
※本記事は2026年7月20日時点の法令・公表情報に基づいています。施行日等は政省令により変更される可能性があるため、最新情報もあわせてご確認ください。
この記事の結論
2026年10月から、パート・アルバイトが勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入するかどうかの条件のうち、「月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)」という賃金要件が撤廃される予定です。最低賃金の上昇により、週20時間以上働けば月8.8万円を超えるのがすでに通常となっているため、この改正は実態に合わなくなった基準を法令上も整理するもので、判定の中心は「週20時間以上働くかどうか」に移ります。ただし、従業員51人以上の企業規模、2か月を超える雇用見込み、学生でないことという条件は残り、週20時間以上の人が全員加入するわけではありません。「130万円の壁」や税金の年収基準も別制度として存続します。これまで配偶者の扶養に入っていた人は、加入により月1万円台前半程度の保険料負担が生じる例が多い一方、国民年金・国民健康保険を自分で負担していた人は、勤務先の社会保険に移ることで負担が軽くなる場合もあります。
この記事の重要ポイント
- 2026年10月に撤廃される予定なのは、社会保険加入条件のうち「月額8.8万円以上」の賃金要件だけ。根拠は2025年6月に成立した年金制度改正法(令和7年法律第33号)で、法律上の撤廃は決定済み。最低賃金の上昇で週20時間以上働けば月8.8万円を超えるのが通常となっており、実態に合わなくなった基準の整理という性格が強い改正
- 週20時間以上・企業規模51人以上・2か月超の雇用見込み・学生でない、という条件は撤廃後も残る
- 企業規模要件は2027年10月に「36人以上」へ引き下げられ、その後も段階的に縮小される
- 130万円の壁(被扶養者の収入基準)と、所得税・住民税・配偶者控除などの税金の基準は、今回の改正ではなくならない
- 企業規模要件の段階的撤廃や5人以上の個人事業所への適用拡大など、今回の改正がすべて実施された場合には、被用者保険の対象が約200万人拡大するとの試算がある。ただし、2026年10月の賃金要件撤廃だけで直ちに200万人が新規加入するという意味ではない
変更前・変更後の比較表
| 加入条件(短時間労働者) | 2026年9月まで | 2026年10月以降(予定) |
|---|---|---|
| 週の所定労働時間20時間以上 | 必要 | 必要(変更なし) |
| 月額賃金8.8万円以上(年収約106万円) | 必要 | 撤廃 |
| 勤務先が従業員51人以上(特定適用事業所) | 必要 | 必要(2027年10月から段階的に縮小) |
| 2か月を超える雇用見込み | 必要 | 必要(変更なし) |
| 学生でないこと | 必要 | 必要(変更なし) |
| 実質的な意味 | 「106万円の壁」 | 「週20時間の壁」へ |
読者別に見ると、扶養内で働くパートの方は「勤務時間と勤務先の規模」で加入の有無が決まるようになり、手取りと保障のバランスの再検討が必要です。配偶者の方は家族手当や税の控除への影響を、経営者・人事担当者は保険料負担の試算と従業員説明の準備を、この秋までに進めることになります。
2026年10月に何が変わる?撤廃されるのは「賃金要件」
結論から言うと、2026年10月に変わるのは、短時間労働者の社会保険加入を判定する条件のうち「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件が撤廃されることです。それ以外の条件は残ります。
「106万円の壁」とは、パート・アルバイトなどの短時間労働者が、月額賃金8.8万円(8.8万円×12か月=約106万円)以上になると勤務先の厚生年金・健康保険に加入し、保険料の本人負担が発生する年収の目安のことです。この基準を超えないよう勤務時間を調整する「働き控え」の一因とされてきました。
撤廃の根拠は、2025年6月13日に成立した年金制度改正法(正式名称「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」、令和7年法律第33号、2025年6月20日公布)です。日本年金機構は公式サイトで、この賃金要件について「令和8年10月に撤廃予定」と案内しています。撤廃自体は法律で決定済みで、施行時期は2026年10月の予定という位置づけです。
