
6月の経常収支が17カ月ぶりの赤字となる一方、2026年上半期では大幅な黒字を確保しました。また、日本銀行では物価の上振れを警戒し、今後の利上げペースを速める可能性に言及する意見が出ています。
足元の景況感には改善もみられ、7月の景気ウォッチャー調査は3カ月連続で上昇しました。外部環境や物価への警戒が続く一方、国内景気には底堅さも残っているというのが、8月11日朝に確認しておきたいポイントです。
今日のポイント
- 6月の経常収支は923億円の赤字。Reutersによると赤字は17カ月ぶり
- ただし2026年上半期では17兆4,292億円の黒字
- 日銀7月会合では、物価上振れを警戒し利上げペース加速を意識する意見
- 7月の景気ウォッチャー現状判断DIは45.7、3カ月連続上昇
- 金利、円相場、原油価格などが今後の家計・企業環境を見る重要材料に
6月の経常収支は923億円赤字、上半期では17.4兆円黒字
財務省が8月10日に公表した6月の国際収支速報によると、経常収支は923億円の赤字となりました。前年同月は黒字だったため赤字転化となり、Reutersは17カ月ぶりの経常赤字と報じています。
背景の一つが、海外とのモノの取引を示す貿易収支です。6月は輸出が前年同月比16.3%増の10兆4,801億円だった一方、輸入は24.3%増の10兆6,153億円となり、1,352億円の貿易赤字となりました。財務省によると、通関ベースでは原粗油の輸入額が前年同月比59.3%増えています。
さらに、日本が海外投資などから受け取る収益と海外へ支払う収益の差を含む第一次所得収支の黒字は3,801億円で、前年同月から1兆648億円縮小しました。これも経常収支を赤字方向へ動かした要因です。
ただし、1カ月の赤字だけで日本の対外収支全体が悪化したと判断するのは早計です。
2026年1~6月の経常収支は17兆4,292億円の黒字で、前年同期より3兆1,985億円黒字幅が拡大しました。上半期の貿易収支も7,421億円の黒字に転じています。Reutersは上半期の経常黒字を過去最高と報じています。
今後は、原油など輸入価格の動きと、第一次所得収支が6月特有の変動だったのかを継続して確認する必要があります。
日銀で「利上げペース加速」を意識する意見
日本銀行は8月10日、7月30、31日に開催した金融政策決定会合の「主な意見」を公表しました。
資料では、基調的な物価上昇率が2%に近づくなか、物価の上振れリスクへの警戒を強める意見が複数確認できます。日銀は、円安や中東情勢、AI関連需要の拡大などを物価の上押し要因として挙げています。
金融政策については、現在の金融環境はなお緩和的との認識が示され、「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ」ることが適当との意見があります。さらに、経済・物価情勢によっては利上げのペースが市場の想定より早まる可能性や、金融緩和度合いの調整を速める必要性を指摘する意見も掲載されました。
一方、前回6月の利上げが経済や物価に及ぼす影響を見極めるため、7月会合では政策金利を据え置くことが妥当との意見もあります。したがって、今回の資料を「次回の利上げが決まった」と読むことはできません。
家計や企業にとって重要なのは、金利が今後どの程度の速さで変化するのかです。借入れを利用する企業や住宅ローン利用者だけでなく、預金や債券など金融資産を持つ人にとっても、次回以降の日銀会合は引き続き重要になります。
景気ウォッチャーは3カ月連続改善、それでもDIは45.7
内閣府が8月10日に公表した7月の景気ウォッチャー調査では、景気の現状判断DIが季節調整値で45.7となり、前月から1.7ポイント上昇しました。上昇は3カ月連続です。
家計動向関連では飲食などが改善し、企業動向関連、雇用関連も上昇しました。2~3カ月先を見る先行き判断DIも45.8と、前月から0.1ポイント上昇しています。
景気ウォッチャーDIは、「良くなっている」を100、「変わらない」を50、「悪くなっている」を0などとして回答を集計する指標です。このため45.7という水準は、改善方向に動いてはいるものの、まだ50を下回っています。
内閣府は今回の結果について、中東情勢によるマインド面の下押しが残る一方で、景気には「持ち直しの兆し」がみられると整理しています。先行きでは中東情勢に加え、熊本地震の影響への懸念も指摘しました。
読者が確認しておきたいこと
- 日銀の次回会合までの物価・賃金データ
利上げの時期やペースは決定済みではありません。今後の経済・物価データが重要になります。 - 原油・円相場と輸入価格
6月は輸入額の伸びが輸出を上回り、貿易収支が赤字に転じました。原油価格と円相場は引き続き確認が必要です。 - 景況感の改善が50を超える水準まで続くか
景気ウォッチャーは3カ月改善しましたが、現状DIは45.7です。今後も改善が継続するかが焦点となります。
まとめ
8月11日朝の経済ニュースでは、強弱の異なる材料が同時に出ています。
6月の経常収支は17カ月ぶりに赤字となりましたが、2026年上半期では大幅な黒字を維持しています。一方、日銀では物価上振れへの警戒が強まり、今後の利上げペースを速める可能性を意識する意見が増えています。景気ウォッチャーは3カ月連続で改善しました。
足元の1カ月の数字だけで景気や日本経済の方向を決めつけず、物価・金利・輸入コスト・国内景況感を組み合わせて確認する局面といえそうです。
出典
- 財務省「令和8年6月中 国際収支状況(速報)の概要」(2026年8月10日)
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/preliminary/pg202606.htm - 財務省「令和8年上半期中 国際収支状況(速報)の概要」(2026年8月10日)
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/preliminary/pg2026half.htm - Reuters「Japan posts first current account deficit in nearly 1-1/2 years」(2026年8月10日)
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/japan-posts-first-current-account-deficit-nearly-1-12-years-2026-08-10/ - 日本銀行「金融政策決定会合における主な意見(2026年7月30、31日開催分)」(2026年8月10日)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2026/opi260731.pdf - Reuters「BOJ's debate on faster hikes bolsters September rate move odds」(2026年8月10日)
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/boj-debated-scope-hasten-rate-hike-pace-july-summary-shows-2026-08-10/ - 内閣府「景気ウォッチャー調査 令和8年7月調査」(2026年8月10日)
https://www5.cao.go.jp/keizai3/2026/0810watcher/menu.html
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