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在職老齢年金は2026年4月から65万円へ|年金が減る人・減らない人を計算例で解説

働きながら年金を受け取る人の「年金カット」の基準額(支給停止調整額)は、2026年(令和8年)4月1日に月51万円から月65万円へ引き上げられました。働いて得る賃金(賞与込みの月額換算)と老齢厚生年金(報酬比例部分)の合計が月65万円以下なら年金は減額されず、65万円を超える場合は、超えた額の半分だけ老齢厚生年金が支給停止されます。老齢基礎年金は減りません。根拠は、2025年6月13日に成立した年金制度改正法(令和7年法律第74号)と、厚生労働省が2026年1月23日に公表した「令和8年度の年金額改定について」です。65万円は2026年度(令和8年度)に適用される額で、毎年度、賃金水準に応じて見直されます。

この記事の結論

  • 2026年4月1日から、在職老齢年金の基準額(支給停止調整額)は月51万円から月65万円へ14万円引き上げられた(施行済み)。
  • 判定式はシンプル。「総報酬月額相当額(賃金+賞与の12分の1)+基本月額(老齢厚生年金の月額)」が65万円以下なら全額支給、超えた分の2分の1が支給停止。
  • 減るのは老齢厚生年金(報酬比例部分)だけ。老齢基礎年金・経過的加算は減らず、夫婦の収入や年金を合算して判定することもない。
  • 対象は「厚生年金に加入して働く老齢厚生年金の受給者」と「70歳以降も厚生年金適用事業所で働く人」。厚生年金に加入しない自営業・フリーランスとしての収入は、金額にかかわらず判定に含まれない。
  • 65万円は2026年度(令和8年度)に適用される額。毎年度、賃金変動に応じて改定され、翌年度は同額となる場合も変更される場合もある。新しい額は例年1月下旬に厚生労働省が公表する。

在職老齢年金とは?働くと年金が減る仕組み

在職老齢年金とは、老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金保険に加入して働く人について、賃金(賞与込み月額換算)と老齢厚生年金の合計が基準額(支給停止調整額)を超える場合に、超えた分の半分の老齢厚生年金を支給停止する仕組みです。厚生労働省は「賃金の増加2に対し老齢厚生年金額を1支給停止する仕組み」と説明しています(令和8年度の年金額改定について・2026年1月23日)。

支給停止の対象になるのは老齢厚生年金(報酬比例部分)だけです。老齢基礎年金と経過的加算額は、収入がいくら多くても全額支給されます(日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」)。なお、平成19年4月以降に70歳に達した人が70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務する場合は、厚生年金の被保険者ではなく保険料負担もありませんが、在職による支給停止は同じように行われます。

自分は対象?対象・対象外の判定表

働き方・立場在職老齢年金の対象か
会社員・公務員として厚生年金(共済含む)に加入し、老齢厚生年金を受給対象
厚生年金に加入して働くパート・アルバイト(適用拡大での加入を含む)対象
厚生年金に加入する法人役員(役員報酬あり)対象
70歳以上で厚生年金適用事業所に勤務(保険料負担なし)対象
会社で厚生年金に加入しながら、副業で自営業・フリーランスも行う対象(会社から受ける標準報酬月額・標準賞与額のみで判定。事業所得等は含まない)
自営業・フリーランス・業務委託のみで働く(厚生年金に未加入)対象外(収入額を問わず停止なし)
厚生年金に加入しない短時間パート対象外
完全リタイア(就労なし)対象外
老齢基礎年金のみ受給(老齢厚生年金の受給権なし)対象外
障害年金・遺族年金の受給対象外(在職老齢年金は老齢厚生年金のみの仕組み)

判定に使う「賃金」は、厚生年金の標準報酬月額・標準賞与額です。事業所得・不動産収入・株の配当・原稿料など、厚生年金の報酬に当たらない収入は、金額にかかわらず判定に含まれません。ただし「自営業者だから無条件で対象外」ではない点に注意してください。会社員などとして厚生年金に加入しながら自営業を兼業している場合は、会社から受ける給与・賞与(標準報酬月額・標準賞与額)の部分が判定対象になります。