背景には最低賃金の上昇があります。2025年度の改定で最も低い県でも時給1,023円となり、週20時間(月平均約86.7時間)働けば月収は約8.9万円と、賃金要件を自然に超える水準になりました。つまり、週20時間以上働く人はすでに月額8.8万円を超えるのが通常で、賃金要件は事実上意味を失っています。このため2026年10月の改正は、多数の人が突然新たに加入する変更というより、実態に合わなくなった賃金要件を法令上も削除する整理という意味合いが強いものです。日本年金機構も、最低賃金以上で週20時間以上働けば所定内賃金が月額8.8万円以上となることを撤廃の理由として説明しています。
撤廃後も残る加入条件——「週20時間以上なら全員加入」ではない
2026年10月以降にパート・アルバイトが社会保険(厚生年金・健康保険)に加入するのは、次の条件をすべて満たす場合です。年収だけでは判定できない点に注意してください。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 労働時間 | 週の所定労働時間が20時間以上(フルタイムの4分の3未満の人が対象。年間52週・12か月で換算) |
| 企業規模 | 勤務先が特定適用事業所(厚生年金の被保険者数51人以上の企業等。法人は法人番号単位で数え、短時間労働者は人数に含めない) |
| 雇用見込み | 2か月を超えて雇用される見込みがあること(2か月以内の期間限定雇用などは対象外) |
| 学生でない | 昼間の学生は対象外。ただし夜間・通信制の学生や休学中の人は加入対象 |
補足として、週の所定労働時間や日数がフルタイムの4分の3以上(一般に週30時間以上が目安)の人は、この短時間労働者のルールとは関係なく、企業規模を問わず従来から加入対象です。また、契約上は週20時間未満でも、実際の労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、その後も続く見込みの場合は、3か月目から加入対象として扱われます。従業員50人以下の企業でも、労使合意により「任意特定適用事業所」となれば企業単位で加入させることができます。なお、60歳以上のパートの方も70歳になるまで厚生年金の加入対象で、老齢厚生年金を受給しながら働く場合は在職老齢年金の対象になることがあります。
企業規模要件は2027年10月から段階的に縮小
賃金要件の撤廃後も残る企業規模要件は、日本年金機構の案内によると、次のスケジュールで段階的に引き下げられます。
| 時期 | 短時間労働者が加入対象となる企業(厚生年金の被保険者数) |
|---|---|
| 現在〜2027年9月 | 51人以上 |
| 2027年10月〜 | 36人以上 |
| 2029年10月〜 | 21人以上 |
| 2032年10月〜 | 11人以上 |
| その後 | さらに段階的に拡大され、最終的には撤廃される予定(2035年10月とされています) |
つまり「うちは50人以下だから関係ない」という状況は長くは続きません。従業員36〜50人規模の企業は2027年10月、21〜35人規模は2029年10月に対象となる見込みで、今回の改正は数年がかりの適用拡大の入り口にあたります。
106万円の壁・130万円の壁・税金の壁はどう違う?
「106万円の壁がなくなれば、年収の壁はすべてなくなる」というのは明確な誤解です。3つの壁は別の制度で、2026年10月に変わるのは106万円の壁(の賃金要件)だけです。
| 通称 | 制度 | 内容 | 2026年10月以降 |
|---|---|---|---|
| 106万円の壁 | 社会保険(勤務先で加入) | 月8.8万円以上で厚生年金・健康保険の加入対象になる基準 | 賃金要件は撤廃予定。実質「週20時間の壁」へ |
| 130万円の壁 | 社会保険(配偶者等の扶養) | 年収130万円未満なら健康保険の被扶養者・国民年金第3号被保険者でいられる基準(60歳以上・障害のある方は180万円未満) | 存続。 一律撤廃されるものではない |
| 税金の壁 | 所得税・住民税 | 本人に税金がかかる基準や、配偶者控除・扶養控除などの基準 | 別制度として存続(2026年分は本人の所得税178万円、38万円の配偶者〈特別〉控除169万円など。詳細は本文) |
