車・書類を上げる時刻を家族で決めます。 浸水対策用品を買うことより、地域の危険と行動の締切を共有する方が先です。
- 国・自治体のハザードマップで洪水、内水、土砂災害を確認する
- 避難場所、冠水しにくい経路、家族の連絡方法を決める
- 車を高い場所へ移す基準時刻を、雨が強くなる前に決める。冠水後は移動しない
- 貴重品、保険証券、車検証、医薬品、重要家電を高い位置へ移す
- 証券、契約書、住宅・車の平常時写真をクラウドにも保存する
- 止水板、土のう、水のうが住宅に適するか確認する
- 排水口、側溝、雨どいの詰まり、下水の逆流防止、床下換気口を点検する
- 火災保険の水災補償、建物・家財、車両保険と特約を見直す
「内水氾濫」は、下水道や水路の排水能力を超え、宅地・道路へ水があふれる現象です。「洪水」は河川の増水・氾濫による水害を主に指します。どちらも起こり得る地域では、河川だけでなく内水ハザードマップも確認してください。
FAQ|家が浸水したら迷いやすい14の疑問
Q1. 家が浸水したら最初に何をすればよいですか
危険なら家へ戻らず、浸水した電気・家電と水没車を動かさないことが最初です。 安全を確認できた後、片付ける前に外観、水位、各部屋、家財、家電、車を撮影し、保険会社と自治体などへ連絡します。
Q2. 水が引いたらすぐ家に入ってもよいですか
水が引いただけでは安全とは限りません。 建物の傾き、床の沈み、切れた電線、ガス・燃料・薬品臭、自治体の立入規制を外から確認し、異常があれば入りません。
Q3. ブレーカーを落とせば家電を使えますか
いいえ。ブレーカーを落としただけでは、浸水した配線・コンセント・家電の安全は確認できません。 分電盤自体が濡れている場合は触らず、電力会社や電気工事業者による点検後に再使用します。
Q4. 片付け前にどの写真を撮ればよいですか
外観の複数方向、浸水線とメジャー、各部屋の全景と損傷部、家財・家電の型番、車、廃棄品を撮ります。 作業前・中・後の動画も残し、撮影のため危険な場所へは入りません。
Q5. 床下浸水でも罹災証明書は取れますか
申請対象になる場合がありますが、発行方法と利用できる支援は自治体・被害状況で異なります。 市区町村へ、床下浸水の申請可否、写真による自己判定方式、期限、利用可能な制度を確認してください。
Q6. 床下浸水は消毒しなくてもよいですか
床下・庭の消毒は原則不要で、泥を除き、洗浄して十分に乾燥させることが基本です。 下水・汚物の著しい流入、長時間の浸水などは個別判断になるため、自治体・保健所へ相談します。
Q7. 次亜塩素酸ナトリウムはどのように使いますか
泥と汚れを落として乾かした後、必要な対象へ製品表示どおり拭き取り・浸漬で使います。 原液濃度で希釈量が変わります。他の洗剤と混ぜず、噴霧せず、換気・手袋・ゴーグルを徹底し、次亜塩素酸水と混同しないでください。
Q8. 床下をホースで洗い流してもよいですか
住宅構造と排水経路を確認せず、大量の水を追加しないでください。 土・石・コンクリートか、木・合板・断熱材があるか、壁内へ入らないか、全量を回収できるかを建築士・工務店へ確認します。
Q9. サーキュレーターは何日使えばよいですか
一律の日数では決められません。 浸水深、建材、気温、湿度、汚泥、風の通り方で変わるため、電気の安全を確認後に使い、木材や壁内を含水率計などで確認してから仕上げます。
Q10. 浸水した家電は乾けば使えますか
外から乾いて見えても、点検前は使わないでください。 内部の水分・泥・塩分で感電、短絡、火災のおそれがあるため、メーカー、販売店、修理業者へ相談します。
Q11. 水没車のエンジンをかけるとどうなりますか
短絡・火災、感電、エンジン損傷を起こすおそれがあります。 始動せず、HV・EV・PHEVの高電圧部品やバッテリー端子へ触れず、販売店・整備工場・ロードサービスへ連絡します。
Q12. 火災保険で床下浸水は補償されますか
契約によっては対象になり得ますが、床下浸水という呼び名だけでは決まりません。 水災補償、建物・家財、損害割合・浸水条件、免責、限度額を証券・約款と保険会社で確認してください。
Q13. 罹災証明書を取ると給付金がもらえますか
罹災証明書そのものが給付金ではありません。 被害程度を示し、支援金、税・保険料の減免、住宅支援、融資、見舞金などの判断に使われますが、対象制度は災害・自治体・被害区分で異なります。
Q14. 浸水後の臭いが消えないときはどうすればよいですか
床下・壁内・断熱材に水分、汚泥、カビ、汚染物が残っていないか確認します。 芳香剤や消毒剤で隠さず、建築士・工務店・専門清掃業者へ含水状態と隠れた空間の点検を依頼し、健康症状があれば医療機関や保健所へ相談します。
まとめ|家が浸水したら「安全、記録、連絡、清掃、乾燥」の順で
家が浸水したら、危険な家へ戻らず、浸水した電気・家電と水没車を動かさないことが最優先です。 安全を確認できた後、片付ける前に写真と動画を残し、保険会社、自治体、電気・ガス、住宅、車の相談先へ連絡します。
復旧は、家財搬出と泥出し、洗浄、床下・壁内・断熱材の確認、十分な乾燥、必要な場所だけの消毒という順です。罹災証明書は給付金そのものではなく、保険金・特約・支援制度も契約や自治体で異なります。
筆者自身も被災直後は何から始めるか分かりませんでした。最初に写真を撮ること、ただし撮影前に安全を確認すること、通電や車の始動をしないことを知っているだけでも、その後の安全と手続きは大きく違います。
参考資料
- 厚生労働省「被災した家屋での感染症対策」
- 厚生労働省「一般家屋や食品営業施設における浸水後の消毒の相談について」
- 千葉市「台風や大雨に伴う浸水被害発生時の衛生対策について」2026年8月20日更新
- 日本建築士会連合会「浸水被害住宅の技術対策マニュアル」第2章
- 政府広報オンライン「住まいが被害を受けたとき 最初にすること」
- 内閣府「災害に係る住家の被害認定」2026年6月版資料掲載
- NITE「携帯発電機・ポータブル電源の事故と通電火災に注意」2024年8月27日
- 家電製品協会「家電製品の災害時の注意点」
- 国土交通省「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」
- JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」
- 日本損害保険協会「風水雪災等による損害を補償する損害保険」2025年10月6日更新
- 日本損害保険協会「住宅の修理などに関するトラブルにご注意」2026年7月31日更新
- 国民生活センター「自然災害に関連する消費者トラブル」2026年3月4日
- 消費者庁「消費者ホットライン」
- FDA「After a Storm or Flooding: Key Tips for Consumers About Food Safety」