2026年4月から何が変わった?51万円→65万円

2026年4月1日から、支給停止調整額が月51万円から月65万円に引き上げられました。計算式そのものは変わらず、基準額だけが14万円上がったため、「これまで年金が減っていたが減らなくなる人」「全額停止から一部支給に変わる人」が生じています。改正の検討段階で厚生労働省が社会保障審議会年金部会に示した資料(2022年度末データによる試算)では、65歳以上の在職受給権者約308万人のうち約50万人(約16%)が支給停止の対象で、基準額を62万円(法律上の額)に引き上げた場合は約30万人(約10%)に減少するとされていました。

項目2026年3月まで(令和7年度)2026年4月から(令和8年度)
支給停止調整額51万円65万円
支給停止額(月額)(基本月額+総報酬月額相当額−51万円)×1/2(基本月額+総報酬月額相当額−65万円)×1/2
全額支給となる条件合計51万円以下合計65万円以下
停止の対象老齢厚生年金(報酬比例部分)のみ変更なし
老齢基礎年金・経過的加算全額支給変更なし
根拠厚生年金保険法46条同条(令和7年法律第74号による改正・2026年4月1日施行)

出典:厚生労働省「令和8年度の年金額改定について」(2026年1月23日)、日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」(2026年4月1日更新)、厚生労働省・第21回社会保障審議会年金部会資料2「在職老齢年金制度について」(2024年11月25日)。確認日2026年8月3日。

法律の「62万円」と実際の「65万円」はなぜ違う?

2025年の改正法成立時の報道では「62万円への引上げ」と伝えられましたが、2026年度に実際に適用される額は65万円です。厚生労働省も「改正後の支給停止基準額(62万円)は法律成立時(2025年6月)の額であり、2026年4月からは65万円になる」と案内しています。62万円は令和6年度の賃金水準で定められた法律上の額であり、実際の各年度の額は賃金変動を反映して毎年度改定されるためです。資料によって数字が異なるのは、次の3層を指しているからです。

  • 改正前の法律上の額:48万円(平成16年改正で規定)。賃金変動を反映した実額が令和6年度50万円・令和7年度51万円。
  • 改正後の法律上の額:62万円(令和6年度水準。令和7年法律第74号で規定、2026年4月1日施行)。
  • 令和8年度の実額:65万円。厚生労働省の公表資料によると、62万円に令和7年度改定で用いた名目賃金変動率(+2.3%)と令和8年度改定で用いる名目賃金変動率(+2.1%)を反映して算定されます(62万円×1.023×1.021≒64万7,600円→1万円単位の端数処理で65万円)。

支給停止調整額は毎年度変わる

支給停止調整額は、厚生年金保険法第46条第3項の規定により、名目賃金の変動に応じて毎年度改定されます。日本年金機構も、65万円は「令和8年度の基準額で、毎年度、賃金の変動に応じて改定」されると案内しています。翌年度以降は、賃金変動の状況によって65万円と同額になる場合も、変更される場合もあります。「65万円」を固定の数字として覚えるのではなく、毎年1月下旬の厚生労働省の発表(翌年度の年金額改定)で最新額を確認する運用が安全です。

年度支給停止調整額
令和6年度(2024年度)50万円
令和7年度(2025年度)51万円
令和8年度(2026年度)65万円
令和9年度(2027年度)以降毎年度、賃金変動に応じて改定(同額の場合も変更の場合もある。例年1月下旬公表)

出典:厚生労働省「令和8年度の年金額改定について」(2026年1月23日)、日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」。確認日2026年8月3日。


年金が減るかどうかの計算方法【2026年度】

計算は2段階です。まず「総報酬月額相当額」と「基本月額」を求め、合計が65万円以下なら全額支給、超えるなら超過分の半分が月ごとに支給停止されます(日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」)。

  • 合計が65万円以下 → 老齢厚生年金は全額支給
  • 合計が65万円超 → 支給停止額(月額)=(基本月額+総報酬月額相当額−65万円)×1/2
  • 支給停止額が基本月額以上(支給月額がマイナス)→ 老齢厚生年金は全額支給停止(加給年金額も停止。老齢基礎年金・経過的加算は支給)