130万円の壁について補足すると、これは「勤務先で社会保険に加入しない働き方をしている人」が配偶者などの扶養にとどまれるかどうかの基準です。勤務先で加入対象になった人は年収にかかわらず扶養から外れるため、130万円の壁が関係するのは、週20時間未満の人や50人以下の企業で働く人などです。運用面では、2026年4月から収入見込みの判定を労働契約の内容を基本とする取扱いに整理し、残業などによる一時的な収入増だけで直ちに扶養から外さないことが明確化されたとされています。また、19歳以上23歳未満の家族(配偶者を除く)については、2025年10月から被扶養者の収入基準が150万円未満に緩和されています。判定の詳細は加入先の健康保険組合・協会けんぽで確認してください。
税金については、国税庁のパンフレット「家族と税」(令和8年度版)によると、給与収入だけでほかに所得がない場合、本人に所得税がかからないのは178万円以下です(2025年分は160万円。令和8年度税制改正により2026年12月1日に施行され、2026年分の所得税から適用されます)。住民税の所得割は、給与収入だけでほかに所得がない場合、2026年分の収入119万円以下が非課税の目安です。ただし、均等割は自治体によってこれより低い収入でもかかる場合があり、2026年分の収入に対する住民税は2027年度から反映されます。扶養する側では、配偶者控除・扶養控除の対象となるのは配偶者や親族の給与収入136万円以下(合計所得金額62万円以下)、38万円の配偶者控除・配偶者特別控除を受けられるのは配偶者の給与収入169万円以下で、配偶者特別控除は給与収入207万円以下まで段階的に受けられます。19歳以上23歳未満の子には、収入が一定額を超えても段階的に控除を受けられる特定親族特別控除があります。これらは納税者本人の合計所得金額(1,000万円を超える年は配偶者控除・配偶者特別控除の適用不可)や給与以外の所得の有無、家族構成によって結果が変わります。月々の源泉徴収への反映は2027年1月以降で、2026年分は年末調整での精算が中心になる見込みです。社会保険とは別の仕組みである点に注意し、最新の取扱いは国税庁の資料で確認してください。
加入すると手取りはどう変わる?ケース別の目安
まず、加入するかどうかは年収ではなく勤務条件で決まります。2026年10月以降の判定イメージを、条件の異なる6つのケースで整理します(時給は2025年度の全国最低額1,023円を下回らない水準で設定しています)。
| ケース | 週の所定労働時間 | 収入の目安 | 勤務先規模 | 学生 | 2026年10月以降の判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 19時間 | 月約8万4,200円(年約101万円) | 300人 | いいえ | 対象外(時間要件を満たさない)。ただし実労働が常態的に週20時間以上なら対象になり得る |
| B | 20時間 | 月約8万8,700円(年約106万4,000円) | 100人 | いいえ | 加入対象(現在すでに対象。最低賃金水準でも月約8.9万円となり賃金要件を満たすため)。10月以降は賃金額の確認自体が不要になる |
| C | 20時間 | 月約9.2万円(年約110万円) | 100人 | いいえ | 加入対象(現在すでに対象。10月以降も変わらず) |
| D | 24時間 | 月約10.8万円(年約130万円) | 40人 | いいえ | 対象外(企業規模)。ただし130万円の壁に注意。2027年10月の「36人以上」拡大で加入対象になる見込み |
| E | 20時間 | 月約8万8,700円 | 200人 | 昼間学生 | 対象外(学生除外)。夜間・通信制・休学中なら加入対象 |
| F | 32時間(4分の3以上) | 月約12.5万円(年約150万円) | 10人 | いいえ | 通常の被保険者として加入(企業規模に関係なく従来から対象) |
次に、加入した場合の保険料の本人負担の概算です。前提として、健康保険は協会けんぽで料率10%(労使折半・本人5%)、厚生年金は18.3%(本人9.15%)、40歳未満(介護保険料なし)とし、雇用保険料と税金は含みません。保険料は実際には通勤手当なども含めた「標準報酬月額」の等級で決まり、料率は加入先・都道府県・年齢で異なるため、あくまで概算です。
| 年収の目安 | 月収の目安 | 標準報酬月額(例) | 本人負担の概算(月) | 本人負担の概算(年) |
|---|---|---|---|---|
| 約106.4万円(時給1,023円×週20時間の水準) | 約8.9万円 | 88,000円 | 約12,500円 | 約15万円 |
| 110万円 | 約9.2万円 | 88,000円 | 約12,500円 | 約15万円 |
