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楽天モバイルの黒字化はどこまで?EBITDA・営業損益と楽天グループの財務

スマートフォンと通信基地局、決算資料、返済日程を示すカレンダーを組み合わせたイラスト

情報基準日:2026年10月22日

楽天モバイルは、楽天経済圏への貢献を反映した会社指標のEBITDAで、2025年通期の黒字化を達成した。2026年4〜6月期も黒字を維持している。ただし、営業損益は赤字で、経済圏への貢献を反映する前のEBITDAも赤字だ。

「黒字化した」と「赤字が残っている」は、見る指標が違えば両立する。現在の到達点を理解するには、利益の計算方法に加え、楽天モバイル単独とグループ全体、四半期と通期を分けて読む必要がある。2026年度第2四半期決算データシート

楽天モバイルは、どの指標で黒字になったのか

楽天が使うEBITDAは、会社独自の調整を加えた営業損益である「Non-GAAP営業損益」に、減価償却費などを加算した指標だ。基地局などの投資額を耐用年数に分けて費用計上する減価償却の影響を除いて、収益力を見るために使われる。

最新の公表決算は2026年4〜6月期と1〜6月累計。主な利益指標を分けると、黒字化の範囲は次のようになる。

対象指標・条件対象期間実績読み取れること
楽天モバイルEBITDA・経済圏貢献反映後2025年通期126.90億円この指標では通期黒字
楽天モバイルEBITDA・経済圏貢献反映後2026年4〜6月59.24億円四半期でも黒字を継続
楽天モバイルEBITDA・経済圏貢献反映前同上▲50.59億円貢献額を含める前は赤字
楽天モバイルNon-GAAP営業損益・経済圏貢献反映後同上▲322.67億円営業段階では赤字が残る
楽天グループ連結IFRS営業利益同上200.46億円グループ全体では営業黒字
楽天グループ連結親会社の所有者に帰属する利益同上77.07億円四半期の最終損益は黒字
楽天グループ連結親会社の所有者に帰属する損益2026年1〜6月▲109.41億円上期累計では最終赤字

▲は損失。2025年通期の楽天モバイルEBITDAは、発表当時の129億円ではなく、最新データシートで過去数値の修正を反映した値を掲載している。決算データシート、2026年中間決算短信・損益計算書

また、楽天モバイル株式会社と「モバイルセグメント」は同じ範囲ではない。セグメントには楽天シンフォニーなども含まれ、2026年4〜6月期のNon-GAAP営業損失は約331億円。楽天モバイルの約323億円とは区別する必要がある。決算補足資料・52ページ

EBITDA黒字でも営業赤字が残る、二つの理由

まず確認したいのが、経済圏への貢献を利益指標に反映していることだ。

楽天は、モバイル契約者によって他のグループサービスの粗利益が増える効果から、他事業がモバイルへ顧客を送る効果を差し引き、「モバイルエコシステム貢献」として各事業の業績評価に反映している。これは会社が算定する管理上の評価であり、通信料金として受け取った売上そのものとは異なる。決算補足資料・60ページ

2026年4〜6月期は、次の関係になっている。

貢献反映前のEBITDA ▲50.59億円 + 経済圏貢献額109.83億円 = 反映後のEBITDA 59.24億円

この配分を、そのままグループ全体に新しい売上や現金が発生したことと読み替えることはできない。会社が公表する黒字を理解するには、反映前と反映後を併せて見ることが役立つ。決算データシート・Mobileシート

もう一つは、EBITDAでは減価償却費などを加算していることだ。同じ四半期のNon-GAAP営業損失322.67億円に、減価償却費や使用権資産の償却など381.91億円を加えると、EBITDAは59.24億円になる。

しかし、設備の取得、リースの支払い、利息・税金、借入金や社債の返済には資金が必要だ。EBITDAが黒字でも、それだけで設備投資や返済を賄えるとは限らない。実際のお金の出入りは、キャッシュフローや資金調達の資料で別に確認する必要がある。

黒字化は進展したが、契約増だけでは判断できない

黒字化は単月から通期へと進んできた。会社は2024年12月に、当時の定義による単月EBITDAの黒字化を発表した。その後、最新データシートの固定資産税を含む系列では、2025年4〜6月期から2026年4〜6月期まで、経済圏貢献反映後のEBITDAは5四半期連続で黒字となっている。2024年度決算発表、最新データシート

一方、改善の中身を見るには、契約数、単価、費用をそろえて確認したい。

2026年4〜6月期の楽天モバイル売上収益は約1,013億円で前年同期比11.9%増。全契約回線数は6月末に約1,075万回線、会社定義の正味ARPUは2,516円となった。ARPUは1回線当たりの収入等を表す指標で、正味ARPUには経済圏効果に関する調整も含まれる。

会社は、契約増加に加え、オプションや広告などの収入が寄与したと説明している。販促費は増えたものの、その他の費用を抑えたことで営業損失が縮小したとしている。2026年度第2四半期決算ハイライト

決算後には、9月24日時点で全契約数が1,100万回線を突破した。ただし、この数字には事業継続計画向けのBCP回線や、MVNO・MVNEを含む。これらを除いたMNO契約数は1,018万回線だ。9月25日付・楽天モバイル発表