総報酬月額相当額とは?賞与はこう月額換算する

総報酬月額相当額とは、「その月の標準報酬月額」に「その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12」を足した額です(70歳以上の人は「標準報酬月額に相当する額」「標準賞与額に相当する額」で計算)。賞与は支払われた月から12カ月間、判定額に上乗せされ続ける点がポイントです。たとえば2026年6月と12月に75万円ずつ賞与を受けると、年間150万円÷12=12.5万円が毎月の判定に加わります。なお、厚生年金の標準賞与額には1回の支給(同じ月に2回以上支給された場合は合算)につき150万円の上限があり、これを超えた部分は標準賞与額に算入されません(日本年金機構)。

基本月額とは?計算対象になる年金・ならない年金

基本月額とは、加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の年額を12で割った額です。共済組合等からの老齢厚生年金も受けている場合は、すべての老齢厚生年金を合算した額で計算します。厚生年金基金の加入期間がある人は、基金の代行部分を国が支払う年金とみなして基本月額を算出します(日本年金機構)。

年金の種類在職老齢年金の停止対象か
老齢厚生年金(報酬比例部分)・特別支給の老齢厚生年金対象(共済分・基金代行分も合算して判定)
老齢基礎年金対象外(全額支給)
経過的加算額対象外(全額支給)
加給年金額基本月額には含めない。ただし報酬比例部分が全額停止の月は加給年金額も停止
iDeCo・企業年金など私的年金、障害年金・遺族年金対象外(別制度)

出典:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」(2026年4月1日更新)、同「在職老齢年金制度が改正されました」。確認日2026年8月3日。


計算例で確認:年金が減る人・減らない人【5つのケース】

以下は令和8年度(基準額65万円)のモデル計算です。前提として、金額はすべて月額換算、賞与は「直近1年間の標準賞与額の合計÷12」で反映し、端数処理を省略しています(実際の支給額は1円単位の端数処理等により異なります)。

例1:パート勤務(厚生年金加入)|合計が65万円未満→減らない 標準報酬月額22万円・賞与なし、基本月額10万円。 総報酬月額相当額22万円+基本月額10万円=32万円 ≦ 65万円 → 支給停止なし(全額支給)

例2:再雇用の会社員|65万円以下に収まり、今回の改正で停止がなくなった人 標準報酬月額41万円・賞与年72万円(月換算6万円)、基本月額12万円。 総報酬月額相当額47万円+基本月額12万円=59万円 ≦ 65万円 → 支給停止なし。 令和7年度(51万円基準)では(59万−51万)×1/2=月4万円が停止されていたため、この人は2026年4月から年48万円の受取増になります。

例3:フルタイム管理職|65万円を超える→一部停止(全額停止から改善した人) 標準報酬月額59万円・賞与年132万円(月換算11万円)、基本月額14万円。 総報酬月額相当額70万円+基本月額14万円=84万円 > 65万円。 支給停止額=(84万−65万)×1/2=月9.5万円、年金の支給月額は14万−9.5万=月4.5万円。 令和7年度基準では停止額(84万−51万)×1/2=16.5万円が基本月額14万円を上回り全額停止だったため、月4.5万円(年54万円)の受取に改善しています。

例4:役員・高報酬|賞与込みで大きく超える→全額停止 役員報酬月100万円(厚生年金の標準報酬月額は上限の65万円)。役員賞与は異なる月に年3回、各140万円を支給し、標準賞与額の年間合計は420万円(月換算35万円)。基本月額16万円。 各回の賞与140万円は1回あたりの上限150万円の範囲内のため、全額が標準賞与額に算入されます(仮に1回の支給が150万円を超えると、超えた部分は算入されません)。 総報酬月額相当額=65万円+35万円=100万円。100万円+基本月額16万円=116万円。 支給停止額=(116万−65万)×1/2=25.5万円 > 基本月額16万円 → 老齢厚生年金は全額支給停止(加給年金額も停止)。ただし老齢基礎年金と経過的加算額は全額支給されます。

例5:共働き夫婦|夫婦の年金・収入は合算しない 夫68歳:総報酬月額相当額44万円+基本月額13万円=57万円 ≦ 65万円 → 夫の年金は全額支給。 妻66歳(就労なし):在職老齢年金の対象外。妻自身の老齢厚生年金(月6万円)と老齢基礎年金は全額支給。 夫の判定に妻の年金や収入は一切含まれません。判定はあくまで本人単位で、「世帯で65万円」ではありません。

出典(計算式・用語):日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」(2026年4月1日更新)


65歳未満と70歳以上ではどう違う?