| 130万円 | 約10.8万円 | 110,000円 | 約15,600円 | 約19万円 |
| 150万円 | 12.5万円 | 126,000円 | 約17,800円 | 約21万円 |
目安として、本人負担は賃金のおおむね14〜15%です。それまで配偶者の扶養(第3号被保険者)だった人は保険料負担ゼロからの変化なので、手取りの減少感は小さくありません。一方、年収130万円を超えて自分で国民年金・国民健康保険に入っていた人は、厚生年金・健康保険への切り替えでかえって負担が軽くなる場合もあります。なお、週20時間以上で働く人は雇用保険には原則すでに加入しており、今回の改正で雇用保険料が新たに増えるわけではありません。
負担だけではない——加入で増える保障
社会保険への加入は「手取りが減るだけ」ではありません。保険料は会社と折半で、次の保障が上乗せされます。
第一に、将来の年金です。国民年金(基礎年金)に加えて老齢厚生年金が上乗せされます。概算では、標準報酬月額8.8万円で10年間加入すると、65歳からの年金が年約5.8万円(月約4,800円)増え、生涯にわたって受け取れます(賞与を含まない単純計算。実際は加入期間全体の平均報酬で計算されます)。第二に、健康保険の傷病手当金・出産手当金です。病気やケガ、出産で仕事を休んだとき、給与のおよそ3分の2が支給されます(傷病手当金は通算1年6か月まで)。扶養のままではどちらも受け取れません。第三に、障害厚生年金・遺族厚生年金の対象になり、万一のときの保障も基礎年金だけの場合より手厚くなります。
手取りの減少と保障の増加は表裏の関係です。「目先の手取り」だけでなく「働く時間を増やして収入と保障の両方を取る」選択肢も含めて比較することが大切です。
家族手当と「働き控え」への影響
配偶者の勤務先が支給する家族手当(配偶者手当)には注意が必要です。支給基準を「税の扶養(配偶者控除の範囲)」や「健康保険の被扶養者であること」に連動させている企業が多く、社会保険加入や年収増で手当(月1〜2万円程度の企業が多い)が打ち切られると、世帯の手取りに二重の影響が出ます。基準は会社ごとに異なるため、必ず配偶者の勤務先の規程を確認してください。
働く側では、「106万円の壁」が消えても「週20時間の壁」を意識して所定労働時間を19時間台に抑える就業調整が起こる可能性が指摘されています。一方、企業にとってはシフトを細切れにするほど採用・教育コストがかさみ、人手不足下では現実的でない面もあります。加入を前提に時間を延ばし、手取りが減らない賃金水準を提示する方向へ動く企業も出ており、労使双方にとって「加入を避ける」より「加入後の設計」が論点になりつつあります。
企業への影響——保険料負担・事務・支援策
企業側の最大の影響は社会保険料の事業主負担です。健康保険約5%・厚生年金9.15%に子ども・子育て拠出金(0.36%)を加えると、賃金のおおむね14.5%前後を会社が負担します。概算では、月収8.8万円のパート1人あたり月約12,800円・年約15万円、10人なら年約150万円の負担増です(協会けんぽ10%と仮定した概算)。あわせて、資格取得届の提出(電子申請可)、給与計算・算定基礎届などの事務も増えます。加入対象者の届出を怠ると罰則(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)の対象になり得るため、対象者の把握漏れは大きなリスクです。
支援策としては、次の2つを押さえておきましょう。
保険料調整制度(2026年10月開始):新たに加入する短時間労働者(標準報酬月額12.6万円以下・学生でない人)の保険料を、通算3年間軽減できる制度です。軽減分は事業主がいったん追加負担し、後に制度全体で調整される仕組みで、利用には対象となった日から2年以内の事業主の申出が必要です。ただし対象は、2026年10月1日以降に任意特定適用事業所となった50人以下の企業と、2027年10月以降の企業規模拡大で新たに対象となる企業に限られます。すでに特定適用事業所である従業員51人以上の企業は対象外なので、混同しないよう注意してください。
キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース):週の所定労働時間を延長して社会保険に加入させ、手取りが減らないよう処遇改善した事業主への助成で、1人あたり最大75万円とされています(要件により異なります)。なお、以前の「社会保険適用時処遇改善コース」は2026年3月31日で暫定措置が終了しています。このほか、日本年金機構は事業主・従業員向け説明会などに社会保険労務士を無料で派遣する専門家活用支援事業を実施しており、厚生労働省の「社会保険適用拡大特設サイト」では保険料・年金額のシミュレーションも利用できます。