ARPUの分母は対象を絞ったMNO回線数の期間平均であり、全契約数の期末値ではない。「1,100万回線×ARPU」で売上や利益を計算すると、対象も時点も混ざってしまう。

設備投資にも注意が必要だ。2026年のネットワーク関連設備投資計画は2,000億円で、4〜6月期の実績は393億円。これらは会社が定義する設備投資額であり、そのまま同期間の現金支出額を示すものではない。決算説明資料・45ページ

KDDIの回線を借りるローミングも、9月末で全国一律に終了したわけではない。楽天モバイルは、自社設備でのカバーに時間がかかる地域では10月以降も継続すると説明している。提供範囲の縮小が費用、設備投資、解約率にどう表れるかは、今後の確認点になる。楽天モバイルの説明

楽天グループの最終黒字には、税金の会計処理も寄与した

グループ全体の業績改善を、モバイルだけの成果と捉えることもできない。

2026年4〜6月期のNon-GAAP営業損益は、フィンテックが約692億円の利益、インターネットサービスが約231億円の利益、モバイルが約331億円の損失だった。全社・内部取引等の調整を経た連結Non-GAAP営業利益は約420億円で、金融事業やインターネットサービスの増益も大きく寄与している。決算説明資料・9ページ

利益指標の違いは、グループ全体でも大きい。2025年通期はIFRS営業利益が約144億円だった一方、親会社の所有者に帰属する最終損失は約1,779億円だった。営業利益から最終損益に至るまでには、金融損益、税金、子会社の他の株主に帰属する利益などが関わる。2025年通期決算短信

2026年4〜6月期の親会社帰属利益は77.07億円となったが、その内容にも注意が必要だ。同四半期は税引前利益5.08億円に対し、法人所得税費用がマイナス266.79億円となり、税引後利益は271.87億円だった。そこから非支配持分、つまり子会社の他の株主に帰属する利益を除いたものが、親会社帰属利益になる。2026年中間決算短信・10ページ

半期報告書では、AST SpaceMobile株式の一部売却に関連する税金の配分処理によって、上期の法人所得税費用が515.86億円減少したと説明されている。これは「株式の売却代金がそのまま営業利益になった」という意味ではない。2026年半期報告書・44ページ

したがって、最終黒字には事業改善と税金の会計処理の双方が寄与している。四半期の黒字を、そのまま同じ規模で続く利益と考えることはできない。実際、1〜6月累計の親会社帰属損益には109.41億円の赤字が残っている。

財務は、親会社の手元資金と社債償還を分けて見る

財務を読む際は、金融子会社を含む連結現金と、親会社の資金を区別したい。

2026年6月末の連結現金及び現金同等物は約4兆4,905億円だが、銀行事業分も含まれる。一方、会社のIFRS準拠の単独資料では、親会社の現金及び現金同等物等は4,740億円、社債及び借入金は1兆3,396億円だった。前者には短期運用中の資産、後者にはグループ内借入も含まれる。決算補足資料・20〜21ページ

銀行の顧客預金は銀行側の負債であり、親会社が自由に使える現金ではない。連結の大きな現金残高だけを見て、社債返済に余裕があると判断することはできない。

会社は8月10日時点で、2026年の社債償還原資を確保したと説明した。4月には米ドル建永久劣後債、6月には円建シニア債を償還済みで、5月には保有有価証券の売却で約2,000億円を調達している。決算説明資料・56ページ

ただし、「原資を確保した」と「すべて返済した」は異なる。10月14日に確認した普通社債の残存額を満期年別に整理すると、次のようになる。

満期年普通社債の償還予定額
2026年の残り450億円
2027年2,756億円
2028年1,550億円
2029年3,734億円

会社の社債一覧を編集部で合算。外貨建債の円額は、会社掲載の通貨スワップ契約レートによる換算額。銀行借入、リース、利息などは含まない。楽天グループ・格付・社債情報

このほか、永久劣後債などには会社が任意で繰り上げ償還できる日がある。満期とは性質が違うため、上表には加えていない。

今後の確認点は、返済期限に合わせた資金手当てと、その調達コストだ。借換えは返済期限を延ばす手段になっても、それだけで借金が減るわけではない。資産売却による資金確保も、事業が毎期生む利益とは分けて評価する必要がある。

次の決算では、黒字の継続性と再編の影響を確認したい

決算後の変化として、10月1日に金融事業再編が実施され、楽天カードと楽天証券ホールディングスは楽天銀行の連結子会社となった。

会社は、再編前の資産移管に伴い、2026年7〜9月期に約230億円の法人所得税費用を計上する見込みと発表している。グループ内取引の譲渡益は連結決算では消去される一方、税費用は生じる。金額は10月1日時点の試算で、今後変わる可能性がある。10月1日付・再編と税費用の開示

次回決算では、次の四つを確認すると進捗を判断しやすい。

  • モバイルの利益:経済圏貢献反映後だけでなく、反映前のEBITDAと営業損失も改善しているか。
  • 契約の収益性:回線数の増加が、単価や解約率、販促費を含めた利益改善につながっているか。
  • 投資と資金繰り:設備投資の進捗に対し、資金調達や返済の準備がどう進んだか。
  • グループの最終損益:税金や再編などの影響を分けても、継続的な利益が拡大しているか。

2026年7〜9月期の決算発表は、11月13日15時30分の予定だ。楽天グループ・IR情報

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