現在は年齢による計算式の違いはなく、65歳未満(特別支給の老齢厚生年金・繰上げ受給)も65歳以上も同じ65万円基準で判定します。70歳以降は保険料を払わなくても、働き方によっては支給停止が続きます。

65歳未満(特別支給・繰上げ受給)の場合

かつて65歳未満には28万円という厳しい基準がありましたが、これは令和4年3月以前の計算方法で、2022年4月に65歳以上と同じ基準へ一本化済みです。特別支給の老齢厚生年金は経過的な制度で、厚生労働省の資料では男性は2025年度まで、女性は2030年度までとされており、2026年度時点で65歳未満の対象は主に一定の生年月日の女性です。老齢厚生年金を繰上げ受給しながら厚生年金に加入して働く場合も、繰り上げた老齢厚生年金は在職老齢年金の対象になります(老齢基礎年金の繰上げ分は対象外)。

なお、65歳未満で特別支給の老齢厚生年金などを受けながら雇用保険の高年齢雇用継続給付を受ける場合は、在職老齢年金による停止に加えて、最高で標準報酬月額の4%(令和7年3月31日以前に支給要件を満たした人は最大6%)の年金が追加で支給停止されます(日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」)。

70歳以降も働く場合

70歳になると厚生年金の被保険者ではなくなり保険料負担はなくなりますが、厚生年金適用事業所に勤務している間は、賃金相当額をもとに在職老齢年金の判定が同じ計算式で続きます(日本年金機構)。一方、70歳以降の勤務期間は厚生年金の加入期間ではないため、年金額を増やす再計算には反映されません。


年金が減る時期・元に戻る時期はいつ?

支給停止額は「月単位」で判定され、総報酬月額相当額が変わった月から自動的に変わります。退職した場合は退職日の翌月から停止が外れます(退職後1カ月以内に再就職して厚生年金に加入した場合を除く。日本年金機構)。実務上のタイミングは次のとおりです。

  • 給与が変わったとき:昇給や雇用契約の変更があっても、実際の給与額が変わった月にただちに停止額が変わるわけではありません。停止額に反映されるのは、定時決定(毎年9月)または随時改定によって標準報酬月額が変更された月からです。
  • 賞与を受けたとき:標準賞与額は、賞与が支払われた月から「その月以前1年間」の合計に算入されます。このため、賞与の影響は支払月から12カ月間、判定額に上乗せされ続けます。
  • 在職定時改定(65歳以上70歳未満):毎年9月1日を基準日として、10月分から直近1年の加入実績が年金額に上乗せされます。基本月額が増える分、停止額が増える方向に働くことがあります。
  • 退職したとき:退職して1カ月を経過すると、退職した翌月分から支給停止がなくなり、未反映の加入期間を加えた再計算(退職改定)が行われます。
  • 70歳に到達したとき:到達した翌月分から、それまでの加入期間を反映した再計算が行われます(勤務を続ける場合、停止の判定自体は継続)。

令和8年度分の年金は2026年6月15日支払い(4月・5月分)から新基準で振り込まれており、金額は6月上旬送付の「年金額改定通知書」「年金振込通知書」で確認できます。なお、年金は原則として偶数月の15日に前2カ月分が支払われ、15日が土曜日・日曜日・祝日に当たる場合は直前の平日に支払われます。


繰下げ受給との関係:停止された分は増額されない

繰下げ受給を検討している人は特に注意が必要です。65歳以降に厚生年金に加入していた期間や70歳以降に適用事業所に勤務していた期間について、在職老齢年金制度により支給停止される額は、繰下げによる増額(1カ月あたり0.7%・最大84%)の対象になりません(日本年金機構「年金の繰下げ受給」)。「今は全額停止だから、繰り下げてあとで増やして受け取ろう」という計画は、停止相当分には効かないということです。逆に言えば、今回の基準額引上げで停止額が減った人は、繰下げで増額される部分が広がります。繰下げ待機中は加給年金額も受け取れないため、対象になり得る人は年金事務所で具体額の試算を受けてから判断するのが確実です。