パート従業員への説明の進め方(企業向け)
説明の要点は「正確な判定」「本人ごとの数字」「選択肢の提示」の3つです。まず、対象者を洗い出したうえで、施行前の夏〜初秋に説明会や個別面談を設定します。説明では、①自社が対象企業であること、②本人が条件に該当するか、③加入した場合の保険料の目安と増える保障、④働く時間を維持・延長する場合と抑える場合の手取り比較、⑤130万円の壁や配偶者の家族手当は別制度であり各自の確認が必要なこと、を伝えます。会社が一方的に「扶養内に抑えて」「加入して」と誘導するのではなく、本人の意向を確認し、契約時間の変更は合意のうえで行うことが、後のトラブル防止につながります。説明資料には厚生労働省・日本年金機構の公式リーフレットを使うと、制度説明の誤りを防げます。
よくある誤解
- 「2026年10月から、週20時間以上働く人は全員社会保険に入る」:誤りです。企業規模(当面51人以上)、2か月超の雇用見込み、学生でないことという条件は残ります。
- 「106万円の壁がなくなれば、年収の壁はすべてなくなる」:誤りです。130万円の壁(被扶養者の基準)や、所得税・住民税・配偶者控除などの税の基準は別制度として残ります。
- 「130万円の壁も2026年10月に撤廃される」:撤廃されません。存続します(19歳以上23歳未満の家族は150万円未満に緩和済み)。
- 「年収106万円未満なら加入しなくてよい」:10月以降は賃金額では判定しません。また現在でも、最低賃金以上の時給で週20時間以上働けば所定内賃金は月8.8万円以上になるのが通常で、賃金額を理由に加入対象から外れる場面はすでにほとんどありません。
- 「通勤手当は8.8万円に入らないから保険料も安くなる」:加入後の保険料のもとになる標準報酬月額には、通勤手当なども含まれます。判定用の「所定内賃金」と混同しないよう注意してください。
- 「加入するかどうかは本人が選べる」:条件を満たせば法律上の強制加入で、本人や会社の希望で外れることはできません。
- 「50人以下の会社ならずっと関係ない」:2027年10月以降、対象企業は段階的に広がります。
今から準備すべきこと
個人向けチェックリスト
- 自分の「週の所定労働時間」と雇用契約書を確認した(20時間以上かどうか)
- 勤務先が従業員51人以上(特定適用事業所)かどうかを確認した
- 加入した場合の保険料の目安(賃金の約14〜15%)と手取りの変化を試算した
- 年金の上乗せ・傷病手当金・出産手当金など、加入で増える保障を確認した
- 配偶者の勤務先の家族手当の支給基準を確認した
- 130万円の壁・税金の基準(別制度)との関係を整理した
- 働く時間を維持・延長するか、扶養内にとどめるかを家族と話し合った
企業向けチェックリスト
- 週20時間以上で働く短時間労働者の加入状況を点検し、未加入者がいないかを確認した(賃金要件は現在も多くの場合満たしているため)
- 1人あたり・全体の社会保険料の事業主負担を試算し、人件費計画に反映した
- 夏〜初秋の従業員説明会・個別面談のスケジュールを決めた
- 雇用契約書・就業規則・給与規程(社会保険の適用条件の記載)を点検した
- 給与計算システムの設定変更と資格取得届(電子申請)の手順を確認した
- 労働時間延長を希望する従業員向けに、キャリアアップ助成金の要件を確認した
- 50人以下の場合、任意適用と保険料調整制度、2027年10月以降の適用拡大時期を確認した
- 自社が支給する家族手当の基準が今回の改正と整合するか点検した
まとめ
2026年10月の変更は「106万円の壁の消滅」であると同時に、「週20時間の壁」への置き換えです。もっとも、最低賃金の上昇で賃金要件はすでに実質的な意味を失っており、10月を境に多くの人の働き方が急変するわけではありません。加入の判定は年収ではなく、週の所定労働時間・勤務先の規模・雇用見込み・学生かどうかで決まります。130万円の壁と税金の基準は別制度として残るため、「すべての壁がなくなる」と考えて働き方を決めるのは危険です。働く人は自分の勤務条件と世帯全体の手取り・保障を、企業は加入状況の点検と負担試算・従業員説明の準備を、施行前のこの夏から進めておきましょう。
FAQ
Q1. 106万円の壁はいつなくなりますか?