手続きは必要?税金・社会保険料の天引きとの違い

在職老齢年金の支給停止に本人の手続きは不要で、勤務先が届け出る標準報酬月額・標準賞与額と年金記録をもとに日本年金機構が自動計算します。2026年3月まで停止されていた人も、申請なしで4月分から新基準が適用されています。

混同しやすいのが、年金振込額から天引きされる税金・社会保険料です。在職老齢年金は「年金額そのものの支給停止」であるのに対し、所得税の源泉徴収や介護保険料・国民健康保険料等の特別徴収は「支給された年金からの控除」で、まったく別の仕組みです。「振込額が思ったより少ない」ときは、支給額変更通知書・振込通知書でどちらが原因かを切り分けてください。また、iDeCoなど私的年金の受取額は在職老齢年金の判定に関係しません。

個別の停止額の試算や相談は、年金事務所・街角の年金相談センター・ねんきんダイヤルで受け付けています。ねんきんネットでも自身の年金額を確認できます。


よくある誤解と正しい内容

よくある誤解正しい内容
働くと老齢基礎年金も減らされる減るのは老齢厚生年金(報酬比例部分)のみ。老齢基礎年金・経過的加算は全額支給
夫婦の年金や収入を合算して65万円で判定する判定は本人単位。配偶者の年金・収入は無関係
停止された年金は退職後や繰下げでまとめて戻る戻らない。月ごとの停止で、繰下げ増額の対象にもならない
65万円は「手取り」や「年収÷12」で判定する標準報酬月額+直近1年の標準賞与額÷12と、年金の基本月額の合計(額面ベース)で判定
年収780万円(65万円×12)を超えると年金がゼロになる超過分の半分停止の仕組み。全額停止は「超過分の半分≧基本月額」の場合のみ
保険料を払っていない70歳以上は対象外70歳以上でも適用事業所勤務なら対象(保険料負担はなし)
自営業なら収入がいくらでも年金は絶対に止まらない厚生年金に加入しない働き方だけなら対象外。ただし会社で厚生年金に加入しながらの兼業では、会社から受ける給与・賞与(標準報酬月額・標準賞与額)は判定対象(事業所得・不動産収入・原稿料等は含まれない)

読者が取るべき対応(時系列チェックリスト)

  1. いま:ねんきんネットまたは年金証書・改定通知書で、老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額を確認し、12で割って基本月額を出す。
  2. いま:給与明細・標準報酬月額の決定通知(勤務先)で自分の標準報酬月額を確認し、直近1年の標準賞与額÷12を足して総報酬月額相当額を出す。
  3. いま:2つの合計を65万円と比較。65万円以下なら2026年度の停止はなし。超える場合は超過分×1/2が月々の停止額の目安。
  4. 6月・支払月ごと:年金額改定通知書・振込通知書で、4月分以降の反映額(2026年6月15日支払い分から)を確認。
  5. 昇給・契約変更・賞与時:定時決定・随時改定で標準報酬月額が変更された月、および賞与が支払われた月に再試算する(実際の給与が変わっただけでは停止額は変わらない)。
  6. 毎年9〜10月:定時決定後の標準報酬月額と、65〜69歳は10月分の在職定時改定による基本月額の増加を確認。
  7. 毎年1月下旬:厚生労働省の翌年度年金額改定の発表で、新しい支給停止調整額を確認する(65万円は2026年度に適用される額で、翌年度は同額となる場合も変更される場合もある)。
  8. 繰下げ・退職を検討するとき:停止分は繰下げ増額の対象外である点を踏まえ、年金事務所で試算を受けてから判断する。

よくある質問(FAQ)

Q1. 老齢基礎年金も減額されますか?

減額されません。在職老齢年金で停止されるのは老齢厚生年金(報酬比例部分)のみで、老齢基礎年金と経過的加算額は全額支給されます(日本年金機構)。

Q2. 夫婦それぞれの年金や収入は合算されますか?