2026年10月に、社会保険加入条件のうち「月額8.8万円以上」の賃金要件が撤廃される予定です。撤廃自体は2025年6月成立の年金制度改正法で決定済みで、日本年金機構も「令和8年10月に撤廃予定」と案内しています。なお、最低賃金の上昇により週20時間以上働けば月8.8万円を超えるのがすでに通常のため、多くの人が新たに加入する変更というより、実態に合わなくなった基準を法令上整理する改正です。
Q2. 2026年10月から、週20時間以上働く人は全員社会保険に加入するのですか?
いいえ。週20時間以上に加えて、勤務先が従業員51人以上(特定適用事業所)であること、2か月を超える雇用見込みがあること、学生でないことをすべて満たす場合に加入します。フルタイムの4分の3以上働く人は、企業規模に関係なく従来から加入対象です。
Q3. 従業員50人以下の会社で働くパートはどうなりますか?
2026年10月時点では原則として加入対象外です。ただし労使合意で任意加入できるほか、対象企業は2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上へ段階的に拡大されるため、数年内に対象となる可能性があります。
Q4. 130万円の壁もなくなるのですか?
なくなりません。130万円の壁は配偶者などの健康保険の被扶養者でいられるかの基準で、2026年10月以降も存続します。なお19歳以上23歳未満の家族は150万円未満に緩和されており、2026年4月からは労働契約の内容を基本に判定し、一時的な収入増だけでは扶養から外さない運用が明確化されたとされています。
Q5. 社会保険に加入すると手取りはいくら減りますか?
目安は賃金の約14〜15%です。例えば月収8.8万円なら月約12,500円・年約15万円、月収12.5万円なら月約17,800円・年約21万円程度の本人負担が発生します(協会けんぽ料率10%・40歳未満と仮定した概算で、実際は加入先・地域・年齢により異なります)。それまで国民年金・国民健康保険を自分で負担していた人は、切り替えで負担が軽くなる場合もあります。
Q6. 加入すると年金はどのくらい増えますか?
概算で、月収8.8万円相当で10年間加入すると、65歳からの老齢厚生年金が年約5.8万円上乗せされ、生涯受け取れます。あわせて傷病手当金や出産手当金(給与の約3分の2)、障害・遺族厚生年金の対象にもなります。
Q7. 学生アルバイトは社会保険に加入しますか?
昼間の学生は加入対象外です。ただし夜間・通信制の学生や休学中の人は、他の条件を満たせば加入対象になります。
Q8. 条件を満たしても加入しないことはできますか?
できません。条件を満たす場合は法律上の強制加入で、本人や会社の希望で外れることはできません。会社が手続きをしない場合は、年金事務所に相談できます。
Q9. 扶養内で働き続けたい場合はどうすればよいですか?
勤務先が対象企業でも、所定労働時間を週20時間未満に抑えれば短時間労働者としての加入対象にはなりません。ただし、フルタイム労働者の所定労働時間・日数の4分の3以上に該当する場合は、週20時間や企業規模にかかわらず通常の被保険者として加入対象になります。また、実労働時間が常態的に週20時間以上になれば加入対象になり得るほか、収入が130万円以上になると被扶養者から外れること、企業規模要件も段階的に縮小されることを踏まえ、中期的には加入を前提とした働き方も比較検討することをおすすめします。
参考資料・一次情報(いずれも2026年7月20日閲覧)
一次情報
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」(更新日2026年6月30日)
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html - 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(加入条件・所定内賃金の範囲)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html - 日本年金機構「保険料調整制度のご案内」
https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/hokenryochosei.html - 日本年金機構 チラシ「短時間労働者の社会保険料負担を支援する制度が始まります」(PDF)
https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/santei.files/tirashi_tyouseiseido.pdf - 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(令和6年10月施行分)」(PDF)
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/QA0610.pdf - 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/index.html - 国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和8年度版・令和8年7月)掲載ページ
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/01.htm - 国税庁「家族と税」(暮らしの税情報・令和8年度版:所得税178万円、38万円の配偶者〈特別〉控除169万円、住民税所得割119万円、2026年12月1日施行・令和8年分から適用等)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_2.htm - 「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」(令和7年法律第33号、2025年6月13日成立・6月20日公布)※条文はe-Gov法令検索で確認可能
補助的に参照した専門情報・報道(二次情報)
- SmartHR Mag.「【2026年最新版】年収の壁を徹底解説」 https://mag.smarthr.jp/hr/labor/nenshu-no-kabe/
- SATO PORTAL「保険料調整制度の運用ルール案に関するパブリックコメント公表」 https://www.sato-group-sr.jp/portal/archives/4193
- 補助金ポータル「キャリアアップ助成金とは【2026年・令和8年】」 https://hojyokin-portal.jp/columns/career-up_summary
- 企業法務弁護士ナビ「【2026年10月】106万円の壁撤廃|中小企業の対応策」 https://houmu-pro.com/legalrevision/384/
主婦年金は廃止される?第3号被保険者制度見直しで何が変わるか
記事作成日:2026年5月20日 最終更新日:2026年5月20日 この記事の結論 主婦年金と呼ばれる第3号被保険者制度は、記事作成時点で「すぐに全面廃止される」と決まっているわけではありません。 ただし、短時間労働者への社会保険適用拡大が進むことで、これまで配偶者の扶養内で働いていたパート・アルバイトの一部は、厚生年金・健康保険に加入するケースが増えていきます。 つまり、今回のポイントは「第3号被保険者制度の即時廃止」ではなく、社会保険適用拡大による実質的な対象縮小です。 手取りが一時的に減る人がいる一 ...