合算されません。判定は受給者本人の賃金と本人の老齢厚生年金だけで行います。配偶者がいくら年金や給与を受け取っていても影響しません。

Q3. 支給停止された年金は、退職後にまとめて戻ってきますか?

戻りません。停止はその月ごとに確定し、後から追加で支払われることはありません。繰下げによる増額の対象にもなりません。

Q4. 「65万円」は手取りですか?年収ですか?

どちらでもありません。「その月の標準報酬月額+直近1年間の標準賞与額÷12」(総報酬月額相当額)と「老齢厚生年金の基本月額」の合計を65万円と比べます。額面ベースの月額換算です。

Q5. 自営業・フリーランス・業務委託の収入が多い場合は?

厚生年金に加入しない働き方の収入(事業所得・不動産収入・原稿料など)は、金額にかかわらず判定に含まれません。ただし、会社員などとして厚生年金に加入しながら自営業を兼業している場合は、会社から受ける給与・賞与(標準報酬月額・標準賞与額)の部分が判定対象になります。

Q6. 70歳を過ぎて保険料を払っていなくても減額されますか?

されます。70歳以降は保険料負担がありませんが、厚生年金適用事業所に勤務している間は同じ計算式で支給停止の判定が続きます。

Q7. 加給年金や共済からの年金はどう扱われますか?

加給年金額は基本月額に含めませんが、報酬比例部分が全額停止になる月は加給年金額も停止されます。共済組合等からの老齢厚生年金は、すべて合算して判定します。

Q8. いつの給与・賞与で判定され、いつから金額が変わりますか?

「その月の標準報酬月額」と「その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12」で判定します。標準報酬月額は定時決定・随時改定で変更された月から、賞与は支払われた月から直近1年間の計算に反映され、賞与の影響は支払月から12カ月間続きます。実際の給与額が変わっただけでは、標準報酬月額が改定されるまで停止額は変わりません。

Q9. 2026年3月まで年金が止まっていた人は手続きが必要ですか?

不要です。日本年金機構が自動で再計算し、2026年6月15日支払い(4月・5月分)から新基準で振り込まれています。金額は年金額改定通知書・振込通知書で確認できます。

Q10. 支給停止調整額の65万円はずっと同じですか?

65万円は2026年度に適用される額です。支給停止調整額は賃金変動に応じて毎年度改定され、翌年度は同額となる場合も変更される場合もあります。新しい額は例年1月下旬に厚生労働省が公表します(令和6年度50万円→令和7年度51万円→令和8年度65万円)。

Q11. 繰上げ受給している場合も対象ですか?

対象です。繰上げ受給した老齢厚生年金を受けながら厚生年金に加入して働く場合、在職老齢年金の判定が行われます。老齢基礎年金の繰上げ分は対象外です。

Q12. 自分の停止額はどこで確認・相談できますか?

ねんきんネットで年金額を確認できるほか、具体的な試算は年金事務所・街角の年金相談センター、電話はねんきんダイヤルで相談できます。勤務先の標準報酬月額は給与担当部署に確認してください。


今後変更される可能性がある項目(2026年8月3日時点)

以下は今後変わり得る事項です。本文の確定事項とは分けて記載します。

  • 令和9年度(2027年度)の支給停止調整額:賃金変動に応じて毎年度改定されるため、65万円と同額になる場合も、変更される場合もあります。2027年1月下旬の厚生労働省発表で確認してください。
  • 標準報酬月額の上限引上げ(公布済み・未施行):令和7年法律第74号により、厚生年金の標準報酬月額の上限(現行65万円)は2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に引き上げられます。高報酬で働く人は総報酬月額相当額が増え、停止額が増える方向に影響し得ます。
  • 制度の在り方に関する議論:在職老齢年金は過去の年金部会でも廃止を含めた議論があり、次期財政検証(2029年予定)に向けて再び検討対象となる可能性があります。現時点で決定した追加の見直しはありません。

同じ令和7年年金制度改正法では、遺族厚生年金の見直し(2028年4月施行予定)なども定められています。また、厚生年金に加入して働くかどうかの入口の話である「年収の壁」は、本記事で解説した受給者の基準額とは別の制度です。