106万円の壁は2026年10月にどう変わる?社会保険・手取り・企業負担をわかりやすく解説
※本記事は2026年7月20日時点の法令・公表情報に基づいています。施行日等は政省令により変更される可能性があるため、最新情報もあわせてご確認ください。 この記事の結論 2026年10月から、パート・アルバイトが勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入するかどうかの条件のうち、「月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)」という賃金要件が撤廃される予定です。最低賃金の上昇により、週20時間以上働けば月8.8万円を超えるのがすでに通常となっているため、この改正は実態に合わなくなった基準を法令上も整理する ...
AI時代の住民参加とは? 毎月10秒で地域課題を可視化する新しい民主主義の可能性
編集部注記:本記事で紹介する「毎月10秒アンケート」は、本記事が提示する構想・提案であり、現在どこかの自治体で実際に運用されている制度ではありません。記事後半で紹介する国内外の事例のみが、政府・自治体等の公表資料で確認された事実です。 この記事の結論 AIは「大量の住民意見を整理・要約・分析する補助役」であり、政策を決めるのは住民・行政・議会である。本記事はこの前提のもと、スマートフォンで毎月10秒回答できる住民アンケートという構想を提案する。 台湾の政策提言プラットフォーム「Join」、兵庫県加古川市が ...
地域未来戦略とは?地方創生2.0との違いをわかりやすく解説【2026年原案】
この記事の結論 地域未来戦略は、高市内閣が2026年夏の決定を目指す、地方政策の新しい全体戦略です。2026年6月30日の第2回地域未来戦略本部で原案が示されました。石破内閣の「地方創生2.0基本構想」が生活環境や移住・関係人口を含む10年構想だったのに対し、地域未来戦略は「強い地域経済」を前面に出し、産業クラスター形成と投資促進に重心を移します。対象は47都道府県すべてで、計画期間は2030年度までです。2026年7月17日時点では原案段階であり、閣議決定はまだ公表されていません。 要点 2026年6月 ...
2026年改正地域交通法で何が変わる?交通空白・共同運行・自治体の役割を解説
路線バスの減便・廃止が全国で相次ぐなか、「交通空白」の解消を正面から掲げる改正地域交通法が2026年6月に成立・公布されました。本記事では、法律で何が決まり、いつから、誰に、どのような影響があるのかを、2026年7月17日時点の一次資料に基づいて解説します。 この記事の結論 2026年6月3日、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律」(改正地域交通法)が成立し、6月10日に公布されました(令和8年法律第35号)。柱は、休廃止のおそれがあるバス路線などの「交通空白」に対し、市町村など ...
つなぎ国債とは何か 成長投資財源・国債増発・金利への影響をわかりやすく解説
つなぎ国債は、将来の償還財源を前提に、成長投資や危機管理投資に必要なお金を先に確保するための“橋渡し型”の国債です。赤字国債とは性格が異なりますが、発行されれば国債市場の需給や長期金利に影響し得るため、財源の具体性と発行規模が大きな焦点になります。 この記事でわかること つなぎ国債とは何か、その定義と考え方 赤字国債・建設国債・復興債・GX経済移行債との違い なぜ成長投資や危機管理投資の財源として注目されているのか 国債増発、長期金利、住宅ローン、企業借入、為替、株式市場への影響 生活者・投資 ...