まとめ

2026年4月1日から、在職老齢年金の基準額は月51万円から月65万円になりました。「総報酬月額相当額+基本月額」が65万円以下なら年金は減らず、超えても減るのは超過分の半分だけです。老齢基礎年金は減らず、夫婦の合算もありません。手続きは不要で、すでに2026年6月の支払いから反映されています。65万円は毎年度見直される数字なので、毎年1月下旬の厚生労働省の発表と、6月の年金額改定通知書の確認を習慣にしてください。停止分は繰下げでも取り戻せないため、働き方や繰下げの判断に迷う場合は、年金事務所での試算をおすすめします。


免責・情報基準日

本記事は2026年8月3日時点の法令・公的資料に基づく一般的な制度解説であり、個別の年金額・支給停止額を保証するものではありません。実際の金額は加入記録や端数処理等により異なります。個別の試算・手続きは年金事務所・街角の年金相談センターへ、税務は税理士へ、社会保険実務の個別相談は社会保険労務士へご確認ください。制度は今後変更される可能性があります。

参考資料

  • 「令和8年度の年金額改定について」厚生労働省(2026年1月23日公表)
  • 「在職老齢年金の計算方法」日本年金機構(2026年4月1日更新)
  • 「在職老齢年金制度が改正されました」日本年金機構(2026年8月3日閲覧)
  • 「在職老齢年金制度の見直しについて」厚生労働省(2026年2月12日更新・2026年8月3日閲覧)
  • 「年金の繰下げ受給」日本年金機構(2026年8月3日閲覧)
  • 「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」日本年金機構(2026年8月3日閲覧)
  • 「もっと働きたい!に応えて、在職老齢年金制度の基準額が2026年4月から引上げに」政府広報オンライン(2026年8月3日閲覧)
  • 「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」(令和7年法律第74号、2025年6月20日公布)
  • 「在職老齢年金制度について」第21回社会保障審議会年金部会 資料2、厚生労働省(2024年11月25日)

経済・ビジネス

2026/7/26

遺族厚生年金は5年で終わる?いつから・誰が対象かを解説【2028年4月施行予定】

20代から50代で、18歳年度末までの子(障害の状態にある場合は20歳未満。以下同じ)がいない配偶者が受け取る遺族厚生年金は、2028年4月から男女共通で原則5年間の有期給付に変わる予定です。SNSでは「遺族年金が廃止される」「5年で打ち切られる」といった情報も広がりましたが、全員が5年で終わるわけではなく、そもそも影響を受けない方も多くいます。本記事は2026年7月25日時点の厚生労働省・日本年金機構の一次資料に基づき、いつから・誰が対象になるのか、増える給付と5年経過後の仕組みをわかりやすく解説します ...

経済・ビジネス

2026/7/29

iDeCoは2026年12月にどう変わる?掛金上限・70歳まで加入・節税効果を解説

iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度が、2026年12月1日に大きく変わります。2025年6月に成立した年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づく改正で、毎月の掛金の上限額(拠出限度額)が職業や企業年金の有無に応じて引き上げられ、加入できる年齢は現在の「働き方により60歳または65歳未満」から「70歳未満」に広がります。この記事では、厚生労働省・国税庁の一次資料に基づき、自分の掛金上限がいくらになるのか、60歳以降に加入できる条件、節税効果のめやす、必要な手続きと注意点を解説します。 この記事の結論 ...

政治・行政

2026/7/25

年収の壁は結局いくら?【2026-2027年版】税と社会保険の全早見表

パート・アルバイトの働き方を左右してきた「年収の壁」は、2026年から2027年にかけて数字も仕組みも大きく動きます。本記事は2026年7月25日時点の一次資料(国税庁・厚生労働省など)に基づき、178万円・169万円・136万円・119万円・207万円という「税の壁」と、106万円・130万円という「社会保険の壁」を、1枚の早見表と時給からの逆算表で整理するまとめ記事です。同じ「壁」と呼ばれていても、誰の収入を、どの制度で見るのかはまったく別物です。なお、各制度は今後の改正等で変更される可能性があります ...

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